• 作成日 : 2023年4月21日

ファブレス経営とは?メリットや企業事例を解説!

ファブレス経営とは、自社で工場を保有せず、製造を外部に委託する経営方式です。半導体メーカーやアパレルメーカーなど、多くの企業が採用しています。

初期投資や製造コストを抑えられ、市場の変化に柔軟に対応できる一方、品質管理が難しいのが特徴です。
今回は、ファブレス経営の意味やメリット・デメリット、企業事例などを紹介します。

ファブレス経営の意味とは?

ファブレス経営とは、自社で工場を保有しない経営方式のことです。製品の企画・設計は自社で行い、生産は外部に委託します。工場を持たない点以外は、製造業としての性質を持っています。

そもそもファブレスとは「fabrication facility less」の略で、日本語では「工場を持たない」という意味です。

ファブレス経営は、製造工程を外部に委託するという意味で、アウトソーシングの1つともいえます。ファブレスメーカーは、主に企画・開発や設計、マーケティングを行い、生産設備に投資する代わりに研究開発へ資金を投下できるのがポイントです。なお、製造を引き受けるメーカーのことを、ファウンドリメーカーと呼びます。

混同しやすいのがOEM(Original Equipment Manufacturing)です。OEMは、自社で製造した製品を他社のブランドとして販売する方式です。そのため、自社で製造しないファブレス経営とは異なります。

ファブレス経営に向いている業界・業種は?

以下の特徴に当てはまる業界・業種は、ファブレス経営に向いているといえるでしょう。

  • 製品のトレンドの移り変わりが早い
  • 企画・開発と製造を分離させやすい

具体的には、以下のような業界・業種です。

  • 半導体メーカー
  • デジタル機器メーカー
  • インテリアメーカー
  • アパレルメーカー
  • 飲料メーカー

ここでは、ファブレス経営に向いている業界・業種について解説します。

半導体メーカー

半導体メーカーは、ファブレス経営の走りといわれている存在です。ファブレス経営は、アメリカのシリコンバレーで生まれました。

新しい製品が次々に生み出される半導体業界は、製品のライフサイクルが短く、対応するためには巨額の設備投資が必要です。設備投資を減らし、市場の変化にスピーディーに対応するためには、ファブレス経営が適しています。

このように、半導体メーカーは、ファブレス経営に向いている業界です。

デジタル機器メーカー

デジタル機器も、半導体と同様に製品のライフサイクルが短いのは特徴です。さらに、カメラや家電のようなデジタル機器を製造するためには、非常に多くの部品が必要です。それぞれの部品製造に対応できるよう、工場や機械設備を用意するとなると、多額の設備投資が必要になってしまいます。

部品製造を外注することで、設備投資コストを抑えながら、新しい製品をスピーディーに展開可能です。このように、デジタル機器メーカーがファブレス経営を取り入れることで、低コストかつ実用性の高い製品提供の実現が期待されます。

インテリアメーカー

インテリアメーカーは、多種多様な製品・デザインを取り扱う必要があります。同じ家具でも、顧客のニーズに合わせるため、複数のサイズや色の選択肢を用意しなければなりません。さらに、流行によって求められるデザインも変化するため、日々新しいデザインを考案することが求められます。自社で製造を行おうとすると、多額の設備投資がかかってしまうでしょう。

複数のファウンドリメーカーに製造を依頼できれば、設備投資を増やすことなく、幅広い製品バリエーションの製造にも対応できるでしょう。

アパレルメーカー

アパレルメーカーも、インテリアメーカーと同様に幅広い商品を扱う必要があります。アパレルは特にトレンドの移り変わりが激しく、対応できなければ、多くの在庫を抱えることになってしまうでしょう。しかし、新たなデザインが生まれるたびに、自社で対応できるよう設備を整えているようでは、設備投資が膨れ上がってしまいます。

アパレルメーカーでは、ファブレス経営を取り入れることで、流行の変化に柔軟に対応できるでしょう。

飲料メーカー

飲料メーカーの中にも、ファブレス経営を取り入れている事例が見られます。飲料業界は、コモディティ化が進んでおり、競合他社との差別化が重要です。多くのメーカーが、次々と新作を発売しています。

製造工程を外注することで、企画開発に注力できるようになり、企業の付加価値を高める工程に集中してリソースを投下できます。このように、ファブレス経営を取り入れることによって、競合他社との差別化を実現しやすい環境を整えることが可能です。

ファブレス経営のメリットは?

