• 更新日 : 2024年9月6日

保険代理店の開業に許認可は必要?開業の方法や費用、登録取り消しリスクなどを解説

生活においても事業の経営においても、現代社会で「保険」というシステムは切っても切り離せないものであり、保険代理店は私たちに必要かつ身近な存在です。

この記事では、保険代理店の開業に興味がある方に、必要な許認可や資格の有無を含めた開業までの手続きと流れ、かかる費用や開業後のリスクなどについて詳しく説明します。

保険代理店の開業に許認可は必要?

保険代理店とは、保険加入の希望者と保険会社の間で、保険会社の代理または媒介を行う事業者のことをいいます。

保険代理店が扱う保険には3つの分野があります。第一分野が生命保険、第二分野が損害保険、そして第三分野の医療保険などの第一、第二分野に当てはまらないものです。

以前は一つの保険代理店で、一つの分野しか取り扱えませんでしたが、保険業法の改正により、現在は一つの店で全ての分野の保険を販売できるようになりました。

また、最近では一つの保険会社の専属とならず、複数の保険会社の商品を扱い、訪れたお客が各社の比較選択ができるタイプの保険代理店(乗合代理店)が増えてきています。さらに、損害保険ではインターネットで直接会社と契約するタイプの台頭が目覚ましくなっています。

さて、このように変化を続ける保険や保険代理店ですが、保険代理店を開業するにあたって、許認可等の一定の手続きが必要です。個人事業主として開業するか法人にするのか、一社専属か否か、生命保険か損害保険なのか、あるいは全てのジャンルを扱うのかなどで開業に必要な準備は多少変わってきますが、保険代理店を開業するには、保険業法に基づき、財務局に登録する必要があります。

保険代理店の開業に必要な資格

保険はいざというときに、金銭で人々の生活を支えることにより安心を与えることができる大切なものですから、以下の資格を取得することが必要です。

保険募集人としての教育が必要

保険代理店となるには、顧客に保険および保険商品について正しく伝え、かつさまざまな相談・疑問に対応できる知識が必要であるため、「保険募集人」の資格を取得します。

資格を得るには、生命保険であれば生命保険協会が行う「一般課程試験」に、損害保険であれば日本損害保険協会の「損害保険募集人一般試験」にそれぞれ合格しなければなりません。損害保険の場合、自動車、火災、傷害疾病と複数の商品があり、基礎単位試験に加え、扱う商品単位ごとの試験に合格することが条件です。

いずれも試験を受けるためには、各保険会社が実施する研修をあらかじめ受けなければなりません。研修を受け、きちんと準備をして臨めば、試験の合格率は一般的に8割から9割と言われています。

保険代理店資格

保険募集人資格を得ると保険契約の仲介はできるようになりますが、保険の販売を行うには、保険会社が実施する研修を受け、必要な知識を習得する必要があります。

一社専属の代理店の場合

一つの保険会社と専属で代理店を行う場合、通常は資格に関する教育や研修を全て当該保険会社で受け、合格後に会社と業務(代理店)委託契約を締結して開業することになります。

複数の保険会社の場合

複数の会社の保険商品を取り扱う乗合代理店になるには、より上級の専門課程試験に合格しなければなりません。試験では保険代理業務に関するさらに深い専門知識が問われ、難易度も上がります。

また、代理店で変額保険(保険料を投資信託や外国為替取引で運用する投資型保険)を扱う場合には「変額保険販売資格者」も必要になります。

保険代理店の開業までの流れ

保険代理店は個人でも法人でも行え、保険代理店を開業する場合の流れもほぼ同じです。最も法人の場合は、登記申請を通すための手続きと並行して開業準備を行うため、個人事業主での開業より手間や時間がかかります。

出店場所と代理店の種類の決定

最初にどの分野の保険を扱うか、一社専属か乗合型にするかという、代理店の基礎となる業務形態を決定します。

一社専属型であれば提携契約を結びたい保険会社に問い合わせ、資格試験研修や事業計画などを打ち合わせることで大筋の流れが把握できます。

乗合型の場合、独立して開業するか、大手代理店のフランチャイズ加盟店として開業する、という選択肢がありますどのように開業するかは資金や、保険に関する経験などから総合的に判断しましょう。

出店場所にあたりを付けておくことも重要です。訪問販売を主としないのであれば、やはり人の集まる場所の近くが望ましいでしょう。ふと思い立ったとき、何かのついでに相談に行ける場所である駅前や、人通りの多い商店街の中などがおすすめです。

