- 更新日 : 2022年2月18日
会社設立時の株主総会とは?役員報酬の決め方も解説|議事録ひな形付き
株式会社設立時は定款の設定や役員の報酬など、決定すべきことが数多くあります。設立時に決定すべきことを株主に伝え、承認を得る場が「株主総会」です。
今回は、株式会社設立時の株主総会について詳しく解説していきます。通常の株主総会との違いやどのようなことを決議するのかだけでなく、開催のタイミング、議事録の作成やその書式についてもご紹介していきます。
目次
会社設立時は株主総会の開催が必要
会社設立時は株主総会を開催する必要があります。正確には「創立総会」と呼ばれるものです。創立総会は会社の発起人が呼びかけて開催されます。開催を通知する時期は一般的に2週間前までです(非公開会社の場合は1週間前までで可)。通知には次の項目を記載します。
- 日時
- 場所
- 開催の目的
- 設立時株主が書面で議決権行使ができる旨
- 設立時株主が電磁的方法で議決権行使ができる旨
- 会社法施行規則第9条で定められている項目
議決権行使の方法については、自社で決めた方法(書面か電磁的方法、もしくは両方)を通知するようにしてください。
設立総会では主に以下の点について決議を行います。
- 設立に関する報告
- 定款の承認
- 取締役の選任
- 役員報酬
- 発行できる株式総数の決定 など
誰を取締役に任命するか、役員報酬、そして定款などはある程度発起人側で決定し、それを承認してもらうという方法で決定します。内容によっては否認されることもあります。また、会社設立自体を否認される場合があることも覚えておきましょう。
そもそも株主総会とは?
設立総会も含め、そもそも株主総会とは何なのか、目的や召集時期、決議の種類について確認しておきましょう。
株主総会の目的
株式会社には「株主」が存在します。株主は会社に出資している人たちです。株主は出資のお返しとして以下の2つの権利を持っています。
- 自益権:会社から利益を受ける権利
- 共益権:会社の重要な決定に参加できる権利
自益権の代表的なものは「株式の配当」です。共益権は会社の重要事項を決定する場所=「株主総会」の議決権として受け取ることができます。
株主総会は会社の重要な事項を決定する場であるのと同時に株主が権利を行使できる場といえるのです。なお、議決権は「1株=1議決権」となっており、株式を多く保有する株主ほど、発言力があるということになります。
株主総会の招集時期
株主総会の招集時期は株主総会の種類により異なります。なお、招集通知を送る期限は会社設立時に召集する「創立総会」同様に開催の2週間前までとなっています。非公開会社など、株式の譲渡に制限がある会社の場合は1週間前まででも構いません。
株主総会を行う時期についてもチェックしておきましょう。
定時株主総会
会社法第296条では定時株主総会について以下のように定められています。
定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
法律では事業年度の終了から何ヵ月後までに行わないといけないという決まりはありません。しかし、定款で「事業年度末日の翌日から〇ヵ月以内」と定めている場合はそちらに従うことになります。ただし、会社法第124条2項によれば、基準日に株主名簿に記載され又は記録されている株主に対し、議決権や配当を受ける権利などを、基準日から3ヵ月以内に行使させる必要があるとされていることから、多くの企業では事業年度終了後3ヵ月以内に株主総会を開催するケースが一般的となっています。
定時株主総会で議題となるのは主として以下の項目です。
- 当期事業年度の計算書類(いわゆる決算書)の承認
- 事業報告
- 剰余金の配当について
- 役員の選任(退任する役員がいる場合)
- 定款の変更
臨時株主総会
事業年度が終わるごとに召集が義務付けられている定時株主総会に対し、臨時株主総会はいつでも開催が可能です。臨時株主総会での議題はケースバイケースです。たとえば、以下の項目です。
- 役員の選任(役員の死亡等により欠員が生じた場合)
- 既存株主に不利益を及ぼすような新株発行
- 合併等の企業結合が生じる場合
定時株主総会が会社法で開催を義務付けられているのに対し、臨時株主総会の開催は義務ではありません。必要に応じて開催されます。
株主総会の決議
株主総会では会社の重要事項の決議が行われます。「普通決議」「特別決議」「特殊決議」の3つの種類がありますので、それぞれ特徴を押さえておきましょう。決議される項目は会社法よって定められています。
普通決議
普通決議では次の項目の決議を行います。
充足数や決議要件は会社法第309条により以下のように定められています。
充足数 | 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席 |
決議要件 | 出席した当該株主の議決権の過半数の賛成による |
特別決議
特別決議では次の項目の決議を行います。
- 資本金の減額
- 役員の責任の軽減
- 株式の併合
- 定款の変更
- 事業譲渡
- 解散や吸収合併 など
充足数や決議要件は会社法第309条により以下のように定められています。
充足数 | 株主総会で議決権を行使できる株主の議決権の、過半数を有する株主が出席 |
決議要件 | 出席株主の議決権の3分の2以上が賛成による |
特殊決議
特殊決議では次の項目の決議を行います。
- 定款の変更(公開会社から非公開会社への変更)
- 人的属性に基づき株主の権利を取扱う定款の変更
特殊決議の場合は、頭数(株主数)と議決権両方が揃うことが必要です。また、決議内容によって必要な賛成数が異なります。
