- 更新日 : 2022年9月26日
開業届に印鑑は不要!個人事業主に必要な印鑑まとめ
個人事業を始めた時に税務署に提出する開業届には、印鑑を押さなければなりません。事業を開始するにあたって、「新しいハンコも準備した方が良いのでは?」と考えることもあるのではないでしょうか。
本記事では、個人事業主の印鑑について説明します。従来型の商習慣における書類に押すために必要な印鑑について知っておきましょう。
目次
開業届に印鑑は必要?
税務署に提出する開業届には印鑑は不要です。開業届に限らず、一部の書類を除いた税務関係書類全般において、印鑑は不要となりました。
開業届の印鑑は不要
個人事業主が事業開始の時に提出する開業届に、印鑑は不要です。
令和3年4月1日以降、開業届だけでなく、税務関係書類については次に掲げるものを除いては押印不要となりました。
- 担保提供関係書類や物納手続関係書類で、
実印の押印・印鑑証明書の添付が求められる書類 - 相続税、贈与税の特例に係る添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類
同様に、地方税の開業届にあたる「事業開始等申告書」なども各都道府県税事務所に提出する際に印鑑は不要です。
これらの開業届提出時にはマイナンバーカードや身分証明書により本人確認が行われます。したがって、押印は不要といっても、他人が勝手に本人になりすまして開業届を提出することはできません。
開業届は控えも一緒に提出し、控えに税務署受付印を必ず押してもらい、開業届を提出した根拠としましょう。
郵送で開業届を提出する場合には、2部用意して、うち1部には「控え」と明記の上、返信用の切手を貼った封筒を同封しておきましょう。また、開業届をe-Taxなどで電子申請で提出する場合には、送信データと受信通知を保管しておきましょう。
出典:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
個人事業の開業・廃業等届出書を加工して作成
提出時にも印鑑は不要?
税務署の窓口で、開業届に訂正箇所が見つかることがあります。この場合には、二重線で訂正します。
開業届の控えは、その後、各種申請や開業の根拠資料として使うことがありますので、訂正箇所が多くなるような場合には書き直しをおすすめします。税務署の窓口において訂正箇所がある時は、税務署の担当者に訂正の旨を伝えておくとよいでしょう。
個人事業主に事業用印鑑は必要?
法人の場合は、会社設立時に会社の印鑑の登録を行うことが通例ですが、個人事業主はあえて事業用の印鑑を作らなくても問題はありません。
事業用印鑑と個人の印鑑を分けなくてもいい
個人事業主も、見積書や請求書、納品書、領収書など取引に使う書類には、印鑑を押すことになります。事業に使う印鑑は、個人で使っている印鑑でもかまいません。
なお、個人名ではない屋号を使っている場合、屋号と印鑑が異なると違和感があります。この場合には、個人とは別の屋号の印鑑を用意しておくと良いでしょう。
このように個人事業主は、事業用の印鑑を作成しておき、従来型の商取引についてプライベートとは区別した印影を使えるようにしておくのが「公私の区別」の観点から好ましいと言えます。
職印・資格印の届出が必要な業種も
弁護士、司法書士、行政書士などは、職務で使う印鑑(職印・資格印)を届出・登録する制度があります。職印や資格印の届出・登録が義務付けられている場合には、定められた様式の印鑑を用意しましょう。
重要な取引の場面では個人の実印が必要
個人事業主の場合、重要な取引の際には、市区町村に登録している個人の実印と印鑑証明書が必要になります。事業用の屋号印などを用意していても、実印の代わりにはなりません。
実印が必要になるのは、以下のような場面です。
金融機関から融資を受ける時
銀行等に事業資金を融資してもらう場合、金銭消費貸借契約書やローン契約書等の必要書類には個人の実印を押す必要があります。
不動産取引をする時
不動産を売却する時には、個人の実印が必要になります。不動産を購入する時には、必ずしも実印は必要ありませんが、ローン契約を結ぶ時には実印を求められます。不動産の賃貸借契約では通常、実印は必要ありません。
自動車を購入する時
自動車購入時には、登録手続きや自動車保険加入、ローン契約などのために個人の実印が必要な場合があります。
会社を設立する時
個人事業を法人化する時には、代表者の実印が必要になります。(ただし、令和3年2月15日からは登記申請をオンラインで行う場合においては、会社の実印提出は任意となっています。)
個人事業主が事業用の印鑑を作るメリット
個人事業主にとって事業用の印鑑は必須のものではなく、実印の代わりになるものでもありません。しかし、個人事業主も事業用印鑑を作ると、以下のような点でメリットになります。
取引先からの信頼度が上がる
例えば、初めて取引する相手の書類に押してある印鑑が100円ショップなどで売っているような三文判の場合、「本当に信用できるのだろうか?」という気持ちになるものです。ビジネス用にはきちんとした印鑑を用意しておいた方が、取引先の信用を得やすくなります。
特に、屋号を使う場合には、会社と同様の屋号印があった方が、取引先にも安心感を与えられます。屋号とは全く別の個人名の印鑑は違和感がありますから、屋号の印鑑を用意しておきましょう。
仕事に対するモチベーションが上がる
印鑑には材質もいろいろあり、開運につながるアイテムとも言われています。開業時に新しい印鑑を作ることで、事業を成功させようという気持ちも高まるかもしれません。
会社の場合には、設立時に実印のほか角印や銀行印といった印鑑セットを用意するのが一般的です。個人事業主も開業時に会社と同様の印鑑を用意することで、プライベートと仕事のメリハリをつけることができるでしょう。
