• 更新日 : 2024年9月6日

日本政策金融公庫の創業融資とは?制度融資との違いや支援内容まとめ

日本政策金融公庫の主な創業融資は、「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」「再挑戦支援資金」の3つです。無保証・無担保や低い金利、長期借入ができる点など、創業予定の方や創業から間もない事業者が利用しやすい制度となっています。本記事では、それぞれの詳しい内容と申請のコツ、制度融資との違いを見ていきましょう。

日本政策金融公庫の創業支援とは?

日本金融政策公庫の創業支援の融資制度には、国民生活事業の「新規開業資金」と、中小企業事業の「女性、若者/シニア起業家支援資金」「再挑戦支援資金」があります。それぞれどのような内容なのか、以下で詳しく見ていきましょう。

新規開業資金

新規開業資金は、新たに事業を始めようとしている方や、事業開始後7年以内の方が利用できる融資制度です。設備資金と運転資金の両方に使うことが可能です。女性や35歳未満または55歳以上の方、廃業歴等があり創業に再チャレンジする方、中小会計を適用する方は、特別利率で利用できます。いずれの場合も創業計画書を提出する必要があり、事業計画が適正で実現の可能性が高いかどうかを確認されます。

女性、若者/シニア起業家支援資金

女性、若者/シニア起業家支援資金は、女性や35歳未満または55歳以上の方が利用できる融資制度で、新たに創業する方や事業開始後7年以内の方が対象です。前述した新規開業資金が「国民生活事業」の1つであるのに対し、こちらの融資制度は「中小企業事業」の1つであり、限度額が異なります。設備資金と長期運転資金に利用が可能です。

再挑戦支援資金

再挑戦支援資金は、廃業歴のある方が再び事業に挑戦することを支援する融資制度です。新規に開業する方や開業後7年以内の方が利用でき、過去の廃業時の状況に関する条件もあります。設備資金と運転資金に利用でき、それぞれの返済期間を20年以内・15年以内と長期に設定できる点が特徴です。「中小企業事業」の1つであり、限度額は高額になっています。

日本政策金融公庫の創業融資の特徴

日本政策金融公庫の創業融資制度には、小規模のスタートアップ事業者にとって利用しやすい特徴があります。とくに、これから創業する場合や創業から間もない場合は、さらに優遇されています。以下でそれぞれ見ていきましょう。

無担保・無保証で受けられる

新規でこれから創業する事業者や、2期分の税務申告が終わっていない事業者が新規開業資金を利用する場合でも、融資の際に担保や保証人が原則不要です。万が一事業が軌道に乗らず、多くの負債を抱えて倒産してしまった場合でも、個人の財産から弁済したり保証人が負債を肩代わりしたりする必要がありません。

「うまくいかなかった場合はその後の生活が苦しくなるのでは」と不安のある方も、無担保・無保証であることによって創業に向けて前向きにチャレンジできるでしょう。

金利が低めに設定されている

「新規開業資金」をはじめとする日本政策金融公庫の創業融資は、民間の金融機関と比べて低めの金利が設定されています。さらに、創業予定の人や創業して2期以内の事業者は利率が0.65%引き下げられ、より低金利での借り入れが可能です。加えて雇用の拡大を目指す場合は0.9%の引き下げとなり、有利な条件で借り入れができます。

長期間での返済が可能

日本政策金融公庫の融資制度には、長期間での返済ができるものも多くあります。前述した3つの創業融資制度では、設備資金の返済期間は最長で20年に設定可能です。運転資金の返済期間も、「新規開業資金」で10年以内、「再挑戦支援資金」で15年以内と長期に設定できます。返済期間が長くなると、ひと月ごとの返済額も抑えられます。計画的に少しずつ返済していきたいという希望が叶うでしょう。

日本政策金融公庫の創業融資で受けられる限度額

前述した3つの創業融資の限度額は、それぞれ以下のようになっています。

創業融資の種類融資限度額
新規開業資金7,200万円(うち運転資金4,800万円)
女性、若者/シニア起業家支援資金
  • 直接貸付:7億2,000万円
  • 代理貸付:1億2,000万円
再挑戦支援資金7億2,000万円(直接貸付)

なお、中小企業事業の融資には「直接貸付」と「代理貸付」があります。

直接貸付は、日本政策金融公庫の支店に直接申し込むものです。相談・申し込みから審査、口座への送金に至るまで、すべて支店にて行います。

代理貸付は、民間金融機関を通じて申し込むものです。日本政策金融公庫の融資を利用できる点は共通していますが、融資までの一連の手続きは代理店となる民間金融機関が行います。日頃から利用している金融機関が窓口となるため、利便性の高さが特徴です。

日本政策金融公庫から創業融資を受けるコツ

日本政策金融公庫でスムーズに創業融資を受けるためには、押さえておきたいポイントもあります。以下では、創業融資の審査に通過するためのコツを5つ見ていきましょう。

自己資金を確保する

日本政策金融公庫の創業融資をスムーズに受けるには、ある程度の自己資金を確保しておくと安心です。自己資金の目安金額は公表されていないものの、多い方が信用度は増すでしょう。創業資金総額の3分の1ほどは自己資金を用意しておきたいところです。

根拠を示して説得力のある事業計画を作成する

融資を返済できるとみなしてもらえるよう、説得力のある事業計画を立てることも、融資の可否に大きくかかわります。日本政策金融公庫の創業融資を受けるためには、創業計画書を提出しなければなりません。実現の可能性が高い事業計画を立てて、十分な利益を確保できることをアピールすることが大切です。過去のデータは矛盾がないよう正確に記載し、実績や現状を踏まえて現実的な展望を示しましょう。

