• 作成日 : 2024年6月28日

合同会社と株式会社の違い【簡単に】税金や経費の違いはある?

「会社」といえば「株式会社」が一般的なイメージですが、いざ自分で会社設立となった場合、調べてみると「合同会社」という選択肢があることに初めて気づく方もいるのではないでしょうか。

この記事では、株式会社と合同会社の違い、それぞれのメリット・デメリットなどを解説していきます。

自身の会社の形態を選ぶ際の参考になれば幸いです。

合同会社と株式会社の根本的な違いとは?

株式会社とは?

株式会社とは、会社が株式を発行して集めた出資金により事業を運営する仕組みをとっている法人をいいます。

会社を設立し運営していくには資金調達が欠かせません。株式会社は設立の際に株式を発行し、お金と引き換えに出資者に出資金額に応じた株式を渡します。出資者は会社の「株主」となり、当該会社が事業運営で得た利益の分配を受けるなどの権利を得ます(会社法第105条)。

出資者(株主)は同時に、会社のいわばオーナー的地位を得ます。株式会社は経営者ではなく株主がその所有者なのです。したがって、取締役などの実際の経営者(たち)は株主が開く「株主総会」によって選ばれ、その委任を受けなければなりません。株式会社の最も大きな特徴は、この「会社の所有と経営の分離」にあります。

ちなみに株主は会社の所有者ではありますが、会社の債務に関しては自身の持つ株式の引受額以上の責任は負いません(会社法第104条)。これを有限責任といい、ある程度安心して会社への出資が行えるようになっています。

一見複雑にみえますが、中・小規模の株式会社の場合、たいていは経営者と所有者が一致しています。株式は必ず第三者に募集をかける必要はなく、設立時に設立者(発起人といいます)が発行株式を全て引き受けてもよいからです(会社法第25条)。全株式を所有した設立者が、形式上株主総会を開き、自身を経営者として選任すればよいのです。

ちなみに会社法上、株主は会社の「社員」となります。会社に勤務している人は「従業員」と呼ばれます。

合同会社とは?

一方、合同会社は経営者と出資者が名実共に一致する形態の会社です。出資者の全てが業務執行権を持っています。2006年の会社法改正時に誕生した新しい会社組織で、「持分会社」ともいいます。

設立者が100%出資するのであれば、株主総会を開くことなくそのまま経営者となれますが、複数の出資者がいた場合はその全員が経営者になります。

そして、合同会社も株式会社と同様に、出資者は出資額以上の責任を問われない有限責任となります。

ちなみに、「会社」と名が付く組織形態は、株式会社、合同会社の他に合資会社、合名会社があります。合資会社は出資者が無限責任社員(会社の税金や債務に関し出資者個人の財産にまで影響がおよぶ)と有限責任社員で、合名会社は出資者全員が無限責任社員で構成されます。

無限責任を負うリスクを避けるため、現在は新たに設立される会社でこの2形態が選ばれることはほとんどありません。

合同会社・株式会社、どちらがおすすめ?

2021年度の調査結果によると、日本における会社数約286万社のうち、株式会社は91%強と、圧倒的な割合を占めています(国税庁長官官房企画課調べ)。合同会社の割合は5.6%に過ぎません。

しかし、新設法人の割合で見ると、2023年に全国で新たに設立した法人15万社強のうち、株式会社と合同会社の占める割合はそれぞれ66.1%、26.5%となっており、合同会社を選択する割合は少なくないことに気づきます。