本名の印鑑を押さなくてすむ
フリーランスの方の中には、ペンネーム等を使っており、本名を知られたくないという方もいらっしゃいます。ペンネーム等の印鑑を用意しておけば、日常的な取引に使う請求書や領収書にはその印鑑を押すことができるので、本名を公開しなくてもすみます。
一般的な事業用印鑑の種類と用途
事業用印鑑として一般にどのような種類のものがあるのかを以下にピックアップします。
個人事業主が法人と同じような印鑑を準備する場合には、丸印(屋号印)・角印・銀行印に加え、住所などのゴム印があります。
丸印
会社の場合、法務局で印鑑登録した印鑑が実印となります。実印は、契約書や登記申請書等の重要書類に押します。
会社の実印は代表者印とも呼ばれ、一般には丸印が使われます。丸印の外側に会社名が、内側には「代表取締役印」または「代表取締役之印」の文字が入っています。なお、会社の実印には、辺の長さが1〜3センチの正方形におさまるものというルールがあります。
個人事業主の場合にも、会社の実印と同様の「屋号印」を作ってもらうことができます。個人事業主も、重要な契約書等に丸印の屋号印を使うと、取引先からの信頼度も上がるでしょう。
角印
角印はビジネス用の認印のようなもので、一辺の長さが2センチ程度の正方形の印鑑です。会社の場合には、会社名を3列に配置したものが一般的です。
個人事業主も屋号を彫った角印を用意しておき、見積書、請求書、領収書等、日常的に使う書類に押すと良いでしょう。
銀行印
銀行口座を開設する時に使う印鑑です。会社の実印と同様の丸印で、外側に会社名、内側に「銀行之印」の文字が彫られたものが一般的です。個人事業主も、屋号入りの口座を作る時には、屋号が彫られた銀行印を作成しておくと良いでしょう。
一般に丸印(屋号印)と区別するため、丸印より一回り小さいサイズで作成します。
なお、開業届や確定申告書などには押印が不要ですが、納税における振替依頼書などについては金融機関からの求めに応じて銀行印の押印は必要です(電子申告の場合は押印不要)。
住所印(ゴム印)
屋号のほか、住所、電話番号、FAX番号、ホームページアドレス、ロゴなどが入ったゴム印を用意しておくと、書類や封筒などにそのまま押すことができるので便利です。
開業するなら印鑑を用意しよう
個人事業主が開業届に印鑑を押す必要はなくなりました。ただし、開業時に事業用の印鑑を用意しておくと、事業開始後のモチベーションも上がり、取引先からの信頼度も上がりやすくなります。開業する時には、印鑑の準備も併せて行っておくのがおすすめです。
よくある質問
開業届に印鑑は必要?
開業届の「氏名」の後ろに印鑑欄はなくなり、印鑑を押す必要はなくなりました。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主に事業用印鑑は必要?
個人事業主はあえて事業用の印鑑を作らなくても問題ありません。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主が事業用の印鑑を作るメリットは?
取引先からの信頼度が上がること、仕事に対するモチベーションが上がること、屋号の場合には本名の印鑑を押さなくてすむことなどがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
印鑑の関連記事
新着記事
【利益供与】子会社と親会社の具体例と判断基準、会計処理を解説
利益供与とは会社が取引先や資本関係にある会社に対して利益を供与(提供)することです。利益供与は法律で厳しく制限されているため、決まりを守らず行ってしまうと重大なトラブルに発展する恐れがあります。 本記事では、利益供与の定義や子会社と親会社間…
詳しくみる利益供与とは?グループ会社の具体例と判断基準、会計のポイントを解説
グループ会社間の取引については、利益供与が問題になることがあります。グループ会社間の取引において、利益供与は何が悪いのでしょうか。利益供与が法令違反になるケースやグループ間の取引で税務上のリスクが生じるケースなどについて解説します。 利益供…
詳しくみる大企業が子会社を作る理由とは?メリット・デメリット、売却の理由も解説
大企業が子会社を作る理由には、意思決定の迅速化などさまざまな理由があります。大企業の中には、なぜ多くの子会社を抱えたグループ企業もあるのでしょうか。大企業が子会社を作るメリットやデメリット、子会社売却の理由などについて解説していきます。 大…
詳しくみる親会社と子会社の関係とは?経営・社員の力関係やリスク管理、節税対策を解説
親会社とは子会社を支配している会社のことを指します。しかし、どのような状態を支配というのでしょうか。親会社・子会社になることでどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。 この記事では親会社と子会社の関係性についてわかりやすくご説明し…
詳しくみる持株会社と親会社の違いとは?設立の理由や方法、子会社との関係を解説
持株会社と親会社。いずれも傘下にある会社(子会社)の株を保有する会社のことを指しますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。 この記事では持株会社と親会社の違いや子会社との関係、親会社や持株会社を設立する理由についてご説明します。 持…
詳しくみる子会社化や買収で何が変わる?経営権や給料、会計処理の違いを解説
企業の子会社化や買収が行われることがありますが、どのような目的で行われるのでしょうか。そして、何が変わるのかも知っておきたい部分です。 今回は、子会社化や買収で変化することについて解説します。経営権や給与、会計処理がどう変わるのかにも注目し…
詳しくみる