- 作成日 : 2024年10月4日
介護保険外サービスの営業に必要な許認可一覧!申請方法や流れを解説
介護保険外サービスの開業に、許認可は必要ありません。しかし提供するサービスの内容によっては許認可が必要な場合もあります。
開業にはどのような資格を取得すればよいか不安な方も多いでしょう。今回の記事では開業に必要な資格や、申請方法や申請の流れについて紹介します。
目次
介護保険外サービスとは?
介護保険ではできないような支援・サービスを行います。介護保険サービスでは介護保険法に定められている厳格な利用基準があるため、個々のニーズに合ったきめ細かい支援はできません。
介護保険外サービスでは支援内容に制約はなく、一人ひとりのニーズや生活スタイルに合わせた支援が可能です。日常生活の支援はもちろん、趣味の活動やペットの世話など個人に寄り添ったきめ細かいサービスを提供できる点が特徴です。
介護保険サービスの例
提供できるサービスの具体例は、以下の通りです。
- 掃除や洗濯、寝具整理など生活の支援
- 料理のお手伝い
- 買い物や薬の受け取り
- 食事や入浴、排泄の介助
- 服の着替えの介助
- 通院や外出の介助
- 就寝や起床の介助
介護保険では介護度(要支援1~2、要介護1〜5)によって利用できるサービスに違いがあります。訪問介護のほかデイサービスと呼ばれる通所介護、短期入居や老人ホームへの入居などさまざまな形態で支援を受けられます。
介護保険外サービスの例
市区町村が行うものから民間事業者が行うものまで、さまざまな種類があります。利用者も要介護者に限定されず、比較的元気な高齢者でも利用が可能です。提供できるサービスの一部を紹介します。
- 訪問理美容サービス
- 介護用品や生活用品の配送サービス
- 食材や弁当の配食サービス
- 移送・送迎サービス
- 家事代行サービス
- 訪問マッサージサービス
- 病院付き添いサービス
- 入院のお世話や一時帰宅の支援サービス
- 趣味や冠婚葬祭の付き添いサービス
- 高齢者見守りや安否確認サービス
- 介護保険サービスではできない生活援助全般サービス
上記は一例で、訪問介護外サービスにはさまざまな種類があり、一人ひとりのニーズに合わせて利用できる点が特徴です。
介護保険外で許認可が必要なサービス一覧
介護保険外サービスにはさまざまな種類がありますが、次のようなサービスでは許認可が必要です。
- 訪問介護ヘルパーサービス
- 配食サービス
- 移送・送迎サービス
- マッサージサービス
それぞれに許認可の内容について紹介します。
訪問介護ヘルパーサービス
訪問介護ヘルパーサービスを行う場合には、都道府県の許可が必要です。訪問介護の許可を得るためには、法人格を有している必要があります。また定款や登記事項証明の事業目的に「介護保険法に基づく居宅サービス事業」などの記載が必要です。
ほかにも必要な人員や、設備など細かく要件が定められています。役所では事前相談にも対応してくれるため、不明点は事前に確認しておくとよいでしょう。
配食サービス
食事を定期的に自宅に届ける配食サービスを行う場合は、都道府県の許可が必要です。配食サービスでは外食業と同様に、食品衛生責任者の設置が義務付けられています。食品衛生責任者には、次のいずれかに該当する必要があります。
- 調理師
- 栄養士
- 製菓衛生師
- 講習会を受講したもの
上記の資格を満たす人を任命し、保健所への届け出が必要です。飲食店を開業するのと同様の、許認可が必要です。
移送・送迎サービス
訪問介護員などが有償で送迎する際には、介護タクシーか特定旅客自動車運送の許可が必要です。さらに訪問介護事業所や居宅介護事業所などの指定も受ける必要があります。介護タクシーは個人事業主でも可能ですが、訪問介護事業所などの指定を受けるためには法人格が必要です。
運転者は二種免許保有者で、さらに日雇いや短期労働者、試用期間中でない人でなければなりません。特定旅客自動車運送の許可も同様に、法人格が必要で運転手の制限があるため注意しましょう。
マッサージサービス
訪問マッサージを行うためには、「あん摩マッサージ指圧師」の資格が必要です。あん摩マッサージ指圧師は国家資格で、年1回試験が行われます。試験では技術のほか幅広い知識がもとめられるため、専門学校などに通うほうがよいでしょう。
介護保険外サービスの営業に必要な許認可
介護保険外サービスで営業する際、基本的に許認可は必要ありません。ただし、提供するサービスの内容によっては、許認可が必要となる場合もあるため注意しましょう。許認可や資格が不要なサービスであっても、利用者を安心させるために、有資格者がいたほうがよい場合もあります。必要に応じて、許認可や資格者を確保しましょう。
また、混合介護を行う場合には、介護事業の指定申請が必要です。混合介護とは介護保険サービスと、介護保険外サービスの両方を行うことをさします。介護事業の指定を受けるためには、以下の4つの基準を満たすことが必要です。
- 法人格を有しており、定款などの事業目的に介護事業の記載がある
- 常勤管理者の設置など必要な人員を満たしている
- 事務室の設置など、基準を満たした施設がある
- 事業を運営するための基準を満たしている
また指定を受けるための流れは、下記の通りです。
- 役所への事前相談や必要な研修の申し込み
- 指定前研修の受講
- 必要書類を揃える
- 担当部署に申請の予約をとる
- 面談形式で申請の受理が行われる
- 審査が行われる
- 合格通知が送付される
指定前研修とはコンプライアンスやサービスの提供方法などを学ぶ研修で、新規で指定を受ける際には受講しなければなりません。無事申請が受理され審査を通過すると通知書が送られてきて、6年間事業者として認定されます。
介護保険外サービスを起業するには?