ファブレス経営のメリットは、以下のとおりです。

  • 初期投資が少なく済む
  • 製造コストを抑えられる
  • 経営資源を企画・開発に集中して投下できる
  • 市場の変化に柔軟に対応できる

特に、初期投資や製造コストを抑えられるのは大きなメリットです。また、製造にかかるリソースを企画・開発に投下できたり、市場の変化に柔軟に対応できたりするため、競争力強化にもつながります。

ここでは、ファブレス経営のメリットについて解説します。

初期投資が少なく済む

ファブレス経営では、自社で工場を用意する必要がないため、初期投資を抑えられるのがメリットです。自社で製造する場合は、需要やトレンドの変化に対応できるよう、多額の設備投資が必要です。

ファブレス経営を取り入れることで、工場を用意しなくても、アイディアがあれば製品開発・販売を実現できます。特に、資金力がないベンチャー企業であっても、ファブレス経営であれば事業に参入でき、急成長を目指せるのは大きなメリットです。

さらに、設備の償却コストも削減できます。

仮に事業がうまくいかず撤退を余儀なくされた場合も、サンクコスト(埋没費用)が低いため、撤退しやすいのもメリットです。

製造コストを抑えられる

ファブレス経営なら、製品の種類や製造量、納期などの委託内容に応じて、適切なファウンドリメーカーに製造を依頼できます。製造能力が高いファウンドリメーカーに依頼できれば、スケールメリットを享受し、製造コストを安く抑えることもできるでしょう。

このように、さまざまな委託先を検討のうえ選定することで、コストダウンも期待できるでしょう。さらに、委託先を複数に分散することで、スケジュールや製造量も柔軟に調整しやすくなります。

経営資源を企画・開発に集中して投下できる

ファブレス経営では、経営資源を企画・開発に集中して投下できます。競合他社との差別化を図り、付加価値を生み出すうえで重要なウェイトを占めるのは、企画・開発工程です。製造をファウンドリメーカーに委託する分、自社の資金や人材といった経営資源を、企画・開発に集中して投下できるのは大きな魅力です。

人件費の削減にもつながるため、浮いたコストをマーケティングに投資することで、競合よりも優位なポジションを築けるでしょう。

市場の変化に柔軟に対応できる

ファブレス経営では、商品やデザインなどに応じてその都度適切な委託先を選べるため、市場の変化に柔軟に対応できます。複数の委託先を抱えることで、市場動向を見ながら、製造量やスケジュールの調整も可能です。

さらに、生産体制を自社で保有しないため、資金が固定化しません。そのため、商品を市場に出すギリギリまで商品開発に取り組め、トレンドを反映した商品が提供できるのもメリットです。

ファブレス経営のデメリットは?

一方、ファブレス経営には以下のようなデメリットがあります。

  • 外注コストがかかる
  • 品質管理・生産管理が難しい
  • 情報の漏洩リスクがある
  • 製造ノウハウを蓄積するのが難しい

ファブレス経営は、設備投資を抑えられる経営方式ですが、その代わり外注コストが発生します。さらに、製造工程を外部に委託するため、品質管理・生産管理を行うのが難しい点や、製品に関する情報が流出してしまうリスクがある点は見逃せません。

また、自社で製造ノウハウを蓄積できず、自社製造に切り替えるのが難しくなるというデメリットもあります。

ここでは、ファブレス経営のデメリットについて解説します。

外注コストがかかる

ファブレス経営は、初期投資や製造コストを抑えやすい経営方式ではありますが、当然外注コストが発生します。製造ラインを委託することで、必ずしも製造コストが低くなるとは限りません。自社で製造する際のコストと委託時のコストを比較検討して、どちらのほうが費用対効果が高いのかを見極めることが大切です。

