• 更新日 : 2023年10月25日

軽貨物運送業の開業は難しい?個人での始め方や手続き、成功のコツを解説

軽貨物運送業の開業は難しい?個人での始め方や手続き、成功のコツを解説

軽貨物運送業は、個人事業主としても開業できます。手続きは比較的簡単であり、軽貨物車両と駐車場があれば始められるため、個人での開業におすすめです。しかし、開業費用の準備や手続きなどにハードルを感じている方もいるでしょう。今回は、開業にかかる費用や必要な手続き、年収の目安や、事業に失敗しないためのポイントなどを解説します。

軽貨物運送業の開業は難しい?

物流・運送業でビジネスに挑戦したい方には、軽貨物運送業の開業がおすすめです。軽貨物運送業は、軽貨物車両を使って、荷主から依頼を受けた小型の荷物を運送する事業です。開業のハードルが低く、個人でも始めやすいという特徴があります。

ここでは、軽貨物運送業の開業について、軽貨物運送業の概要や開業するメリットを解説します。

軽貨物運送業とは?

軽貨物運送業(貨物軽自動車運送事業)とは、軽トラックや軽バンなどの軽貨物車両を使用して、荷主の荷物を運送する事業のことです。運送するのは、比較的小さな荷物であるのが特徴です。荷主から運送依頼を受け、運賃を受け取る場合は、すべて軽貨物運送業に該当します。

個人事業主として軽貨物運送業を開業する場合は、運送会社から業務委託を受けて働くケースが多いです。

軽貨物運送業を開業するメリット

軽貨物運送業を開業するメリットは以下のとおりです。

  • 開業の手続きが比較的簡単
  • 普通自動車免許があれば始められる
  • 開業資金があまり高くない
  • 将来性がある

軽貨物運送業の開業は、許可制ではなく届出制です。そのため、必要書類を準備して提出すれば、すぐに開業できます。さらに、普通自動車免許と軽貨物車両、駐車場があれば始められるため、比較的簡単に開業できるのが魅力です。開業資金もそこまで高くないため、個人でも十分に始められます。

将来性があるのもポイントです。ECサイトを利用して物を購入する方が増えている現在、軽貨物運送業は需要が高く、今後もますます運送依頼は増えることが予想されます。

軽貨物運送業の開業は儲かる?年収の目安

軽貨物運送業の個人事業主の年収目安は、300〜400万円程度とされています。

もちろん、引き受ける案件の数や単価、ドライバーとしてのスキルなどによって、収入は異なるため、上記はあくまでも目安です。

年収を上げるためには、荷物をいかに多く運べるか、いかに多くの案件を受注できるかを意識して、スキルアップに取り組みましょう。

軽貨物運送業の開業にかかる費用

軽貨物運送業の開業には、以下のような費用がかかります。

  • 軽貨物車両費
  • 車検費用
  • 駐車場費
  • 保険料
  • 税金
  • その他雑費

事業が軌道に乗るまで時間がかかる場合もあるため、開業にかかる費用は多めに見積もっておくことが大切です。

ここでは、それぞれの費用について解説します。

軽貨物車両費

軽貨物運送業を開業するためには、荷物を運ぶための軽貨物車両を用意することが必要です。

中古車なら、50万円程度あれば、比較的状態が良い車両を購入できるでしょう。

もちろん、すでに軽貨物車両を保有している場合は不要です。

車検費用

車検は、車が保安基準を満たしているかどうかを確認するものであり、必ず受けなければなりません。

車検にかかる費用は、法定費用車検基本料金の大きく2つに分けられます。

法定費用は、国や保険会社に納める費用であり、どこに依頼しても金額は変わりません。

法定費用の内訳は以下のとおりです。

一方、車検基本料金は、車検を依頼するお店によって金額が異なります。相場は1万5,000円〜3万円程度です。

駐車場費

軽貨物運送業では、駐車場を確保する必要があり、駐車場を借りる場合は月極の駐車場費がかかります。

駐車場費は地域によって異なり、都心は高額な傾向にあります。営業所や休憩所から、半径2キロメートル以内にある駐車場を確保する必要があるため、立地の良い場所に営業所を構える場合は、駐車場代が高くなるリスクに注意しましょう。

