• 作成日 : 2024年8月29日

倉庫業の許認可とは?要件や登録方法、費用をわかりやすく解説

倉庫業を始めるには、以前は許可が必要でした。現在は登録制となっており、新たに倉庫業の事業者になるには運輸局での申請手続きが必要です。この記事では、倉庫業の種類や登録申請の流れ、登録後に必要な手続きなどについて解説していきます。

倉庫業の許認可とは?

倉庫業とは、他者から預かった物品を倉庫で保管することにより、対価を得る事業です。倉庫業の倉庫の範囲には、工作をした土地、さらには水面も含まれます。倉庫業は、多様な物品を安定して供給するための物流の要ともいえます。

倉庫業は登録制

倉庫業の許認可については、2002年以前は許可制でした。他者から物品を預かることを事業としているためです。預かった物品を事業者が適切に保管するように許可制が採られていました。

しかし、法改正以降は許可制から登録制に移行されました。倉庫業の適正な事業運営において一定の条件を置くことは必要であったものの、顧客ニーズの多様化などにより物流業界では効率化も求められるようになったためです。

ただし、倉庫の施設が十分でない事業者が利用者に損害を与え、物流に悪影響をおよぼさないように、許可制でなくなった後も登録の義務付けは確保されることとなりました。

倉庫業に当たらない例

倉庫業は、他者の物品の保管を事業として行う場合で、寄託契約が存在するもののうち、ほかの法律などで定める事業に該当しないものに限られます。

例えば、他者の物品の保管と寄託契約の存在があっても、預かった物品を加工したり修理したりするような事業は倉庫業にはなりません。つまり、クリーニング業や時計の修理業などは倉庫業に該当しないことになります。

また、銀行法に規定される有価証券や貴金属の預かり業務、賃貸借契約が存在する貸倉庫も倉庫業に当たりません。

一時的な物品の預かりであるコインロッカーや駐輪場、駐車場の経営も倉庫業からは除外されます。

倉庫業の種類

倉庫業法に定められた倉庫で、登録が必要な倉庫を営業倉庫といいます。営業倉庫は、普通倉庫、冷蔵倉庫、水面倉庫、特別の倉庫に分類できます。特別の倉庫とは、災害の救助など公共の福祉を維持する物品の保管が行われるもので、国土交通大臣に必要性が認められた特殊な倉庫です。ここでは、主な倉庫業の種類として、普通倉庫、冷蔵倉庫、水面倉庫の区分について解説します。

営業倉庫普通倉庫一類倉庫
二類倉庫
三類倉庫
野積倉庫
貯蔵槽倉庫
危険品倉庫
トランクルーム
冷蔵倉庫
水面倉庫
特別の倉庫

普通倉庫業

普通倉庫は、一般的な倉庫の形態で、保管できる物品により細かく区分されています。それぞれ、満たさなければならない基準が異なります。

種類保管できる物内容
一類倉庫冷蔵倉庫や危険品倉庫で保存する物品以外基本的に保管できる物品の制限がない倉庫
二類倉庫飼料、ガラス、野積みできる鉱物、原木、容器保管でない粉状や液状の物品など一類倉庫のように防火・耐火性能を要しない倉庫。温度などで変化しない物品を保管できる。
三類倉庫陶磁器やアルミインゴットなど耐火性に加え、遮熱性、防水、防湿、防鼠を要件としない倉庫。気温や湿気などで変質しない物品を保管できる。
野積倉庫原木や岩塩など野積場(柵や塀で囲んだ場所)での保管を想定したもの。防火性、耐火性、防水性、防湿性、遮熱性を要しない。
貯蔵槽倉庫小麦やトウモロコシなどの穀類、糖蜜などバラで保管する穀物や液体の保存のための倉庫で、サイロやタンクなどと呼ばれる。
危険品倉庫ガソリン、アルコール、油性塗料など危険物や高圧ガスなどを保管するための倉庫。保管する物品によって、倉庫業に定める要件のほか、消防法や高圧ガス保安法などの関連する法律の規定を満たして保管する必要がある。
トランクルーム絵画、骨とう品、ピアノ、書籍など個人(消費者)から預かった物品を保管するための倉庫。国土交通省から優良の認定を受けたものは、認定トランクルームを名乗れる。

水面倉庫業

水面倉庫とは、原木を水面で保管するための倉庫です。原木の乾燥による劣化の防止や河川などを利用した運搬のために、防護された水面で保管します。水面倉庫業を営むには、建築基準法に適合していることや原木が流出しないための措置を講じるなどの基準を満たさなければなりません。

冷蔵倉庫業

冷蔵倉庫は、食肉や水産物などの生鮮物や冷凍食品で、+10℃以下で保管するべき物品のための倉庫です。保管する温度帯によって、7階級に区分されています。冷蔵倉庫は、主に、人口の多いエリア、畜産物や農産物などの生産量の多いエリア、海外からの輸入品が運ばれてくる港のあるエリアに置かれます。

