- 更新日 : 2025年2月26日
フリーランス・個人事業主必見!家事按分を活用して生活費を経費にするための5つのポイント
フリーランス・個人事業主になると、様々な税金の負担が大きく感じるようになります。そのような時には、普段使っているお金の一部を費用として仕分けられる家事按分を活用した節税がおすすめです。
しかし一方で、経費に計上する金額によっては税務署に否認されてしまう可能性があります。今回はトラブルを避けるために押さえておきたい、5つの支出項目について解説します。
目次
家事按分とは
自宅で仕事している場合などには、プライベートな支出と事業に関する支出が混在していることが多いです。本来、事業に関する支出しか経費にはできませんが、家賃や光熱費の一部は売上を生み出すために必要な経費です。
このようにプライベートな支出と事業に関する支出が混在している場合、全体における支出のうち、事業に関する支出を合理的な基準によって分けて経費にすることを家事按分といいます。
家事按分するためには、合理的基準である按分比率が必要です。しかし、費目ごとの按分比率は決められておらず、フリーランス・個人事業主が各自で基準を定めることができるのです。
その支出のうち何%が事業に関するものなのか、割合を客観的に判断し、明確な根拠が提示できれば問題ありません。では、具体的にどのくらいになるのか5種類の項目を見てみましょう。
1.家賃
家賃の場合は、毎月の家賃に対して仕事で使用している㎡数をもとに割合を算出します。
▶ 例
2LDKマンションのうち1部屋を仕事として使用している場合
例えば、2LDK65㎡マンションのうち1部屋を仕事として使用している場合、1部屋の面積が6畳だとするとおよそ10㎡となります。全体に対する割合は10/65=0.1538≒約15%となり、毎月の家賃9万円のうち約1万4000円を経費として計上することができます。
▶ 例
リビングなどの一角で仕事をしている場合
リビングの一角などで仕事をしている場合は、リビング全体のうち仕事で使うスペースを計上することになります。その場合、パーティションなどできちんと区切ったり、仕事で使う以外の物を置いたりしないなどのひと手間が必要になります。家事按分をして必要経費とするのであれば、生活と仕事とが完全に分離されている状態にしておくことが望ましいです。何より、税務調査で質問された時にしっかりとした明確な根拠を提示できることが重要になります。
2.電気料金
フリーランスの中でもパソコンを使う人にとって電気料金は重要な経費となります。按分する方法として、作業時間や作業日数、コンセントの数などがあります。
例えば、株のトレーダーなど一般の会社員とは異なった時間帯に仕事をしている場合は、仕事をした分の時間を電気代として計算するとよいでしょう。
また、家族と同居している場合はあらかじめ仕事用のコンセントを決めておき、その割合で計算すると楽になります。
どの方法が割合として明確な根拠になるかは事業形態によって変わってきます。いずれにせよしっかりと理由を説明できる方法で計算したほうがよいでしょう。
3.ガス、水道費
事業に直接影響を与えていることが明確に説明できるのであれば、ガスや水道費も経費として計算することができます。
例えば、料理教室を開いている場合には「ガス、水道代が売上を得るために事業に必要である」と説明しやすく、経費として計算できるでしょう。
しかし、Webライターなどの仕事をしている場合には事業に必要不可欠であると説明することは難しいと言えます。そのため、安易に家事按分すると指摘を受ける可能性があります。
4.通信費
例えばスマートフィンのテザリング機能を利用してネットに接続している場合、それらの利用料金を経費に含めることができます。ただし、そのスマートフォンは事業用であることを証明することができる必要があります。
そのため、「プライベート用の携帯電話は別で契約する」などの対応が必要になります。また、インターネットが事業のために不可欠であることを明確にしないと、税務署から事業上必要がないと判断される可能性があるため、注意が必要です。
しかし、しっかりと事業用であることを説明できれば、携帯電話代からプロバイダー料金までほぼ全額を経費に含めることができるようになります。
5.自動車関連費用
事業活動に必要であれば、自家用車にかかる費用なども家事按分することができます。自家用車を営業車として家事按分する場合、以下などに事業割合をかけて経費計上することが可能です。
- 自動車の購入代金
- 駐車場費用
- ガソリン代
- 自動車税
- 車検代
事業割合としては、走行距離数を使うのが一般的です。また、購入代金そのものは資産に計上し、減価償却という方法で家事按分していくことになります。
家事按分の対象外になるケース
支出を家事按分して経費にするためには、確実に事業をする上で必要な支出でなければなりません。事業をする上で必要でない支出や、明確な基準で家事按分できないものは、家事按分の対象外になります。
例えば「私服」や「自宅で使っている家電」などは、家事按分の対象にはなりません。私服は、仕事をしている時もプライベートでも身につけているため、家事按分ができると考える人もいるかもしれません。しかし、私服は事業をする上で直接必要な支出ではないため、家事按分はできません。ただし、モデルなど人に見られる仕事をしていて、衣装を仕事でもプライベートでも着ている場合は、事業に直接必要な支出であるといえるため、その衣装を家事按分することはできます。
自宅で使っている家電も、その購入代金を家事按分して経費にすることは難しいです。例えば、仕事のみをする部屋が決まっていて、その部屋にエアコンを設置した場合、その部屋が仕事のみで使っている証明ができれば経費にできます。しかし、その証明は通常難しいため、一般的には経費にすることはできません。
家事按分により算出した経費が否認されたらどうなる?
