- 作成日 : 2024年12月13日
個人事業主が資金調達する方法は?出資元の選び方や審査のポイントを解説
個人事業主として開業するには、資金が必要です。自己資金がなければ、外部から資金調達しなければなりませんが、どのようにして資金を集めればよいのでしょうか。
本記事では、個人事業主が資金調達する方法について解説します。個人事業主が利用できる出資元の選び方や審査のポイントも紹介しますので、開業を検討中の人は参考にしてください。
目次
個人事業主が資金調達を検討すべきケース
個人事業主が資金調達を検討すべき主なタイミングは、次の通りです。
- 開業時
- 事業拡大・新規事業の立ち上げ時
- 運転資金の確保
各ケースについて解説します。
開業時
開業時は、店舗や事務所テナントの賃借料や事業に必要な機械・事務機器の購入費用など、大きな初期費用が掛かるため資金調達の検討が必要です。事前に準備した自己資金で不足する分は、外部から資金調達をしなくてはなりません。
初期費用には、広告宣伝費や仕入れ代金、人件費など初期の運転資金も含めて検討しましょう。開業当初は十分な利益が上げられないことも想定して、余裕をもって資金調達することが重要です。
事業拡大・新規事業の立ち上げ時
既存事業が軌道に乗って事業を拡大する場合や、新規事業を立ち上げるときは、新たな設備や機械を購入したり、人材を採用・教育・継続雇用したりする資金が必要です。
既存事業が順調で利益が上がっていれば、融資を受けやすくなるなど開業時より資金調達は容易になるでしょう。ただし、開業時の借り入れと合わせて返済額が大きくなる場合は、資金繰りにも注意が必要です。
運転資金の確保
運転資金とは、事業を継続的に運営していくために必要な資金です。利益が上がっていても支出が先行して資金繰りが厳しくなることが予想される場合、融資などで運転資金を確保する必要があります。売上金の回収に時間がかかる事業では、手元資金を手厚くするといいでしょう。
運転資金には、日常の事業活動で発生する賃貸料・材料費・人件費・光熱費・通信費などがあります。また、運転資金は変動費と固定費に大別できます。
- 変動費:材料費や運送費など売上の増減によって変動する費用
- 固定費:人件費や家賃、リース料など売上に関係なく発生する費用
個人事業主が資金調達をする方法
個人事業主が資金調達をする主な方法は次の通りです。
- 金融機関から融資を受ける
- 出資してもらう
- 知人・親族から借り入れる
- クラウドファンディング
- 助成金・補助金
各方法について解説します。
金融機関からの融資を受ける
個人事業主が資金調達する一般的な方法は、金融機関からの融資です。金融機関はメガバンクや地方銀行、信用金庫などさまざまですが、比較的低金利で融資が受けられる日本政策金融公庫などの公的機関の利用がおすすめです。
融資を受けた公的機関や金融機関からアドバイスを受けられたり、審査によって事業計画の妥当性が判断できたりするなどのメリットもあります。
出資してもらう
出資とは、投資家がビジネスの成長性に期待して、事業者に資金提供を行うことを指します。投資家から出資を受けられれば、返済不要の資金を調達できます。
個人事業主にとって出資してもらうことには、次のメリットがあります。
- 出資金の返済や利息の支払いが不要である
- 担保や保証人なしで資金を調達できる
- 投資家から事業への援助が期待できる など
ただし、魅力のある商品やサービス、ビジネスモデルなどがないと、出資してもらうことは難しいでしょう。また、投資家による経営介入によって経営の自由度が失われるなどのデメリットもあります。
知人・親族から借り入れる
資金調達には、知人や親族から借り入れる方法もあります。個人的な信頼関係による借り入れであるため、「金利が低い(または金利なし)」「審査や面倒な手続きが不要」などのメリットがあります。
ただし、「融資額が限られる」「贈与とみなされる可能性がある」などのデメリットもあります。また、事業に失敗して返済できないと、知人や親族の信頼を失うリスクもあるでしょう。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを使って不特定多数の人々から少額ずつの資金を調達する仕組みのことです。クラウドファンディングの主な種類は、次の通りです。
