- 作成日 : 2024年9月6日
妻(配偶者)を代表や役員にするのは可能?メリット・デメリット
会社を設立する際に、配偶者を代表や役員にしようと考えている方も多いのではないでしょうか。配偶者を代表や役員にした場合、どのような影響があるか知りたい方もいるでしょう。
夫婦で会社を設立することで、所得分散などのメリットがある一方で注意点もあります。今回の記事では夫婦で会社を設立するメリット・デメリット、注意点について紹介します。
目次
夫婦で会社を設立することは可能?
会社を設立する際、配偶者を役員や代表者にて設立することは可能でしょうか?それぞれの内容を見ていきましょう。
妻(配偶者)を代表にすることは可能?
会社を設立する際、配偶者を代表にすることは可能です。会社を設立する際には、代表取締役を選定する必要があります。代表取締役は本来、取締役会で決める必要がありますが、会社設立時は取締役会がありません。そのため定款の定め、もしくは発起人に選任された設立時の取締役による決議で決める必要があります。このように代表者は発起人や取締役に選任されれば就任できるため、配偶者であっても代表になることは可能です。
妻(配偶者)を役員にすることは可能?
配偶者を役員にして、会社を設立することも可能です。会社を設立する際の役員は、定款で定めるか、発起人の選任によって決められます。発起人が複数いる場合には、発起人の過半数の決議を経て取締役を選任します。
取締役は誰でもなれるわけではありません。法律で以下の場合は、取締役になれないとされています。
- 法人
- 成年被後見人もしくは成年被保佐人に該当するもの
- 会社法などの会社に関連する法律に違反して、刑の執行が終わり、もしくは刑の執行を受けなくなった日から2年経過していないもの
- 上記以外の規定に違反し、禁固以上の刑を受けて執行を終えていないもの、もしくはその執行を受けることがなくなるまでのもの(執行猶予中はのぞく)
取締役になれない方は上記の通りです。つまり上記に該当しなければ、配偶者であっても取締役になることに問題はありません。また下記に該当する方は、取締役への就任が難しいと思われがちですが、実は可能です。
- 未成年者
- 外国人
- 自己破産者
仮に自己破産をしていても、意思能力は明確で犯罪歴がなければ配偶者であっても取締役になることが可能です。
参照:法令リード 会社法 条文
妻(配偶者)を代表や役員にするメリット
配偶者を代表や役員にするメリットには、以下のようなものがあります。
- 所得分散ができる
- 社会保険に加入できる
- 配偶者名義の資産が増やせる
- 副業を秘密にできる
それぞれの内容を見ていきましょう。
所得分散ができる
配偶者を代表や役員にして報酬を支払うことで、所得分散が可能です。たとえば一人社長の役員報酬が1,000万円だった場合を見てみましょう。
単位:円
役員報酬 | 所得税・住民税 | |
---|---|---|
夫 | 10,000,000 | 1,354,700 |
※配偶者控除を適用、社会保険料等は考慮していません
配偶者にも役員報酬を支払い、所得を分散させた場合は次の通りです。
単位:円
役員報酬 | 所得税・住民税 | |
---|---|---|
夫 | 6,900,000 | 647,300 |
妻 | 3,100,000 | 179,900 |
※社会保険料等は考慮していません
世帯年収は1,000万円で変わりありませんが、夫だけが役員報酬を受け取っていた場合の所得税・住民税が約135万円なのに対し、所得分散させると約83万円に減り50万円以上の節税になります。
社会保険に加入できる
配偶者を代表や役員にすることで、配偶者自身が社会保険に加入できるようになります。そのため専業主婦に比べると、報酬比例部分が上乗せされるため貰える年金が多くなります。一方で配偶者が社会保険に加入することで、会社の負担は増えます。
役員であれば従業員と違って雇用保険・労災保険の適用はありません。社会保険料は労使折半のため負担は増えますが、法定福利費として損金に算入できます。
配偶者名義の資産が増やせる
配偶者が役員報酬を受け取ることで、配偶者名義の資産を増やせます。また、将来相続が発生した際に、名義預金と見られてしまうことを防げます。名義預金とは配偶者が専業主婦だった場合、妻名義の預金であるにもかかわらず夫の財産の一部とみなされてしまい、相続税の課税対象とされてしまう資産です。
配偶者名義の資産が増えることで、贈与税の節税も可能です。次世代への承継として暦年贈与や生前贈与を活用している方は多いですが、配偶者の資産があれば夫婦それぞれの名義で、子や孫への贈与ができます。そのため贈与税の非課税範囲が広がり、贈与税の節税効果が期待できます。
副業を秘密にできる
副業で法人を設立する場合、配偶者を代表にすることでばれにくくなります。法人の代表や役員を配偶者のみにすれば、自分の名前はどこにも出てきません。本業以外の収入を配偶者へ還元することで世帯の収入は維持できますし、自分名義の副業収入をなくせます。
そのため副業で稼いでいる事実について、税金の流れやお金の流れに自分の名前が出ることはなく、本業の勤務先にばれにくくなります。