事業の継続性を示す経験やスキルをアピールする

融資を受けるためには、事業の安定性や継続性を示すことも大切です。創業当初は事業に関する実績が少なく経験年数も浅いため、事業を続けていけることを根拠とともにアピールすることが必要です。代表者自身の経歴や実績、スキルの中で、事業に結び付けられる要素を検討しましょう。

支払いの遅延や滞納がないよう日頃から注意する

日頃から、税金や公共料金の滞納、返済の遅延といった支払いに関するトラブルがないようにしておくと安心です。クレジットカードやカードローンの支払遅延や滞納の履歴があることによって、審査に落ちてしまうことも考えられます。とくに5年以内に債務整理や自己破産を行っている場合は、個人信用情報に履歴が残っているため、審査が厳しくなる傾向にあります。

面談でしっかりと説明できるよう準備しておく

審査における公庫職員との面談の中で、事業について十分な説明をすることも大切です。融資の際は書類の提出だけでなく、面談も必要です。書類に記載した内容を把握しておくことに加えて、詳しい説明や補足を自分の言葉で話せるように準備しておくとよいでしょう。

日本政策金融公庫から創業融資を受ける流れ

日本政策金融公庫から創業融資を受ける一般的な流れは、以下の通りです。

  • 問い合わせ・相談
  • 申し込み・書類の提出
  • 面談
  • 審査
  • 結果通知・融資
  • 返済

相談や問い合わせは、専用ダイヤルにてできます。事前に予約することで、オンラインや窓口での相談も可能です。

融資の申し込みは、インターネットで行えます。24時間365日いつでも申し込めるため、忙しい創業期には便利です。

書類提出や公庫職員との面談を経て審査に入り、融資が決定した場合は契約手続きの案内に従いましょう。手続き完了後に、指定の口座に融資金が振り込まれ、返済開始となります。

日本政策金融公庫に提出する必要書類

日本政策金融公庫の融資を受ける際に必要な主な書類は、以下の通りです。

  • 専用フォーマットによる創業計画書
  • 代表者の運転免許証またはパスポート
  • 見積書(設備資金の融資を受ける場合)
  • 履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合)

このほか、事業者の業種や融資の内容などによって提出書類は異なります。

日本政策金融公庫から創業融資を受ける際に役立つテンプレート

日本政策金融公庫の創業融資を受けるためには、専用フォーマットによる「創業計画書」を提出しなければなりません。また、ご自身で事業計画を作成する必要もあるでしょう。ここでは、日本政策金融公庫の創業計画書と事業計画書のテンプレートをご紹介します。

日本政策金融公庫の創業計画書

日本政策金融公庫においては、事業計画書はすでにビジネスを行っている方が、そのビジネスの実績も踏まえて作成する書類を指します。一方で、創業計画書は、これから事業を立ち上げる経営者が、事業説明を行うための資料であり、融資を申し込む際に提出する必要がある書類です。

創業計画書を作成することで、事業の強みや弱み、将来の見通し、自身の経歴やスキルを客観的に把握する良い機会となります。

日本政策金融公庫の創業計画書」は、日本政策金融公庫のWebサイトでダウンロードできます。

参考:日本政策金融公庫  各種書式ダウンロード

事業計画書のテンプレート

創業計画書と似たものには「事業計画書」があります。まずは自分で事業計画書を作成してみることで、事業への思いや意気込み、将来の展望などを再確認でき、創業計画書の記載に役立てられるでしょう。

事業計画書のテンプレートは、以下からダウンロード可能です。事業の内容を再確認し、将来の展望を考えるにあたって役立つため、ぜひご利用ください。

事業計画書のテンプレートのダウンロードはこちら

創業融資と制度融資との違い

創業融資を受ける際の選択肢には、日本政策金融公庫の創業融資の他にも、自治体が行っている「制度融資」があります。制度融資とは、地方自治体が主体となり金融機関と信用保証協会と提携して行う融資制度です。

申し込みの条件や使いやすさの面では日本政策金融公庫のメリットが多いものの、事業者によっては制度融資が適している場合もあるかもしれません。以下では、それぞれの融資についてメリット・デメリットを見ていきましょう。

日本政策金融公庫の創業融資のメリット・デメリット

日本政策金融公庫の創業融資を受けるメリットには、以下のものがあります。

  • 担保や保証人が不要
  • 借入限度額が大きい
  • 申請から融資までの期間が短い

一方で、デメリットは以下の通りです。

  • 支店や担当者を選べない
  • 審査に落ちると6か月の間は再申請ができない

無担保・無保証で借入ができるため、万一の場合に個人の負担とならず、融資を前向きに考えられるでしょう。申し込みから融資の実施までの期間が短く、スムーズに融資を受けられる点も、創業当初の不安を軽減してくれます。

地方自治体の制度融資のメリット・デメリット

地方自治体が主体の制度融資を受けるメリットには、以下のものがあります。

  • 信用保証協会が信用を供与するため審査に通過しやすい
  • 利率が低めに設定されている
  • 利息の補助を受けられる場合がある

一方で、デメリットは以下の通りです。

  • 保証人が必要な場合がある
  • 融資までに時間がかかる
  • 自治体によって融資の制度が異なる

制度融資では信用保証協会の保証を受けられる場合が多いため、融資に必要な信用力が高まります。ただし、制度融資は自治体によって異なり、日本政策金融公庫に比べると手続きや審査に時間がかかる傾向にあります。

創業するなら日本政策金融公庫の融資を検討しよう

日本政策金融公庫の創業融資制度は複数あるため、事業者に合った融資を選べます。無担保・無保証での借入や長期返済が可能であるなど、見通しを立てにくい創業のタイミングでも借りやすい条件がそろっています。これから創業したい方や、創業間もない事業者は、日本政策金融公庫の創業融資をぜひ検討してみてください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事