• 更新日 : 2021年6月11日

開業届に屋号は必要?会社名の付け方、申請・変更方法を解説

開業届に屋号は必要?会社名の付け方、申請・変更方法を解説

開業届には「屋号」を記入する欄があります。屋号の記入は必須ではありませんが、開業時に屋号を決めている場合は書いておきましょう。

本記事では、個人事業主の屋号について、付け方や申請方法、変更方法などを説明します。屋号の決め方におけるポイントもお伝えしますので、参考にしてみてください。

そもそも屋号とは?

屋号とは、個人事業主が営業上で使う名前です。屋号にはどんな意味があるのかを知っておきましょう。

屋号は仕事上の名前

個人で事業をするときに使う店名や事務所名が、屋号です。個人事業を行う場合、屋号は必須ではなく、本名で仕事をしてもかまいません。

フリーランスなどは本名で仕事をしている人も多いと思いますが、ペンネームなどを使う場合には、それが屋号ということになります。

屋号と商号の違い

「商号」とは、営業を行うときに、自己を表示するために使う名称です。商号は営業を行う上で重要なものとして、法律において一定の保護が受けられます。例えば、他人が不正に商号を使っている場合には、商号権という権利にもとづき損害賠償請求することも可能です。

これに対し、屋号は個人事業主が営業上実際に使っている名前というだけで、特に法的保護を受けられるものではありません。他人が自分の屋号と同じ名称を使っていても、文句は言えないということです。開業届に屋号を書くことはできますが、それによって何か権利が発生するわけではありません。

会社については、会社名が商号であることは会社法に明記されています(第6条第1項)。一方、個人事業主の屋号は、必ずしも商号にはなりません。個人事業主の場合には、屋号を登記した場合に限り、商号とすることができます。個人事業主には会社のような設立登記の制度はありませんが、商号の登記は可能になっています。

屋号を使うメリット

個人名のままでは事業内容がわかりません。「〇〇デザイン事務所」「カフェ〇〇」等の屋号を使うことで、どんなサービスを提供しているのかがわかるようになり、お客さまに覚えてもらいやすくなります。フリーランスの場合には、屋号を使うことで、本名を知られずにすむというメリットもあります。

また、開業時に屋号を決めておくと「これから事業を始める」というモチベーションも上がるでしょう。屋号を使うなら、開業時に決めておくことをおすすめします。

屋号を記載する書類

屋号を決めたら、税務署に提出する開業届に記載します。その他にも、青色申告承認申請書、納税地異動届、確定申告書など、税務署に提出する書類には屋号を記入する欄があります。

ただし、屋号を書いたら本名を書かなくてよいわけではなく、本名は必ず記載しなければなりません。屋号を使う場合には、請求書領収書見積書納品書など日常的な取引に使う書類にも記載します。

屋号はどうやって申請する?

屋号を使うために、特に申請手続きが必要なわけではありません。屋号は法的保護を発生させるようなものではないからです。しかし、屋号を使う場合には、開業届に書いておいた方がよいでしょう。

開業時に屋号が決まっていたら開業届に記載

開業届には屋号の記入欄があります。しかし、屋号は個人事業主に必須のものではないので、屋号を使わない場合には書かなくてもかまいません。開業時に屋号が決まっている場合には、忘れずに書いておきましょう。

屋号 開業届

屋号を開業届に書いておくメリット

個人事業主が銀行で口座を作る場合、原則として個人名義の口座になります。ただし、金融機関によっては、「屋号+個人名」の口座を作ることができます。この場合には、屋号が記載された開業届の控えが必要になります。

屋号の口座を開設できれば、お客さまや取引先からの振込の際にもわかりやすいので、営業上もメリットになります。

途中から屋号を使うこともできる

開業後、時間がたってから屋号を使い始めても問題ありません。この場合には、屋号を使い始めた後で提出する確定申告書に、屋号を書いておけばOKです。開業届を再度提出する必要はありません。

屋号を変更する方法

開業時に付けた屋号を変更した場合も、変更した後に提出する確定申告書に新しい屋号を書くだけでかまいません。

この場合にも、開業届の再提出は不要です。屋号はどこかに登録されるものではないので、現実に使っているものを確定申告書に書いて報告すれば足りるということです。

屋号を決める上での注意点

屋号に関する明確なルールはなく、基本的には自由に決められます。ただし、他の法律等には触れないように気を付ける必要があります。

「会社」や「法人」の文字を入れるのは不可

個人事業主の屋号には、「会社」「コーポレーション」「法人」などの文字を使ってはいけません。会社法では、「会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない」(第7条)と定めています。「一般社団法人」「一般財団法人」「学校法人」「医療法人」等の名称の使用についても各法人に関する法律で規制されており、屋号には使えません。

その他に、「〇〇銀行」「〇〇証券」「〇〇保険」などの名称も、その事業を行っているのでない限り法律で禁止されていますので注意しましょう。

同じ名前が使われていないかの調査も必要

他の会社や個人事業主が使っている会社名や屋号と同一であったり、類似していたりする屋号は使わない方がよいでしょう。他人と同一もしくは類似の屋号を使うこと自体が禁止されているわけではありませんが、他人の商号権や商標権を侵害してしまい、以下のような責任を問われることがあります。

商号権を侵害する場合

不正の目的で他人の商号と同一・類似の屋号を使った場合、不正競争防止法にもとづき、使用の差し止めや損害賠償を請求される可能性があります。ただし、不正の目的がなければ、不正競争防止法による責任を問われることはありません。

商標権を侵害する場合

会社名や屋号は、商標登録されているケースも多くなっています。「商標」とは、自社の商品を他社の商品と区別するために使用するマークのことを指し、会社名などの文字そのものも商標として登録できます。

