• 更新日 : 2024年6月19日

ホテル開業の事業計画書の書き方は?テンプレートを基に記入例を解説

2024年2月の訪日外客数は約280万人と2月として過去最高を大きく更新し、ホテル業界には追い風となりました。さらに出張需要の復調もある一方で、ホテル業界でも人手不足など克服すべき課題はあります。そのような中、この記事では新たにホテル業に参入する方向けに開業にあたっての事業計画書の考え方や記載要領をまとめています。

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ホテル開業向けの事業計画書・創業計画書テンプレート・作成例のダウンロード方法

事業計画書_テンプレート

ホテル開業の事業計画書とは?

ホテル業に新たに参入する場合、計画から開業までには多くの準備が必要であり、建物を建てるだけでも相当の計画、資金、期間を要します。フランチャイズ展開しているホテルに加盟する場合、ホテル事業を承継する場合、さらに既存のホテルを居抜きで事業開始する場合などケースにより当初の事業計画の内容も異なってきます。

また、利用目的の違いにより、ホテルは観光客を対象とした「リゾートホテル」、ビジネス利用目的の「ビジネスホテル」、都市部で多目的に利用する「シティホテル」などに分かれます(カプセルホテルは簡易宿泊所となります)。これらの利用目的に沿ったサービス提供を考えるとともに、施設全体のバリアフリー化や車椅子使用者用客室の設置など、事業計画の段階から整備を要する項目があります。

事業計画書の作成は融資だけが目的とは限りませんが、ここで解説する事業計画書は開業資金として金融機関等から融資を受けるなど第三者に見せるためのものを想定しています。したがって、重要なことは「事業実現性の高さ」「返済能力の確実性」が客観的にアピールできるかどうかということです。

ホテル開業のための許可等について

ホテルを開業するためには、旅館業法により都道府県知事の「旅館業営業許可」を取得する必要があります。許可申請の前にはこの営業許可以外にも、消防法、建築基準法、都市計画法などに関連していることが多いので関連する所轄部署に相談しておくべきでしょう。

また、旅館業では宿泊者名簿を作成する必要があり、外国人観光客などの場合には名簿に国籍とパスポート番号なども必要となります。

以下では、居抜きのホテル施設を利用して事業を始めるにあたって、融資を目的とする事業計画について解説しています。

ホテル開業の事業計画書のひな形、テンプレート

ホテル開業の事業計画書のひな形、テンプレート

事業計画書のフォーマットについては、融資元から提示される場合があります。事業計画書自体はコンパクトにまとめていても、その計算根拠を求められた場合に詳細資料をすぐに提示できるように準備しているほうが安心です。

ここでは、一般的な事業計画書としてホテルの事業計画書・創業計画書のテンプレート・作成例のひな形に沿って解説します。

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ホテル開業の事業計画書の書き方・記入例

説得力のある事業計画書を書くためには、必要な項目が網羅されており、かつ、それぞれが相互に関連しあって全体を成り立たせていることが重要です。以下に挙げる個々の項目は、それぞれの関連性、整合性を考えて記載しましょう。

創業の動機・目的

最初の項目として、創業に至った動機(きっかけ)や目的を簡潔にまとめます。目的を記載する場合は、「〇〇地域でシェア1位になる」「〇〇においては、予約でいっぱいの店舗にする」など定性的に書く方法や、「年間売上高〇〇円」「客室稼働率〇〇%」などと定量的に書く方法があります。

ただし、融資目的の事業計画書には現実離れした目標値ではなく、実現性のある目標設定が求められます。

職歴・事業実績

事業者の職歴として、サービス産業、特にホテル経営に携わったことがあれば積極的に記載しましょう。

取扱商品・サービス

ひな形では、上から取扱商品・サービス、ターゲット・戦略、競合・市場分析の順に記載するようになっています。これらの項目は相互に関連しているため、一貫性を持たせつつ、それぞれにおいて具体的な内容を記載するようにします。