保険料

保険料の存在も忘れてはなりません。

軽貨物運送を営む場合は、事故に遭ったり、運送中に荷物が破損したりするリスクに備えて、自賠責保険に加えて任意保険や貨物保険にも加入するケースが多いです。

自賠責保険料は自家用車と変わりませんが、任意保険料は事業用車の方が高くなります。

費用は保険会社やプランによって異なりますが、月1万円以上となることが多いです。

税金

車両の購入・所有には、以下のような税金がかかります。

  • 軽自動車税(購入時と、毎月4月1日時点で所有している場合にかかる)
  • 自動車重量税(車両の新規登録時と車検時にかかる)

軽自動車税は、自家用車よりも事業用車の方が低く設定されています。また、環境性能に優れたエコカーを登録する場合は、自動車重量税の免税・軽減を受けられるのがメリットです。

なお、リースで車両を用意する場合、月額のリース費用の中に、リース会社が負担する税金相当額が含まれています。

その他雑費

そのほか、ガソリン代や備品代(カーナビ、台車、ガムテープ、ナンバープレートなど)、車の維持費用など、さまざまな費用がかかります。

軽貨物運送業の開業方法、流れ

軽貨物運送業を開業する際は、以下のステップで進めましょう。

  1. 車庫(駐車場)の確保
  2. 車両の購入
  3. 任意保険・貨物保険への加入
  4. 軽貨物運送事業者の登録と黒ナンバーの取得
  5. 開業届の提出

ここでは、開業に向けてやるべき手続きや注意点などを解説します。

1.車庫(駐車場)の確保

軽貨物運送業を始めるためには、車庫(駐車場)の確保が必要です。車庫は、賃貸でも問題ありません。

ただし、営業所や休憩所から、半径2キロメートル以内の場所にある車庫を確保する必要がある点に注意しましょう。

また、車庫が都市計画法や建設基準法といった法律に抵触しておらず、適切に作られたものであるかを確認することも重要です。特に、所有地に車庫を新設する場合は、関係法令に抵触しないよう、確認しながら工事を進めましょう。

2.車両の購入

運送に使用する、軽貨物車両の購入も必要です。車両は中古でも問題ありませんが、中古車を購入する場合は、車検証の用途が貨物になっているかどうかを確認しましょう。貨物になっていない場合は、軽自動車検査協会の検査を受けて貨物に変更しなければなりません。

なお、リースやレンタルした車両でも問題なく開業できます。初期コストをなるべく抑えたい場合や、事業が続くか不安がある方は、リースやレンタルの利用を検討するのがおすすめです。

3.任意保険・貨物保険への加入

保険については、自賠責保険だけでは補償範囲が狭いため、補償内容が充実している任意保険と貨物保険にも加入することが大切です。

任意保険は、名称のとおり加入が義務付けられている保険ではありません。しかし、事故にあった時のリスクに備えて、加入することが望ましいです。

また、貨物保険に加入することで、運送中に貨物が破損したり盗難されたりした際に補償してもらえます。​​軽貨物運送業では、高価な商品や精密機器を運送する機会もあります。年間2万~3万円ほどの保険料がかかる場合は多いですが、万が一の事態に備えて、加入しておきましょう。

4.軽貨物運送事業者の登録と黒ナンバーの取得

​​軽貨物運送事業者として、使用する車両を管轄する運輸支局で登録を行いましょう。

​​軽貨物運送事業者として登録する際は、以下のような書類が必要です。

  • 貨物軽自動車運送事業経営届出書
  • 事業用自動車等連絡書
  • 車検証のコピー
  • 運賃料金表

そして、軽自動車検査協会で黒ナンバーを取得しましょう。黒ナンバーとは、軽貨物運送事業を行う車両に取りつけるナンバープレートのことです。黒ナンバーを取得して、はじめて軽貨物運送事業として営業できます。

黒ナンバーの取得要件は以下のとおりです。

  • 軽貨物車両が1台以上ある
  • 営業所・休憩施設・車庫(駐車場)がある:賃貸物件でも可能、個人事業主の場合は自宅を営業所・休憩施設にすることも可能
  • 運送約款を用意している
  • 運行管理体制を整えている
  • 損害賠償能力がある

