• 更新日 : 2023年10月25日

有限会社とは?株式会社との違いやメリットデメリット、新設の形態を解説

有限会社とは?株式会社との違いやメリットデメリット、新設の形態を解説

2006年施行の会社法改正により有限会社は新たな設立ができなくなりました。それ以降、有限会社は法律上は株式会社として存続しており、このような会社を「特例有限会社」と言います。

この記事では、有限会社とはどのような会社だったのか、特例有限会社として存続する場合のメリットやデメリットについて解説します。

有限会社とは?現在は廃止?

2006年施行の会社法改正によって有限会社は、法律上「株式会社」として存続することになりました。このように会社法改正以前に「有限会社」で、会社法改正以後も存続している会社は、「特例有限会社」と呼ばれます。

新たに有限会社が設立できない理由

現在は、新たに有限会社としての会社設立はできません。それは会社法で認められていないからです。

1938年に有限会社法が制定され、有限会社が誕生しました。以来、有限会社の資本金が最低300万円であることなど、株式会社より法人化のハードルが低いこともあり、多くの有限会社が設立されました。

しかし、2006年に会社法が改正され、最低資本金制度がなくなり、資本金が1円でも株式会社が設立できるようになりました。株式会社の設立要件が緩和され、新しい会社類型として合同会社が設けられました。法律上、有限会社と株式会社は「株式会社」に統合されています。

そして、有限会社法は廃止され、すでに成立していた有限会社はそのまま存続することが認められました。以来、有限会社は「特例有限会社」としてその性質を一部残しながら株式会社として取り扱われています。ただし、有限会社法の廃止以降には新たな有限会社の設立は認められなくなりました。

有限会社から移行できる会社形態は?

特例有限会社は、株式会社や合同会社などに会社形態を変更することができます。

2006年の会社法改正以降、有限会社はそのままの商号を使用し「特例有限会社」として存続することは可能です。しかしながら、特例有限会社は定款における商号変更により、商号に「株式会社」という文字を用いる変更ができるとされています。

具体的には、特例有限会社の定款を変更し、それから2週間以内に特例有限会社の解散の登記をした上で、商号変更後の株式会社について設立登記をすることになります。

参考:会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 抄(第45条、第46条)

合同会社への移行についても、株式会社への移行と同様、次のようになります。

  • 特例有限会社の定款変更(商号変更)
  • 商号変更による特例有限会社解散登記
  • 商号変更による合同会社設立登記

参考:合同会社について教えてください。 | 中小企業基盤整備機構

有限会社(特例有限会社)でいるメリット

株式会社や合同会社へ移行せずに、特例有限会社のままでいることのメリットをいくつか挙げます。なお、特例有限会社の定款にて別途ルールを設けている場合もあります。

役員の任期制限がない

特例有限会社の役員には任期がありません。取締役や監査役として、基本的には本人が辞任するか、総会にて解任するかになります(欠格事由により解任となる場合もあります)。任期がないため、会社のビジョンや戦略を一貫して推進でき、会社の安定性を高められると言えます。

会社形態の移行にかかる手続きが省ける

株式会社や合同会社に移行するには、新たに登記費用も発生します。したがって、特例有限会社を続けることによって、会社形態の移行にかかる手続きの手間やその費用を省略できます。

会社運営の自由度が高い

特例有限会社は決算公告が不要とされます。取締役会を設置することはできないため、経営者にとっては会社運営の自由度が高いとも言えます。

歴史が長い印象を得られる

先述のように有限会社は昭和中期から存在しているため、「老舗」「安定性が高い」などの印象を与えられることが考えられます。

有限会社(特例有限会社)でいるデメリット

特例有限会社は、2022年において本店の総数が161,630件ありますが、会社法施行前の2005年は469,232件でした。約7割減となっています。特例有限会社は減り続けていますが、その理由として次のデメリットがあります。

株主間の株式の譲渡制限がある

特例有限会社のデメリットは、株式の譲渡制限が必ずあるということです。株式の譲渡については、原則として定款に基づいて行われることになります。ところが、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以降、「整備法」と言います)の第9条には次のような規定があります。

第9条 特例有限会社の定款には、その発行する全部の株式の内容として当該株式を譲渡により取得することについて当該特例有限会社の承認を要する旨及び当該特例有限会社の株主が当該株式を譲渡により取得する場合においては当該特例有限会社が会社法第136条又は第137条第1項の承認をしたものとみなす旨の定めがあるものとみなす。

出典:会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 抄|e-GOV

これは、単純に言うと特例有限会社の定款には次の2つの規定があるものとされるということです。

  • 株式を取得するときには会社の承認が必要である
  • 株主間の株式譲渡は会社が承認したものとみなす

つまり、特例有限会社においては常に会社が望まない人や会社に自社の株式を持たせないように制限できます。反面、これは新株発行による資金調達が限られてしまうことも意味します。資金調達の制限は会社にとって大きなデメリットだと言えます。

