- 更新日 : 2023年11月30日
グループホームは安定経営が可能。社会福祉と土地活用をお考えの方に
土地活用をしたい方や、社会福祉事業で起業したい方には、グループホーム経営がおすすめです。安定収入を見込めるだけでなく、認知症の高齢者や障がい者のサポートにもつながる、社会貢献度が高いビジネスです。この記事では、グループホーム経営に挑戦したい方に向けて、収支モデルやグループホーム経営のメリット、注意点などを解説します。
目次
グループホームとは何か
グループホームとは、認知症や障がいを持つ方の生活を支援するための施設です。特に、認知症を患っている方が、共同生活によって自立を目指すための施設のことを、グループホームと呼ぶことが多いです。
グループホームは、社会福祉法人や医療法人だけでなく、民間企業も運営できます。グループホーム経営に興味がある方に向けて、まずはグループホームの概要について解説します。
グループホームの種類
グループホームは、主に以下の2つの種類があり、対象者が異なります。まずは、種類ごとの違いを理解しましょう。
- 認知症高齢者グループホーム:認知症の方が、5〜9人ほどのユニットを組んで共同生活を行い、スタッフの支援を受けながら自立を目指す施設。
- 障がい者グループホーム:身体障がいや知的障がい、精神障がいなどがある方の自立を支援するための施設。
また、サービス内容によって、以下の3つの種類に分けられます。
- 介護サービス包括型:グループホームの職員が介護サービスを行う。サービスは主に夜間に提供される。
- 外部サービス利用型:外部のサービスも利用して、介護サービスを提供する。サービスは主に夜間に提供される。
- 日中サービス支援型:1日を通じて、スタッフが介護サービスや生活支援、相談への対応などを行う。
グループホームの利用者について
グループホームの利用対象者は、以下のとおりです。
<認知症高齢者グループホームの利用者>
- 65歳以上の方
- 医師に認知症の診断を受けた方
- 要支援2または要介護1以上の認定を受けた方
- 集団生活を問題なく営めること
- 施設の所在地と同じ市区町村に住民票がある方
なお、65歳未満であっても、特定疾病を持っている場合はグループホームの入居対象になることがあります。
グループホームは、自立した生活を目指すための施設です。重度の認知症を患っている方や、寝たきりの方などは対象外となるケースもあります。
<障がい者グループホームの利用者>
- 障害者総合支援法が定める「障がい者」に該当する方(身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者、難病患者など)
- 身体障がい者については、65歳未満の方、および65歳に達する前日までに、障害福祉サービスや準ずるサービスを利用したことがある方
利用者は増加しているが供給が追いついていない
グループホームの利用者は増加しており、需要が高まっています。
特に、高齢化とともに認知症患者が増加し、認知症高齢者グループホームのニーズが高まっています。
少々古いデータではありますが、内閣府の「平成29年度版高齢社会白書」では「2025年には認知症患者数が約675万人、65歳以上の5.4人に1人が認知症患者になる」と推計されていました。
また「令和3年度版高齢社会白書」では、介護が必要になった主な原因のうち、最も多かったのが認知症でした。
このように、認知症患者の数は増加しており、グループホームの利用者もますます増加することが予想されます。
しかし、施設の供給は追いついていません。認知症・障がいの特性や程度を踏まえた、適切な支援を行えるグループホームの数は、いまだに不足しているのが現状です。
参考:内閣府 高齢社会白書
グループホームの収支モデル
グループホーム経営に挑戦するにあたって、グループホームの収入や支出の内訳について理解しましょう。グループホームでは、利用者から直接利用料を徴収するわけではありません。また、サービスの内容や人員体制などによって、受け取れる報酬が異なります。
ここでは、グループホームの収入・支出の例と、利用料を受け取る仕組み、さらに利益を増やすための方法について見ていきましょう。
グループホームの収入・支出の例
グループホームの収入は、各種加算の算定による報酬です。
入居者の介護度に応じて支払われる基本報酬と、サービスの提供体制や利用者の状況などに応じて加算される報酬があります。入居者の障害支援区分が高かったり、提供するサービスを充実させたりする場合は、報酬が増える仕組みです。
グループホームで算定できる加算には、以下のようにさまざまな種類があります。