5.開業届の提出

個人事業主として開業するためには、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出しましょう。

事業の開始等の事実があった日から、1ヶ月以内(提出期限が土・日曜日・祝日等にあたる場合はその翌日)に提出する必要があります。

また、青色申告確定申告をしたい方は、開業から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を提出しましょう。開業届と同時に提出するとスムーズです。

参考:国税庁 A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
参考:国税庁 A1-9 所得税の青色申告承認申請手続

軽貨物運送業の開業に活用できる補助金・助成金

軽貨物運送業の開業には、以下のような補助金・助成金を利用できます。

<補助金>

  • 先進安全自動車(ASV)導入補助金:一定の装置を搭載した事業用の車両を購入等する場合に利用できる制度
  • 小規模事業者持続化補助金:小規模事業者が自社の経営を見直し、持続的な経営に向けた経営計画を作成したうえで取り組む販路開拓や生産性向上を支援する制度
  • IT導入補助金:ITシステムやツールを導入した際に利用できる制度

<助成金>

  • 安全装置等導入促進助成金:事業用トラックの交通事故ゼロを目指すため、安全運行に役立つ装置の取得費用の一部を助成する制度
  • アイドリングストップ支援機器導入促進助成金:エンジン停止時に使用できるエアヒータや車載バッテリー式冷房装置の取得費用の一部を助成する制度
  • ドライバー等安全教育訓練促進助成金:⾃社のドライバーまたは安全運転管理者に、全日本トラック協会指定の所定の研修を受講させた際、費⽤の全部または⼀部を助成する制度

補助金や助成金は、金融機関からの融資と異なり、返済義務がありません。事業資金を確保する手段として、有効活用しましょう。

参考:国土交通省 先進安全自動車(ASV)の導入に対する支援(令和5年度)
参考:小規模事業者持続化補助金(一般型)
参考:IT導入補助金2023
参考:公益社団法人全日本トラック協会 令和5年度安全装置等導入促進助成事業について
参考:公益社団法人全日本トラック協会 令和5年度アイドリングストップ支援機器導入促進助成事業について
参考:公益社団法人全日本トラック協会 令和5年度ドライバー等安全教育訓練促進助成制度について

軽貨物運送業の開業に失敗しないために

最後に、軽貨物運送業の開業に失敗しないために抑えるべきポイントを3つ紹介します。

  • 車両費用を抑える
  • 毎月の収支を把握する
  • 仕事の幅を広く持つ

軽貨物運送業は、個人でも始めやすいビジネスです。しかし、初期コストをかけすぎたり、収支を管理しないまま事業を進めたりすると、途中で資金がショートしてしまう恐れがあります。

また、仕事の幅を広げ、売上を安定させることも大切です。

ここでは、軽貨物運送業の開業に失敗しないためのポイントを解説します。

車両費用を抑える

初期費用を抑えるためには、車両を中古で取得したり、リースを活用したりと、車両費用を抑える工夫をしましょう。

事業としてやっていけそうかを確かめるために、まずは副業から始めたいという場合は、はじめのうちはレンタルで車両を確保するのもおすすめです。

毎月の収支を把握する

開業して失敗しないためには、毎月の収支を把握することが欠かせません。収支計画書を作成し、お金の流れを把握しましょう。

また、仕事で使用した経費は、その都度抜け漏れなく帳簿に記入する癖をつけることが大切です。

仕事の幅を広く持つ

仕事の幅を広く持つことで、売上の安定が期待できます。1つのプラットフォームに依存するのではなく、複数の案件を引き受けられるようにしましょう。

利益率を高めるためには、案件を荷主から直接請け負えるようになることも重要です。ただし、個人事業主が直請けの案件を請け負うのは容易ではありません。事業を拡大できる見通しが立ったら、メンバーを増やしたり、法人化したりして、直請けの案件を獲得する準備を進めましょう。

軽貨物運送業では個人でも開業できる!

軽貨物運送業は、軽トラックや軽バンなどの軽貨物車両を使用して、荷主から依頼された荷物を運送し、対価を得る事業のことです。軽貨物車両と車庫、普通自動車免許があれば始められるビジネスであり、届出制であるため、個人で開業するハードルは高くありません。

軽貨物運送業で成功するためには、限られた時間の中で、いかに多くの荷物を運べるかが重要です。無駄なコストを抑えながら、仕事の進め方を工夫して、売上と利益率アップを狙いましょう。


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