- 更新日 : 2024年9月6日
定款の書き方まとめ!設立会社の種類による違いや注意点を解説(無料テンプレート)
会社を設立するときに作成しなければならない書類の中で、会社の目的や決まりなどを記載する「定款」は非常に重要な位置を占めるものです。
定款の正しい書き方、設立会社による内容の違い、電子定款など、定款作成時に必要な知識を確認しましょう。
目次
定款とは?
「定款」とは、会社の事業内容や資本金額など対外的に会社を紹介する事項や、会社内における組織や運営などの決まりごとを明文化したもので、よく「会社の憲法」とも称される重要な書類です。
会社に定款が必要な理由
法人のうち、「株式」「合同」などの会社、いわゆる企業は利益の追求を大きな目標としています。
会社が利益を得るためには第三者との取引が欠かせませんが、互いに相手方がどのような会社であるかを知ることができれば一定の信頼関係が築けます。定款はその会社がどこにあり、誰が設立したかなどの情報(後述する「絶対的記載事項」)を示すことで取引の安全を守る役割を果たします。
ちなみに通常の取引で相手方に定款を提示することはあまり考えられませんが、会社に関する情報は会社の登記簿(履歴事項証明書)にも記載され、誰でも取得可能な情報となっています(登記簿では発起人ではなく代表者の住所氏名が書かれています)。
また、会社を運営していくためには会社の「ルール」が必要です。スムーズかつ安全な統率には、広く定められた法律などだけは不十分なので、定款において個々の会社に適した組織や運営方法を細かく定めます。定款が必要なもう一つの目的は、会社が決めた守るべきルールを経営陣が共有することにあるのです。
定款作成から会社設立までの流れ
定款は、設立する会社のいわば説明書として、法人設立登記をする際に提出する必要があります。設立会社の実態に即していなければならないので、必要事項を全て整えてから作成することになります。流れとしては以下のようになります。
- 発起人が内容を決定し、定款を作成する
- 発起人全員が定款に署名または記名押印する(株式会社の場合)
- 公証人に定款の認証を行ってもらう…こちらも株式会社の場合必要な手続きです。
認証費用は資本金の額によって3万円~5万円まで、他に印紙代が4万円かかります。 - 法務局で設立登記を行う
- 登記完了。会社設立となる…法務局は登記完了の通知はしてくれないので、通常は申請時に登記事項証明書の送付を請求しておきます。
電子定款について
定款は紙の書類でなく、電子定款とすることができます。電子定款とは、電子ファイルで作成し、PDFファイル化した定款のことです。電子定款にすると定款認証時の印紙代4万円が不要となる、発起人全員でなく代表者の署名のみで申請できるといったメリットがあります。
一方で電子定款の署名や申請には専用ソフトやカードリーダーなどが必要で、それなりの費用がかかるデメリットがあります。
定款の書き方:3つの記載事項
定款には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」、記載することで効力が発生する「相対的記載事項」、記載してもよいが、記載がなくても他の書類などで効力発生が可能となる「任意的記載事項」の3つの記載事項があります。
絶対的記載事項
定款における絶対的記載事項は、株式会社の場合、会社法(以下「法」)第27条で以下の5項目と定められています。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
相対的記載事項
法第28条では、「定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない」として以下の4項目を定めています。これは「変態設立事項」といい、相対的記載事項の主たる項目です。
①現物出資
金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数
②財産引受
株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
③発起人の報酬・特別利益
株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
④設立費用
株式会社の負担する設立に関する費用
上記以外にも会社法上には多くの相対的記載事項があります。条文内で「定款で定めることができる」「定款に別段の定めがあるときを除き」といった記載があることが一つの目安になります。
任意的記載事項
定款への記載がなくても無効にはならず、また定款に記載せずとも、その効力が認められるものを指します。上記2つの事項にあたらない項目も、内容が違法なものでない限り定款に記載できます。詳細は後述しますが、任意とはいえ、記載内容は比較的どの会社も大きな違いはないようです。
定款の絶対的記載事項の書き方
絶対的記載事項である5項目について、記載内容を具体的に説明します。
商号(法人名)
会社の顔となる「名前」です。使用可能な文字と符号が決められているため注意しましょう。「○○株式会社」のように、必ず会社名の前か後に会社の種類を入れてください。
事業目的(どのような事業を行うか)
会社がどのような事業を行うのかを記載します。事業の数に制限はないので、将来展開予定のものに限らず、見通しが立たない事業であっても全て記載して構いません。しかしこの項目は登記簿にも記載されるため、会社の方向性を明確にできる程度に留めておくことをお勧めします。
本店所在地
設立時の会社の住所を記載します。本社など事業活動の中心となる場所を所在地とするのが一般的ですが、実態として事業が行われていれば必ずしも本社の住所でなくても構いません。
また、定款の場合「本店を〇市に置く」のように最小行政区画までにして、町や番地を記載しなくてもよく、実際そのように記載する会社が多いようです。本店を移転する場合、同じ市町村内であれば定款の変更が不要となるからです。
資本金(設立時に出資される価格もしくは最低額)