- 夜間支援体制加算
- 初期加算
- 認知症専門ケア加算
- 若年性認知症利用者受入加算
- サービス提供体制強化加算
- 医療連携体制加算
- 生活機能向上連携加算
- 看取り介護加算
- 退居時相談援助加算
- 入居者の入退院支援の取組
一方、主な支出は以下のとおりです。
土地の取得や建物の建設から始める場合は、多額の初期費用がかかります。黒字化まで時間がかかる場合も多いです。資金繰りで失敗しないよう、初期費用だけでなく、数ヶ月分の運転資金も確保した状態で経営を始めましょう。
大部分は給付金として支払われるのが特徴
グループホームでは、事業者が利用者にサービスを提供したあと、利用料を利用者から徴収するわけではありません。国民健康保険団体連合会(以下、国保連)に対して請求するのが特徴です。
請求を受けた国保連が市町村に対して給付請求を行い、市町村が国保連に給付金を支払います。その後、国保連から事業者に給付金が支払われる、という仕組みです。
規模・棟数が増えるほど利益が増えやすい
グループホームをはじめとする高齢者・障がい者向け施設では、規模や棟数が増えるほど利益が増えやすく、黒字化しやすい傾向にあります。
規模が大きければ、その分スケールメリットが働き、コストを抑えて利益を増やせるためです。
また、厚生労働省が発表した「障害福祉サービス等経営実態調査」では、黒字化しているモデルの利用者は約19人でした。グループホームの最低定員が、事業所全体で4人以上、 共同生活住居1箇所あたり2人以上であることを考えると、黒字化するためにはある程度の規模は必要であることがわかるでしょう。
グループホームの収益は各種加算であり、サービスを充実させるほど多くの給付金を受け取れます。そのためには、規模や棟数を増やすことが必要です。
参考:厚生労働省 令和2年障害福祉サービス等経営実態調査結果
埼玉県「共同生活援助(グループホーム)の基準 概要」
グループホーム経営のメリットは?
グループホーム経営には、以下のようなメリットがあります。
- 安定した収入が見込める
- 節税効果が期待できる
- 不利な土地でも活用できる
- 施設を建てるための補助金がある
- 施設だけや土地だけを貸し出し、サービスは別の事業者に委託も可能
- 社会貢献になる
介護領域に興味がある方、起業して高齢者に役立ちたい方、所有している土地を有効活用したい方などには、グループホーム経営がおすすめです。
以下では、それぞれのメリットについて解説します。
安定した収入が見込める
グループホームは、入居者の自立支援のための施設であり、退去率は低いのが特徴です。そのため、長期的に安定した収入が見込めます。
認知症患者の数は増加しており、将来的にニーズが高まることも予想されます。
土地や施設を事業者に貸し出す場合も、基本的には10〜20年単位の長期契約であるため、安定した収入を得られるでしょう。
節税効果が期待できる
保有している土地をグループホーム経営に活かす場合は、マンション経営やアパート経営などと同様に、節税につながるかもしれません。
事業者に土地を貸し出す場合は、貸家建付地となり、小規模宅地等の特例が適用されます。そのため、相続税や固定資産税の節税につながるのがメリットです。
使っていない土地がある場合は、マンション経営やアパート経営だけでなく、社会貢献性が高いグループホーム経営に挑戦することも検討しましょう。
参考:国税庁 No.4614 貸家建付地の評価
国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
不利な土地でも活用できる
グループホームは、マンション経営やアパート経営では不利になるような土地に新設しても、特段問題ありません。
グループホームは、サポートを必要とする方の自立を支援する施設です。立地の良さよりも、サービス内容や安心して暮らせる生活環境であることなどが重視されます。
そのため、駅から遠い不便な立地や、近くに商業施設がないような土地であっても、問題なくグループホーム経営を続けられる可能性が高いです。
もちろん、徒歩5分程度にバス停がある、というように、公共交通機関をある程度利用できる土地であることは求められます。
施設を建てるための補助金がある
グループホームの開業では、社会福祉施設等施設整備費補助金を利用できます。社会福祉施設等施設整備費補助金とは、社会福祉法人が、施設を新たに開設したり整備したりする際にかかる費用の一部を補助する制度のことです。
また、地方自治体によっては、グループホームの運営費を補助する補助金制度や、グループホームに新規参入する事業者を支援する補助金制度などを設けている場合があります。