公開会社から非公開会社への変更 | 議決権を行使できる株主の半数以上が賛成、および当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要 |
人的属性に基づき株主の権利を取扱う定款の変更 | 総株主の半数以上が賛成、および総株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要 |
設立時株主総会では役員報酬を決定
株主総会について把握したところで、設立時株主総会「創立総会」で決定することについても触れておきます。
創立総会で決定することで重要なものの一つに「役員報酬」があります。多くの新設法人では役員の報酬を毎月定額で支払われる「定額同額給与」にしていますが、損金として認められるためには創立総会でその額を定めておく必要があるのです。
なお、役員報酬の改定は期首から3ヵ月以内に1回だけ認められています。その時期を過ぎてしまうと増額した部分については損金扱いができません。
役員報酬の決定手続きについてはこちらも参考にしてください。
設立時株主総会後は議事録を作成
設立時株主総会でも通常の株主総会と同様に議事録の作成が必要です。どのように作成すればいいのかを確認しておきましょう。
株主総会議事録の書き方
株主総会議事録の書式に法的な決まりはありませんが、次のように作成するとよいでしょう。
内容も確認しておきましょう。
①日時、開催場所、出席株主数などの概要を記載します。
②発起人総代や発起人の氏名を記載します。今回の総会には何名出席したかも記載してください。
③開会の宣言と議長選任について記載します。
④一つひとつの議案について承認(もしくは不承認)されたか、そして承認(不承認)に至る経緯についても記載します。(「満場一致で」など)
役員報酬についても議題に挙げることを忘れないでください。
⑤閉会宣言と議事録の作成を行った旨の記載、日付と議事録作成者の署名捺印を入れてください。
株主総会議事録のひな形・テンプレート(ダウンロード可)
会社設立時の株主総会「創立総会」の議事録テンプレートはこちらにも準備しています。これから総会を開催するのであればぜひ利用してください。
▼無料ダウンロードはこちら▼
株主総会議事録のひな形・テンプレート
- 日時 令和〇年〇月〇日(〇曜日)
午前〇時〇分より午前〇時〇分迄 - 場所 〇株式会社創立事務所
〇〇県〇〇市〇〇1丁目〇番 - 出席株主数
設立時発行株式の総数 〇〇〇株
設立時株主の総数 〇名
この議決権の数 〇〇個
本日出席設立時株主数 〇名
この議決権の個数 〇〇個 - 出席発起人
発起人総代 〇田〇男
発起人 〇山〇子
発起人 〇野〇太
発起人数 〇名中〇名出席
上記のとおり株式引受人が出席し、創立総会は適法に成立したので、発起人〇山〇子は開会を宣し、上記のとおり定足数に足る設立時株主の出席があったので、本創立総会は適法に成立したと述べ、 議長の選任を諮り、発起人〇野〇太が議長に選任され、定刻議案の審議に入った。
第〇号議案 創立事項の報告の件
発起人総代〇田〇男は、発起人を代表して、当会社の設立経過を説明した後、創立に関する事項を詳細に報告したところ、満場一致でこれを承認した。
第〇号議案 定款承認の件
議長は定款を朗読し、それを議場に諮ったところ、満場一致でこれを原案とおり承認可決した。
第〇号議案 役員報酬承認の件
議長は、役員の報酬総額について年額金○○万円以内とし、各役員に対する具体的な配分方法は取締役会に一任すること、監査役の報酬額は年額○○万円以内とすることを提案し、それを議場に諮ったところ、一同これを承認可決した。
以上をもって本総会の議事が終了したので、議長は閉会の挨拶を述べ、○○時○○分散会した。
上記の議事の経過の要領およびその結果を証するため議事録を作成し、本議事録作成者が記名押印する。
令和○年○月○日
株式会社☆☆☆☆
代表取締役 ○○ ○○ 印
※内容は適宜変更してご利用ください。
設立時株主総会の開催を忘れずに行いましょう
会社設立時には設立発起人の呼びかけで「創立総会」といわれる株主総会を開催する必要があります。創立総会では発行できる株式総数の決定、定款の承認、取締役の承認および役員報酬の決定なども行います。
この中でも覚えておきたいのが役員報酬の決定についてです。創立総会で決められた役員報酬を改定できるのは期首から3ヵ月以内に1回のみとなっており、3ヵ月を過ぎてしまうと増額した部分については損金扱いができません。そのため、慎重に決定する必要があるのです。
また、創立総会の内容は議事録に残しておく必要もあります。書式は特に定まっていませんが、日時や開催場所、発起人名や議題などを詳細に残しておかないとならないため、作成する前に書くべき事項を必ず確認しておいてください。
よくある質問
会社設立の際には株主総会が必要?
必要です。会社設立時の株主総会では、「発行できる株式総数の決定」「定款の承認」「取締役の承認」「役員報酬の決定」などが決議されます。詳しくはこちらをご覧ください。
議事録は必ず残さないといけない?
株主総会を開催した場合、議事録は残す必要があります。一つひとつの議案についても詳細に記録を残してください。詳しくはこちらをご覧ください。
役員報酬はいつでも改定可能?
役員報酬は期首から3ヵ月以内に1回のみ改定ができます。この時期を過ぎて改定を行った場合、増額分は損金に算入されません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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