・取扱商品・サービス

独自のサービスや客室の種類や特徴、さらにはレストランやコワーキングスペースなど施設の情報を詳細に記載します。
利用客に何を伝えたいかを明確にし、そのイメージに沿ったサービスや空間を作成できているか確認しましょう。

・ターゲット・戦略

想定する主な顧客層のニーズに合わせた戦略を練ります。
例えば、ビジネス向けにはアクセスのよさや会議施設、観光客向けにはロケーションや観光情報提供などと、ターゲットのニーズに応じた戦略を練ります。

・競合・市場分析

競合他社の調査を行い、価格帯、サービスの質、顧客の評価などを比較し、市場における自社の強みと弱みを把握し、それを踏まえた戦略を立てることが重要です。

取引先・取引関係

販売先(顧客)はコンセプトに合わせて個人または法人を記載するとします。ホテル業では飲食料品、客室の備品、清掃用具などに係る仕入先がありますが、人件費をはじめコスト削減を考慮した管理システムの導入についても考える必要があります。

従業員

開業するホテルの規模・サービスに見合った従業員を記載します。従業員の募集の前に労働時間や休暇などの制度を明らかにし、研修制度も検討しておきましょう。

借入の状況

借入金の現況を漏れなく記載します。個人事業主や法人役員自身の借入金も記載し、次項からの資金計画では個人的な借入金を合わせた返済額を上回る収支となるように考える必要があります。

必要な資金と調達方法

初期投資としての設備資金と運転資金に分けて考えます。

初期投資には改装費、什器備品費、車両費、人材募集費用、広告宣伝費やシステムツールを含む事務用品費などホテルの形態やコンセプトに合わせ必要なものを見積もりましょう。実際に見積依頼をして金額を確認することも大切です。

運転資金とは、ホテル開業後、安定収益が出るまでの期間に必要な資金となるため、社会保険料を含む人件費、賃借料、仕入、支払利息水道光熱費等々多岐にわたります。ある程度、不測の事態も想定して予備資金を考えておきましょう。

事業の見通し

事業の見通しについては、開業当初の月平均と軌道に乗った後の月平均を記載します。損益計算書の形で書きますが、必ず詳細な資料を作成した後、事業計画書には概要を記載するようにしましょう。

売上高は、客室収入であれば平均客室単価に客室稼働率を掛け、季節変動分を調節します。
それ以外に駐車場や宴会場、レストラン、テナント収入があればすべて合計します。これらについては、近隣の競合ホテルの値が参考になることがあります。

費用については、上記の運転資金で考えたものについて、本格稼働前後の違いを説明できるように記載します。

ホテル開業の事業計画書作成のポイント

ホテル業に限らず、一般に宿泊業は景気の動向や季節、イベントなど外部からの影響を受けやすく、繁忙期と閑散期の売上高にはバラツキが見られ、安定的な経営をするためには常に工夫が必要です。また、客室稼働率が下がっても人件費などの固定費は必要となるため、一定の資金を確保する必要もあります。

事業計画書を作成するにあたって、上記の要素を踏まえつつ、次の点もおさえておきましょう。

  • 文章はなるべく専門用語は使わず、読みやすく分かりやすさを優先する
  • 数字は正確に記載し、必ず別途計算根拠をもっておく
  • 提出する前に第三者にレビューしてもらう

ホテル経営についての詳細は、「ホテル経営の基礎知識!儲かる?失敗しないためのポイントも紹介」が参考になります。また、「事業における収支計画書とは?テンプレをもとに書き方や記入例を解説」も事業計画書を策定するにあたり、ぜひご一読下さい。

また来たくなるホテルを開業しよう!

ホテル業では単に宿泊サービスを提供するだけではなく、利用客一人ひとりのニーズを察知し、期待を超えるおもてなしを提供する「ホスピタリティ」の考え方が重要です。細部にまで目が行き届き、心のこもったサービスを提供するためには経営者や従業員が常に「ホスピタリティ」を意識することが必要です。

その結果、利用者に「また来たい」と思ってもらえ、リピーター獲得や口コミ集客に結びつき、よい循環が生まれます。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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