• 更新日 : 2023年11月1日

創業と設立の違いとは?使い方や企業事例、創業支援についても解説

創業と設立の違いとは?使い方や企業事例、創業支援についても解説

企業の歴史や事業の変遷などを説明する際は、「創業●●年」「設立●●年」などという表現をします。この「創業」と「設立」の違いは、「事業を開始すること」と「法人として立ち上げること」の違いです。

この記事では、一つの企業において事業拡大の沿革を説明する際の、「創業」と「設立」について取り上げます。

創業とは?設立との違い

ここでは辞書的な観点から、企業の「創業(そうぎょう)」と「設立(せつりつ)」について見ていきましょう。

創業と設立の違い

「創業」とは、事業を開始することです。創業は、個人事業であれ法人であれ、創業者が事業活動を継続し始めるという意味です。したがって、創業者とはその事業を立ち上げた人やグループを指します。創業家とはその事業をした人の家族や親戚のことです。創業者や創業家は、企業の立ち上げ段階に大きな役割を果たすことが多く、その企業の歴史や文化にも大きな影響を与えます。

一方、「設立」とは法人を設立することです。法人の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を見ると「会社設立の年月日」という欄がありますが、この会社設立年月日は、法務局がその法人の設立登記申請を受け付けた日となります。

そのため、新規で会社を設立した場合は「創業」と「設立」が同じ日になることもありますが、個人事業から拡大してきた会社などは、創業→設立の順序になります。用語としては、創業のほうが設立より広い意味をもつことになります。

英語では、「establishment」「founding」などが創業や設立に当てられます。それぞれの意味については下記のとおりで、「founding」のほうがやや広義となります。

establishment設立The action of establishing; the fact of being established: in various senses of the verb.
(設立する行為、設立の事実、様々な意味において)
founding創業、設立 などfigurative. To set up or establish for the first time (an institution, etc.), esp. with provision for its perpetual maintenance; to originate…
(比喩的。初めて設置または設立すること。その恒久的な維持に備えること。)

参考:Oxford English Dictionary

会社法では「設立日」が重要

会社法をはじめとして、種々の法律のよりどころとされるのは会社の「設立日」です。会社法では、法人格を取得し、法人としての権利義務が発生するのが設立日です。先述のとおり、設立日は法人登記申請日であるので、法務局が開いている平日となります。

また、法人税法上では法人設立後の最初の事業年度の開始の日は、原則としてその法人の「設立日」となります。法人はたとえ赤字であっても、法人事業税や法人住民税についてなんらかの負担がありますが、法人税による設立日と考え方は同じです。

創業と創立・開業・起業との違い

ここで、そのほかの用語もあわせて確認しておきましょう。

創業と創立の違い

「創業」と「創立」は、どちらも事業を開始したことを意味する言葉です。しかし、「創業」は事業を始めることに対し、「創立」は「創設」などに近く、組織などを「初めて成立させる」ことです。

よく学校などでは「創立●●周年」という言い方をします。これはまず、学校法人を創立し、その後に、小・中学校などを設立した場合の法人設立から数えた年を言います。また、会計における勘定科目に「創立費」があります。創立費は、会社設立より前において会社設立に要した費用を言います。この「創立」には事業開始前という意味があります。

創業と開業の違い

「創業」と「開業」は、どちらも事業を開始したことを意味する言葉です。しかし、「開業」には、売買を中心とした個人の生計を立てるための仕事である「商売」を意味するイメージが強いと言えます。

現在、個人事業主は「開業届」を税務署に提出することになっていますが、このように個人事業の立ち上げに「開業」を使うことが多いです。

創業と起業の違い

「創業」と「起業」は、どちらも事業を起こすことを意味する言葉です。しかし、これらの言葉を使用する場合の時間軸が少し異なります。

「起業」は、「来年起業の予定です」「昨年起業しました」とどの時点でも使えますが、

「創業」は「3年前に創業しました」とは言いますが、「来年創業の予定です」とはあまり言いません。また、「創業」は新しいものを創り出す「プロセス」に焦点を当て、新企業の設立につながる場合に使われることが多く、「起業」は「起こすこと」に焦点を当てる傾向があります。

創業の使い方・例文

似たような用語がたくさん出てきましたので、いくつか例を挙げておきます。文脈ではどちらでも使えるものもありますが、慣用的な使い方を示しています。

創業と設立A社は1950年創業です
個人商店から5年して会社を設立した
創業と創立先代が江戸時代に古着商として創業した
明治時代に入って会社が創立された
創業と開業大手IT企業がAI事業を創業した
町の商店街に新しいラーメン屋が開業した
創業と起業C社は創業して70年になる
私は定年後に起業する予定です

創業と設立が異なる企業事例

以下、実際に創業と設立が異なる起業の事例を見てみましょう。

ファーストリテイリング

ユニクロのブランドで知られる株式会社ファーストリテイリングは、創業したのちに設立しています。創業が1949年3月で、その後資本金600万円にて商事会社を設立したのが1963年5月となっているため、創業から14年してからの設立となります。

参考:沿革|ファーストリテイリング

リンガーハット

長崎ちゃんぽんで有名な株式会社リンガーハットは、1962年7月に「とんかつ浜勝」を創業しました。そしてその2年後の1964年3月に株式会社「はまかつ」を設立しました。

参考:沿革|リンガーハット

高島屋

老舗デパートである高島屋ホームページには、「1831年高島屋創業 初代飯田新七、京都で古着綿商を始める」とあります。1831年はまだ江戸時代であり、個人事業としての創業です。「1909年 12月高島屋飯田合名会社設立」とありますので、会社設立は78年後になります。

参考:沿革|高島屋

創業支援とは?

創業や開業、起業などが出てきましたが、ここでは個人が起業するのに使いやすい公的な創業融資についてご紹介します。自己資金では足りない場合や創業について相談したい場合に知っておくとよいでしょう。

新創業融資制度

日本政策金融公庫は、政府が100%出資する特別な株式会社です。政府の政策である小規模企業などの経営の成長や安定のための支援を行うことを目的としています。

この日本政策金融公庫には、新たに事業を始める人や事業開始後1年以内である人の融資制度として、「新創業融資制度」が設けられています。資金の使い道は、新規事業や事業開始後に必要な設備や運転資金となっていますので幅広く対応できます。融資限度は3,000万円(うち、運転資金は1,500万円)であり、担保や保証人が不要とされます。

参考:新創業融資制度|日本政策金融公庫

認定経営革新等支援機関

認定経営革新等支援機関は、中小企業等についての専門的知識など一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関です。具体的には、税理士や公認会計士、中小企業診断士、商工会議所、金融機関などで認定を受けた人や団体があります。

経営相談、事業計画、専門的課題の解決などに利用できます。特に地域の商工会や商工会議所には各種の相談を受け付けている場合もあり、おすすめです。

参考:認定支援機関 | 中小企業庁認定支援機関検索|中小企業庁

まず、手続きに必要な用語を覚えよう!

「事業を始めること」についての用語にはいろいろな種類があることがわかりました。これらの中で押さえておくべきなのは、実際に提出する書類に係わる用語です。例えば、開業したら税務署に提出するのは個人の場合には「開業届」であり、法人の場合には「法人設立届出書」です。ここで、個人と法人は「開業」と「設立」として明らかに区別されています。

これらの書面に記載する「開業日」や「設立年月日」は後々他の書類でも記載することがあります。自分自身にとって必要な用語がなんであるかを認識した上で、他の用語を参照することが大切です。


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