他人が登録している商標と同一・類似の屋号を使ってしまうと、たとえ不正な目的がなくても、商標権の侵害になります。この場合には、民法・商標法にもとづき損害賠償や差し止め請求を受ける可能性があります。

他人が同じような名前を営業に使っていないかは、インターネットで検索してヒットしないかどうかで、ある程度はわかります。また、商号については法務省のサイトで、登録商標については「特許情報プラットフォーム」で調べることができます。

※参考:法務省「オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について」

屋号の付け方のポイント

屋号の付け方は、上に書いたように他の法律に違反しない限り、基本的に自由です。日本語(漢字、ひらがな、カタカナ)に限らず、アルファベット(大文字、小文字)、記号等も使うことができます。

自由度が高いので、逆に決めにくいと思うかもしれません。屋号を考えるときには、以下のようなポイントを押さえておくとよいでしょう。

事業内容がわかりやすいものにする

屋号は事業内容と関連性を持たせるべきです。「〇〇運送」「〇〇コンサルティング」「〇〇フォトスタジオ」など屋号に事業内容を入れておくと、名刺を渡しただけで何の会社かわかってもらえます。既にお店の名前を付けている場合には、お店の名前と統一しましょう。

個人名を入れてもかまわない

屋号に個人名を入れてもかまいません(例:諸星乾物店)。個人名が珍しい場合には、そのまま屋号にした方が覚えてもらいやすいことがあります。

読みやすさも大切

あまり知られていない外国語など、誰もが簡単に読めない言葉は屋号には不向きです。発音しやすいものにしましょう。

長すぎる名前は避ける

屋号に文字制限はありません。しかし、長すぎる名前は覚えにくいだけでなく、書類に屋号を記載するときにもバランスが悪くなってしまいます。屋号は短い方がいいですが、短すぎると聞き取りにくいこともあるので、発音してみてちょうど良い長さのものにしましょう。

マイナスイメージのある言葉は使わない

屋号は事業の発展を目指して、前向きなイメージのものにするべきです。ウケ狙いでも、下品な言葉や犯罪を連想させるような言葉は使わないようにしましょう。

屋号の画数(かくすう)に関して気をつけることは?

屋号に迷ったら、縁起の良い画数のものに決める方法もあります。5、7、8、9、15、17は大吉、吉の画数と言われ、採用している企業も多くなっています(ソニー、イオン、ローソン、ユニクロ、セブン-イレブン、楽天など)。

2種類以上の屋号を使うことはできる?

サービスごとに別の屋号を使うなど、2種類以上の屋号を使っても問題はありません。屋号を追加する場合でも開業届の再提出は不要ですが、開業届に書いていない屋号では銀行口座が作れないことがあります。

なお、屋号が複数ある場合でも、確定申告書を分ける必要はありません。確定申告はあくまで個人としてすることになります。

新しく家族が個人事業主になった場合、同一住所で同一屋号の登録は可能?

例えば、フリーランス同士が結婚し、同一住所で異なる事業活動を行うようなケースもあるでしょう。このような場合でも、同一の屋号を使うことは禁止されていません。ただし、屋号を商号として登記したい場合には、同一住所で同一の商号は登記できませんので注意しましょう。

商号登記や商標登録は必要?

屋号はそのままでは法的な保護を受けられません。屋号に法的な権利を与える方法として、「商号登記」と「商標登録」があります。

商号登記と商標登録の違い

商号登記とは、会社や個人が営業上使っている名前を法務局に登記することです。会社の場合には設立登記が義務付けられており、設立登記すれば商号も自動的に登記されます。個人事業主の場合には設立登記の制度がないので、希望する場合にのみ商号登記ができます。

これに対し、商標登録とは、他人の商品と区別するためのマークとして、会社名や屋号、商品名などを特許庁に登録することです。商標登録の申請(出願)は、個人も法人も任意になっています。

屋号は商号登記した方がいい?

屋号を商号登記する場合、全く同一の住所で同一の商号でない限り、登記が認められます。そのため、屋号を商号登記するだけでは、他人が同一の商号を使うことを防止する効果はありません。ただし、他人に不正の目的で屋号を使われてしまった場合には、不正競争防止法による差し止めや損害賠償請求ができます。

屋号を商標登録した方がいい?

屋号を他人に使われたくない場合には、商標登録する必要があります。事業が好調で屋号にブランド力が生じた場合、他者に屋号をマネされて損害を被るようなケースも考えられます。商標登録をしていれば、このような場合に損害賠償を請求したり、使用を差し止めたりすることが可能になります。

なお、商標登録は商品・サービスの区分ごとに行う必要がありますが、早い者勝ちとなります。他者が同一・類似の商品・サービスに関して同一・類似の商標を登録している場合には、出願しても登録を受けられません。屋号を商標登録するなら、できるだけ早い段階でしておくべきでしょう。

屋号を決めたら開業届に記載するのを忘れずに

開業時に屋号を決めておくと、事業のモチベーションアップにつながるだけでなく、お客さまにも覚えてもらいやすくなります。また、開業届に屋号を書いておけば、屋号の入った銀行口座が作れるというメリットもあります。屋号は開業時に決めて、忘れずに開業届に書いておきましょう。

よくある質問

そもそも屋号とは?

屋号とは、個人事業主が営業上で使う名前です。詳しくはこちらをご覧ください。

屋号を決める上での注意点は?

屋号に関する明確なルールはなく、基本的には自由に決められますが、他の法律等には触れないように気を付ける必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。

屋号の付け方のポイントは?

事業内容がわかりやすいものにすることや、読みやすさも大切です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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