会社の吸収合併ができない

特例有限会社は新たな設立が認められていないため、新設合併の新設会社になることはできません。また、会社法では新たな有限会社の設立が認められないことから、特例有限会社は会社の新設分割によって会社を新設することもできません。M&Aを進めるにあたっては利用しづらい会社形態であると言えます。

旧態依然とした印象を与える

前2つの項目でご紹介たように資金調達が難しく、さらに新設合併、新設分割などができないとなると、取引先との関係で将来が見えにくい可能性もあると言えます。

したがって、特例有限会社というだけで信用度が低下することはないにしても、会社どうしの協力関係を結ぶ際に特例有限会社であることが旧態依然とした印象を与え、ハードルになる可能性もあります。

経営者の影響力が大きくなりやすい

特例有限会社のメリットの項で挙げた「役員の任期がない」ことは、その役員の影響力が絶大になることもあります。このことは、ワンマン経営に陥りやすいと言えます。

有限会社と株式会社との違い

有限会社も株式会社も利潤の追求をする法人には変わりません。しかし、下記のような違いがあります。

旧有限会社旧株式会社新株式会社
出資者社員株主
最低資本金300万円1,000万円1円
出資者の人数制限最大50人制限なし
出資者の会議体社員総会株主総会
出資者の債権者に対する責任有限責任のみ負う
取締役について1名以上
(任期無期限)
3名以上1名以上
法的機関としての会議体なし取締役会は必須取締役会設置会社のみ設置
出資者の平等性社員平等原則は変更可能株主平等原則

※旧株式会社とは2006年の会社法改正前の株式会社を、新株式会社とは2006年の会社法改正後の株式会社を言います。

株主平等の原則とは、同一内容の株式を有するものどうしにおいては、有する株式の数に比例し、平等の扱いを受けるという原則です。

なお、法律上は特例有限会社を株式会社とみなすことから、整備法では次のように読み替えることとされています。

社員 → 株主

社員総会 → 株主総会

社員名簿 → 株主名簿 など

現在、設立できる会社形態は?

では、現在設立可能な会社形態として4種類の会社を簡単に見ていきましょう。

会社形態はまず、大きく株式会社持分会社(合同会社、合資会社、合名会社)に分かれます。これは、株式会社が株式の所有と経営が分離しているのに対し、持分会社では社員が出資し、その社員が出資と経営の両方を行うという違いがあります。

では株式会社から順に見ていきましょう。

株式会社

企業形態の代表的なものが株式会社です。株式会社は、株主が資本を出資して設立される会社です。株式会社は、自由に譲渡できる株式を発行している「公開会社」とすべての株式について譲渡制限がなされている「非公開会社」に二分され、取締役会や監査役についてのルールが変わってきます。

株式会社の特徴として、株主の責任は出資額に限られ(間接有限責任と言います)、株式の流動性が高いことが挙げられます。また、株式会社は一般的に経営者と株主が分離しており、経営者は株主総会や取締役会などの組織によって選任されます。株式会社は大規模な事業に適した企業形態であり、多くの上場企業や中小企業が採用しています。

合同会社

2006年の会社法改正により、有限会社の生まれ変わりとして誕生したと言われるのが合同会社です。出資者(=社員)が出資した資本によって設立される会社です。

合同会社の特徴は、出資者の責任は出資額に限られ(間接有限責任)、出資者間で自由に定めた契約に基づいて経営ができることです。合同会社は少数の出資者で柔軟な経営を行いたい場合に適した企業形態であり、ベンチャー企業や一人社長なども多くみられます。

合資会社

直接無限責任社員と直接有限責任社員で構成される持分会社です。したがって、設立時には直接無限責任社員と直接有限責任社員の各一名以上、最低二名の社員が必要となります。

直接責任とは、社員が会社の債務について直接弁済責任を負うことを言います。原則として無限責任社員が事業を経営し、有限責任社員は経営には関わりません。合資会社は無限責任を負う社員の責任が重大な企業形態となります。

合名会社

直接無限責任社員のみで構成される持分会社です。したがって、設立時には直接無限責任社員一名以上が必要となります。

直接無限責任社員のみであるため、これらの会社形態の中では一番条件が厳しいと言えますし、社員の責任が直接、無限であることは、個人事業主と変わらないため設立は非常に少ないと言えます。

特例有限会社として存続するが、会社法では「株式会社」

有限会社は、2006年の会社法改正により廃止されたため、会社法上は「株式会社」として存続しています。これを特例有限会社といいます。

特例有限会社では特有の運営ルールが残っており、デメリットとして、株式の譲渡制限があったり、合併や分割における新設会社にはなれなかったりします。しかしながら、特例有限会社の運営では回らなくなった場合には、選択肢の一つとして株式会社や合同会社への移行もあります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事