- 寄付型:支援者がお金を寄付する仕組み
- 融資型:個人投資家から小口の資金を集め融資する仕組み
- 投資型:個人投資家へ非公開株を提供する代わりに資金を募る仕組み
自分でお金を集める仕組みを作る必要があり、必要な資金が集まらないリスクもあるため、難易度の高い資金調達方法と言えるでしょう。
助成金・補助金
助成金・補助金とは、一定要件を満たす個人事業主などに国や地方自治体から交付される資金のことです。融資と異なり交付されたお金は返済不要ですが、要件を満たさないと利用できないというデメリットもあります。
地方自治体の助成金や補助金は、所在地の自治体のホームページなどで確認できます。国の主な制度は、厚生労働省の助成金と経済産業省の補助金です。
- 厚生労働省:「働き方改革推進支援助成金」など雇用や労働環境に関する助成
- 経済産業省:「IT導入補助金」など特定事業や生産性向上のための設備投資に関する補助
参考:厚生労働省 「労働条件等関係助成金」のご案内、経済産業省 人気の補助金
個人事業主が利用できる金融機関の融資
個人事業主が利用できる主な金融機関の融資は次の通りです。
- 日本政策金融公庫
- 制度融資
- 信用金庫や信用組合
各融資の特徴と、金融機関の融資審査に通過するためのポイントを解説します。
日本政策金融公庫
融資で資金調達するときは、政府系金融機関である日本政策金融公庫を検討してみましょう。
日本政策金融公庫の「一般貸付」では設備資金や運転資金として最大4,800万円の融資が受けられます。返済期間は最大10年(特別設備資金は7,200万円まで、返済期間20年以内)と長く、一般的に民間金融機関より金利も低いところがメリットです。
ただし、審査期間が長めであるため、融資実行までのスケジュールをきちんと確認するといいでしょう。
制度融資
制度融資とは、自治体と金融機関、信用保証協会が連携して提供する融資制度のことです。個人事業主など利用者が使いやすいように、自治体から利息や保証料が補給されるケースもあります。
制度融資の主なメリットは、「金利が低い」「長期間の借入れが可能」「審査のハードルが低い」などです。信用保証協会が関わるため、返済が困難になったときに代位弁済してもらえる半面、審査期間が長くなりがちです。
信用金庫や信用組合
信用金庫や信用組合などの民間銀行から、融資を受ける方法もあります。
民間銀行の融資方法は、「プロパー融資(金融機関が直接融資)」と「保証付き融資(信用保証協会が保証)」の2種類です。プロパー融資は審査が厳しく、保証付き融資は金利以外に保証料の支払いが必要であることに注意が必要です。
金融機関の融資審査に通過するためのポイント
金融機関の融資審査に通過するための主なポイントは、次の通りです。
- 一定程度の自己資金を準備
- 資金の使途を明確にする
- 説得力のある事業計画書を作成する
- 既存事業で追加融資を受ける場合(開業以外)、経営状態がいい、融資をきちんと返済している、税金をきちんと納付している
融資を申請した個人事業主の信頼度や返済能力などが、審査されます。
主な出資元と選定のポイント
出資とは、投資家や投資会社が将来的な利益を見込んで、成長見込みのある事業に対して資金提供を行うことをいいます。主な出資元は、次の通りです。
- エンジェル投資
- ベンチャーキャピタル
個人事業主が出資を受けるには、原則として法人化する必要があります。各出資元の特徴と選定のポイントを解説します。
エンジェル投資
エンジェル投資とは、起業して間もない企業に個人投資家が事業資金を出資することです。個人投資家は投資先から株式や配当を受け取り、投資先が成功すれば大きなリターンが期待できます。
事業主は、返済不要の資金を得られるとともに、事業への支援も期待できます。ただし、投資家は企業の将来性を見込んで投資するため、魅力ある商品やサービス、ビジネスモデルなどがないと投資してもらえません。
