• 作成日 : 2023年12月8日

取締役会議事録とは?ひな形を基に記載事項や書き方、電子化を解説

取締役会議事録とは?ひな形を基に記載事項や書き方、電子化を解説

上場会社や非公開会社のうち約40%が該当するといわれる取締役会設置会社では、取締役会開催のたびに取締役会議事録の作成が必要になります。取締役会議事録にはどのような内容を記載すればよいのでしょうか。法的に必要な内容や取締役会議事録の書き方を解説します。

取締役会議事録とは?

取締役会議事録とは、取締役会の決議の内容などを記録した書類です。取締役会の中でどのような議論が行われ、どのように決議したのかなどを明確にするために作成されます。

取締役会とは?

取締役会とは、3人以上の取締役で構成される株式会社の業務執行にかかわる意思決定機関です。業務執行の意思決定のほか、取締役の職務執行の監督などの役割があります。

会社法では、取締役会の設置は任意とされていますが、公開会社、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社のいずれかに該当する場合は取締役会を設置しなければなりません。

取締役会の頻度

会社法の第363条2項では、次の規定が設けられています。

前項各号に掲げる取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。

引用:会社法(平成十七年法律第八十六号)|e-GOV

取締役会の開催頻度を直接的に規定する内容ではないものの、取締役は少なくとも3カ月に1度は自身の職務執行状況を取締役会に報告することと義務付けられているため、3カ月に1回以上の頻度で取締役会を開催する必要があります。

取締役会で決めること

会社にとって重大な事項は、会社の所有者の株主が集まる株主総会で決議をすることと定められています。株主総会での決議が必要なのは、以下のような事項です。

以上のように、会社にとって重要度の高い事項は、取締役会で審議され、最終的に株主総会での決議に委ねられます。取締役会で決められるのは、株主総会での決議が必要な事項以外の、会社にかかわる一切の事項です。例えば、以下のような事項を取締役会では決議できます。

  • 重要な財産の処分や譲り受け
  • 多額の借財
  • 支配人や重要な使用人の選任・解任
  • 支店など重要な組織の設置・変更・廃止
  • 募集社債の金額や社債募集に関して法務省令で定める事項
  • 法務省令で定める体制の整備
  • 定款の定めにもとづく取締役などの責任の免除
  • 自己株式の取得株数や価格(特定の株主からの取得など取締役会のみで決定できないものもあります)
  • 株主総会の招集
  • 代表取締役の選任・解任 など

取締役会議事録の作成は義務?

会社法第369条第3項において、法務省令の定めるところにより議事録を作成しなければならないと規定されています。したがって、取締役会を開催したら、会社法の定めに従い、取締役会議事録を作成しなければなりません。

取締役会議事録が持つ役割

取締役会議事録には、議事内容を明確にする役割と、決定事項を証拠として残すための2つの役割があると考えられます。

議事内容の明確化

取締役会議事録の記載事項は、法務省令のひとつである会社法施行規則により記載すべき事項が明確にされています。これにより、議事の内容を議事録によって明らかにすることが可能です。また、取締役会で報告のあった内容や決議された内容などを、請求を受けたときに株主や債権者などに開示できるようにする役割があります。

取締役会の決定事項の証拠化

取締役会議議事録では、取締役会における議事の経過や結果、また、決議事項に特別な利害関係がある取締役が存在した場合にはその取締役の氏名が記載されます。決議の状況を把握できることから、決議が問題となったとき、取締役の責任追及のための証拠としての役割も期待できます。

取締役会議事録のひな形、テンプレート

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取締役会で取り扱われやすい議事のテンプレートをひととおりご用意しておりますので、必要に応じてご利用ください。

取締役会議事録の書き方

取締役会の議事録は、会社法施行規則第101条第3項において、以下の事項を内容とすることと規定しています。

取締役会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。

一 取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)

二 取締役会が法第三百七十三条第二項の取締役会であるときは、その旨

三 取締役会が次に掲げるいずれかのものに該当するときは、その旨

イ 法第三百六十六条第二項の規定による取締役の請求を受けて招集されたもの

ロ 法第三百六十六条第三項の規定により取締役が招集したもの

ハ 法第三百六十七条第一項の規定による株主の請求を受けて招集されたもの

ニ 法第三百六十七条第三項において準用する法第三百六十六条第三項の規定により株主が招集したもの

ホ 法第三百八十三条第二項の規定による監査役の請求を受けて招集されたもの

ヘ 法第三百八十三条第三項の規定により監査役が招集したもの

ト 法第三百九十九条の十四の規定により監査等委員会が選定した監査等委員が招集したもの

チ 法第四百十七条第一項の規定により指名委員会等の委員の中から選定された者が招集したもの

リ 法第四百十七条第二項前段の規定による執行役の請求を受けて招集されたもの

ヌ 法第四百十七条第二項後段の規定により執行役が招集したもの

四 取締役会の議事の経過の要領及びその結果

五 決議を要する事項について特別の利害関係を有する取締役があるときは、当該取締役の氏名

六 次に掲げる規定により取締役会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要

イ 法第三百六十五条第二項(法第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)