介護保険外サービスを起業する場合の流れを紹介します。
- 市場ニーズの調査・把握
- サービス内容の検証
- 事業計画の策定
- 開業準備
- 営業プロモーション活動を行う
開業するにあたって、まずは市場にどのようなニーズがあるかの調査を行います。保険外のサービスの内容は、多岐にわたります。エリアによっては一見高齢者向けのサービスが充実しているように見えても、不足している支援があるかもしれません。事前に営業エリアの高齢者が、何に困っているかをできるだけ把握するようにしましょう。
ニーズの把握ができたら、サービス内容を検証します。行うサービスによっては、許認可や有資格者が必要になります。開業に合わせて必要な許認可が取得できるように、スケジュール調整も必要です。
提供するサービスが固まったら、事業計画を策定しましょう。事業計画には提供するサービスのほか、細かい料金設定や人件費などのコスト、利益の推移の予想などをできるだけ細かく記載します。事業の経営方針なども明確にしておくと、後々の経営に役立ちます。
事業計画が策定できたら、必要な人材確保や設備の契約など、開業に必要な準備を進めましょう。運転資金など銀行から借入を行う場合も、できるだけ早めに融資の申請を行っておくようにしましょう。新規開業時の融資は、通常の融資以上に審査に時間がかかります。
開業してすぐにサービスを開始できるように、営業活動を行います。開業を行う予定のエリアにある地域包括支援センターや、老人ホームなどにも広報活動しておくと効果的です。
介護保険外サービスの起業にかかる費用
ここからは、介護保険外サービスを起業するために必要な費用について解説します。
開業にかかる費用
開業にかかる主な費用は、以下の通りです。
項目 | 相場 | 内容 |
---|---|---|
法人設立費 | 10万~30万円 | 株式会社や合同会社で違う |
施設賃料 | 50万~400万円 | 規模や立地による |
内装工事費 | 100万~500万円 | 提供するサービスによる |
車両購入費 | 100万~300万円 | 1台あたり |
設備・備品費 | 20万~200万円 | 設備による |
提供するサービスや、事務所の立地、事業の規模によって必要な資金は大きく異なります。事業計画書などで、自社のサービスに必要な資金を具体化し、計画をたてましょう。
許認可取得にかかる費用
前述のように提供するサービスの内容によっては、許認可を取得しなければなりません。許認可・資格を取得するのに必要な費用は、下記の通りです。
資格 | 費用相場 | 概要 |
---|---|---|
訪問介護の指定 | 400万~500万円 | 地域や事業規模による、指定申請には法人格取得と人員・設備・運営に関する基準遵守が必要 |
配食サービス | 1万~2万円 | 営業許可申請費用、別途食品衛生責任者を確保する必要がある |
移送送迎サービス | 150万~400万円 | 車両費による変動が大きい |
マッサージサービス | 300万~500万円 | あん摩マッサージ指圧師の資格取得費用 |
上記のうちマッサージサービスの費用は、あん摩マッサージ指圧師の資格取得費用です。開業にあたり有資格者を確保できれば、大幅に費用を抑えられるでしょう。
介護保険外サービスの起業に役立つテンプレート
介護保険外サービスを開業して成功させるためには、事業計画書の作成が欠かせません。また法人を設立する際には、定款を作成する必要もあります。事業計画には売上予想や資金繰りだけでなく、会社の経営方針や創業の動機なども記載します。
銀行から融資を受ける際には、事業計画書に基づいて審査されるため、信憑性のある内容にしなければなりません。定款は会社のルールを定めた、憲法とも言える重要な書類です。このように起業に必要な書類の作成に戸惑う方も多いでしょう。
的確に書類を作成するためには、テンプレートを参照することがおすすめです。介護保険外サービスを開業する際には、下記テンプレートをぜひ参考にしてください。
介護訪問外サービスは資格なしでも起業できる
介護保険外サービスを開業するのに、資格は必要ありません。ただし提供するサービスの内容によっては、許認可が必要です。たとえば自宅などに食事を届ける配食サービスを行うのであれば、飲食店と同様の許可が必要になります。
また開業するにあたっては、事業計画書や定款の作成が必要です。どちらも今後の事業方針を決める重要な書類のため、慎重に作成しなければなりません。書類の作成に不安のある方は、今回の記事で紹介したテンプレートをぜひ参考にしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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