妻(配偶者)を代表や役員にするデメリット
配偶者を代表や役員にするデメリットには、以下のようなものがあります。
- ほかの従業員が納得しない場合がある
- 役員報酬を変更できない
- 妻の名前が公開される
それぞれの内容を見ていきましょう。
ほかの従業員が納得しない場合がある
配偶者を重要ポストに任命すると、社内に不和が生じてしまう可能性があります。配偶者がこれまで勤務しており誰もが納得する実績がある場合は別ですが、急に代表や役員に就任するとほかの従業員は納得感がありません。
配偶者を優遇していると受け止められれば、労働意欲の低下に繋がりかねません。配偶者を代表や役員にする場合は、勤務実態に見合った報酬にして、ほか従業員も納得できるように透明性を持たせるとよいでしょう。
役員報酬を変更できない
代表や役員に就任した配偶者に支払う役員報酬は原則として事業年度中に変更できません。役員の報酬は損金算入するために規定が設けられており、その1つに定期同額、つまり毎月同じ金額を支給するという内容があります。そのため、たとえ経営状況が悪化したとしても、期首に定めた報酬額を支払わなければなりません。
ほかにも、役員報酬が損金として認められるためには、次のような条件を満たす必要があります。
- 定期同額給与
- 利益連動給与
- 事前確定届出給与
毎月一定額を支払う定期同額給与のほか、利益に関する指標に基づいて支給される利益連動給与、事前に税務署に届け出をした事前確定届出給与などが損金として認められます。
妻の名前が公開される
妻を代表者や役員にした場合、対外的に妻の名前が公開されることになります。代表であれば自宅の住所と名前が登記簿に記載されますし、経営責任なども妻が負うことになります。会社に不祥事などが起きた場合は、会社を代表して妻が矢面に立つことになるでしょう。
また妻がほかの仕事をしている場合は、副業することになってしまいます。妻の勤務先の就業規則で副業禁止規定が定められていれば、規定に抵触するかもしれません。妻が代表になる際には、副業規定などを事前に確認しておきましょう。
妻(配偶者)を代表や役員にする際のポイント・注意点
配偶者を代表や役員する際のポイントや、注意点は次の通りです。
- 勤務実態に見合った報酬にする
- 妻の連帯保証を求められる場合がある
- 非常勤役員での社会保険の対象になる場合もある
それぞれの内容を見ていきましょう。
勤務実態に見合った報酬にする
1つ目の注意点は、勤務実態に見合った報酬にすることです。法人の中には所得分散をねらいとして配偶者などの親族を役員にして、働いていないにもかかわらず給与を支払っている会社もあるかもしれません。しかしこのような報酬は過度な節税であり、税務署から指摘を受けてしまう可能性があります。
勤務実態があった場合でも、過大な役員報酬は損金に算入できないとされています。また配偶者や家族が役員になり、高い給与を貰っていることがわかれば従業員のモチベーション低下にも繋がりかねません。配偶者を代表や役員にする際には、実際の勤務実態に見合った役員報酬額を定めましょう。
妻の連帯保証を求められる場合がある
金融機関から借入を行う場合、代表者の連帯保証を求められることがあります。そのため妻を代表にしていると、妻が連帯保証人にならなければなりません。連帯保証人になるためには、印鑑証明を準備したり平日に金融機関に出向いたりする負担が生じます。
また妻が代表者でも、経営の実権を握っているのが夫の場合は妻だけでなく夫の連帯保証を求められる場合もあります。借入をすると必ず連帯保証が必要になるわけではありませんが、新設や創業間もない場合は求められるケースが多いでしょう。
非常勤役員での社会保険の対象になる場合もある
配偶者を非常勤役員にしても、社会保険の対象になる場合もあります。所得税の負担増加を避けるため、代表者の役員報酬を増やさず配偶者を役員にして、役員給与を支払う場合があります。さらに配偶者を社会保険の被保険者にしないために、配偶者を非常勤役員にするケースも増えています。
しかし非常勤だからといって必ずしも社会保険の対象外とはいい切れません。会社の経営への関与度合いや、勤務実態などを加味して総合的に判断するとされています。役員報酬が少額であっても経営の意思決定に関する重要な立場にいるのであれば、被保険者になってしまう場合もあります。
配偶者を代表にすることで節税できる
会社を設立する際、配偶者を代表や役員にすることは可能です。配偶者を代表や役員にすることで世帯での収入を変えずに、所得分散が可能です。所得分散すると所得税などの節税になりますし、配偶者名義での資産を増やせます。
メリットも多い一方で、配偶者へ高額な報酬を支払ってしまうとほかの従業員のモチベーションが低下してしまう可能性があります。また金融機関から借入する場合は、連帯保証を求められるかもしれません。配偶者を代表や役員にする際には、今回紹介した注意点に気を付けるようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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