• 更新日 : 2023年9月15日

パーパス経営とは?意味や企業の事例一覧も紹介!

パーパス経営をご存じですか?企業のパーパスを明確にし、その実現を目指すパーパス経営が最近注目を集めています。実際に経営の現場でパーパスという言葉を耳にする機会が増えてきており、パーパス経営に対するビジネスパーソンの関心が高まりつつあります。本記事はパーパス経営の基本について解説します。

パーパス経営とは?

パーパス経営とは、企業のパーパスを明確にしてその実現を目指す経営スキームのことです。一橋大学大学院特任教授の名和高司氏が2021年に出版した『パーパス経営』により、経営の現場で広く注目されるようになりました。名和氏は、パーパスをミッション、ビジョン、バリューの上位概念であると定義しています。

そもそも「パーパス」の意味とは?

パーパスとは一体何でしょうか。パーパス(Purpose)とは、オックスフォード英語辞書によると、「何かがなされる、または作られる、あるいは存在する理由」(The reason for which something is done or made, or for which it exists )です。パーパス経営の提唱者である名和氏は、パーパスとは企業が持つ「志(こころざし)」であるとしています。

パーパスとMVVの違い

パーパスとMVV(Mission, Vision, Value)の違いは何でしょうか。ミッションは「使命」、ビジョンは「理念」、バリューは「価値」とそれぞれ訳されますが、パーパスとは、企業の存在理由を表明するステートメントであり、企業が何のために創設されたのかという本質的な問いに対する答えです。パーパスはMVVの上位概念であり、MVVはそれぞれパーパスを実現するために策定されるべきものと理解すべきでしょう。

パーパス経営とMBOの違い

パーパス経営とMBO(Management by objective)の違いは何でしょうか。MBOは、目的(objective)を設定することで組織の統一を図り、効果的で効率的な経営を目指す経営スキームです。MBOでは、場合によっては目的だけが設定され、そこに企業の「存在理由」や「志」が設定されていないといったケースも考えられます。パーパス経営では、何よりも企業の「存在理由」が問われ、目的の設定はその後になります。

パーパス経営が注目されている背景

パーパス経営は、比較的最近登場した新しい概念であり経営スキームですが、注目を集めている理由は何でしょうか。

考えられる最大の理由は消費者のサステナビリティへの意識の高まりです。気候変動が世界的な問題になり、人類そのもののサステナビリティが危機にひんする中、企業の社会的責任が改めて問われています。単に利益を獲得する、リソースを消費するというだけの企業は、消費者から深刻なクエスチョンを突き付けられています。消費者は企業に対し、「あなたたちは一体何のために事業を行っているのか」と問い、企業に自らの存在理由について考えさせているのでしょう。

また、世界的にもののコモディティ化が進んでいることも理由として考えられます。コモディティ化が進み、消費者から製品やサービスの差別化が求められ、企業のパーパスが問われるシーンが増えていることが背景にある可能性があります。

パーパス経営のメリット

ところで、企業がパーパス経営を行うメリットは何でしょうか。企業の中には自社のパーパスを明文化したパーパスステートメント(purpose statement)を作成し、全従業員で共有してパーパス経営を実践している企業もあります。そのような手間や時間をあえてかけてまでパーパス経営を実践するメリットは何でしょうか。

消費者の共感が得られる

第一のメリットは、パーパス経営を行うことで消費者の共感が得られることです。特にサステナビリティに関係するパーパス経営を行う企業の多くが消費者の共感を集め、結果的にビジネス拡大につなげています。

アメリカのアパレル企業パタゴニアは、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というシンプルなパーパスを掲げ、全従業員で共有してパーパス経営を実践しています。パタゴニアは、地球を救う活動の一環として、全売上の1%を地球のために寄付しています。

パタゴニアのパーパスとそれに基づいた一連の活動は消費者の共感を呼び、多くの消費者をパタゴニアのファンにしています。パタゴニアのファンはパタゴニアのリピート客となり、パタゴニアの売上拡大に大きく貢献しています。

会社の組織力を高められる

第二のメリットは、パーパス経営を行うことで会社の組織力を高められることです。上述のパタゴニアのパーパスに対しては、消費者のみならずパタゴニアへ入社を希望する人も共感しており、多くの人が入社しています。パタゴニアによると、パタゴニアに入社を希望する求職者のすべてが「地球を救う」というパタゴニアのパーパスに共鳴しているそうです。さらにパタゴニアのすべての社員が、自らがパタゴニアのパーパス実現のための一部であり、パーパスそのものが会社の進むべき道を示す北極星であると考えているそうです。

強固なパーパスを掲げることでそれに賛同する同志を集め、結果的に会社の組織力を大きく向上できる。パーパスは、強い組織をつくるための必要条件と言っていいかもしれません。

企業のパーパス事例一覧

では、実際に企業が掲げているパーパスの事例を見てみましょう。必ずしもすべての企業がパーパスとして掲げているのではありませんが、実質的にパーパスであると見られるケースも含めて取り上げています。いずれもシンプルでわかりやすく、消費者や従業員などのステークホルダーの共感が得られやすいものです。これからパーパスを明文化し、パーパス経営を実践してゆこうという方は、ぜひ参考にしてみてください。

