• 作成日 : 2023年2月16日

経営破綻とは?倒産との違いや原因、必要な手続き、予防策を解説!

経営破綻とは?倒産との違いや原因、必要な手続き、予防策を解説!

何らかの理由により事業活動が停止し、会社の経営が立ち行かなくなった状態を「経営破綻」と呼びます。帝国データバンクによると、2021年の1年間で6,015社が経営破綻に追い込まれています。1日あたり16.5件の企業が経営破綻した計算ですが、そもそも経営破綻とは何でしょうか。経営破綻は「倒産」「民事再生」「破産」と何が違うのでしょうか。

本記事では経営破綻の基本的な情報について、経営破綻に陥った事例や経営破綻に陥らないための予防策などとともに解説します。

経営破綻とは?

経営破綻(けいえいはたん)は、何らかの理由により事業活動が停止し、会社の経営が立ち行かなくなった状態を表す言葉です。一般的には「銀行取引停止処分を受ける」「内整理を行う」「会社更生手続開始を申請する」「民事再生手続開始を申請する」「破産手続開始を申請する」「特別清算開始を申請する」のいずれかの状態に陥った場合に経営破綻とされます。

経営破綻と倒産の違いは?

「経営破綻」と「倒産」(とうさん)は、ほぼ同じ意味で使われています。以前は「倒産」という言葉が多く使われていましたが、そのインパクトや社会に与える影響力の強さから、最近は「経営破綻」という言葉が使われるケースが増えているようです。

なお「倒産」は正式な法律用語ではなく、株式会社東京商工リサーチが1952年から「全国倒産動向」の集計を開始したことで広く知られるようになったといわれています。

経営破綻と破産の違いは?

「破産」(はさん)とは会社が債務超過や支払不能に陥った時に、裁判所が会社の財産を処分してすべての債権者に配当して公平な清算を図り、かつ債務者の経済的再生を図ることを目的とする法的手続きのことです。破産手続開始の申請は債権者、債務者のどちらでもでき、債務者による破産申立を「自己破産」と呼びます。
個人の破産の場合は免責によって債務がなくなりますが、法人の破産の場合は免責という概念はなく、法人が消滅することによって債務が消滅します。

経営破綻の原因は?

会社が経営破綻する原因はさまざまですが、ほとんどのケースにおいて買掛金などの支払や借入金の返済ができなくなり、事業活動の停止を余儀なくされます。
また、仕入代金や給与を支払えなくなり、オペレーションが継続できなくなるケースもあります。いずれもキャッシュの枯渇が原因ですが、何がキャッシュの枯渇をもたらすのでしょうか。

経営戦略の失敗

第一に考えられるのは、広い意味での経営戦略の失敗です。中小企業は大企業と比べて経営のリソース乏しく、最初からハンディキャップを負っています。ヒト・モノ・カネ・情報のいずれもが乏しい状態で、適切かつ的確な経営戦略の策定と実行が求められますが、常に正しい判断を下すことは極めて困難です。経営戦略のちょっとした失敗が、企業のゴーイングコンサーンにとっての脅威となります。例えば、ある製品開発の失敗が会社を経営破綻に追い込むこともあるのです。

過剰借入の問題

最近注目を浴びているのが、過剰借入の問題です。特に新型コロナウイルスのパンデミックで影響を受けた中小企業の多くが無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」を利用していますが、その多くは営業収支が赤字の状態で借入をしています。つまり、本来は営業を継続できない企業が借入によって生き延びているのです。そのような企業の多くは過剰借入の状態にあり、返済不能の「デフォルトリスク」を抱えています。

資金繰り管理の破綻

資金繰り管理の破綻も、経営破綻の原因の一つです。企業は資金繰りが均衡している限り、経営を継続することができます。極端にいえば、たとえ営業収支が赤字であっても手元に十分なキャッシュがあれば、経営を続けられるのです。逆に、手元に十分なキャッシュがない、または資金繰りが均衡していない状態では、経営を継続することができません。帳簿上の営業収支が黒字でも、売掛金を回収できなくて経営破綻する「黒字倒産」は、その代表例です。

経営破綻後に必要な手続きの種類は?

ところで経営破綻した場合、企業はどのような手続きを行う必要があるのでしょうか。経営破綻後の手続きには、債権者または債務者が裁判所に対して法的手続きを申請し、裁判所の監督の下で法律に則って再建や清算手続きを行う「法的整理」と、法的整理によらず債権者と債務者との協議により処理を図る「私的整理」があります。

ここでは、4つの「法的整理」の方法について説明します。

民事再生

民事再生は、民事再生法に基づく法的手続きです。債権者の同意を得て、裁判所の認可を受けた再生計画を定めることによって、債務者の事業または経済生活の再生を図る手続きです。通常、民事再生は会社の経営陣が交代せずに会社の再生を図ります。民事再生は、債権者の多数の同意がなければ手続きを進めることができず、一般的な中小企業にとってはハードルが高いとされています。実際に、民事再生の多くが大企業の経営破綻処理スキームとして使われています。

会社更生

会社更生は、会社更生法に基づく法的手続きです。適用対象は株式会社に限定され、更生計画策定などにより管財人が更生計画を遂行して、事業の維持更生を図ります。手続きが複雑で、かつ厳格な法的拘束力を持ち、費用負担も大きいことから、比較的規模の大きい企業向きとされています。民事再生では経営陣が交代せずに会社の再生を図りますが、会社更生では経営陣が全員退任し、管財人に経営権や会社財産の管理処分権限が移行します。

破産

破産とは会社が債務超過や支払不能に陥った時に、裁判所が会社の財産を処分してすべての債権者に配当して公平な清算を図り、かつ債務者の経済的再生を図ることを目的とする法的手続きのことです。会社に財産が残っている場合はそれらをすべて換価(お金に換える)し、債権者に対して平等に配当を行い、最終的に会社の法人格が消滅します。法人の破産には免責という概念はなく、法人格が消滅することによって債務が消滅します。

特別清算

特別清算は、債務超過に陥った会社を清算する法的手続きです。破産と同様に裁判所を利用する法的手続きですが、破産のように厳格な手続きが必要なく、比較的簡易に会社の清算を行える手続きとされています。特別清算を行うためには、債権者の3分の2以上の同意を得る必要があります。特別清算を行うと会社は解散し、特別清算手続きの終結とともに消滅します。特別清算は会社法を根拠にして行う手続きであり、対象となる会社は株式会社に限られます。

経営破綻に陥った企業事例は?

