• 更新日 : 2023年10月23日

サスティナブル経営とは?企業事例やメリット・なぜ注目されているか

サスティナブル経営とは?企業事例やメリット・なぜ注目されているか

サスティナブル経営とは、環境や社会、経済の3つが長期的に持続できる状態を目指す経営スタイルのことです。これからの企業経営には、欠かせない考え方や成長戦略です。本記事では、サスティナブル経営の内容や取り入れるメリット、またサスティナブル経営に取り組んでいる企業事例を詳しく解説します。

サスティナブル経営とは?

サスティナブル経営とは、環境や社会、経済の3つが持続できるようにバランスを取りながら成長を目指す経営スタイルのことです。

利益追求が最優先では、気候変動や水質汚染、生態系破壊などが進むばかりです。今では、このような環境悪化が、企業の経済活動に悪影響を及ぼすまでになっています。企業は環境への負担を小さくし、社会的責任を果たしながらビジネスの成長を目指さなければなりません。

サスティナブル経営を行うにあたっては、GRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)という国際団体が定めたテーマに沿って行うことが望ましいとされています。経済・環境・社会の3つのテーマに分類されており、それぞれのテーマごとに取り組むべき項目が設定されています。

経済に関するテーマ

  • 経済パフォーマンス
  • 地域経済での存在感
  • 間接的な経済的インパクト
  • 調達慣行
  • 腐敗防止
  • 反競争的行為
  • 税金

環境に関するテーマ

  • 原材料
  • エネルギー
  • 生物多様性
  • 大気への排出
  • 廃棄物
  • 環境コンプライアンス
  • サプライヤーの環境面のアセスメント

社会に関するテーマ

  • 雇用
  • 労使関係
  • 労働安全衛生
  • 研修と教育
  • ダイバーシティと機会均等
  • 非差別
  • 結社の自由と団体交渉
  • 児童労働
  • 強制労働
  • 保安慣行
  • 先住民族の権利
  • 人権アセスメント
  • 地域コミュニティ
  • サプライヤーの社会面のアセスメント
  • 公共政策
  • 顧客の安全衛生
  • マーケティングとラベリング
  • 顧客プライバシー
  • 社会経済面のコンプライアンス

サスティナブル経営と「SDGs経営」「ESG経営」の違い

SDGs経営とは、持続可能な開発目標(SDGs)を企業の戦略や活動に取り入れて成長を目指す経営スタイルです。SDGsとは、2015年に国際サミットで採択された国際目標のことで、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すと定めています。

SDGsの目標に対して具体的に貢献しながらビジネスの発展を目指すという戦略が、SDGs経営とサスティナブル経営の異なるところです。

SDGs経営については、次の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。SDGs経営に取り組むメリットや課題がより具体的に理解できるでしょう。

ESG経営とは環境や社会、ガバナンスの3つを遵守しながら成長を図る経営スタイルです。サスティナブル経営は、企業の長期的な成長のために環境や社会、経済をバランスよく考慮する点が特徴ですが、ESG経営は環境や社会、ガバナンスの3つの側面に焦点をあて企業価値を高めることを目標にしています。

ESG経営については、次の記事が参考になるでしょう。ESG経営のメリットや実際にESG経営に取り組んでいる企業について紹介しています。

なぜサスティナブル経営が注目されている?

サスティナブル経営が注目されてきた背景には、深刻な環境問題が挙げられます。気候変動や資源枯渇、生態系の損失などに対して、企業も社会的責任を果たす必要が生じている状況です。また、社会的責任を果たす企業を高く評価する消費者や投資家、金融機関などが増えたことも一因といえるでしょう。

社会の意識変化だけでなく、環境を守るための法律や規制が設けられたことも理由のひとつだといえます。企業は、新しい法律や規制を遵守しながらビジネスを成長させる戦略に変更せざるを得なくなっている状況です。

企業側にとっても、積極的にサスティナブル経営にシフトすることで長期的な成長を期待できます。

サスティナブル経営のメリット

ここでは、サスティナブル経営に取り組むことで得られるメリットを4つお伝えします。なぜサスティナブル経営に取り組む企業が増えているのか、その理由がわかるでしょう。

ステークホルダーからの評価が上がる

サスティナブル経営に取り組むことで、ステークホルダーからの評価が上がり信用を得られます。ステークホルダーとは従業員や顧客、株主、投資家、金融機関などの利害関係者のことです。

