- 更新日 : 2023年12月5日
カプセルホテル開業で知っておきたいこと 儲かる経営や資金について
カプセルホテルは、旅費をできるだけ安く抑えたい人など一定の層に人気があります。ホテル経営側も個室が必要なく、カプセルユニットがあれば経営できるため、通常ホテルよりもコストを抑えた開業ができるでしょう。今回は、旅行需要の復活で注目のカプセルホテル開業で知っておきたいポイントを解説します。
目次
これからカプセルホテルを開業するメリット
新型コロナウイルス感染症の影響で、旅行需要が大幅に減少したこともあり、宿泊業界や旅行業界は重大な局面を迎えました。しかし、2022年の後半からはそうした旅行業界の困難も徐々になくなりつつあります。2022年の10月に海外からの入国制限が撤廃されたことが大きな要因で、訪日外国人観光客の数が回復してきているためです。
さらに、ゴールデンウィーク後の2023年5月8日以降は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行が決まっています。このような要因もあり、2023年以降は、海外からの旅行者、国内旅行者とも増加が予測されています。
カプセルホテルは、旅費を安く抑えたい観光客はもちろん、終電を逃したビジネスマンなどにも需要のあるビジネスです。今後の旅行需要の回復も考えると、儲けを期待できるビジネスといえるでしょう。
カプセルホテルの開業に必要なことは?
カプセルホテルを開業するために知っておくべき、カプセルホテルの営業区分や制約などについて解説していきます。
カプセルホテルは旅館業法では簡易宿所
人が宿泊する施設は、ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業のほか、民泊営業や国家戦略特別区域での特区民泊営業に区分できます。
このうち、許認可の難易度が高い旅館業法で定められているのが、ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業です。いずれも人を宿泊させて宿泊料を受け取る事業を指します。
このうち、カプセルホテルが区分されるのは、簡易宿所営業です。簡易宿所とは、宿泊場所を多人数で共用するような宿泊所のことです。一般的な宿泊先であるホテルや旅館とは異なる制限が設けられています。
立地や設備に制約がある
旅館業法が適用されるカプセルホテルは、開業にあたって、さまざまな制限が設けられています。
ホテル営業や旅館営業のような玄関帳場の設備は必要ありませんが、ほかの区分と同じように換気・採光・照明・防水・排水の設備、入浴設備の設置が必要です。さらに、都道府県の条例で定められた設備基準にも適合していなければなりません。
また、簡易宿所に区分されるカプセルホテルは、客室数に制限はないものの、客室の延床面積が33㎡以上と法令で定められています。基準を満たさない構造ではカプセルホテルを開業できない点に注意しましょう。
このほか、建設基準法において宿泊施設の定めに応じた立地および建物設備にしなければならないほか、都道府県の条例でも特別に規定が設けられていることがある点にも注意が必要です。
開業には営業許可や消防法などの確認が必要
旅館業法上の簡易宿所に該当するカプセルホテルは、保健所の許認可が必要な事業です。開業までに構造設備などを確認して、許可申請の手続きを行う必要があります。施設完成後に、申請を受けた保健所の職員が施設の検査を行い、設備に問題がなければ営業許可が下りる流れです。
無許可での営業は罰金などの刑が定められていますので、必ず営業許可を受けた上でカプセルホテルを開業するようにしましょう。
さらに、簡易宿所は営業許可が必要なほか、消防法などの関連法案の規制も受けます。消防署などでの手続きも必要になりますので、あらかじめ管轄の機関で確認しておくことをおすすめします。
カプセルホテルを開業するまでの準備
カプセルホテルの開業には、営業許可などの法に定められた手続きが必要だと説明しましたが、それ以外にはどのような準備が必要になるのでしょうか。開業までに必要な準備について解説していきます。
事業構想をつくる
事業構想とは、これからどのような事業を始めたいか、事業の骨組みをまとめることです。事業の目的や内容、規模、競合他社の状況、事業実現のための資金調達の方法、将来の展望などの事業の大枠を決めていきます。
これから始める事業について細かく書き出していくことで、事業の軸が固まるほか、事業開始にあたっての課題なども洗い出せるでしょう。
カプセルホテルなら、どのくらいのユニットで営業するのか、どのくらいの従業員を雇用するのか、なども決めていきましょう。
コンセプトをつくり開発・運営プランを確認する
カプセルホテルで安定した経営を目指すには、コンセプト設計に力を入れることが重要です。特に競合他社の多いエリアなどでは、コンセプトがしっかりしていないと他社に競争で負けてしまいやすくなります。
まずは、どのような層をメインターゲットにしたいかを定め、コンセプトを決めていきましょう。例えば、女性にうれしい設備が充実した女性向けのカプセルホテルとして売り出す、旅行者向けにインパクトのあるカプセルホテルとして売り出す、などがあります。
コンセプトを定めたら、開業の資金繰りや運営方法でつまずかないように、開発や運営プランを立て、開業までに漏れなく準備ができるよう確認するようにしましょう。
物件や設備、人材などを準備する
開業までに、建築基準法などで定められた要件を満たす物件を用意し、さらに旅館業法や消防法などの基準を満たす設備を整えておく必要があります。