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルとは、未上場の新興企業(ベンチャー企業)に出資して株式を取得し、企業が株式公開したときに大きな値上がり益の獲得を目指す投資会社や投資ファンドのことです。
事業主は、投資会社などの資金を受け入れて事業資金に当てます。投資資金は返済不要であるうえ、ベンチャーキャピタルが積極的に事業活動を支え、事業主が苦手な分野についても知識や経験、ノウハウを提供することも期待できます。
ただし、ベンチャーキャピタルは一定期間内での成果を求めるため、経営に介入することや、成果を急ぐケースもあることを覚えておきましょう。
出資者を選ぶポイント
エンジェル投資家は個人であるため、投資に不慣れな人やトラブルを起こしがちな人もいます。「投資経験や実績が十分か」「どのような事業支援を受けられるか」「投資目的は何か」などを面談時に判断します。可能な限り、投資家の情報を収集することも重要です。
ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合、過去の投資実績などから経営ノウハウやサポート体制などを確認してみましょう。ベンチャーキャピタルは利益を上げるために積極的に経営に参加することが予想され、サポート内容が事業に影響することもあるためです。
個人事業主が知人・親族から資金調達する際の注意点
個人事業主が知人や親族から資金調達するときの主な注意点は、次の通りです。
- 借用書や金銭消費貸借契約書を作成する
- 贈与にあたる場合は贈与税を申告する
各注意点について、解説します。
借用書や金銭消費貸借契約書を作成する
知人・親族から資金を借りるときは、借用書や金銭消費貸借契約書の作成をおすすめします。借用書などを作成する主な目的は、次の通りです。
- 融資額や返済方法を明確にして後々のトラブルを防ぐ
- 税務署から贈与と判断されないようにする
贈与にあたる場合は贈与税を申告する
知人・親族から事業資金として贈与を受ける場合、1年間の贈与額の合計が110万円を超えると税務署への申告が必要です。申告時期は、贈与があった年の翌年2月1日から3月15日までです。110万円超過分に対して、贈与税が課税されます。
贈与税を申告しないと、本来の税額に次が加算される可能性があります。
- 延滞税:納税が遅れた期間に対する利息
- 無申告加算税:期限までに申告がなかったことに対するペナルティ
- 重加算税:隠蔽や偽装などを行い意図的に無申告または過小申告した場合に課税
適切な資金調達先の選び方
起業時に金融機関から融資を受ける場合、次の手順で金融機関を選びます。
- 事業に必要な融資額や返済期間など条件を満たす金融機関をピックアップする
- 「金利が低い」「柔軟に返済できる」「審査期間が短い」などニーズに応じて金融機関を絞り込む(または優先順位をつける)
- 金融機関の担当者と面談して詳細な条件を確認して決定する
融資を受ける場合でも、受給できる助成金や補助金がないかどうかを確認します。助成金や補助金は返済不要であるため、受給要件を満たせば利用を検討してみましょう。
事業が軌道に乗り事業を拡大するときは、クラウドファンディングの利用も検討してみましょう。好調な事業実績や将来性を投資家に示せれば、出資してもらえる可能性もあります。融資と比較して難易度が高いため、専門家に相談してみましょう。
資金調達の方法と特徴を理解して最適な調達先を選択しよう
自己資金で賄えない事業資金は、金融機関からの融資や出資の受け入れ、クラウドファンディングなどで調達します。新規開業時は、金融機関からの融資を受け資金調達するのが一般的です。事業が軌道に乗り信用力が高まると、出資の受け入れなど選択肢が広がります。
資金返済の要・不要や返済条件は、事業に大きく影響します。資金の調達方法ごとの特徴をよく理解して、事業目的や成長段階に応じた最適な資金調達方法を選択しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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