特に投資家は、サスティナブル経営に取り組む企業を高く評価する傾向にあります。サスティナブル経営に積極的に取り組めば、多くの投資家にアピールすることが可能です。

他企業や地域との連携ができる

サスティナブル経営を取り入れることで、他企業や地域、新しい取引先との連携ができます。

例えば、食品販売会社の場合、廃棄物削減のためにAIを使った販売予測は一つの解決策でしょう。AIでの販売予測を行うためには、専門の会社や研究機関に予測ツールの開発を依頼しなければなりません。このように、これまで接点のなかった他企業や機関との間に新しいビジネス関係を築けます。

また、廃棄物自体を地元の企業に再利用してもらえれば、地元とのつながりも強まります。既存事業の枠組みを越えた新しい企業や機関、地域との連携は、企業の活力アップに役立つかもしれません。

事業リスクが低下する

サスティナブル経営を行うことで、事業リスクの低下が見込めます。サスティナブル経営を進める上で、ユニークなアイデアや新しい技術開発につながる可能性は大いにあります。新しいアイデアや技術を創出できれば、既存の事業だけでなく、新しい領域での事業の発展を期待できるでしょう。幅広い領域での事業を行うことで、リスク回避が可能となります。

採用活動にも好影響を与えやすい

サスティナブル経営は、従業員にとっても魅力的な経営スタイルです。自社の社会的な貢献を感じることにより、満足度やモチベーションアップにつながります。また、さまざまな社会的活動に参加することで、社員同士の結束感も強まるでしょう。

サスティナブル経営に取り組み企業イメージが良くなれば、優秀な人材を獲得しやすくなります。環境問題に敏感な人材が集まり、サスティナブル経営の強力な推進力となるでしょう。

サスティナブル経営の企業事例

ここでは、サスティナブル経営に取り組んでいる企業を5社取り上げて説明します。これからサスティナブル経営に取り組む際は、参考にしてください。

カルビー株式会社

カルビー株式会社は、サスティナブル経営に取り組む上で重要な課題として5つのマテリアリティと13の課題を策定しています。5つのマテリアリティとは、以下のとおりです。

  • 人々の健やかなくらしと多様なライフスタイルへの貢献
  • 農業の持続可能性向上
  • 持続可能なサプライチェーンの共創
  • 地球環境への配慮
  • 多様性を尊重した全員活躍の推進

また、13の課題を次のように定めています。

  • カーボンニュートラルの達成
  • プラスチックによる環境負荷の低減
  • 循環型社会の推進
  • 働き方の多様性(少子高齢化・感染症による変化)への対応
  • 地域コミュニティへの貢献
  • 食の安全・安心の確保
  • 健やかなくらしへの貢献
  • 持続可能な原料生産
  • 環境と人権を尊重した責任ある調達
  • 環境と人にやさしい物流
  • 自然資本の保全
  • 消費者意識の多様化に応じた新たな価値提供
  • ダイバーシティ・インクルージョンの推進

同社は、「ステークホルダーにとっての重要度」と「自社における重要度」の2つの側面からマテリアリティマップを作成し、どの課題がより重要なのかをわかりやすくまとめています。

サスティナブル経営を推進するために、外部の有識者を交えたサステナビリティ委員会を設置し、サスティナブル経営の戦略決定や進捗報告、モニタリング、見直しを行っています。ホームページ上で実績や進捗、また反省点などを報告しており、誰でも確認することが可能です。

参考:カルビー株式会社 サステナビリティ

KDDI株式会社

KDDI株式会社もサスティナブル経営を推進するにあたって、マテリアリティを策定しています。同社のマテリアリティは、次のとおりです。

  • 通信を核としたイノベーションの推進
  • 安心安全で豊かな社会の実現
  • カーボンニュートラルの実現
  • ガバナンス強化によるグループ経営基盤強化
  • 人財ファースト企業への変革
  • ステークホルダーのエンゲージメント向上

それぞれのマテリアリティについて、提供できる価値や実施内容を具体的に定めています。特に、2030年度のカーボンニュートラルの達成は、同社にとって大きな目標のひとつです。実際の取り組みや進捗を網羅したレポートがホームページに掲載されているため、参考にするとよいでしょう。

参考:KDDI株式会社 サスティナビリティ経営

コクヨ株式会社

日本の文具メーカーとしてしられているコクヨ株式会社は、これまでも環境課題解決と社会課題の動向を把握するために環境委員会を設置していました。2022年には、アップグレードしたマテリアリティを定め、より積極的にサスティナブル経営を進めています。

