• 作成日 : 2022年7月1日

居抜き物件で開業するメリットとは?

「居抜き」とは、一般に物件に設備などを残したままで売買取引や賃貸借取引が行われることです。

個人事業主が新たに店舗を開業することとなった場合、居抜きにはどのようなメリットやデメリットがあるでしょうか?さらに、経営者として居抜き物件のどこに注意をすればよいのでしょうか?この記事では、居抜き物件について解説します。

居抜き物件とは

居抜き物件は、飲食店をはじめ旅館、工場など設備や内装などを必要とする事業者が、営業用設備などが付いた状態で賃貸借や譲渡を行う物件を指します。

ここでは建物は賃貸借取引です。その他の設備を居抜きとして取得する場合を例にとって説明します。

前の賃借人が取り付けて利用していた設備などが残されたままの引き渡しを「居抜き」といいます。次の賃借人として入る場合に賃貸借契約とともに、居抜きとして店舗の設備などを譲り受ける契約を取り交わします。このような居抜き物件の譲渡を「造作譲渡(ぞうさくじょうと)」と言います。

造作譲渡とは

造作(ぞうさく)とは、建物の内部にある天井・階段などの部材や水道、電気設備などを言います。不動産取引において造作譲渡とは、一般に備品であるレジ機器、通信機器や各種設備、さらには、テーブル・カウンターや椅子なども含み、これら建物および内装や備品一式の譲渡ということになります。

注意すべきは、居抜き物件と言っても、借りる建物の全ての造作や設備が買い取りの対象ではないということです。また、前の賃借人が経営に行き詰まって撤退した場合などは、その造作に一因があったのかもしれません。

さらに、一見するときれいな造作も、よく見ると劣化が激しい場合もあります。造作の状態をよく確かめなければなりません。

このように、造作譲渡の範囲を確定し、従来の備え付けの造作で開業することが是か非かを、契約の段階で見極める必要があります。

造作譲渡には、いろいろなパターンがあります。

  • 前の賃借人と建物オーナー、建物オーナーと次の賃借人の造作譲渡契約
    前の賃借人が借りていた店舗などから退去する際、通常は原状回復工事をしますが、次の賃借人を想定し、まだ使える造作を建物オーナーに譲渡することがあります。前の賃借人側から見れば、原状回復工事の費用を削減し、早期に退去でき、かつ譲渡収入を得られるメリットがあります。また、建物オーナー側の立場においても、造作があれば次の賃借人が入りやすいなどのメリットもあります。両者が共に造作を残すことに問題なければ、造作譲渡契約が交わされます。

    そして、建物オーナーは次の賃借人と賃貸借契約とともに造作譲渡契約を交わすことになります。

  • 前の賃借人と次の賃借人との造作譲渡契約
    次の賃借人は建物については、建物オーナーと賃貸借契約を結びます。そして、もう片方で造作については、前の賃借人と造作譲渡契約を結ぶケースもあります。次の賃借人側は造作については所有権を得たことになりますので、造作については自由に処分することもできます。

    なお、造作については、実際に利用するにあたって修理が必要なものがあっても、原則として次の賃借人側の費用負担となります。

これら造作譲渡契約には、造作のリストやその譲渡価額などが明記され、次の賃借人の固定資産登録の根拠となります。

居抜き物件で開業するメリット

居抜き物件を借りて開業する際のメリットは、まず資金調達がラクになることです。また、実店舗を一から始めるには多くの資材調達から始めるところを、居抜き物件の場合には開店までの準備期間が短くなるという利点もあります。

開業資金や退去費用を抑えられる

居抜き物件の場合、開業にあたり初期投資を抑えられるというメリットがあります。また、退去する場合にも、再度居抜きでの退去が可能であれば原状回復費用を削減することができます。

開業にあたっては、居抜きで譲り受けた設備などのメンテナンスや新たな造作など、当初は造作に足りない部分のみを補っておいて、資金ができたら改修するなど資金調達にゆとりを持たせられます。

