• 作成日 : 2024年3月22日

登記すべき事項とは?株式会社設立時の書き方や記入例、注意点を解説

登記すべき事項とは?株式会社設立時の書き方や記入例、注意点を解説

事業を興すときに、将来的な発展を見据えて株式会社にしたいが、登記のための手続きなどが面倒なのでは、と心配な方もいるでしょう。

この記事では株式会社設立の不可欠な「登記」につき、登記しなければならない事項や申請書の書き方およびテンプレート、登記時に必要な書類、その他注意すべき点などを詳しく説明していきます。

登記すべき事項とは?

まずはそもそも「登記」とは何か、なぜ株式会社を設立するのに登記が必要かなど、登記の概要について簡単に知っておきましょう。

「登記すべき事項」が発生するケース

「登記」とは、会社などの団体が自身の商号やその代表者名、役員名、所在地などの情報を登録し、その情報を公示(誰もが知ることができるようにしておくこと)することです。会社を経営し利益を得るためには取引を行うことが欠かせませんが、取引先は相手方が「会社である、すなわち登記をしているので基本情報を公にしている」ことにより、初めての相手でも一定の信用を置くことができます。登記制度が機能することで、社会における商号や会社等への信用の維持を図り、かつ、安全で円滑な取引を実現することができるのです(商業登記法第1条参照)。

余談ですが、登記といえば一般的になじみがあるのは不動産登記の方です。こちらも不動産の情報を公にすることで取引の安全に加え、国民の権利を守ることを目的にしています。

株式会社を設立するためには、設立時に登記すべき事項に関する事実を全て整えなければなりません。詳細は次章で述べますが、ゼロから1にするための「設立登記」はやはり準備が一番必要となります。

また、設立後は、会社における重要事項が変更になるたびに変更登記が必要になります。代表者や役員、本店の所在地などの変更、また支店の数や株式の発行数を増やす場合などが「登記すべき事項」となります。

申請の対象となる法人

法人とは、法律上それ自体で権利義務の主体となることができる人格(法人格)を与えられるものの総称です。法人における登記は、いわば個人における戸籍のようなものなのです。

法人にはいくつかの種類がありますが、大きくは株式会社をはじめとする合同会社、合名会社、合資会社といった「会社」と、一般社団法人、NPO法人、宗教法人などに分けられ、どちらの場合も登記が必要です。

なお一般的に、会社が行う登記を「商業登記」、それ以外の法人が行う登記を「法人登記」といいます。

手続きを行うタイミング

登記手続きは、登記制度の趣旨を考えれば、登記すべき事態が生じたら直ちに行われなければなりません。会社法915条では「登記の事由が発生したときから、本店の所在地において2週間」以内に登記をしなければならないと定めています。例えば会社設立登記なら、「設立時取締役等の調査が終了した日又は発起人が定めた日のいずれか遅い日」より2週間以内となります(会社法第911条)。

期間内の登記を怠ることを「登記懈怠(けたい)」といいます。登記懈怠となってしまっても、当該登記の申請自体が却下されることはないので(ただし過料に処せられる可能性があります)、懈怠に気づいた時点ですぐに申請を行いましょう。

申請先と申請方法

登記の申請は、会社設立時登記、変更登記ともに会社の本店所在地を管轄する法務局に申請書と必要書類を提出して行います。

ここで注意しなければならないのは、必ずしも本店所在地から一番近い法務局が管轄であるとは限らないことです。

法務局は各都道府県に一つ「〇〇地方法務局」といった本局があり、その下にいくつかの支局または出張所があります。これらの支局・出張所では、不動産登記事務は取り扱っていても、商業登記事務については証明書の交付しか行っておらず、商業登記申請は別の支局、または本局でしか行えないところも多いのです。

事前に商業登記における管轄法務局をホームページなどで確認しておきましょう。

登記の申請は書面の場合必要書類を法務局へ持参または郵送して行う他、オンラインでも可能です。2021年からはデジタル庁が行う「法人設立ワンストップサービス」を使えば、マイナンバーカードおよびマイナンバーカードを読み取れるスマホを使うことで登記申請ができるようになりました。

株式会社を設立する場合の登記すべき事項

ここからは、株式会社設立登記申請書に記載すべき事項、すなわち株式会社を設立する際に決めておかなければならない事項を具体的に説明します。

株式会社の基本情報

新たに設立する会社について「誰が責任者で、どこで何を行うのか」が分からなければなりません。

そこで、

  • 目的
  • 商号
  • 本店および支店の所在場所(住所)
  • 取締役の氏名(取締役が複数いる場合)
  • 代表取締役(役員が1名のみの場合は「取締役」)の氏名および住所

を登記申請書に記載します。

「目的」は設立会社が行う具体的な事業のことです。いくつ記載してもよく、将来行う予定のない事業を書いても構いませんが、ある程度節度を持った内容にしておくことをお勧めします。

「商号」は会社の顔となるものです。長く使用するものですから、よく考えて決めましょう。

ローマ字や数字、いくつかの符号も商号に使用できます。ただし、本店の所在地で既に登記されている商号と同一の名称は用いることができません(商業登記法第27条)。同じ住所で同じ商号の会社がいくつもあったら、取引の混乱を招いてしまいます。もし既に別の株式会社がある住所で新たに会社を設立する場合は、既存会社との違いが分かる商号を付けましょう。