品質管理・生産管理が難しい

ファブレス経営では、製造工程を自社で目が届きにくい外部に委託するため、品質管理や生産管理が難しいというデメリットがあります。委託先で生じたトラブルによって、納品が大幅に遅れたり、基準に満たない製品が発生したりするリスクも否定できません。品質を一定に保てなければ、顧客からの信用を失ってしまいます。

品質管理・生産管理を検査するチームを定期的に派遣したり、日頃から委託先と良好な関係を築いたりと、品質を保つための施策が不可欠です。

情報漏洩のリスクがある

製造を委託することで、自社のアイディアや技術、ノウハウなど、重要な情報が外部に漏洩してしまう危険性があるのは大きなデメリットです。情報が流出し、他の企業によって類似製品を製造されてしまう可能性もあります。

リスク管理のためには、コンプライアンス遵守を徹底している、信頼できるファウンドリメーカーを選定しましょう。さらに、情報の取り扱いや情報漏洩発生時の責任の所在について、事前に取り決めをしておく必要があります。

製造ノウハウを蓄積するのが難しい

自社で製造しない場合、社内に製造ノウハウを蓄積することは困難です。内製に切り替えたくなった場合でも、ノウハウ不足により、外部に委託しつづけなければならない状態に陥る可能性が高いでしょう。

また、製造工程で得られた知識や技術が、新製品の開発に活かされる場合もあります。ファブレス経営を取り入れることで、本来得られたはずの貴重な情報を、獲得できなくなる可能性がある点には注意しましょう。

ファブレス経営を取り入れている企業事例は?

国内外問わず、多くの有名企業がファブレス経営を取り入れています。代表例は以下のとおりです。

  • Apple
  • 任天堂
  • ユニクロ(ファーストリテイリング)
  • キーエンス
  • サンゲツ

Appleは、製品の企画・設計・販売に特化しており、製造部分は他社に委託しています。付加価値を生み出す企画・設計部分に経営資源を投下しているのがポイントです。また、委託先の工場への設備投資も行っており、製品の品質向上にも注力しています。

任天堂は、トレンドの早いゲーム・玩具を取り扱っており、ファブレス経営を取り入れることで、在庫リスクを抱えないようにしている事例です。

ユニクロ(ファーストリテイリング)は、アパレルの分野でファブレス経営を成功させた事例です。製造工程は外部に委託していますが、委託先に品質管理チームを派遣し、製造工程も管理できるようにしています。

ユニクロのように、小売業を営む企業が自社でオリジナル商品の企画を行い、生産工程を外部に委託するスタイルのことを、SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel:製造小売業)といいます。

キーエンスは、直販営業に力を入れており、顧客からのフィードバックを製品企画・設計に活かしている企業です。

幅広いインテリアを扱うサンゲツは、ファブレス経営によって、豊富な商品ラインナップを実現しています。

このように、ファブレス経営は多くの企業に採用されており、さまざまなメリットをもたらしている経営方式です。

ファブレス経営の特徴を理解して取り入れよう

ファブレス経営は、自社で工場を保有せず、製造を外部に委託する経営方式です。ファブレス経営を取り入れることで、初期費用や製造コストを削減でき、商品開発に注力できます。市場の変化にも対応しやすく、ライフサイクルが短い製品を扱う企業に適しています。

ファブレス経営にはデメリットもあるため、メリット・デメリットを慎重に勘案し、ファブレス経営を採用するかどうかを選択してください。

よくある質問

ファブレス経営とは?

ファブレス経営とは、自社で工場を保有せず、製造工程を外部に委託する経営方式のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

ファブレス経営のメリットは?

ファブレス経営のメリットとしては、初期投資や製造コストを抑えられることや、経営資源を企画・開発工程に集中して投下できること、市場の変化に柔軟に対応できることが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。


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