さらに、合同会社を選択する会社の数は年々増加しており、2023年は前年より10%近く増加して4万社以上となっています。

※東京商工リサーチ調べ。新設法人には一般社団法人やNPO法人などの「会社組織」ではないものも含まれています。

合同会社は2006年にできたばかりの会社形態なので、総会社数に占める割合が低いのは当然といえ、むしろ近年の新設会社での割合や増加率に注目すべきでしょう。

では、新たに会社を設立する場合、合同会社と株式会社のどちらを選べばよいのでしょうか。メリット・デメリットを比べつつみてみましょう。

合同会社がおすすめの人

合同会社は経営者が出資し、会社の所有者になる形です。

合同会社のメリット

合同会社で設立するメリットには以下のものがあります。

  • 設立コストが株式会社より安い
    会社設立時に最低限必ずかかるコストは、株式会社の20~24万円に比べ、合同会社は6~10万円で済みます。株式会社で必要な「定款認証」が不要など、コストのみならず設立手続きもある程度簡便になります。
  • 経営の意思決定がしやすい
    会社法は株式会社に対し、一定の事項につき株主総会での決定が必要と定めています。
    一方合同会社は出資者=経営者なので、経営陣の話し合いのみでスピーディーに意思決定ができます。
    また、株式会社と比べ法的制限が少なく、会社の経営方針が自由に決められる傾向にあります。例えば議決権の割合も定款で決められ、出資額の多寡にかかわらず、全員の議決権を同等にすることが可能です。
  • 設立後の手続きが楽
    株式会社であれば、取締役などの役員の任期は延ばせても10年が限度で、引き続き役員を続けるには重任登記が必要です。
    しかし合同会社には任期を区切る規定はないので、登記手続きは不要です。

また、株式会社のような決算公告を行う義務がないなど、合同会社は設立後の手続き面も何かと楽になります。

合同会社のデメリット

一方、合同会社にはデメリットもあります。

  • 認知度・信用度の低さ
    新しい形態ゆえにどうしても合同会社の認知度は低くなります。最初に書いたように、通常「会社といえば株式会社」と考えられ、実際数も多いことから、「株式会社」と銘打っている方が信用度についても高くなるでしょう。求人についても、まだ株式会社より集まりにくい傾向にあります。
  • 新たな資金調達がしづらい
    株式会社であれば新たに株式を発行して出資者を募ることができますが、合同会社ではその方法がとれないため、資金調達に苦労するかもしれません。

以上を踏まえ、「株式会社より合同会社がおすすめ」といえるのは、

  • できるだけコストを抑えたい
  • 1人で設立し、経営する
  • 個人事業主などからの法人成りで、既に経営や取引先などが安定している
  • 出資額は少ないが、経営や自社業務に詳しい人の意見を十分に取り入れたい

といった人になります。

株式会社がおすすめの人

株式会社のメリット・デメリットは合同会社のそれを逆に見る形になるので、簡単に述べます。

株式会社のメリット

  • 認知度、信用度が高い
  • 株式発行による新たな資金調達がしやすく、大規模な事業展開も可能
  • 所有と経営の分離により、会社の意思決定を慎重に行える

株式会社のデメリット

  • 設立、ランニングコスト共に合同会社より高くかかる
  • 決算公告や変更登記などの手間がかかる
  • 株式上場した場合、「もの言う株主」や敵対的買収などのリスクがある

以上より、株式会社は

  • 将来的に事業展開を見据えているため、資金調達できるようにしたい
  • 信用度を得て取引先の開拓や優秀な人材の採用などをしたい

人におすすめの形態となります。

合同会社と株式会社の違い【一覧表】

合同会社と株式会社の主な相違点について、一覧表でまとめてみました。

合同会社株式会社
資本金1円以上1円以上
出資者1名以上1名以上
出資者の呼称社員株主
出資者責任有限責任有限責任
設立費用6万円~20万円~
所有と経営の分離所有者と経営者が一致所有者と経営者が分離
資金調達融資を受ける(要返済)株式発行(返済不要)
重要事項の決定方法社員の同意株主総会
役員の任期なし上限10年
決算公告義務なしあり
議決権一人一議決権株式(出資)の割合
利益配分自由株式(出資)の割合
社会的信頼度株式会社より低い高い

最低資本金や最低出資者数などの設立時重要事項は合同会社も株式会社も同じですが、設立後の経営に関しては、並べてみると違いの多さが分かります。

相違点のうち、お金に関する面に注目して比較してみましょう。

会社設立費用の違い

「おすすめの会社」の項で少し触れましたが、会社を設立するにはどうしてもかかってくる費用があるところ、合同会社の設立費用は、株式会社のそれと比べると安くなっています。

会社と名乗るには法人として設立登記をしなければならず、登記申請には登録免許税の支払いが必要です。この費用が合同会社では最低6万円で済みますが、株式会社だと最低でも15万円かかるのです。計算方法は以下のようになります。