家事按分により算出した経費が税務調査で否認されたら、修正申告をします。
修正申告とは、すでに提出した確定申告書の内容に間違いがあった場合において、追加で税金の支払いが発生する場合に行う申告のことです。修正申告書を作成して、税務署に提出します。家事按分により算出した経費が、税務調査で否認されるということは、その分経費が少なくなるので、もちろん追加で税金を支払う必要があります。
また、否認された金額や申告してから否認されるまでの期間などにより、罰則的な税金である延滞税が発生するケースもあるので注意が必要です。
家事按分で算出した経費の勘定科目と仕訳
ここでは、家事按分を行った時に使用する勘定科目と仕訳方法について見ていきましょう。
勘定科目
家事按分を行った時に使用する勘定科目は、その支出に対する経費の科目を使います。
例えば、水道代やガス代、電気代を家事按分し経費にする場合は「水道光熱費」を使います。また、家の家賃を家事按分し経費にする場合は「地代家賃」などの勘定科目を使います。
仕訳
家事按分の仕訳は、その支出を事業用の現金や預金から支払ったのか、プライベートの現金や預金から支払ったのかで異なります。具体例で見ていきましょう。
事業用の現金や預金から支払った場合
例)自宅で仕事をしているが、作業時間などを考慮し計算した結果、電気代3万円のうち1万円が経費になった。なお、電気代は事業用の通帳から支払っている。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
水道光熱費 | 10,000円 | 普通預金 | 30,000円 |
事業主貸 | 20,000円 |
事業用の現金や預金から支払った場合は、プライベート部分も仕訳する必要があります。プライベート部分の勘定科目は「事業主貸」勘定を使います。
プライベートの現金や預金から支払った場合
例)自宅で仕事をしているが、作業場の面積などを考慮し計算した結果、家賃5万円のうち2万円が経費になった。なお、家賃はプライベートの通帳から支払っている。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
地代家賃 | 20,000円 | 事業主借 | 20,000円 |
プライベートの現金や預金から支払っている場合は、経費部分のみ仕訳をします。貸方勘定科目は、普通預金や現金などの勘定科目は使わず「事業主借」勘定を使います。
家事按分について青色申告と白色申告の違いはある?
青色申告と白色申告では、家事按分の許容範囲に次のような違いがあります。
白色申告の場合
白色申告では、支出のうちで事業に関する部分が50%を超える場合に、家事按分ができます。
ただし、自宅の中に作業場があるケースなど、事業に関する部分とプライベートで利用する部分が明らかな場合は、事業に関する部分が50%以下の場合でも、家事按分が認められることがあります。
青色申告の場合
青色申告では、何%という比率の規定はありません。
客観的に事業に関係すると認められれば、比率に関係なく家事按分をすることができます。
家事按分を節税に活用しよう
家事按分できる支出は、忘れずに家事按分をして経費に計上することで節税につながります。しかし、どのような支出でも家事按分すればよいというわけではありません。客観的、合理的に事業に関係していることを説明できるもののみ家事按分します。
また、自宅を事務所と兼用している時には特に税務署で質問された時に即答できるように、家の間取図を保管しておいたり、作業時間の履歴を残しておいたりして、客観的に見て合理性がわかるようにしておきましょう。
また、可能であれば、過去に家事按分として認められた事例などを用意しておくのも有効でしょう。
よくある質問
家事按分とは?
全体における経費のうち、事業にかかった経費を合理的な基準によって分けることを家事按分といいます。詳しくはこちらをご覧ください。
家賃を家事按分する方法は?
毎月の家賃に対して仕事で使用している㎡数をもとに割合を算出します。詳しくはこちらをご覧ください。
電気料金を家事按分する方法は?
按分する方法として、作業時間や作業日数、コンセントの数などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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