• 更新日 : 2023年7月27日

経営力と経営力向上計画とは?認定事例も紹介!

経営力と経営力向上計画とは?認定事例も紹介!

経営者が経営力を身に付けることで、会社の業績が向上し、成長していく可能性が高くなります。また、中小企業庁に「経営力向上計画」を提出して認定されることで、さまざまなメリットを享受することが可能です。

この記事では具体的に「経営力とは何を指すのか?」をわかりやすくご説明します。

経営力とは?

経営力とは、会社の業績を上げ成長させていくために求められる経営者の能力のこと、経営者が会社経営をしていくために必要な力のことを指します。会社経営を続けていくためには組織を束ねて事業をまわしていかなければなりません。また、倒産しないためには常に会社の状況を把握し、適切な資金繰りを行う必要があります。これらができる能力の総称を経営力といいます。

経営力の構成要素は?

経営力には定義や特定の見解はありません。前項のとおり経営力とは会社経営をしていく力のことを指し、それは多岐にわたるからです。

ただし、一般的には会社経営には「事業推進力」「組織構築力」「人材育成力」「財務力」「リーダーシップ」という5つの能力が特に重要とされていて、これらを総称して経営力と呼ぶケースが多いようです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

事業推進力

事業推進力とは課題を明確にし、それに基づいて事業を実行・継続していく力のことを指します。計画や構想を立てたとしても、それを実行しなければ意味がありません。逆に事業を行っていても、計画がなければ頓挫してしまう可能性もあります。

現状を分析して具体的な事業の計画や目標を策定できる能力、そしてそれを基に従業員や取引先も巻き込みながら事業を行っていける能力の2つが事業推進力といえます。

特に起業する場合は一から事業を創り出さなければならないため、強力な事業推進力が求められるでしょう。

組織構築力

組織構築力とは組織をまとめる能力のことを指します。事業は会社という組織単位で行いますので、従業員が同じ方向を向いて各々の業務に向き合わなければ、なかなか会社は成長しません。また、人あるいは社内の各部門にはそれぞれ価値観や立場があるので、対立が発生する、うまく連携がとれないなどの問題が発生するケースも往々にしてあります。

人を巻き込み組織として束ねていく力、従業員間の人間関係や部門間の利害関係を調整する力が経営には必要不可欠です。

人材育成力

人材育成力とは必要な事柄を適切な方法で伝える力、人材を正しく評価する力、仕事を任せる力などが挙げられます。

会社組織は人の集まりなので、事業を行って会社を成長させていくためには、従業員一人ひとりを育成していかなければなりません。業務を行うために必要な知識やスキルはもちろん、強い組織を構築するためには経営者の想いや会社の方向性も含めて伝えていく必要があります。適切な評価を行い配置や待遇を考えていくことも重要です。

また、特にベンチャー企業や小規模な企業では、社長が一人で仕事を抱え込んでしまうケースもありがちですが、会社の規模を大きくするためにはある程度従業員に実務を任せることも大切です。

財務力

財務力とは会社の数字を分析する力、数字に基づき適切な判断ができる力のことを指します。会社には日々お金の出入りが発生しており、どんぶり勘定ではすぐに資金がショートしてしまうでしょう。

正しいお金の流れ(キャッシュフロー)を把握し、財務諸表や会計データから会社の財務状況を読み取り、それらに基づき人材採用や設備投資なども含めた経営戦略を立て、あるいは資金調達を行う力が求められます。

リーダーシップ

経営者は言うまでもなく会社のリーダーであり、強力なリーダーシップが求められます。リーダーに必要な素養は「伝達力」と「主体性」といえます。

いくら崇高な想いや良い計画、目標を持っていたとしても、それらが従業員全体にいきわたっていなければ、なかなか実現するのは難しいでしょう。また、経営者自身が事業の成功に向かって主体的に動きながら指示をしないと、従業員もどう動いていいかわからなくなってしまいます。

経営力を高めるために意識したいこと

以上で経営力の中身についてご紹介しました。これらの力は経営者にとっては必要不可欠といえますが、一朝一夕ではなかなか習得できるものではありません。日々の行動のなかで少しずつ身に付けていくことが大切です。ここからは経営力を高める3つの方法について見ていきましょう。

経営理念・MVVを持つ

経営理念とはその会社の活動方針を示したものであり、憲法のような存在です。MVVのM(ミッション)とは社会においてその企業が果たすべき役割、V(ビジョン)は会社の展望、V(バリュー)はその会社が社会に提供する価値を指します。MVVは経営理念を実現するための存在、あるいはより経営理念を具体化したものといえます。

明確な経営理念やMVVを持つことで、経営者も、従業員も、それに向かって行動できるようになります。また、経営理念やMVVを実現できているかどうかを定期的に振り返り、計画を練り直し、それを従業員に伝え続けることで、経営力が徐々に高まっていくはずです。