合同会社の登録免許税額=資本金×7/1000か6万円のいずれか高い方

株式会社の登録免許税額=資本金×7/1000か15万円のいずれか高い方

また、どちらの会社も定款の作成は義務ですが、株式会社はこの定款に公証人の認証が必要なため、その手数料がさらに5万円ほどかかります。

そこで、表で示したような費用の違いが出てくるのです。

税金の違い

合同会社も株式会社も共に「法人」ですから、法人に関する税を納めます。具体的には法人所得税、法人住民税、法人事業税などです。これらが全て、税率なども規定にのっとり平等に、合同会社にも株式会社にもかかってきます。違いはありません。

ただ、「税金」のくくりでいうと、株式会社は役員の任期(最長10年)満了後、重任の場合であってもその旨の変更登記をしなければならず、ここでまた登録免許税が1万円必要(資本金の額が1億円以下の場合)になるという違いは出てきます。

経費の違い

株式会社は会社の財務状況や経営成績などの一定事項を、年に一度、定時株主総会終結後速やかに公告する「決算公告」義務があるため、公告掲載料がかかります。

決算公告の方法は、「官報に掲載して行う」と定款で規定している株式会社が大多数で(2022年の調査で約84%)、掲載費用は7万円ほどです。(余談ですが、公告は公に告知できればよいため、定款の規定があれば自社のホームページに掲載しても構いません。ホームページを持っている会社はこの方が安上りです。)

合同会社は公告義務がないので、費用も手間もかかりません。

他にも、顧問税理士を依頼する費用が、株式会社より合同会社の方を低めに設定している税理士が多い傾向にあります。また、株主数が多い株式会社なら、総会にかかる費用もあるでしょう。細かいことかもしれませんが、積み重ねでみると、やはり合同会社の方が経費を抑えられるといえます。

合同会社と株式会社の違い【用語解説】

株式会社と合同会社では、会社形態の違いにより、似たような事項でも名称が変わってきます。
以下の項目では、株式会社における名称や仕組みを説明した上で、合同会社ではどうなっているかを解説します。

取締役、取締役会とは?

取締役とは、株式会社で業務(経営)を行う者の名称です。取締役は株主によって選任され、取締役が2人以上いる場合の経営内容は、原則その過半数の意見一致により決定します。

取締役のうち、その会社の代表としての役割を果たすのが「代表取締役」です。代表とは、対外的にその会社を代表する権限(契約の締結や、代表印の押印など)を持つということですから、取締役が1人なら、当然にその者が代表取締役となるわけです。逆に大企業であれば、複数の代表取締役がいる場合も多いのです。

取締役を3人以上置いている株式会社は、必要であれば定款で取締役会を設置することができます(株式上場会社などは取締役会設置が義務)。取締役会は会社法上、業務の執行や代表取締役の選定などの決定権を持つため、株式会社でありながら業務を迅速に決定、執行することができます。また、相互に取締役を監督することができるため、1人の取締役による独断や不正を予防する効果もあります。

一方合同会社では取締役という役職はありません。出資者は皆等しく「社員」であり、原則社員全員が業務執行権を持ちます。株式会社の取締役会に相当する組織もありません。

しかし、所有と経営が一致しているとはいえ、あまり社員数が多いと業務決定までの決議にかえって時間がかかる恐れがあります。

そのため、合同会社では社員から「業務執行社員」および会社代表権のある「代表社員」を選ぶことができます。他の一般の社員は業務執行に携わることはできません。

監査役とは?

監査役は、やはり株式会社のみに置かれる役職で、株主が選任し、取締役の職務執行の監査や、監査報告を作成する権限を持ちます。会社の経営業務は行いません。

監査役の設置の有無は自由で、各株式会社の定款の定めによります。ただし、前述の取締役会設置会社をはじめ、いくつか監査役設置義務がある場合があります。

監査役は各取締役の業務につき、不正や法令違反がないか、意思決定が経営判断原則に基づいているものかなど、会社経営が正常な状態で行われるための監査を行います。また、会社が作成した会計書類の適正性についても監査します。健全な会社運営を維持するための重要な役職です。

一方、合同会社には監査役という役職はありません。社員が相互に業務の執行につき確認、監督することになります。

合同会社は小規模な会社が向いているというのはこういう部分もあります。業務執行役員が多く、多角経営を行う大規模の会社で、互いに職務や経営判断の適正性をチェックし合うというのはかなり困難なことでしょう。

持分の譲渡とは?