法令で定められている基準を確認しながら、物件の準備や設備の整備などを進めていきましょう。なお、簡易宿所であるカプセルホテルは、排水設備や入浴設備などの一定の設備が必須のため、既存の物件を利用する場合は工事が必要になることもあります。工事期間も見越して準備を進めていくとよいでしょう。
また、規模に応じて従業員の確保も必要になります。従業員を雇用する場合は、雇用保険や社会保険関連の手続きについても確認しておきましょう。
カプセルホテル開業の際の注意点
カプセルホテルの開業ではどのような点に注意しておくとよいか、注目したい3つのポイントをご紹介します。
カプセルホテルだけでなく業界全体の動向を注視する必要がある
先述したように、新型コロナウイルス感染症の影響で長らく規制されていた海外からの入国の規制撤廃、新型コロナウイルス感染症の5類への移行もあり、旅行業界の市況は回復傾向にあります。
さらに、世界的にはカプセルホテルという事業形態の成長が著しくなっています。衛生的で少ない予算でも利用できる宿泊施設の需要が高まっているためです。
ただし、いくら世界的に好調といっても必ずうまくいくとは限りません。カプセルホテル以外の宿泊施設の動向も、競合相手として関わってくるためです。
近年の国内での大きな改正では、2018年の民泊新法の施行がありました。これは、一般住宅を宿泊施設として利用できるようにした法律です。このような法令の成立や改正などがカプセルホテルの経営にも影響を与えることがあります。カプセルホテルの経営にあたっては、宿泊業界全体の動向をよく把握しておく必要があるでしょう。
広告・宣伝などを利用した集客力アップが重要
宿泊旅行統計調査によると、2022年の客室稼働率は、宿泊施設全体で46.5%、カプセルホテルを含んだ簡易宿所では21.6%でした。簡易宿所には山小屋なども含まれるためカプセルホテルだけの数字ではないことに注意が必要ですが、稼働率が低すぎると赤字になってしまいます。
どのくらいの稼働率を目指すべきかは規模などで異なりますが、できるだけ高い稼働率で運営できるようにするとよいでしょう。カプセルホテルは室料が比較的安価なため、稼働率が低いと収支が合わなくなってしまいます。
稼働率を高めるためには集客が重要です。広告や宣伝、あるいはSNSなどを利用してカプセルホテルの認知度を高めるほか、良い口コミを増やして評価を高めていきましょう。稼働率を高めるためにはリピーターを増やすことも重要な施策になりますので、開業後もサービスや設備を見直して継続的に利用してもらえるようにすることも大切です。
参考:宿泊旅行統計調査(令和4年・年間値(速報値))|観光庁
開業や経営の専門サポートを受けた方がよい場合も
カプセルホテルは、ビジネスホテルやドミトリー、マンガ喫茶、民泊などほかの宿泊施設も競合になり得るビジネスです。
開業しても、ほかの宿泊施設との差別化が図れずにうまくいかない可能性もあります。また、開業にあたっては各種法令に定められた手続きや設備の設置が必要になりますので、宿泊業界の開業が初めてだと開業までスムーズにいかない可能性もあります。
宿泊業界に初めて参入する場合やノウハウがない場合は、開業や経営の専門的サポートを受けることを検討するとよいかもしれません。
カプセルホテルの開業に必要な資金の考え方
カプセルホテルの開業に必要な資金は、規模や建物の取得の方法で変わってきます。ビルを新築してカプセルホテルをつくる場合は、エリアや規模にもよりますが、数億円程度の資金が必要になることもあるでしょう。
コストを抑えて開業したい場合、既存の物件を取得してリノベーションするパターンがあります。中古物件であれば新築よりも低コストで取得できますし、賃貸であれば物件を取得するよりも初期費用を抑えて準備できるでしょう。
物件のほか、各種設備も必要です。まず、カプセルベッドが必須になります。一から設計してオリジナルのものをつくる方法もありますが、コストを抑えて開業するなら既存のカプセルベッドを購入するのも方法の一つでしょう。カプセルベッドは1台30万~100万円程度で購入できます。例えば、50万円のカプセルベッドを20台購入した場合は、それだけで1,000万円が必要です。
このほか、取得した設備の状況に応じて、排水設備や照明設備などの必要な設備の設置費用や内装工事費用などがかかります。開業の規模にもよりますが、物件を賃貸する場合でも、1,000万~5,000万円程度は見ておいた方がよいでしょう。
カプセルホテルは、飲食店などと比べると初期費用がかかるビジネスではありますが、稼働率が高ければ、その分、費用の回収が早まるほか、利益も生まれます。例えば、1泊3,000円で20のカプセルベッドがあり、稼働率が常に60%だった場合の1カ月(30日)あたりの収益は108万円です。初期費用として設備投資にコストがかかりますが、一定の稼働率を確保した安定経営ができればコンスタントに利益を上げられるビジネスといえるでしょう。
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カプセルホテルの開業にはしっかりした事業計画が必要です
カプセルホテルは、旅行業界全体の回復傾向や訪日外国人観光客などの需要もあり、今後収益の増加が見込まれるビジネスです。しかし、そのほかの宿泊業を含めた競合も多く、初期投資が多額であることから、稼働率が低い状態が続くと投資資金の回収が長期にわたり、なかなか利益につながらない可能性もあります。カプセルホテルの開業で成功するには、しっかりしたコンセプトや事業計画が重要です。
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