倉庫業の登録の要件

倉庫業として登録を受けるには、一定の要件を満たさなければなりません。重要な登録の要件について解説します。

土地が制限を受けていないこと

倉庫を建築する場所または倉庫として使用する施設が、建築基準法や都市計画法の制限を受けない土地のうえにあることが倉庫業登録の要件の一つです。

住居地域(準住居地域を除く)、あるいは開発行為許可が必要ない市街化調整区域において倉庫業を始めることはできません。倉庫業を営もうとする地方自治体で、建築基準法などの制限を受けないか事前に確認する必要があります。

倉庫の施設設備基準を満たしていること

倉庫の種類別で定められている施設設備基準を満たすことも要件です。施設設備基準には、関連法令適合性、外壁や床の強度、防水性能、耐火性能、災害防止措置、消火設備、防犯措置などの基準が定められています。

倉庫管理主任者を選任すること

倉庫業を営むには、倉庫管理主任者を選任しなければなりません。後述する欠格事由に該当する場合など、確実に選任できると認められないときは、倉庫業の登録が認められないケースもあります。

倉庫管理主任者とは、国土交通省令に定める倉庫を管理する者のことです。一定の場合は二つ以上の倉庫でも倉庫管理主任者1人の選任が認められますが、原則は、一つの倉庫につき1人の選任が必要です。

倉庫管理主任者になるには、国土交通大臣の定める講習を修了すること、あるいは倉庫の管理業務に3年以上の実務経験があるなど、一定の要件を満たさなければなりません。

申請者が欠格事由に該当しないこと

倉庫業の申請者である会社の役員などが、欠格事由に該当していないことも要件です。欠格事由とは、倉庫業法第25条の3に定められた事項で、2年以内に倉庫業の登録の取り消しを受けている場合などがあります。

倉庫業の申請から登録の流れ・費用・期間

倉庫業の登録申請について解説します。

登録申請の流れ

倉庫業の登録申請は、基本的に以下の流れで行います。

  1. 事前相談
    運輸局に、保管できる物品や登録を受けようとする倉庫の施設設備基準などの相談をして、登録要件を確認します。
  2. 物件探し
    施設設備基準を満たす倉庫の新築を建築業者に相談する、あるいは既存の倉庫で基準を満たす物件がないか不動産会社に相談するなど、適合する物件探しを始めます。
  3. 地方自治体への相談
    倉庫として利用する土地について、建築基準法や都市計画法などの制限はないか地方自治体に確認します。
  4. 物件の取得
    建築基準法などの制限を受けないことを確認して、倉庫として使用する施設設備基準を満たす物件を取得します。
  5. 登録申請書の提出
    図面などの必要書類を添付し、登録申請書を運輸局に提出します。申請を受けた運輸局では実地調査などが行われ、問題がある場合は申請者に対して補正指導があります。
  6. 登録の通知
    審査に問題がない場合は、申請した事業者に対して登録通知があります。通知を受けた事業者は、倉庫業の営業を開始できます。

登録に必要な費用

倉庫業の登録申請では、登録免許税の支払いが必要です。新規登録の場合は、登録から1か月以内に登録免許税9万円を払い込みます。このほか、登録申請手続きを行政書士に依頼する場合は、行政書士に支払う報酬も別途必要です。

登録にかかる期間

倉庫業の登録については、標準処理期間が、国土交通大臣権限のものは3か月、地方運輸局長権限のものは2か月とされています。標準処理期間とは、対象の手続きの申請受付から登録・認可までに通常必要とされる期間のことです。倉庫業の登録に当たり審査が行われる関係などから、登録までおおむね数か月を要します。

倉庫業の登録申請に必要な書類

倉庫業の登録申請で、主に必要な書類は以下の通りです。

  • 倉庫業登録申請書
  • 倉庫明細書
  • 施設設備基準別添付書類チェックリスト
  • 登記簿謄本の原本(土地・建物)
  • 建築確認済証と完了検査済証
  • 倉庫付近の見取図
  • 倉庫の配置図
  • 倉庫の平面図・立面図・断面図
  • 矩計図や断面詳細図
  • 建具表や建具キープラン
  • 倉庫管理主任者関連の書類
  • 商業登記簿謄本など
  • 宣誓書
  • 倉庫寄託約款

なお、申請する倉庫の種類によって、必要書類が異なることがあります。例えば、食品を保管する場合は食品衛生法に定める営業許可証、冷蔵倉庫の場合は冷蔵能力計算書など、別途倉庫の種類に応じた添付書類が必要です。必要書類は、申請する運輸局などに事前に確認されることをおすすめします。