なお、以前は同一市町村内に同じ事業目的を持つ会社との同一名称も禁じられていましたが、現在は可能になっています。

発行株式に関する事項

株式会社を設立するのですから、資本金や発行する株式についても公にする必要があります。

  • 資本金の額
  • 発行可能株式総数
  • 発行する株式の内容
  • 発行済株式の総数ならびにその種類および種類ごとの数

について申請書に記載します。

資本金は2006年施行の会社法で、それまで1,000万円以上とされていた規定がなくなったため、1円でも会社設立は可能となりました。とはいえ、金融機関からの融資を受ける際や取引先にチェックされる事項ですから、現実的にはある程度の資本金額は必要といえるでしょう。

もちろん適当な金額を記載することはできず、設立会社に対して出資されたことの証明書類が登記申請時に求められます。そして出資の対価として出資者は株式を受け取り、この受け取った株式の数が「発行済株式の総数」です。

その他の事項

設立する株式会社の規模に応じ、取締役会設置会社や監査役設置会社、会計参与設置会社などであるときは、その旨および監査役や会計参与などの氏名を記載します。

また、 公告方法や電子公告について定款の定めがあるときは、その定めを記載することも必要です。

登記すべき事項の書き方、記載例

ここでは、郵送申請の際の株式会社設立登記申請書の書き方について説明します。

登記申請書はA4サイズの用紙に記入します。

商業登記には前述した通りいくつかの種類がありますから、必ず「『株式会社設立』登記申請書」と最初に記載してください。

記載する項目と順番は以下の通りです。

  1. 商号(フリガナも)
  2. 本店(住所。町名以下は〇番〇号としても、〇―〇としてもよい)
  3. 登記の事由(通常は「令和〇年〇月〇日発起設立の手続終了」とします)
  4. 登記すべき事項…ここで改めて、商号、本店所在地を記載します。その後
    • 公告の方法
    • 目的
    • 発行可能株式総数
    • 発行済株式の総数ならびに種類および数
    • 資本金の額
    • 役員の氏名
    • 代表取締役の住所・氏名

以上を必ず登記すべき事項として記載します。

さらに、定款で定めた内容があれば追加で記載します。例えば

  • 譲渡制限株式である場合はその旨
  • 監査役や会計参与等設置会社である場合はその旨と氏名
  • 株主名簿管理人がいる場合はその使命および住所

などです。

ちなみに、「登記すべき事項」の箇所が長くなる場合は、申請書に「別紙参照」と記載し、別途作成しても構いません。別のA4用紙に書く他に、登記すべき事項のデータを入力したCD- Rなどを添付する方法もあります。

  1. 課税標準金額 資本金の額を記載します。
  2. 登録免許税  資本金の金額の0.7%(100円未満の端数切り捨て)、または15万円のいずれか高い方の金額を記載します。
  3. 添付書類…この記事では触れていませんが、株式会社設立登記申請には、申請書以外にさまざまな書類が必要です。主なものとして、認証済み定款、出資金払込み証明書、設立時取締役の就任承諾書、発起人決定書などがあります。

    これらの書類名および通数をここに記載し、登記申請書と共に提出します。

最後に申請日付と管轄法務局名、そして株式会社の住所と会社名、代表者の住所氏名を記載して作成完了です。

登記すべき事項を作成する際のルールや注意点

郵送もしくは持参の場合、株式会社設立登記の申請書は、基本的にPCで作成することになりますが、様式のルールや作成時の注意点をいくつかあげておきます。

半角・全角のルール

資本金額や所在地表記など、登記申請書には数字を記載する箇所が多くありますが、これら数字はアラビア数字を用い、全角で記載するようにしましょう。

実際の登記簿(履歴事項証明書)を見てみると分かりますが、登記簿内の数字は全て全角で記載されているので、これに倣います。

数字だけでなく、文字、特にアルファベットも全角での記載が必要なので注意しましょう。

なお、万以上の数字は漢数字を使用します(「100000000」円でなく「1億円」のように)。

定款と一言一句たがえない

設立登記申請の添付書類である定款には、登記すべき事項である「目的」や「公告の方法」などが記載されています。これらは目的の順番や言い回しをいじったりせず、完全にコピー&ペースト状態で申請書に記載するようにしましょう。少しでもいじってしまうと補正の対象になってしまいます。

押印の場所に注意!

登記申請書には押印が必要な箇所があります。まずは一番最後の代表者名の右側、そして申請書は通常2枚以上にわたるため、全てのページの綴り目に割印(契印)をしなければなりません。

押印に用いる印鑑は、代表者が法務局に印鑑届出をした印鑑、いわゆる「会社の実印」であることが必要です(商業登記規則第35条の2)。

設立登記申請は、登記すべき事項を全て整えてから行う

会社の登記は、円滑で安全な取引を守るために必要なことです。登記は法務局に申請をして行いますが、株式会社の設立登記においては、設立会社に応じた登記すべき事項があります。それら必要事項の実情を全て準備したうえで、この記事を参考に申請書を作成していただければと思います。


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