乗合型のフランチャイズ店は、ショッピングモールの一角に出店していることも多く、自動車損害保険であれば、車関係の事業(ガソリンスタンド経営や中古車販売など)を行っている会社が副業として行うことが多いです

出店資金の確保と事務所の準備

具体的な額については後述しますが、多くの来客が見込める店にするにはそれなりの開業資金が必要となり、従業員の人件費、開業後、経営収入がある程度安定するまでの当座の生活資金(通常5~6か月分)も用意しておかなければなりません。

資格取得と保険会社との契約が完了すると営業開始できるため、事務所となる場所の内外装工事や事務用品・設備の購入、従業員の雇用などは資金調達のめどがついた時点で始めましょう。

ちなみに乗合型の場合、保険募集人資格者2名以上が必要であり、そのうち1名以上は生保専門課程試験に合格していることが求められます。フランチャイズに加盟する場合は、本部からのフォローしてもらえるでしょう。

資格取得と代理店登録

保険会社が指定する研修を受け、各保険の分野で必要な保険代理店資格を取得できたら、保険会社に新規代理店登録の承認を申請します。保険会社の事業計画の審査後、承認を受ければ、会社と業務委託契約を締結します(乗合型の場合、複数の保険会社と契約締結します)。そして、財務局で代理店登録手続きを済ませたら、開業準備終了です。なお、財務局の手続きは通常保険会社を通して行われます。

保険代理店開業までにかかる費用

保険代理店開業までに必要な費用をまとめると、以下のようになります。

  • 事務所(店舗)の取得費用
  • 内外装や備品にかかる費用
  • 広告宣伝費
  • 資格取得に必要な費用
  • 雇用関係費用
  • 会社設立の場合、設立費用
  • その他(フランチャイズ加盟費用など)

新たに店舗を取得して開業する場合、事務所関係の費用が大きくなります。来店型の保険代理店では立地条件がものを言うためある程度の広さや内装を整えることが必要になります。賃貸契約の締結時に100~200万円は用意しておきたいところです。

内外装は店舗の広さ、事務所の規模によりますが、100万円~400万円、設備もパソコン、コピー機、電話、空調、いすや机など、数十万円~200万円みておきましょう。

広告費は開業時にかけるべき大切な費用です。来店型の店舗ではただ待っていても顧客はつかめません。チラシやサイトの開設だけでなく、イベントやセミナーの開催、地域で開催されるイベントへの積極的な参加など、自分の店を知ってもらうために数万円~数十万円はかけ、工夫を凝らしましょう。

従業員の雇用は普通に募集をかけるほか、経験豊富な人材を求める場合、人材紹介業へ登録する方法があります。この場合、雇用が決まると仲介手数料が発生します。

このほか、新たに会社を設立する費用などを考えると、保険代理店開業までの費用は、一般的に300万円~1,000万円ほどかかります。

保険代理店の登録取り消しリスク

保険代理店は登録を取り消されることがあります。どのような場合に登録を取り消されるかについては、保険業法第307条に規定があります。

例えば、

  • 保険募集人が破産したり、禁固以上の刑に処せられたりしたとき
  • 保険募集に関し著しく不適当な行為をしたと認められるとき
  • 保険募集人や保険代理店の事務所などの所在地が確認できず、その旨を公告して30日経過したのに当該募集人や代理店から申し出がないとき

などのケースがあげられます。

登録が取り消されると、その後3年間登録ができず、当然保険販売もできなくなります。

記憶に新しい中古車販売大手ビッグモーターによる組織ぐるみとされる自動車保険の保険金不正請求事件ですが、金融庁は2023年11月に損害保険代理店の登録取り消し処分を行いました。下請け業者に圧力をかけて保険に加入させる事例が100件以上判明するなど「保険募集に関し著しく不適当な行為」に相当するとされたからです。

これが初めての損害保険代理店登録取り消し事例となります。ですから普通に営業を行っている限り、登録取り消しのリスクの心配は不要でしょう。

保険代理店開業には複数の方法あり!市場調査を忘れずに

保険代理店の開業には財務局に登録する必要があり、保険募集人資格の取得と代理店としての登録が必要です。出店しようとする場所や地域により顧客層やニーズを見極め、保険の種類や専属型か乗合型かのタイプなどを選択することになるため、まずはしっかりと市場調査を行いましょう。


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