株式会社は、出資により株式を得た株主が所有者となるため、「株式」会社と呼ばれます。一方、合同会社は出資による会社への権利を持分と呼ぶため、合資会社、合名会社と合わせ、株式会社と対比する形で、会社法上「持分」会社と呼ばれます。

株式会社の株主は原則として、所有する株式を自由に譲渡(売り渡す)できます(株式譲渡自由の原則、会社法第127条)。しかし、日本の大部分の株式会社は定款で、株主の株式譲渡に制限をかけ、株主総会もしくは取締役会の許可を得なければ譲渡できないとしています。これは特に中小企業の場合、株主の数が少なく、各株主の持株数が多いことが多いため、簡単に株式譲渡できると事業が成り立たなくなる恐れがあるからです。

合同会社の社員が各々有する「持分」に関しては、自由に譲渡はできません。社員全員の承認が必要なのが原則です。合同会社は元々中小企業向けの会社形態なので、株式会社と違って、社員の持分譲渡がその会社の業務執行に影響を与えることが前提となっているからです。ただし、業務を執行しない一般社員の持分は、業務執行社員が全員承認すれば譲渡が可能です。

決算公告とは?

決算公告については前章でも少し述べましたが、株式会社のみに課せられた義務です。自社の財政や経営状況を年に一度、誰もが知れる状態にすることで、債権者や取引先に対し安全を確保することが目的です。

合同会社には決算公告義務はなく手続き的には楽ですが、第三者的には、合同会社より財政状況を公にしている株式会社の方と取引をしたいかもしれません。信頼性の高低の一因ともいえそうです。

もっとも、実際には登記簿記載の通り官報にて公告をしている株式会社の割合は、2022年を対象としたデータ調べでわずか1.8%であり(東京商工リサーチ調べ)、有名無実となっているのが現状のようです。

定款の認証とは?

定款とは、その会社がどんな会社であるかをまとめた書類です。誰がどこで、何をどのように行うかにつき、株式会社であれば発起人、合同会社であれば設立時社員の合意により作成されますが、株式会社の場合は先述のように当該定款に認証が必要となります。

認証とは、公証人がその定款は発起人の意思により適正に作成されたことを証明することです。また、認証に先立ち、定款内容に法令違反がないかについても公証人が審査します。第三者のチェックが入っている点で、信頼性を確保し、紛争を未然に防ぎます。

役員の任期とは?

株式会社の取締役の任期は最長2年が原則ですが、株式譲渡制限会社であれば最長10年まで延ばすことができます。

ある程度大規模の会社であれば、経営の活性化や役員の適性を見定める目的で短めの任期の利点を活かせます。一方一人社長や家族経営などの小規模会社であれば、面倒な手続きを減らすため10年を任期として問題ないでしょう。

任期満了後は、再任でも新たな役員選任であっても、必ず変更登記をしなければなりません。

合同会社は、社員が業務を執行する形態ですから任期という考え方はありません。業務を執行しなくなった社員は退社するか、一般社員になるかです。

利益配分とは?

合同会社も株式会社も利益の追求を目的としています。そして株式会社の場合は株主への「配当」、合同会社であれば「利益分配」として、会社が得た利益を社員に分配することができます。

株式会社は、株主の持株数の割合に比例した配当が義務付けられていますが、合同会社の利益配分は、定款の規定で自由に定められます(もちろん出資割合のままでも問題ありません)。

例えば出資額は少ないけれど、会社の業績に非常に貢献している社員に、利益を多く配分することなどができるのです。

ただし、自由な利益分配は、他の社員の不満が出ないよう慎重に定める必要があるため、一律に割合で配当する株式に比べると面倒という一面もあります。

合同会社は株式会社より手間とコストがかからない

合同会社は設立時、設立後ともに株式会社より手間とコストを抑えることができる点、所有と経営が一致している点などで、中小企業に向いた会社形態といえます。一方でデメリットもあるため、会社設立の際にはしっかり株式会社との違いを理解したうえで検討するようにしましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事