定款作成時には、設立時に出資される価格もしくは最低額でよく、株式会社の登記申請時には資本金の額を確定する必要があります。法による資本金の下限は2006年に撤廃されたため、資本金1円でも会社の設立は可能です。しかし資本金額は、取引先や融資を受ける際の信頼度に関わってくる項目でもあるので、なるべく相当といえる金額を準備し、記載するようにしましょう。
発起人の氏名又は名称及び住所
会社設立の当事者である発起人について、全員の氏名・住所を記載します。発起人は会社の所有者となり、株式会社であれば設立後株主となる存在です。
なお、株式会社は「所有と経営の分離」が鉄則であり、発起人たる所有者が経営者を別途定め、登記簿にはその経営者(代表者)の住所氏名が記載されます。
定款の相対的記載事項の書き方
相対性記載事項が全くない定款でも無効にはなりませんが、明文化せず効力が発生しないことで、会社運営上不都合が生じる可能性があるため、自社に必要な項目については漏れなく記載しましょう。
前述の「変態設立事項」以外にも、例えば、株式会社は現在株券の不発行を原則とするため(会社法214条)、あえて株券発行会社としたいのなら定款にその旨を記載しなければなりません。
また、日本の株式会社の大多数は株式の譲渡に制限を設けていますが、会社法127条で「株式譲渡自由の原則」を定めているため、譲渡制限をかけるには定款に記載する、というのも代表的な相対性記載事項の一つです。
他にも、取締役会の設置や、役員などの責任免除など多くの重要な項目があります。これらを考慮すると、定款作成時において、相対性記載事項は最も注意すべき箇所だといえます。
定款の任意的記載事項の書き方
他の文書などで内容が明確にされれば、定款に記載がなくても効力が発生するのが任意的記載事項です。
具体的には定時株主総会の招集時期、事業年度はいつからいつまでか、株式の配当はどのように行うか、公告は何で行うか、などの項目があげられます。
たいていの会社ではこれらの項目も定款に記載しています。他の文書を探さなくとも、定款を見れば全て分かる形が合理的だからです。
ただし、強行規定や公序良俗などに反する条項が入った定款は無効とされます。注意しましょう。
合同会社と株式会社の定款の書き方の違い
ここまでの内容は、主に株式会社の定款に関することでしたが、もちろん他の種類の会社であっても定款作成は必要です。
しかし、株式会社以外の会社は定款の認証は不要という違いがあります。費用の点でこの違いは大きいでしょう。
また、定款の記載内容も違ってきます。株式会社と合同会社の定款記載内容で異なる点を比較してみましょう。
- 絶対的記載事項
事業目的、商号、本店所在地は株式会社と同じですが、株式会社とは設立の方法が違うため、合同会社の定款で住所氏名の記載が必要なのは「発起人」でなく「社員」となります。
ただし、社員の責任を自分が出資した範囲内とする「有限責任」とするには、その旨の記載が必要です。さらに合同会社においては、社員の出資の目的(金銭などに限る)およびその価額などが絶対的記載事項として挙げられます。
- 相対的記載事項
株式に関する条項が不要のため、この部分の記載は多少楽になります。
それでも、業務執行社員の定め(法590条)、代表社員の定め(法599条)、社員の持分の譲渡に関する定め(法585条)など、定款に記載がなければ効力が発生しない重要事項があるので注意してください。
- 任意的記載事項
事業年度や公告の方法、利益配当についてなど、株式会社と用語の違いはあれど、同じような内容が任意的記載事項としてあげられます。
【設立会社別・業種別】定款のテンプレート
定款は、相対的および任意的記載事項の内容に悩みそうですが、同程度の規模であれば、どの会社も記載している条項は似てきます。
定款のテンプレートをご用意していますので、自社に当てはまりそうなものをぜひご参考にしてください。
定款を書く場合に注意したいポイント
絶対的記載事項記載時のポイントは既に述べていますので、その他の注意点を見てみましょう。
正しく記載されているか
定款の3つの記載事項に漏れがないかのチェックはもちろんですが、意図が正しく表記されているかも確認しましょう。
法律や契約書の条文に使用されている接続詞には、意外と意味の理解が曖昧なものがあります。
例えば「○○は1または2に適用する」と「○○は1および2に適用する」の違いは分かりますか?前者は1か2のどちらかだけ、後者は1と2のいずれにも適用されるという意味です。あらぬ誤解を受けぬよう、十分に気をつけましょう。
資本金額の設定
あまりに安い資本金額は取引の信頼度に影響を及ぼすおそれがあります。しかし高額(1,000万円以上)に設定しすぎると、今度はいきなり消費税が発生してしまいます。
バランスの取れた資本金額にするよう心がけましょう。
定款の変更手続き
設立時の作成ポイントではありませんが、定款は会社を運営していくうちに、設立当時の内容にそぐわなくなることがあるため、その場合には変更の手続きを行うことができます。
会社にとって定款の変更は重要事項なので、株式会社であれば株主総会での特別決議が必
要です(法466条、309条)。また、変更事項によっては変更登記や所轄庁への届け出が必要になり、変更登記には所定の費用がかかる点に注意が必要です。
定款は会社の要!丁寧に作成を
定款は会社の根幹となる大切な書類です。設立時にはテンプレートを参考にしつつも、自社に必要な内容を設立当事者同士で熟考し、漏れなく記載しましょう。全員が組織や運営方法の詳細について、把握するよい機会にもなるでしょう。
税理士コメント
定款の作成は会社設立において非常に大切なステップです。
例えば、定款作成時に記載した「事業の目的」以外の事業の取引をした場合、その点を株主や銀行などに指摘され、無効を主張される可能性もあります。悪質な場合には刑事罰も考えられます。
そのような強い力を持つ定款ですので、作成にあたってはよく内容を確認し、決して他人まかせにしないようにしましょう。
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