倉庫業の登録後に必要な手続き

倉庫業は、登録を受けた後もいくつかの手続きが必要です。例えば、倉庫業の登録後に四半期ごとに求められる手続きとして以下のものがあります。

  • 期末倉庫使用状況報告
  • 受寄物入出庫高報告及び保管残高報告

それぞれの手続きについて解説します。

期末倉庫使用状況報告

「期末倉庫使用状況報告書」は、倉庫業法施行規則に定める第8号様式に従って作成します。倉庫の種類ごとに、所管面積、使用状況(顧客から預かっている物品が置かれている面積や空面積など)を記載して提出します。4月を起算月とし、四半期ごとに使用状況を確認して、営業所ごとに提出しなければなりません。

受寄物入出庫高報告及び保管残高報告

「受寄物入出庫高報告及び保管残高報告」は、倉庫業法施行規則に定める第9号様式に従って作成する書類です。「期末倉庫使用状況報告」と同様に4月から起算して四半期ごとに作成して提出します。期中の入庫高・出庫高・期末時の保管残高を品目ごとに報告するための書類です。

第8号様式や第9号様式のフォーマット|国土交通省

そのほかの手続き

上記のほか、変更などがあった場合には、内容に応じて手続きが必要です。主なものとして、以下の手続きがあります。

種類内容
登録変更倉庫の種類の変更や構造の変更、設備の変更などがあったときに必要な手続き
営業の譲渡譲受届出倉庫業の事業を譲渡した際、または譲り受けた際に必要な手続き
トランクルームの認定トランクルームの認定を受ける場合に必要な手続き
料金設定変更届出保管料など料金を変更する場合に必要な手続き
役員選任・変更届出倉庫業を営む法人の役員を選任したとき、または変更したときに必要な手続き
事故発生の届出労働災害や倉庫の火災(死者が発生したものや社会的影響の大きいもの)、危険物の漏えい、預かっている物品の盗難など(社会的影響の大きいもの)、重大事故が起きた場合に必要な手続き

倉庫業の市場規模は拡大中

国土交通省の「営業普通倉庫の実績(主要21社)」によると、入庫数量に大きな変化はないものの、入庫金額や所管面積が変化してきていることがわかります。

2023年度は、月平均入庫数量約2,302トンに対し、月平均入庫金額は約1兆77億円、所管面積は約9,291千㎡でした。

10年前の2013年度は、月平均入庫数約2,306トン、月平均入庫金額約952億円、所管面積約7,169千㎡で、特に所管面積が約1.3倍にまで拡大していることがわかります。

所管面積(倉庫面積など)増加の理由の一つに考えられるのが、EC市場の拡大です。なお、データは、1~3類・野積・貯蔵槽・危険物に分類される普通倉庫、所管面積については1~3類のみのデータで、かつ主要21社の調査となっていることに注意が必要です。

近年は、EC市場やトランクルーム市場の拡大も見られるようになりました。ECに関連性の高い食品や雑貨などを保管する倉庫やトランクルームなど、中小の倉庫業を含め、一部の倉庫は今後も市場拡大が続くと考えられています。

出典:営業普通倉庫の実績(主要21社)|国土交通省

倉庫業で成功するポイント

倉庫業を成功させるためのポイントを3つ紹介します。

差別化を図る

倉庫業は、メーカーや小売店などを顧客に持っているケースも多くあります。倉庫業者として選ばれるには、競合他社と差別化を図ることが重要です。

例えば、特定の物品を保管するのに特化した設備を構築する、保管だけでなく物流の一部を受け持つ、安心安全に保管できるサービスを提供する、などの差別化が考えられるでしょう。

ニーズを調査する

顧客ニーズに対応できる場所の倉庫を取得することも重要です。一般的に、倉庫は海に面するエリアや高速道路の近くに建てられます。アクセスがしやすく、物品の移動に便利なためです。

しかし、倉庫が集中しやすいエリアというのは、競合他社の倉庫も周辺に集まりやすくなるというデメリットがあります。顧客ニーズによっては、必ずしも人気の立地でなくても倉庫業を無理なく営めるケースもあります。

立地や災害リスクなども考慮して、ニーズに対応できる場所を調査して立地を選定するとよいでしょう。

システムを導入する

日々、物品の入庫や出庫がある倉庫業では、適切に物品を管理できる体制が必要です。適切に管理できていないと、保管状態が悪いことによる物品の破損が生じたり、すぐに出庫できなかったりするリスクがあります。

入庫や出庫、さらには物品の保管をスムーズに行うにはシステムの導入も検討しましょう。倉庫管理システムや検品システムを取り入れる、自動搬送ロボットを導入するなどの方法があります。業務が滞りやすい工程のシステム化を図ることで、適切に物品を管理できるだけでなく、スムーズな入出庫作業を実現できます。

倉庫業は登録申請が必要な業種

倉庫業は、事業者としての登録が必要な業種です。倉庫業の登録を受けるには、営業する倉庫の種類に応じた施設設備基準を満たしていることなどの要件をクリアする必要があります。倉庫業の登録申請には通常数か月要するため、土地や取得をする倉庫の条件などについて事前に運輸局に確認されることをおすすめします。


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