早期開業が可能

居抜き物件の場合、開店までの準備期間が短くできるというメリットもあります。季節により大きく収入差がある業種など、少しでも早いうちに開業することにより資金繰りがラクになることもあり、早期開業によるメリットは大きいと言えます。

また、取得した設備について、固定資産として減価償却の対象になる場合であっても、中古取得の場合には例外的に短い耐用年数の特例が利用できることがあります。すなわち、固定資産の早期償却も可能となるわけです。

居抜き物件で開業するデメリット

居抜き物件のデメリットとしては、譲り受けた造作が新品ではないことが挙げられます。
開業するにあたって、デメリットとしては小さいとも言えますが、店舗の印象を考えると一考の余地はあります。

設備が中古になる可能性がある

居抜きで取得した設備などは、一般に中古資産となります。新品のイメージが重要視される業種の場合には、メンテナンスやクリーニングに費用がかかることもあります。

また、使えると考えていた造作が実際には使えなかった場合には、除却費用とともに新規取得費用がかかります。

店内デザインを変えにくい

造り付けの設備の場合、店内デザイン・レイアウトの変更が難しい場合があります。

たとえば、陳列棚を居抜きで取得したとしても、別の場所に設置したい場合には、撤去費用と組立費用がかかってしまいます。結局は新たに調達するのとあまり変わらないのであれば、新規取得のほうが自由度が高いと言えます。

居抜き物件で開業するのに必要な資金

居抜き物件を利用して開業するために必要な費用を見てみましょう。事業を始めるには、初期費用と事業運営のための運転資金が必要ですが、居抜き物件ではどう考えればよいでしょうか?

物件取得費

ここで言う「物件取得費」とは、居抜き物件の取得費、つまり、譲り受ける設備等にかかる費用です。賃貸借契約とは別に準備する必要があり、オーダーメイドの造作は中古でも割高となるケースも考えられます。

したがって、賃借に係る保証金など一時費用のほかに物件取得費が同時に必要となるため、契約にあたって総額でどの程度になるかを認識する必要があります。

内装工事・設備費

造作譲渡による内装や設備だけでは開業できないことは多々あります。譲り受けた造作を活かして、他の内装工事や設備を整えたり、追加工事を行ったりする費用がかかります。

中古で取得した固定資産について、事業に利用するために多額の修理費用がかかった場合、それが資本的支出※となれば、その支出金額の割合によって修理した後の耐用年数が変わってきます。したがって、修理の仕方によっては経費とできない場合もあるので要注意です。

※資本的支出:固定資産の修理等のための支出で、その固定資産の価値を高めたり、耐久性を増したりする部分に対応する金額

減価償却費は毎年発生し、各年の確定申告に影響しますので、譲り受けた造作について多額の支出があるときは、専門家などに相談することをおすすめします。

運転資金

造作譲渡を受けた場合、事業の運転資金に影響するのは、減価償却費のような支出を伴わない費用だけではありません。

古い設備などは光熱費がより多く掛かる場合もありますし、機種や型番が古いと保守サービスについても割高となるケースもあります。造作譲渡されたものが多いほど、新品では発生しない費用も発生する可能性があります。古い造作を譲り受ける場合には、その管理費も運転資金の中に組み込む必要があります。

造作譲渡を利用して開業を早く安く!

業種などにもよりますが、居抜き物件を上手に利用することによって、開業を早く、安くできることもあります。良い居抜き物件かどうかは、その内装や設備についてある程度の知識も必要です。

造作について、当初の店舗計画との差があまりに大きい場合には見極めも大切です。しかし、店舗経営を始めるにあたって実際にそこで経営していた実績がある設備は頼もしい味方になってくれるかもしれません。

よくある質問

居抜き物件とは?

飲食店をはじめ旅館、工場など設備や内装などを必要とする事業者が、営業用設備などが付いた状態で、賃貸借や譲渡 を行う物件を指します。詳しくはこちらをご覧ください。

居抜き物件で開業するメリットは?

開業資金や退去費用を抑えられることと、開業にあたり準備期間を短くできるということがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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