• 更新日 : 2024年10月25日

会社買収とは?M&Aとの違いやメリット、成功する企業のポイントを解説!

会社買収とは他の会社の株式を取得して、その企業の経営権を握る行為のことです。合併の意味を持つM&Aとは示す範囲が異なり、敵対的買収や友好的買収などの種類があります。

買収の流れでは、企業調査のデューデリジェンスが重要です。今回は、会社買収の目的や手続き、手法、成功事例、価格、個人仲介などについて解説します。

会社買収とは?

会社買収とは、他の会社の支配を目的に、ある企業が他社の発行済み株式数の過半数を取得するという意味で用いられます。会社買収はM&Aと混同しやすいですが、M&Aには買収以外にも合併も示しており、示す範囲が異なることが違いです。

ここでは会社買収とM&Aの違い、友好的買収と敵対的買収という買収の種類について解説します。

M&Aとの違いは?

M&Aは「Mergers and Acquisitions」の略語で、日本語では合併と買収を意味しています。広義では合併と買収の両方を含んでおり、会社買収よりも範囲が広い言葉です。

次に合併と買収の違いに関してですが、合併は複数の会社を一つに統合する行為なので、譲渡企業は消滅します。対して買収の場合、経営権が移動するだけで、一方の会社が消えてなくなるのではありません。

M&Aと会社買収では示している範囲が異なることを知っておきましょう。

友好的買収と敵対的買収の違いは?

友好的買収は買収先の経営陣の同意を得た上で行う行為であるのに対して、敵対的買収は同意を得ずに一方的に行うものです。

つまり、買収される企業の同意の有無が両者を区別するポイントです。株式会社は発行株式の過半数を取得することで、経営権を得られるため、TOB(株式公開買い付け)を仕掛けて相手の同意なしに経営権を握ることも理論上は可能です。

ただ実際にはこのような手法が取られるケースは少なく、友好的買収で穏便に進められます。特に株式を公開していない中小企業の場合、譲渡制限付株式であるケースが多くオーナーの同意なくして経営権を握ることは法的に難しいため、友好的買収がほとんどです。

敵対的買収の事例は日本ではそれほど多くありませんが、強硬策を講じる企業が出ないとは限りません。敵対的買収のターゲットになった会社は買収防衛策を講じて、買収を阻止できます。

敵対的買収の詳細に関しては次の記事で解説しています。

会社買収の目的・メリットは?

会社買収によって、他社の経営資源を活用して、迅速に競争力強化を実現できます。自社と関係がない事業に取り組む会社を買収することで、経営の多角化を目指すことも可能です。

さらに買収先が黒字化したときに、過去の赤字と相殺して節税にもつなげられます。

迅速に企業の競争力強化を実現できる

買収先のノウハウ・人材・顧客・取引先を獲得できるため、自社で一から作り上げるケースと比べて迅速に競争力強化をはかれます。

ある程度形になっている状態のものを手に入れられるので、販売チャネルや市場規模の拡大、ノウハウの拡充などの目的を失敗せずに達成しやすいです。
人口の減少が進む我が国では、国内市場の需要が頭打ちとなり、企業が成長するにはグローバル展開が不可欠になりつつあります。

国際競争力を付けるには、自社にはなかった技術やノウハウをスピーディーに取り入れられる会社買収は有効な方法です。

経営の多角化を推進できる

自社事業と関係が低い事業に取り組む会社を買収することで、経営の多角化が実現します。本業の収益だけでは不安定で心許ないときに、別事業でも収益をあげられればリスクヘッジになるでしょう。

今まで取り組んでいなかった事業にも手を広げるのはリスクも大きいですが、ゼロから始めるわけではないので、実際に頻繁に採用されている手法です。

また今まで使い道がなく遊休資産として眠っていた経営資源の有効活用にもつながります。

法人税の節税対策になる

赤字の会社をM&Aで買収した場合、買収先企業を黒字化させたときに限り、買収先の利益と過去の損失を合算することで法人税を節約できます。

企業が過去に赤字を出した企業を買収する場合、何らかのシナジーや成長を期待している場合がほとんどです。

買収先企業が業績の回復を果たしたときに、この利益と以前の赤字を相殺して節税に役立てられます。赤字損失は繰越欠損金として、翌年以降に生じた黒字と7年間まで通算可能です。

会社買収のデメリットは?