ロ 法第三百六十七条第四項

ハ 法第三百七十六条第一項

ニ 法第三百八十二条

ホ 法第三百八十三条第一項

ヘ 法第三百九十九条の四

ト 法第四百六条

チ 法第四百三十条の二第四項

七 取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称

八 取締役会の議長が存するときは、議長の氏名

引用:会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)|e-GOV

一の開催日時と場所、四の議事の経過の要領と結果は、どの取締役会議事録においても記載しなければなりません。

開催日時や場所

会社法施行規則によって、会社場所や日時を明記することが定められています。記載方法に規定はありませんので、記載例のように一目で内容がわかるようにしておくとよいでしょう。なお、開催場所でないところから参加(ビデオ会議での参加など)した取締役などがいるときは出席方法も明記する必要があります。

【記載例】

2023年(令和5年)11月30日 13時より本社会議室にて開催

決定事項

取締役会議事録では、議事の経過の要領とその結果を記載することが、会社法施行規則により義務付けられます。以下は、ある決定事項の記載例です。

【記載例1(代表取締役選定)】

第1号議案 代表取締役選定の件

議長より、〔中略〕代表取締役として下記の者を選定したい旨の提案があった。

代表取締役 ●●●●

総会は、別段の異議なく、満場一致をもって承認可決し、被選定者は即時就任を承認した。

【記載例2(株主総会の招集)】

第1号議案 第30回定時株主総会招集の件

議長より、第30回定時株主総会を以下のように開催したい旨の提案があった。

開催日時:●●●●

開催場所:●●●●

決議事項:●●●●

総会は、別段の異議なく、満場一致をもって承認可決した。

【記載例3(重要な財産の処分)】

議長より、経営資源の有効活用・財務体質改善・運転資金確保などのため、当社所有の以下の財産の売却をしたい旨の提案があった。

〔中略※(該当財産の名称や帳簿価格、売却見込み額、売却先などを記載)〕

総会は、別段の異議なく、満場一致をもって承認可決した。

上記の記載例からもわかるように、議事の内容をすべて列挙する必要はありません。どのようにして議事の提案があったのか(なぜ決議事項としたのか)、どのような内容を議論したのか、結果として承認可決されたのか、要点を押さえて記載します。

出席者の氏名

会社法施行規則では、取締役会に出席したもののうち、執行役、会計参与、会計監査人、株主の氏名(または名称)の記載が規定されています。会社法施行規則で取締役や監査役の氏名が規定されていないのは、会社法において署名または記名押印を義務付けているためです。そのため、出席した取締役や監査役は取締役会議事録に署名と押印をしなければなりません。

取締役会議事録の作成ポイント

取締役会議事録の作成にあたって押さえておきたいポイントを4つ取り上げます。

欠席者の扱い

取締役会は過半数の出席が必要で、株主総会のように第三者へ議決権の行使を委任できません。そのため、開催地で過半数が集合できる見込みがないときは、テレビ会議などを用いて開催するなどの工夫が求められます。

なお、取締役会議事録では出席した取締役や監査役の署名または記名押印が会社法第369条第3で規定されているものの、欠席者の規定はないため、欠席者の署名押印は必要ないものと考えられます。

取締役会議事録の作成時期

取締役会議事録の作成は会社法により義務付けられていますが、いつまでに作成するべきか作成時期は法律上規定されていません。しかし、次に紹介する備え置きの義務があるため、取締役会終了後できるだけ早く作成するのがよいでしょう。

取締役会議事録の保管

会社法第371条第1項において、取締役会設置会社は、取締役会の日から10年間は、記載すべき事項を記録した議事録などの書面を本店に備え置かなければならないと規定しています。したがって、10年間は保存しておかなくてはなりません。

取締役会の書面決議

会社法第370条において、取締役会の決議の省略の規定が設けられており、取締役会設置会社において、取締役の全員が書面または電磁的記録で同意したときは、取締役会の決議があったものとみなすことができます(ただし定款での定めが必要です)。

上記による方法を書面決議といいますが、書面決議の場合であっても取締役会議事録の省略はできません。

取締役会議事録の電子化のルール

取締役会議事録は、電子化して保存できます。しかし、株主総会議事録と違い、会社法により、出席した取締役や監査役の署名または記名押印が規定されていますので、電子化するときは署名押印の要件を満たして保存しなければなりません。

電子データで取締役会議事録を作成する際、署名押印の代替措置として会社法施行規則第225条第1項第6号で認められているのが電子署名による方法です。

法的に認められた電子署名の要件を満たすには、本人が署名を行ったこと、改変されていないことを確認できる必要があります。

また、会社で作成または授受する書類の電子化は、e-文書法の定めに従って電子化する必要があります。e-文書法では、見読性(明瞭な状態で確認できる)、完全性(改ざんや消去がないことが確認できる)、検索性(すぐにデータを取り出せる)、機密性(不正アクセスを防止する)を満たして電子保存しなければなりません。

取締役会議事録は取締役会のたびに作成が必要な書類

取締役会設置会社においては、少なくとも3カ月に1回は取締役会の開催が義務付けられています。取締役会議事録は取締役会のたびに作成を必要としますので、決議内容に合わせて作成をパターン化しておくと作成しやすいのです。この記事でも紹介した決議内容ごとのテンプレートを利用すれば、作成にかかる時間の削減に役立つでしょう。


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