• 作成日 : 2024年8月23日

YouTuberが法人化すべきタイミングは?メリット・デメリットや必要な手続きを解説

YouTuberとして安定した収益を得ているクリエイターの中には、法人化して自分の会社を立ち上げる方もいらっしゃいます。出資者(オーナー)と経営者が同じという一人会社を設立するケースが多い傾向です。

本記事ではYouTuberの法人化について、タイミングやメリット・デメリット、注意点を解説します。

YouTuberはいつ法人化すべき?

YouTuberが法人化を検討するべきタイミングは、年間の所得がどれくらい安定して得られるかによって決まります。

個人事業主と法人の主な違い

まず法人化するためには個人事業主と法人の違いについて押さえておきましょう。簡単に下表にまとめました。

個人事業主法人
税金の法令

/税率

所得税法

5%~45%の累進課税

法人税法

19%または23.2%の固定課税

年金の種別国民年金厚生年金
信用力低い高い
設立手続き簡単複雑
経費計上限定的広範囲

個人事業主として活動する場合は所得税が適用されるため、所得が増えるほど高い割合の税率が適用されます。一方、法人化すれば法人税が適用されるので、ある程度以上の所得があれば税理士などへの報酬を含めても法人の方が負担は軽減されるでしょう。法人化すると経費計上できる範囲も広くなり、自宅兼事務所の購入費や家賃、給与なども経費として計上できます。

また、法人化することで社会的な信用力が向上するのもYouTuberにとっては大きなメリットといえるでしょう。

法人化を検討すべきタイミング

一般的に年間の売上が800万円以上になったら法人化した方が適切といわれます。YouTuberは店舗や設備などの固定費や商品の仕入れなどが必要ないので、課税所得が500万~600万円程度で安定して入ってくるようであれば法人化も視野に入れてみましょう。

収入以外の面では、下記のようなタイミングが挙げられます。

  • 社会保険を適用したい
  • 撮影または編集スタッフを会社で雇用したい
  • MD(merchandising、マーチャンダイジング)などを自社で展開したい

YouTuberが法人化するメリット

YouTuberが法人化するメリットとして、以下の4つが挙げられます。

  • 法人税の税率が低い
  • 社会的な信用度が高くなる
  • 社会保険が手厚い
  • 経費計上できる範囲が広い

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

法人税の方が税負担は低い

個人事業主は税率5%~45%の累進課税なので、収入が増えるほど税率が上がりますが、法人化にすると、法人税は19%または23.2%で課税されるため、所得が高い場合には節税効果が大きくなります。そのため課税所得が高くなれば法人の方が税負担を軽減でき、収益をより効率的に活用できるのです。

社会的な信用度が高くなる

法人化することで取引先や金融機関からの信用度が高くなります。特にYouTuberのような新興ビジネスで収入が不安定になりがちな職業の場合は、法人化することで企業間の取引がしやすくなり、動画作成以外の事業も展開しやすくなります。

 社会保険が手厚い

個人事業主の場合、国民健康保険や国民年金への加入となりますが、法人化することで社会保険の適用を受けられます。社会保険では保険料や年金を法人と従業員で負担を折半します。

社会保険には雇用保険や労災保険も含まれているので、万が一の時のセーフティネットを利用可能です。保険制度を充実させることで優秀な人材を確保しやすくなるとともに、経営者自身も保険制度の恩恵を受けられるでしょう。

経費計上できる範囲が広い

法人化すると、経費として適用できる範囲が広がります。例えば、家賃(事務所や撮影スタジオと兼用)、通信費交通費に加え、役員報酬、退職金、役員の生命保険料なども経費として計上することが可能です。

経費計上の範囲が広くなると、実質的な税負担を軽減でき、資金を効率的に運用することができます。

YouTuberが法人化するデメリット

YouTuberが法人化することで税負担が軽減できる、信用力が向上するなど多くの利点が得られますが、以下のようなデメリットもあります。

  • 会社の設立費用がかかる
  • かえって税負担が重くなることがある
  • 交際費が制限される
  • 役員報酬が固定される

これらのデメリットについて以下で詳しくご紹介していきます。

会社設立時にまとまった費用が必要

法人を設立する際には登記費用や定款認証費用など、まとまった初期費用が必要です。株式会社の場合、設立費用は一般的に20万円以上かかり、定款の認証や登録免許税などの手続き費用も発生します。