社員や顧客との密なコミュニケーション

経営理念やMVV、あるいは経営者の想いを紙に書いて掲示したり、メールなどで発信したりするだけでは、なかなか従業員には伝わりません。また、従業員と社長との距離が遠すぎると、人材が育たない、組織としてのまとまりがなくなってしまう、リーダーシップを発揮しづらくなってしまうといった問題が発生しがちです。

可能な限り従業員とコミュニケーションをとって、経営理念やMVV、想いを伝えていきましょう。また、社長自らが顧客に会って、あるいはホームページやSNS、動画などで想いを発信することで信頼性が高まり購買にもつながります。

交流会や勉強会への参加

日々の経営を実践しながら経営力を身に付けていくのが基本ですが、ともするとそれが独りよがりなものにもなりかねません。特に昨今では技術革新が著しく、社会情勢や人々の価値観、ライフスタイルも目まぐるしく変化しています。そのため、経営計画や経営理念、MVVあるいは業務の進め方やノウハウがすぐに時代遅れのものとなってしまうかもしれません。

勉強会や交流会などに参加して最新のトレンドやノウハウを学んだり、講師や経営者仲間と情報を交換したりすることによって、新しい気づきや経営のヒントを得られる可能性もあります。

経営力向上計画とは?

この記事も含め多くのネット記事や書籍、セミナーでは「経営力が大切」と説いています。国においても経済の活性化や技術力の発展、雇用の創出を推進する鍵として、各企業の経営力の向上を重要な位置づけとして捉えているようです。

中小企業の育成や発展をサポートする中小企業庁では「経営力向上計画」を推進しており、経営力向上計画を策定して提出し、それが認定された事業者に対して経営力を高めるための支援を行っています。

経営力向上計画を受けるメリット

国に経営力向上計画の策定にあたっては、経営革新等支援機関(商工会議所、商工会、中央会、士業、地域金融機関など)からサポートを受けることが可能です。専門家から支援を受けることで、よりスムーズにかつ精度が高い計画の策定ができるようになります。

また、経営力向上計画が認定されれば、計画に基づき取得した設備や不動産について、法人税や不動産取得税などの特例措置を受けられる「税制措置」、金融機関の融資に対する信用保証・債務保証などの資金調達に関する支援を受けることができる「金融支援」、業法上の許認可の承継の特例や組合の発起人数に関する特例、事業譲渡の際の免責的債務引受に関する特例などの「法的支援」を受けることができ、より有利な条件で経営力の向上計画を実行することが可能です。

より詳しい制度の内容は中小企業庁が公表している『経営力向上計画策定の手引き』で紹介されています。

参考:経営力向上計画策定の手引き|中小企業庁

経営力向上計画の認定事例

すでにさまざまな企業が経営力向上計画の認定を受け、国のサポートを受けながら経営力の向上に向けて取り組んでいます。ここからは2社の取り組みについてご紹介します。

株式会社ツルヤ

株式会社ツルヤは長野県でスーパーマーケットを展開している会社です。1892年に創業して以来、地域密着型の経営を続けてきましたが、新しい商圏への新規出店と顧客ニーズに合わせた商品開発を目的とし、設備投資や新規店舗周辺の消費動向や消費者の趣向などの情報収集、市場ニーズに合わせた商品開発などの取り組みなどを盛り込んだ経営力向上計画が経済産業省から認定されました。

税制優遇制度を活用しながら実際に新規店舗の開設に成功し、POSシステムによる情報収集とそれに基づいた商品開発の実施、新規店舗における若手人材の育成、ショーケースやベーカリーオーブンなど店舗設備の充実など、幅広い取り組みを実践しています。

参考:中小企業等経営強化法認定計画事例集|経済産業省

東栄化学工業株式会社

東栄化学工業株式会社は1960年に創業した自動車用、電気機械用、工業用のゴム部品を製造するメーカーです。老舗であるが故に、特に新規製品の開発においてはベテラン社員の暗黙知に頼った工程もあり形式知化を課題としていました。測定装置を導入して客観的なデータを把握しながら新規商品の開発を進めていく旨を経営力向上計画に盛り込み、認定を受けました。

ゴム練り工程では作業者によって練り精度にばらつきがありましたが、税制優遇措置によって小型自動混練機と分散測定装置を導入することで、精度が安定するようになり、医療など新規参入した分野においても正確なデータに基づいた商品開発ができるようになったそうです。

経営力向上計画に基づく取り組みを通じ、売上高経常利益率をはじめ、「製造業に係る経営力向上に関する指針」に準ずる目標値を超える成果が出たということです。

参考:中小企業等経営強化法認定計画事例集|中小企業庁

これからは経営力を高めないと会社が生き残れなくなるかも

今、世の中が目まぐるしく変化していて、企業においても転換期を迎えているといえます。新しいニーズに応え、会社のあり方も時代に合わせたものに改善していかないと、取り残されてしまうかもしれません。

会社経営を存続させる鍵は経営力にあります。経営者の方はぜひ今回の記事を参考にし、ときには支援を受けることも検討しながら、経営力向上を目指しましょう。


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