2021年の1年間で6,015社が経営破綻に追い込まれたと書きましたが、私たちにとって身近な企業も経営破綻に陥りました。ここでは、経営破綻に陥った企業事例として2つのケースを紹介します。

新型コロナウイルスに直撃されたE社

E社は、東京都内でホステルを経営するオーナー・オペレーターです。主にアジア諸国からのインバウンド客を相手にカプセルホテルタイプのホステルを運営しており、高い稼働率を誇っていました。2020年春に東京の下町エリアに新ホステルの開業を決定し、準備を着々と進めていました。

ところが、2019年暮れに中国武漢で新型コロナウイルスが発生し、たちまち世界的に大流行しました。世界中の国際旅客便が運航を停止し、日本を含む多くの国が国境を閉ざす「鎖国政策」を余儀なくされました。

「鎖国」した日本はインバウンド客が絶え、E社のホステルを含む宿泊業は大打撃を受けました。E社の稼働率はほとんどゼロとなり、手元の現金が払底する事態に追い込まれました。当座の運転資金をコロナ融資でつないだものの状況は好転せず、E社は2021年春に破産を申し立てました。

輸入で不良在庫を抱えたM社

M社は、タイ料理関連の輸入商社です。ここ数年、日本ではタイ料理で使われるココナッツミルクがマニアの間でブームになっていますが、そのブームに乗じたM社はそれまで輸入していたココナッツミルクよりも上級の製品を輸入することを決めました。

事前の市場調査などをせずに、M社社長の鶴の一声で輸入を決めたわけですが、輸入したものの販売が伸びず、M社は大量の不良在庫を抱える結果となりました。

大量の在庫を持つと倉庫の家賃などの固定費がかかるだけでなく、その仕入代金の支払いも必要です。ほとんど売れないココナッツミルクは死蔵在庫となり、M社の資金繰りを一気に悪化させ、その結果M社は破産に追い込まれました。

経営破綻に陥らないための予防策は?

経営破綻を望む経営者はいないでしょう。経営を継続し、拡大・繁栄させる。そのような思いで経営している人がほとんどでしょう。
しかし、実際にはすべての経営者が成功するわけではありません。残念なことに、一定数の経営者は経営破綻の憂き目にあうのです。経営破綻に陥らないための予防策は、あるのでしょうか。

資金繰り管理を徹底する

経営破綻に陥らないための第一の予防策は、資金繰り管理を徹底することです。経営破綻の原因のほとんどは、資金繰りの破綻です。資金繰りが均衡せず、キャッシュの持ち出しが続いてキャッシュが払底し、経営を継続できなくなるのです。手元にキャッシュがあれば、たとえ営業収支が赤字であっても経営を継続することができます。できるだけローコストオペレーションに徹し、キャッシュフローがマイナスにならないようにしなければなりません。

経営計画を常に見直す

経営破綻に陥らないための第二の予防策は、経営計画を常に見直すことです。多くの中小企業においてヒト・モノ・カネ・情報のすべてが不足していると書きましたが、リソースが乏しい中小企業が経営戦略策定でミスを犯すと致命傷になります。顧客と対話しながら自社の製品やサービスに対する市場・顧客ニーズのバリデーション(事業性確認)を常に行い、随時軌道修正を施しつつ、経営計画を常に見直すようにしましょう。

ダム式経営を実践する

経営破綻に陥らないための第三の予防策は、ダム式経営を実践することです。ダム式経営は松下幸之助氏が発案・提唱した経営手法で、好景気だからといってその流れのままに経営するのではなく、景気が悪くなる時に備えて資金を蓄えておく経営スキームです。水不足に備えてダムに水を貯めておくように、キャッシュが足りなくなった時に備えてあらかじめキャッシュを貯めておきます。ダム式経営を実践し、キャッシュを蓄積しておけば、経営破綻のリスクを大幅に抑えられるでしょう。

経営破綻のリスクを常に意識して健全な経営を

経営破綻の基本的な情報について、経営破綻に陥った事例や経営破綻に陥らないための予防策などとともに解説しました。会社もある意味では生き物であり、経営破綻するリスクは常に存在します。今後も、経営破綻する会社は出てくるでしょう。他社の経営破綻の事例などを研究し、経営破綻のリスクを常に意識して健全な経営を行うことを心がけてください。経営破綻のリスクを意識することが、経営破綻を回避するための最初のステップです。

よくある質問

経営破綻とは?

経営破綻とは、何らかの理由により事業活動が停止し、会社の経営が立ち行かなくなった状態のことです。一般的には「銀行取引停止処分を受ける」「破産手続開始を申請する」といった状態を指します。詳しくはこちらをご覧ください。

経営破綻後に必要な手続きは?

経営破綻後に必要な法的手続きには、「民事再生」「会社更生」「破産」「特別清算」があります。また「法的整理」によらず、債権者と債務者との協議により処理を図る「私的整理」もあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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