会社買収の大きなデメリットは、計画通りに統合プロセスが進まずに、買収が失敗に終わる可能性もあることです。

社風や企業文化なども一つにまとめる必要があるため、統合後に労働環境が変わったことに不満を抱く社員が出る事態が想定されます。最悪の場合、優秀な人材の退職にもつながるでしょう。

計画通りに進まず統合が失敗に終わる可能性がある

事前に計画していた統合プロセスを実施すると、不都合が生じて会社買収が失敗に終わる危険があります。通常は買収成約前に統合プロセスを実行に移しますが、計画が不十分なために、買収後に経営が成り立たなくなる場合があります。

システムや制度といったハード的な部分以外にも、社風や企業文化などのソフト面も統合しなくてはなりません。

失敗を防ぐには、統合プロセスの緻密な計画、仕組みの構築、準備を入念に行うことが大切です。

従業員の離職を引き起こす

買収先の経営方針の変更や、風土の違いによる人間関係の悪化などで優秀な人材の流出が起きる危険があります。

従業員としては労働環境が大きく変わる出来事であるため、M&Aへのハレーションが生じる可能性は低くありません。友好的買収とはいえ、同意を得ているのは経営陣にとどまり、現場のプレーヤーは納得がいっていない場合も多いです。

買収後の従業員からの不満を避けるためには、従業員の理解を得られるような経営方針を策定することが必要です。

買収後に想定外の債務が発覚する場合も

事前の調査では発覚しなかった簿外債務が発覚する可能性があります。簿外債務を含む企業を買収した場合、買い手側がその債務を将来的に負担する必要があります。

簿外債務の額が投資金額と比較して多大な場合、投資回収できずに破綻を招く可能性もゼロではありません。簿外債務の発覚によって、統合後の会社運営に支障を来たさないためには、入念なデューデリジェンスが必須です。

会社買収の手続きの流れは?

会社買収の手続きの流れは、以下の通りです。

  1. 買収の目的や達成ニーズの明確化
  2. アドバイザーの選定
  3. 買取候補の選定
  4. トップ面談の実施
  5. 基本合意書の締結
  6. デューデリジェンスの実施
  7. 最終契約書の作成・クロージング

1.会社買収の目的や達成したいニーズの明確化

まず海外展開や経営の多角化等、なぜ会社買収を行うのかという部分を明確にしましょう。
その際に重要なポイントが、株式の取得割合はどの程度を目指すのか決めておくことです。

持ち株比率が50%を超えると、株主総会において、単独で決議事項を可決できる力を有します。66.7%(2/3以上)に達した場合、経営に関する重要事項を単独で決定づける特別決議が可能です。

33.4%以上に達すると、その特別決議の実施を阻止することが可能です。

2.アドバイザーの選定

基本的に会社買収の際は、М&A仲介会社やコンサルティング会社に依頼をかけ、手続きを代行してもらいます。幅広いネットワークを通じた多彩な候補先の選定、効果的な戦略の提案などが可能なため、専門会社の活用がおすすめです。

М&A仲介会社は買い手と売り手の間に立って中立的な立場で交渉を行う仲介型、依頼を受けた側の最大の利益を目指して行動するアドバイザリー型などの種類に分かれます。

3.買取候補の選定

仲介会社が決まったら、いよいよ買収候補先の選定に入ります。募集条件に合う買収先のリストを作成し、条件に合致する会社を数社絞りましょう。

企業名が記されていないノンネームシートを作成して、買収先候補に打診を行っていきます。

4.トップ面談の実施

具体的な買収先が決まり、詳細な検討段階に入ると買収先と買収元のトップ同士で面談が実施されます。

買収にいたった経緯の説明や、企業理念の共有などが行われ、信頼関係の構築のために重要なフェーズです。

5.基本合意書の締結

交渉で買収の内容に同意がなされたら、基本合意書を取り交わします。合意書の作成は必須ではないが、後で揉めないためにも、書類に残しておいた方が安心です。基本合意に含めるべき内容は買収の条件、独占交渉権、守秘義務等です。

独占交渉権とは売り手に対し、自社以外の第三者との交渉を禁止するための権利です。

6.デューデリジェンスの実施

買い手側の公認会計士や弁護士の手によって実施される、買い手側の財務調査、法務調査がデューデリジェンスです。

デューデリジェンスの目的はリスクの洗い出し及びその対策の発見にあります。買収側は調査結果をみて、実際に買収を行うか最終判断を下します。

7.最終契約書の作成・クロージング

前項までの作業が完了し、交渉で詳細な条件に関して同意を得られたら、最終譲渡契約書を作成して契約を締結します。デューデリジェンス後の交渉で話し合われる内容は、役員や従業員の処遇、売却価格、守秘義務などです。

また代金を決済しクロージングした後は、PMIと呼ばれる統合作業を行う必要があります。

会社買収の手法は?

会社買収の代表的な手法は、売り手側が買い手側に株式を譲り渡す株式取得、会社の権利義務を他の会社に承継させる会社分割、事業の一部または全部を買い手側に移す事業譲渡などに分かれます。それぞれの仕組みやメリットを解説します。

株式取得

株式取得はその名の通り、株式を取得することで、買収を完了させる方法です。

売り手側の発行済み株式を買い手側に譲渡して対価として代金を受け取る株式譲渡や、売り手側が新株を発行し、それを引き受ける権利を買い手側に割り当てる新株引受(第三者割当増資)などの手法があります。

他にも買い手側が売り手側から株式を譲り受け、対価として現金ではなく自社株式を割り当てる株式交換も考えられます。

会社分割

元会社の権利義務の全部、もしくは一部を他の会社に承継させる手法です。既存の会社に承継させる「吸収分割」と、新しく設立した法人に承継させる「新設分割」に分かれます。