ネスレ日本株式会社

ネスレのパーパスは、「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」です。そして「このパーパスに導かれて、私たちは食の持つ力で人とペットの生活に大きな違いをもたらすこと、環境を守り保全を強化すること、そしてネスレの株主をはじめとするステークホルダーの皆さまに大きな価値をもたらすことに、自らのエネルギーとリソースを集中します」としています。シンプルですが、力強いパーパスです。

ソニーグループ株式会社

ソニーグループ株式会社のパーパスは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」です。そのパーパスを支えるバリューとして「夢と好奇心」「多様性」「高潔さと誠実さ」「持続可能性」を掲げています。そして、パーパスを実現するためにクリエイター、アカデミア、異業種の企業などのさまざまなパートナーと結びつき、共創するためのさまざまな活動を展開するとしています。さまざまな分野から多彩な才能を持つ人材を引き寄せる、単刀直入なパーパスとなっています。

富士通株式会社

富士通株式会社のパーパスは、「わたしたちのパーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことです」です。「これから富士通が果たしていくべき役割は何かを、改めて考え、私たちの存在意義、パーパスを定めました。富士通は今、すべての企業活動を、このパーパス実現のための活動として、取り組んでいます」とし、サステナビリティを主軸にした強固でわかりやすいメッセージを伝えています。

味の素グループ

味の素グループは、有名な「Eat Well, Live Well」のコーポレートスローガンのもと、「アミノサイエンスで人・社会・地球のWell-beingに貢献する」というパーパスを掲げています。そして、パーパスを実現する取り組みとして「事業を通じた社会価値と経済価値の共創」というASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)を掲げ、それを支える価値観として「新しい価値の創造、開拓者精神、社会への貢献、人を大切にする」を掲げています。味の素グループのパーパスも非常にわかりやすいものとなっています。

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のパーパスは「世界が進むチカラになる」です。一見したところわかりにくいパーパスですが、MUFGは具体例として「MUFGは、お客さまの大切な資産に関する課題を解決し、人々の暮らし・豊かさと、お取引先企業の成長・発展に貢献します」「MUFGは、お客さまの事業や経営の課題に対し、建設的な対話を通じてソリューションを提供、サポートしていきます」「パートナーバンクとの協働による金融サービスの提供はMUFGの大きな強みです。外部事業者との提携により新しいデジタル金融サービスも提供しています」などを挙げています。MUFGの仕事は広範に及ぶため、パーパスの策定は難しかったと思われますが、MUFGの「志」をしっかりと感じさせるものになっています。

東京海上ホールディングス株式会社

東京海上ホールディングスのパーパスは「お客様や地域社会の“いざ”をお守りすること」です。これは同社の創業時からのパーパスであり、どのような時代にあっても決して変わることはなく、そして、このパーパス以外に、変えてはならない領域はないとも考えているとしています。価値提供領域を飛躍的に拡大することで、同社のパーパスである「お客様の“いざ”という時」を支えるためにも、「“いつも”支えることができる存在」へと進化できるよう挑戦していくとしています。同社の強固な意志と価値観が伝わってくる、力強いパーパスです。

株式会社 ファーストリテイリング

ファーストリテイリングは、「本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します」と「独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します」というミッションを掲げ、事実上のパーパスとしています。同社は、「良い服というものを定義し創造することは、簡単なことではありません」とした上で、「だからこそ、ファーストリテイリングは、誰もが心の底からほしくなるような「本当に良い服」をつくりだすことを企業命題にかかげます」としています。同社のパーパスは、悩み抜いた末に生まれた珠玉のメッセージとなっています。

LINE株式会社

LINE株式会社は、「CLOSING THE DISTANCE 私たちのミッションは、世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めることです」というミッションを掲げ、さらに「Life on LINE 私たちのビジョンは、24時間365日生活のすべてを支えるプラットフォームになることです」というビジョンを掲げています。「世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めること」と「24時間365日生活のすべてを支えるプラットフォームになること」を合わせてLINEのパーパスと見なしていいでしょう。その具体的なメッセージは、LINEが目指す道と使命を素直に示しています。

株式会社マネーフォワード

株式会社マネーフォワードは、「すべての人の、「お金のプラットフォーム」になる」というビジョンを掲げ、「オープンかつ公正な「お金のプラットフォーム」を構築すること、本質的なサービスを提供することにより、個人や法人すべての人のお金の課題を解決」することを目指すとしています。そして、そのビジョンを支える行動指針として「User Focus」「Tech&Design」「Fairness」を掲げ、バリューの統一を図っています。行動指針を守りながら「すべての人の、お金のプラットフォームになる」という志こそ、マネーフォワードのパーパスと言っていいでしょう。

パーパス経営で企業価値と組織力を高めよう

以上、企業のパーパスの事例などを含めて、パーパス経営の基本を解説しました。現代はVUCAの時代(先行き不透明で未来の予測が困難な時代)であるとされています。VUCAの時代を生き抜き、サステナビリティを確保するために、パーパス経営は有効です。よく考え抜かれた、魂がこもったパーパスは消費者や従業員を含んだステークホルダーの共感を呼び、ひいてはビジネス拡大を引っ張る原動力になります。まだ自社のパーパスが明確になっていない会社は、この機会にパーパスを明確にし、パーパス経営を実践してください。


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