同社のマテリアリティは、以下のように経営会議と4つの部会から構成されています。

  • サステナブル経営会議:各部会報告やステークホルダーとのエンゲージメント報告からPDCAプロセスを確認し、定期報告を実施。
  • 環境部会:コクヨグループ全体の環境課題への対応。部門を横断した3つのタスクフォース(気候危機・循環社会・自然共生)の設置。
  • Well-being部会:D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)とI(イノベーション)の実行。2022年度の対象は主要5社、2023年度以降対象範囲を拡大。
  • 調達部会:サプライヤーとの「共感共創」理念を共有。コクヨブランド製品および流通PBを扱う一次サプライヤーから実施し、結果を見ながら対象を拡大。
  • 森林経営部会:マテリアリティ目標にかかる年度計画の作成。進捗を確認しながら次年度計画を作成し、グループ全体への浸透を図る。

参考:コクヨ株式会社

住友林業株式会社

住友林業株式会社は、2022年に住友林業グループのあるべき姿として長期ビジョン「Mission TREEING 2030」と新たな9つの重要課題を策定しました。重要課題は、取引先や投資家、社外の有識者などにアンケートで広く意見を求め、その結果を盛り込んだものになっています。

同社では、9つの課題に取り組み地球環境や地域社会、市場、経済活動などに価値を提供することで、持続可能な社会の実現を目指しています。9つの重要課題とは、次のとおりです。

  • 森林経営による「森」と「木」の価値向上
  • 「森」と「木」を活かしたカーボンニュートラルの実現
  • 「森」と「木」を活かしたサーキュラーバイオエコノミーの実現
  • 広く社会に快適でぬくもりある空間の提供
  • 事業を営む地域の人々の暮らしの向上
  • 働く人が活き活きできる環境づくり
  • 「森」と「木」の新たな市場の創出
  • DX・イノベーションによる市場の変革
  • 強靭な事業体制の構築

中期経営計画サスティナビリティ編2024では、2024年度をターゲットとした具体的な数値目標を定め、取り組みを推進しています。各目標の進捗や達成状況を半期ごとに確認し、結果を踏まえた改善にも注力しています。

参考:住友林業株式会社 サステナビリティレポート 2023

日本電気株式会社(NEC)

日本電気株式会社は、2018年にGRIスタンダード、ISO26000、SDGsなどのグローバルなガイドラインをもとにマテリアリティを策定しました。その後、NECグループが共通で持つ価値観や行動の原点であるNEC Wayを2020年に発表したことに伴い、マテリアリティも再設定し直しています。

基盤となるマテリアリティの内容は、次のとおりです。

  • 気候変動(脱炭素)を核とした環境課題への対応
  • ICTの可能性を最大限に広げるセキュリティ
  • 人権尊重を最優先にしたAI提供と利活用
  • 多様な人材の育成とカルチャーの変革
  • コーポレート・ガバナンス
  • サプライチェーンサステナビリティ
  • コンプライアンス

2023年度に、これまでのマテリアリティに成長や機会の創出と成長率向上を目的とした「成長マテリアリティ」を付け加え、再整理しています。

成長マテリアリティの取り組み内容は、次のとおりです。

  • 行政・金融のデジタル化によるWell-beingな社会を実現
  • 人にも環境にもストレスなくつながる社会の実現
  • 社会や産業の変革をデジタルの力で実現
  • 誰もが自分らしく生きる、新シヘルスケア・ライフサイエンスの世界を実現
  • お客さま・社会のカーボンニュートラルの実現

同社では、経営企画やIR、人事、総務、人材開発、コンプライアンス推進、経営システムなどのコーポレート部門や事業部門、国内外のグループ会社と連携しながらサステナビリティ経営を進めています。自社だけでなく、取引先と連携した取り組みも重視し、設定した目標の数値達成を目指しています。

参考:日本電気株式会社(NEC)サステナビリティ

これからの企業経営にはサスティナビリティという考え方が重要!

企業はこれまでのような利益追求のための経済活動だけでなく、世界規模での環境破壊や経済格差、人権問題などに対して責任を果たすことが求められるようになっています。消費者や投資家、金融機関などの意識変化もその一因です。

また、企業そのものが長期的に発展し続けるためにも、サスティナブル経営への取り組みは効果的です。どのように取り入れるべきかわからない場合は、他企業での事例が参考になるでしょう。よりよい社会を長期的に維持するために、できるところから始めてみてはいかがでしょうか。


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