合同会社であれば10万円程度と株式会社よりも低いコストで設立できますが、それほど課税所得が多くない場合は負担が大きく感じるかもしれません。

赤字でも税負担がかかる

法人化すると、たとえ事業が赤字でも法人住民税の均等割が発生します。この均等割は、利益の有無にかかわらず毎年7万円以上(※金額は資本金、従業員数などによる)は最低でも納付する必要があります。また、事業年度が終了する日に資本金1億円以上の企業の場合、外形標準課税の対象となり、赤字でも法人事業税の納付が必要です。

個人事業主の場合、赤字であれば所得税は発生しないため、この点は法人化のデメリットとなります。

交際費の経費対象金額が変わる

法人化すると交際費として経費を計上できる金額に制限がかかります。個人事業主の場合、交際費に関しては比較的自由に経費計上ができますが、法人になると年間800万円を超える交際費は経費として認められません。交際費の取り扱いについても細かい決まりがあるので、経費計上の際には慎重に対応する必要があります。

役員報酬は1年間変えられない

法人化すると役員報酬は原則として年度内に変更することができません。役員報酬は定期同額給与として支給される必要があり、事前に決めた金額を1年間維持しなければならないため、経営状況に応じた柔軟な収入調整が難しくなります。

この点は、収益の変動が大きいYouTuberにとってはデメリットとなり得ます。

法人化する際の会社形態はどう判断すべき?

YouTuberが法人化する際は、一般的に株式会社か合同会社を選ぶことが多いといわれています。会社形態を判断する基準としては、下記のようなポイントが挙げられます。

  • 事業規模
  • 資金調達の必要性
  • 経営の柔軟性
  • 設立コスト
  • クリエイターや制作スタッフの雇用人数

自分以外のクリエイターやスタッフを複数人雇用したり、継続した企業案件やイベント開催など大規模な事業展開を目指したりする場合は株式会社が適しています。コストを抑えつつ柔軟な経営を重視する場合は、合同会社がよいでしょう。

それぞれの特徴を以下の表にまとめました。

会社形態特徴費用
株式会社・株主が出資者となり、経営者は取締役として選任される

・資金調達がしやすく、社会的信用度が高い

約24万円
合同会社・出資者が経営にも関与する形態

・設立費用が安く、柔軟な経営が可能

・小規模な事業に適している

約10万円

YouTuberが法人化する際に必要な手続き

YouTuberが法人化するための基本的な手続きの流れを以下で簡潔にご説明します。

  1. 定款の作成・認証:会社の基本事項を定めた定款を作成し、公証人の認証を受ける
  2. 資本金の払い込み:指定の銀行口座に資本金を払い込む
  3. 設立登記申請:法務局にて会社の設立登記を行う
  4. 税務署・役所への届出:法人設立届出書青色申告の承認申請書などを提出する
  5. 社会保険・労働保険の手続き:健康保険、厚生年金、労働保険への加入手続きを行う

YouTuberならではの必要な手続きとしては著作権関連の届出や、YouTubeアカウントの法人への変更などが挙げられます。

法人化の流れについては以下の記事でさらに詳しくご説明しています。

YouTuberが法人化する際の注意点

資本金を高く設定しすぎない

資本金が高すぎると設立時の費用負担が大きくなるだけでなく、毎年の法人住民税の均等割も高くなります。最初は必要最低限の資本金で設立し、事業の拡大に応じて増資を検討するのが賢明です。

著作物の扱いに注意する

YouTubeでは著作権の問題が頻発します。法人化することで著作権管理が厳格になるため、動画内で使用する音楽や映像の著作権をしっかり確認したうえで、商用利用可能な素材を使う、必要な許可を得るといった心構えが重要です。

役員報酬を適切に設定する

先述のとおり、役員報酬は1年間変更できないため、経営状況に応じた適切な報酬を設定する必要があります。過大または過小に設定すると、税務上の問題が発生するリスクが生じるでしょう。

安定した収益確保ができてからYouTuberとして法人化を考えよう

YouTuberの法人化について解説しました。法人化することで所得税よりも低い税率の法人税が適用されたり、社会的信用度が高まったりと今後の事業に役立つメリットが数多くあります。

その一方、年間の交際費計上できる額に制限がある、赤字でも法人事業税を払う、役員報酬の額が固定されてしまうなどのデメリットがあるので、注意が必要です。

ただ、トレンドやプラットフォームの規約変更などによって変動が大きいYouTuberは、ある程度安定した収益が出せるようになったら法人化した方が、その後の事業が展開しやすくなる可能性があります。

法人の種類や注意点にも気を配りながら、自分のスタイルに合った方法で法人化することをおすすめします。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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