• 更新日 : 2023年12月4日

建設業を起業・開業する方法は?独立する準備や失敗を防ぐコツを解説

建設業を起業・開業する方法は?独立する準備や失敗を防ぐコツを解説

建設業の開業・起業には、個人事業主の一人親方としての開業と、法人としての開業の2つの選択肢があります。開業すれば、工夫や努力、働き方次第で年収1,000万円を目指すことも可能です。この記事では、建設業で開業する方法や開業資金、年収の目安、必要な資格や許可、および手順と、失敗を防ぐコツを解説します。

建設業で独立・開業する方法

最初に、建設業で独立・開業するためにはどのような方法があるかを見てみましょう。

個人事業主・一人親方として開業する

建設業で独立・開業するための方法として、まず個人事業主である一人親方としての開業が挙げられます。

一人親方とは、工事の請負会社と契約を結び、大工や型枠、左官、クロス張りなど1人でできる作業を行うもので、従業員を雇わず自分1人、あるいは家族だけで事業を行うことが一般的です。新築だけではなくリフォーム関連の需要も見込め、一人親方としての独立後に軌道に乗ったら、従業員を雇うケースもあります。

一人親方としての独立に必要な手続きは、開業届や青色申告承認申請、電子申告開始届、および地方税の開始申請など、税務関係の届出のみで、取り扱う工事の規模が一定以下の場合には資格や許可も不要です。すぐに独立・開業したい人にはおすすめの方法といえるでしょう。

法人として開業する

建設業での独立・開業は、法人として行うことも方法の一つです。

法人として開業するためには、法人設立登記の手続きを行って会社を設立します。また、従業員を雇用すれば社会保険や労働保険の手続きが必要となるなど、個人事業主の一人親方と比べれば、やるべきことは多くあり、十分な資金も必要です。

その一方、法人は社会的な信用を得られやすいため、銀行などからの融資も見込めます。また、自分自身が職人として仕事をしなくても、会社経営のみで収入を得ることも可能でしょう。

個人事業主と法人どちらがよい?

個人事業主と法人は、それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらを選ぶかは自分が何を目指したいかで決まります。

余計な手続きはなしにして、すぐに収入を得たいのなら個人事業主がよいでしょう。一方、じっくりと準備をし、事業を拡大していきたいなら、法人の設立がおすすめです。

建設業の開業資金の目安

建設業の開業資金の目安を紹介します。

初期費用・資本金

建設業の開業にあたって必要となる初期費用は、建設業許可(後述)を取得して大きな工事を受注しようと思う場合には、原則として500万円以上の自己資本が必要です。また、株式会社を設立する際には、収入印紙代や定款の認証手数料、謄本手数料、登録免許税などで、22万円~24万円程度の実費がかかります。事務所を借りようと思えば、そのための敷金・礼金・前家賃などに加え、事務所に置く備品の費用もかかるでしょう。以上を合計すれば500万円~1,000万円程度になります。

ただし、個人事業主の一人親方として小規模な工事を受注することから始めようと思うのなら、建築業許可取得のための自己資本は必要ありません。会社設立のための費用も不要、事務所も自宅の一部を使うので問題がありません。初期費用はそれほどかからないでしょう。

運営・ランニングコスト

事業運営のためのランニングコストは、まず材料費などの原価と、事務所を借りるならその家賃や光熱費がかかります。ただし、自宅の一部を事務所として利用するなら、家賃は不要です。

建設業は儲かるか、年収の目安

建設業は儲かるのでしょうか?全建総連東京都連合会が発行した『2021年賃金調査報告書』によれば、常用・手間請・一人親方の平均年収は以下のように推移しています。

一人親方の平均年収の推移

グラフは『2021年賃金調査報告書』のデータをもとに筆者作成

上のグラフは、常用(決められた時間に対して雇用される)・手間請(決められた労務提供について雇用される)・一人親方の年収の推移です。2012年に約408万円だった平均年収は、この10年で右肩上がりの上昇を続け、2021年には約512万円となっています。

一人親方の平均年収は、1990年代のバブル期に高騰しましたが、バブル崩壊とともに下落が続いていました。しかし、近年はまた上昇に転じている状況です。

ただし、以上はあくまでも一人親方全体の平均年収です。一人親方は会社員のような給与体系に縛られないため、工夫や努力、働き方次第では、年収1,000万円を目指すことも可能です。

年収を増やすためには、まず現場を選ぶことが挙げられます。主な現場別の年収は以下の通りとなっています。

一人親方の現場別の年収

グラフは『2021年賃金調査報告書』の図を筆者が加工(縦棒グラフを横に)

上のグラフにあるように、最低金額のゼネコン(土木)の年収470万円と、最高金額の地元(中小)ゼネコン(建築)の年収811万円では、300万円以上の開きがあります。高収入が得られる現場を選ぶことは、年収アップのための大きなポイントといえるでしょう。

一人親方が年収を増やすための方法は、そのほかに以下のようなものが挙げられます。

  • 建築大工技能士、電気工事士、塗装技能士などの資格を取得する
  • 技術力を高める
  • 元請けや他の一人親方との人脈を大事にする
  • 工事の発注者から直接依頼を受ける元請けになる

建設業の開業に必要な資格や許可

建設業の開業にあたっては、軽微な建設工事のみを受注するなら許可は必要ありません。「軽微な」とは具体的には以下のような工事です。

  1. 建築工事一式以外で、1件の請負代金が500万円未満の工事
  2. 建築工事一式で、1件の請負代金が1,500万円未満であり、かつ以下の要件を満たすもの
    • 木造住宅
    • 延べ面積が150平方メートル未満(そのうち2分の1以上が住居)