会社分割は資金を準備せずとも実施可能な点がメリットです。また不採算事業を切り離して基幹事業に経営資源を集中させるといった柔軟で機動的な対応がしやすいのもメリットです。

事業譲渡

事業譲渡は売り手側の事業の全部、または一部を買い手側に譲り渡す方法です。譲渡の対象となる資産は土地・建物などの有形資産、売掛金・現金などの流動資産に加えて、従業員やノウハウ等の無形資産も含まれます。

売り手側が不採算事業を切り分けるために事業譲渡は有効で、法人税の節約が可能です。買い手側は新規で手掛けたい事業を、時間やコストを抑えて取得できるというメリットがあります。

会社買収に必要な費用は?

会社買収に要する費用はM&A仲介会社に対する仲介手数料・買収費用・デューデリジェンスの費用の3つに分けられます。厳密にはデューデリジェンス費用に含まれるともいえますが、額が大きく重要な項目なので別出しして紹介します。

仲介会社に対する仲介手数料

会社買収を行う際は仲介会社に依頼をかけることになるため、仲介手数料が発生。報酬形態は企業によってまちまちで、完全報酬制を取る会社もあります。

完全報酬制は買収が成立したときに報酬を支払う義務が発生するため、もし成立しなかったら一切の費用負担が伴いません。仲介会社が利益を上げるにはクロージングが必須なので、売却可能性やタイミングの目安などを丁寧に説明してくれる傾向があります。

逆に成功の可能性が低いと判断されると多くの業務が遅れがちになることもあるので注意が必要です。

買収費用

買収するために対象企業に対して支払う費用です。金額は交渉で決定し、企業価値や規模、業種などに左右されて額が変動します。

デューデリジェンス費用

買収先企業に関して調査を行うデューデリジェンスの実施に要する費用です。法務や税務、財務、人事など対象範囲が広く、調査の内容によっては多額の費用が生じる可能性もあります。

デューデリジェンスの費用負担が大きく、拠出をためらう経営者の方もいるかもしれません。しかし、デューデリジェンスを軽視すると、簿外債務を見落とし、後で大きなトラブルにつながる場合もあります。

M&A仲介会社は調査項目を重点的に絞って、費用を抑える柔軟な対応を行っているところもあるので、専門家へ相談した方が良いでしょう。

成功事例から学ぶ!会社買収のポイントは?

会社買収の成功のポイントは、双方の良い部分を活かせるような買収先を選定することです。実際に企業買収の成功事例には、シナジー効果を十分に発揮しているケースが多数見受けられます。

シナジー効果を見込める対象会社を選定

技術やノウハウ、独自の営業手法、優秀な人材などシナジー効果をもたらす会社や業種を選定し、投じた買収資金・価格を上回るメリットを目指しましょう。

大阪に拠点を置き、物流事業やIT関連サービスなどを手掛けるヒガシトゥエンティワンは、山神運輸の全株式を取得して子会社化しました。

山神運輸工業は重量物輸送をメインに扱う一般貨物輸送事業と、機械据付やメンテナンスを実施する会社です。ヒガシトゥエンティワンは対象会社の輸送ノウハウを取り入れることで、輸送資源を入手し、新規事業拡大やグループ全般の輸送力強化につなげています。

会社買収は個人でもできる?

規模が小さな会社の買収なら個人でもでき、スモールM&Aと呼ばれています。一般的な会社買収と同様、仲介会社を活用してマッチングにつなげますが、個人の場合は動く金額が少額になりがちです。

後継者不足や事業拡大を考える小規模な法人などが個人M&Aに注目しており、案件数が増えているのが特徴です。個人M&Aで取引される業種で多いのは、飲食店や塾、エステサロン、介護事業、Webサービスなどです。

簿外債務の見落としや人材の流出など、一般的な企業買収と同様のデメリットがあるので注意してください。

会社買収の仕組みを十分に理解しておきましょう

まず会社買収とM&Aは異なることを理解しましょう。会社買収は買収先の株式を取得することで経営権を握る行為を差し、買収後も会社が存続する点がM&Aと異なります。

会社買収の代表的な手法には株式取得や会社分割、株式交換などがあります。買収を失敗しないためには、シナジー効果を期待できる買収先を選定することがポイントです。

また統合後に簿外債務が発覚して、経営の混乱を生じないためにも入念なデューデリジェンスの実施も必須事項です。

よくある質問

会社買収とは?

買収先の株式の過半数を取得することで、その会社の経営権を掌握する取り組みです。詳しくはこちらをご覧ください。

会社買収とM&Aの違いは?

会社買収では買収後も買収された会社は存続しますが、M&Aの場合は統合されるため一つにまとまります。詳しくはこちらをご覧ください。

会社買収の手法は?

株式取得のほか、元会社の権利義務を譲渡する会社分割や、事業を買収先に移転する事業譲渡などの手法もあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

会社経営の関連記事

新着記事