- 作成日 : 2024年11月15日
事業資金とは?調達方法や借入先、融資を成功させるポイントについて解説
事業資金とは、事業を始める、あるいは運営していくために必要となる資金のことです。
本記事では、事業資金の基本概念をはじめ、調達方法や借入先、融資を成功させるためのポイントについて詳しく解説します。適切な資金調達を通じて、持続可能な成長を目指しましょう。
目次
事業資金とは
事業資金とは、事業を始めるときや運営する際に必要となる全ての資金のことです。事務所の家賃、従業員の雇用に関する経費、店舗に導入する設備資金などが挙げられます。
事業資金は、「設備資金」と「運転資金」の2種類に分かれます。資金調達の際、用途に応じて条件が異なるためです。
以下では、設備資金と運転資金それぞれについて詳しく解説します。
設備資金
設備資金とは、事業に必要な設備投資に使われる資金のことです。
事務所や店舗といった不動産購入費用、内装工事費、機械や工具、車両購入費などが挙げられます。また、Webサイト制作費やパソコン、コピー機などのOA機器購入費も設備資金です。
事業規模や業種によって必要とされる設備資金は異なるため、事前に予算を明確にすることが求められます。
運転資金
運転資金とは、事業を円滑に進めるために欠かせない資金のことです。多くの場合、事業では商品を仕入れたり、人件費や家賃を支払ったりする費用が売上よりも先に発生します。
BtoB取引では掛け売りが一般的であり、商品を販売してもすぐに入金されるわけではありません。仕入や費用の支払いを滞りなく行うためには、常に一定の資金確保が必要です。必要な運転資金は、仕入量の増加や事業拡大に伴い増加します。
事業資金を調達する方法
事業資金を調達する方法は、主に次の4つです。
- 融資
- 自己資金
- 出資(クラウドファンディングを含む)
- 補助金・助成金
以下で、それぞれについて解説します。
融資
事業資金を調達する方法として一般的なものは、「融資」でしょう。融資とは、銀行などの金融機関から資金を借り入れる方法です。
融資には、返済期間が1年以内の「短期融資」と1年を超える「長期融資」があります。一般的に、「運転資金は短期融資」「設備資金は長期融資」とされています。
融資を行う機関は、民間銀行・政府系銀行・信用金庫・ビジネスローンを提供する貸金業者などです。どの機関からでも、融資を受けるには審査を受ける必要があり、返済能力・実績・社会的信頼などが重視されます。
融資のメリットは、審査に通ればまとまった資金を一度に調達できる点と、低金利で借りられる点です。一方、デメリットは、金利を支払う必要がある点と審査に通らなければ融資を受けられない点です。
自己資金
自己資金は、経営者の貯蓄や企業内に蓄えられた過去の利益であり、事業資金として使える一つの資金です。自己資金の大きな利点は、返済が不要であり、金利や配当の支払いもないことにあります。
また、資金使途に制限が少なく、他者に説明する必要がないため、柔軟に利用できる点もメリットです。ただし、多額の資金を準備するには時間がかかり、経営者自身に負担がかかる点はデメリットといえます。
出資(クラウドファンディングを含む)
出資は、資本金を拠出してもらう代わりに株式を渡し、株主になってもらう方法です。株主は議決権を通じて経営に一定の影響力を持ちます。
出資者には、経営者本人をはじめ、家族や友人、取引先企業などさまざまな選択肢があります。近年では、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの資金調達も増加傾向です。さらに、クラウドファンディングという新たな手法も登場しています。
この方法のメリットは、返済義務がなく、資金を自由に長期投資に活用できる点です。一方で、株主が経営に介入してくる可能性があるというデメリットもあります。
出資を受けるには、魅力的な事業計画と将来性が重要となるでしょう。
補助金・助成金
事業資金の調達方法の一つとして、補助金・助成金があります。これは、国や地方自治体が特定の条件を満たした企業や団体に資金援助を行う制度です。
返済不要である点が大きなメリットであるものの、審査が厳しく、特定の事業完了まで受給できない場合も多い点がデメリットです。また、助成金は雇用などの一定条件を満たす必要があります。