グループホームの開業には多額の初期費用はかかりますが、補助金制度を上手に活用することで、負担を抑えて開業に挑戦できるのが魅力です。
施設だけや土地だけを貸し出し、サービスは別の事業者に委託も可能
土地の活用方法としてグループホーム経営を検討している場合は、運営を別の事業者に委託するのがおすすめです。
グループホームの経営を実際に行うとなると、障がいや認知症に対する理解や、福祉事業に関するノウハウ、実績などが求められます。そのため、ハードルが高いと感じている方も多いでしょう。
しかし、保有している土地や建物を福祉事業者に貸し出し、運営を事業者に委託することも可能です。一棟単位で事業者に貸し出せ、実際の運営は事業者に任せられるため、賃貸管理や建物管理などの手間がほとんどかかりません。気軽にグループホーム経営に挑戦できます。
社会貢献になる
グループホーム経営は、長期的な安定収入を見込めるだけでなく、社会貢献にもつながります。
グループホームは、一人暮らしが困難な方の生活や、認知症を患っている方の自立を支援する、地域にとって重要な存在です。
国や自治体も、障がい者や認知症患者の生活基盤を整備する取り組みを推進しており、社会貢献性が非常に高いビジネスといえます。
グループホーム経営のデメリットは?
一方、グループホーム経営には以下のようなデメリットがあります。
- 一度建てると施設の転用が難しい
- 事業者認定などの手間がかかる
- 競合の出現など将来的な需要減の可能性もある
特に、グループホーム用の建物を、ほかの用途に利用するのが難しい点には注意が必要です。
また、建物設備の整備や入居者確保などと並行して、事業者認定や運営規程の策定を行う必要があり、手間がかかります。
さらに、将来的には競合が増え、施設の供給過多になってしまうリスクがある点は見逃せません。
以下では、グループホーム経営で注意したい、3つのデメリットについて解説します。
一度建てると施設の転用が難しい
グループホーム用の建物を一度建てて施設を整備すると、その建物をほかの用途に活用するのが難しくなります。
グループホームと認められるためには、居室の広さや食堂、リビングの設置、ユニットごとの設備設置など、さまざまな基準を満たさなければなりません。共同生活向けの独特な間取りとなるため、一度グループホーム用に建てた施設を、マンションやアパート経営で利用するのは難しいです。用途変更のためには、大規模な修繕工事が必要になります。
グループホーム経営を長く続ける覚悟を持ったうえで、経営に取り組みましょう。
事業者認定などの手間がかかる
グループホームを開設して運営する際は、国や自治体が定める設備・人員・運営基準などを守るとともに、事業者認定を受ける必要があります。
また、適正な運営や、利用者への適切なサービス提供を担保するために、グループホーム運営に関する運営規程を定めなければなりません。
このように、グループホームを自身で運営する場合は、手間がかかる点に注意しましょう。
競合の出現など将来的な需要減の可能性も
グループホームの利用者は増加しており、供給は不足しているのが現状です。そのため、国や自治体が積極的にグループホームを増やそうとしています。
少子高齢化の進行とともに、今後も需要は高まることが期待される一方、将来的には競合が増え、競争が激化する可能性がある点には注意が必要です。
競合との差別化に取り組まなければ、いずれ利用者を競合にとられてしまうでしょう。差別化できなければ、空室が続き、経営が悪化してしまうリスクはあります。
グループホーム経営に挑戦する際は、地域のニーズを正しく把握し、ニーズに合ったサービスを提供することが欠かせません。
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介護事業の起業は万
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所有している土地を有効活用し、社会貢献性の高いビジネスを展開したい方には、グループホーム経営が適しています。特に、少子高齢化とともに認知症患者の数が増えており、認知症の方の生活をサポートするグループホームの需要が高まる可能性が高いです。
グループホーム経営には多額の費用がかかりますが、補助金制度を上手に活用することで、負担を軽減できるでしょう。補助金の情報を逐一チェックし、有用な制度を忘れずに活用することが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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