利用を検討する際は、応募条件や申請手続きを十分に確認することが重要です。
事業資金の主な借入先
事業資金の主な借入先は、次の4つです。
- 政府系金融機関
- 地方自治体
- 銀行
- 信用金庫
以下で、それぞれ見ていきましょう。
政府系金融機関
政府系金融機関には、「日本政策金融公庫」と「商工組合中央金庫」が挙げられます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、中小企業向けに多様な融資制度を提供しています。その特徴は、民間金融機関に比べて低金利で、返済期限の延長など借入人の負担が少ない点です。
資金使途は、運転資金・設備資金・起業資金など多岐にわたります。起業時には「新規開業資金」制度が利用できるほか、「再挑戦支援資金」や「企業再建資金」といった制度も用意されています。
民間金融機関と比較すると、返済期限の延長など借入人の負担が少ないこともメリットです。一方で、融資実行までに3週間〜1ヶ月程度かかるのがデメリットになります。
公的融資は他の金融機関と比べて優れた選択肢ですが、利用する際はタイミングに注意しましょう。
商工組合中央金庫
商工組合中央金庫(商工中金)は、3年以上事業を営み、返済能力のある中小企業を対象に融資を行っています。特徴は、低金利であることです。政府出資による支援があるため、災害時にも利用しやすいという点がメリットです。
ただし、金利は事前にウェブ上で確認できず、直接相談する必要があります。また、融資を受けるには構成員や株主になる必要があり、年会費や株取得費用が発生するという点はデメリットといえます。
地方自治体
地方自治体は、中小企業向けに制度融資を通じて融資(制度融資)を提供しています。この制度は、地方自治体・信用保証協会・指定金融機関の三者が協力し、低金利で融資を受けやすくする仕組みです。
各地方自治体には独自の制度があり、融資の目的に応じて多様なプログラムが用意されています。さらに、一部の地方自治体では利子補給や保証料の補助を行い、場合によっては日本政策金融公庫よりも低い金利で融資を受けられる可能性もあります。
ただし、制度融資の審査には2〜3週間、場合によっては1ヶ月程度かかるため、時間に余裕をもって申し込むことが重要です。手続きは三者との面談が必要であるなど、煩雑さがある点にも留意しましょう。
銀行
銀行融資は、メガバンクや地方銀行などの金融機関から資金を調達する手段です。審査が厳格な分、企業の信用力が求められ、ときには融資条件が優遇される場合もあります。
メガバンクでは、上場を目指す企業向けにコンサルティングサービスを提供するなど、成長支援を行うケースもあります。ただし、審査基準が厳格であり、手続きが複雑なため、事前準備が不可欠です。
信用金庫
信用金庫は地域密着型の金融機関であり、中小企業や個人事業主への融資に積極的です。信用金庫は、地域社会の発展の支援を目的としています。
ただし、銀行融資と比較して金利が高い場合もあり、大口融資には限界があるため、事業規模に応じて選択することが重要です。地域に根ざした経営を行う企業にとって、信用金庫は貴重な資金調達手段となるでしょう。
事業資金の融資を成功させるための注意点
事業資金の融資を成功させるには、金融機関の審査基準を理解し、適切な準備をすることが重要です。ここでは、融資審査を通過するために注意すべき主なポイントを解説します。
借入希望金額
借入希望金額は、自己資金とのバランスが重要です。創業融資の場合、自己資金の3倍前後が借入可能額の目安です。一方、運転資金の融資額は、原則として月商の3ヶ月分が限度とされています。
ただし、業種や業績によっては、この基準を超える借入が認められることもあります。また、自己資金と借入希望額の乖離が大きすぎると、審査に通らない可能性もあるため、慎重な検討が必要です。
資金使途
事業資金の融資を受ける際には、資金使途を明確にする必要があります。金融機関は貸し手の責任として、融資資金が反社会的勢力への関与や公序良俗に反する使途に使われることを防ぐ必要があるためです。
設備資金や運転資金といった大まかな分類だけでなく、具体的な資金使途や効果の説明が必要です。機械設備投資であれば、購入する機械の種類や目的、売上増加やコスト削減効果などを具体的に説明する必要があります。
事業計画書
事業計画書は、金融機関の信頼を得るための重要なツールです。わかりやすい構成と全体像の提示が不可欠です。売上予測には根拠を持たせ、現実的な計画を立てましょう。競合他社との差別化を図るため、自社の優位性を明確に示すことが求められます。
また、収益性と資金回収可能性を示すことで、金融機関の安心感を高められます。市場環境や競合との違い、中長期ビジョン、投資額や資金調達方法を具体的に記載することで、金融機関の信頼を得ることが重要です。
事業資金の融資を受ける流れ
事業資金融資の相談から融資を受けるまでの流れは、以下のとおりです。
相談〜申込
事業資金の融資を受ける際は、まず金融機関の窓口で相談を行いましょう。相談時には、会社案内・決算書・事業計画書などの資料があると、より具体的な相談が可能です。その後、借入申込書に必要事項を記入し、提出します。
申込後には、各種書類が必要となる場合もあるため、事前に確認し準備しておくとスムーズに手続きを進められるでしょう。
面談〜審査
審査内容は金融機関や申し込み内容によって異なりますが、多くの場合、面談や訪問が行われます。
日本政策金融公庫の国民生活事業の例では、資金使途や事業の状況について質問されます。提出書類で説明済みの内容でも、口頭で説明できるよう準備しておくことが大切です。
面談前に想定される質問内容を考え、回答を用意しておくとよいでしょう。
融資実行
審査完了後、金融機関から融資の可否について連絡があります。審査通過の連絡を受けた後、金銭消費貸借契約を締結します。
金融機関から交付される金銭消費貸借契約書などの必要書類に記入・捺印し、提出しましょう。
契約締結後、指定の口座に融資金が振り込まれます。着金までの期間は金融機関や融資額によって異なりますが、早ければ1週間程度です。
個人事業主が事業資金の融資を受けるポイント
個人事業主として事業資金の融資を受けるポイントは、以下のとおりです。
- 開業届を提出している
- 確定申告をきちんと行っている
- 自己資金を準備している
ここでは、それぞれについて解説します。
開業届を提出している
開業届は、融資を受ける際に必須ではありませんが、提出すると融資審査がスムーズになることが多いです。金融機関が、事業の実態をより正確に把握できるためです。
開業届は、事業開始から1ヶ月以内に税務署へ提出しますが、期限を過ぎてもペナルティはありません。ただし、青色申告を希望する場合には、開業届を提出しなければなりません。
確定申告をきちんと行っている
融資を受けるためには、確定申告をきちんと行っていることが重要です。確定申告書類や決算書は、金融機関が融資判断を行う際の重要な資料であり、黒字経営で納税をしていると融資の審査が通りやすくなります。
資金使途や返済計画も具体的に示すことで信用を得やすくなり、融資の可能性が高まります。日ごろから経理処理を徹底し、確定申告と納税を期日内に済ませておきましょう。
自己資金を準備している
自己資金は、事業に対する熱意を示す重要な要素です。金融機関は、事業主が事業資金の一部を自己負担することで、事業への本気度を測ります。ただし、家族や親族からの借入金は自己資金とみなされないため注意が必要です。
なお、事業を始めたばかり、または税務申告が2期未満の場合であれば、日本政策金融公庫の「新規開業資金」を利用することにより、無担保・無保証人での融資が受けられます。それでも、できる限り自己資金を用意することで、審査の通過率が向上するでしょう。
事業資金調達の全体像を把握し、安定した運営を実現しよう
事業資金とは、事業を始める、または運営していくために必要な資金のことです。調達方法は、自己資金・借入・出資などがあり、日本政策金融公庫や銀行、信用金庫などが主な借入先です。
融資を成功させるには、事業計画書の作成が重要であり、収益計画や資金繰り計画などを具体的に記載する必要があります。資金調達は事業の成功を左右する重要な要素となるため、しっかりと準備し、融資の申請に臨みましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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