上記の規模を超える工事を受注したいと思ったら、「建設業許可」を取得しなくてはなりません。建設業許可の業種と種類、取得のための要件は以下の通りです。

建設業許可の業種

建設業許可は29の業種に分かれており、受注する工事の種類に応じて取得しなければなりません。これは、元請負人だけではなく、下請負人や法人・個人についても同様に、上記の規模を超える工事を受注する場合には取得が必要です。

建設業許可の29業種とは以下の業種です。

1.土木工事業、2. 建築工事業、3. 大工工事業、4. 左官工事業、5. とび・土工・コンクリート工事業、6.石工事業、7. 屋根工事業、8. 電気工事業、9. 管工事業、10. タイル・れんが・ブロック工事業、11. 鋼構造物工事業、12. 鉄筋工事業、13. 舗装工事業、14. しゅんせつ工事業、15. 板金工事業、16. ガラス工事業、17. 塗装工事業、18. 防水工事業、19. 内装仕上工事業、20. 機械器具設置工事業、21. 熱絶縁工事業、22. 電気通信工事業、23. 造園工事業、24. さく井工事業、25. 建具工事業、26. 水道施設工事業、27. 消防施設工事業、28. 清掃施設工事業、29.解体工事業

建築業許可の種類

建設業許可は、まず知事許可と大臣許可の2種類があります。また、それぞれについて一般許可と特定許可に分かれています。

【知事許可と大臣許可】

  • 知事許可: 1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設ける場合に取得する
  • 大臣許可: 2つ以上の都道府県に営業所を設ける場合に取得する

【一般許可と特定許可】

  • 一般建設業許可:
    請け負った工事を下請けに出さない場合、あるいは下請けに出す1件の工事代金が4,500万円(建築工事一式の場合は7,000万円)未満の場合に取得する
  • 特定建設業許可:
    発注者から直接請け負った1件の工事について、下請け代金の額が4,500万円(建築工事一式の場合は7,000万円)以上となる場合に取得する

建設業許可の取得要件

建設業許可を取得するためには、経営業務管理責任者、専任技術者、誠実性、財政的基盤、欠格要件についての要件を、以下の通り満たさなければなりません。

【経営業務管理責任者についての要件】

経営業務経験についての所定の要件を満たす、経営業務管理責任者がいる必要があります。

【専任技術者についての要件】

国家資格や所定学科の卒業、実務経験などについての所定の要件を満たす、常勤の専任技術者がいなくてはなりません。

【誠実性についての要件】

建築業の営業に際して不正や不誠実な行為をおそれがないことが必要です。

【財政的基盤についての要件】

原則として500万円以上の自己資本が必要など、財政的基盤についての所定の要件を満たさなくてはなりません。

【欠格要件】

公共の福祉を害したり、他人に迷惑をかけたりなどのおそれがないことが必要です。

建設業を開業する手順

建設業を開業するため手順は以下のとおりです。

企業で働いてスキルを身に付ける

建設業を開業するにあたっては、まず企業の社員や下請け作業員として働いて経験を積み、自分が専門とできる業種のスキルを身に付けることが必要です。十分なスキルが身に付き、企業に勤めるより独立したほうが収入を得られると思えた時点で、独立の準備を始めましょう。

専任技術者になれる資格を取得する

十分なスキルが身に付いたら、専任技術者になれる資格を取得するのがおすすめです。専任技術者になれば建築業許可が取得できるため、規模の大きな工事も受注できるようになります。専任技術者になれる資格として、施工管理技士(土木・建築・電気など)や、職業能力開発促進法に基づく技能検定などがあります。

開業資金や事務所を準備する

独立にあたっては、開業資金や事務所が必要です。開業資金や事務所は前述のとおり、会社を設立するのか個人事業主の一人親方になるのかで大きく異なります。自宅を事務所として使う一人親方なら、開業資金はそれほどかからないでしょう。

会社設立・開業の手続きをする

以上の準備ができたら、会社設立や開業の準備をします。会社を設立するのなら、法人登記の手続きが必要です。規模の大きな工事を受注したいと思うのなら、建築業許可も必要となるでしょう。個人事業主の一人親方としての開業なら、税務署に開業届を提出します。

建設業の開業・運営に失敗しないために

建設業の開業・運営でありがちな失敗と、その回避法を紹介します。

仕事が受注できない

開業した直後にはまだ知名度も実績もないため、新規顧客の獲得には営業努力が必要です。ホームページ開設や建設会社のポータルサイトへの広告掲載、SNSでの発信などを積極的に行いましょう。また、施工後のアフターフォローや定期的な様子伺いなども、リピーター獲得のために有効です。

事務作業がうまく回せない

独立すれば本業の建築業務だけではなく、経理や営業、税務などの事務作業も自分でこなさなければなりません。そのため、忙しくなり過ぎて体を壊してしまうケースもままあります。すべてを自分でこなすのが無理ならば、経理システムや外部リソースの導入を検討するのがよいでしょう。

建設業向けの事業計画書テンプレート(無料)

事業計画書のテンプレート・フォーマット

こちらから自由にお使いいただけるので、ぜひご活用ください。

建設業の事業計画書・創業計画書テンプレート・作成例

建築業を開業して年収1,000万円を目指そう

建築業を開業するためには、企業で働いてスキルを身に付け、専任技術者となれる資格を取得して、開業資金や事務所の準備、諸手続きを行っていくのが手順となります。失敗を防ぐためには、営業力の強化と外部リソースの導入がポイントです。しっかりと準備をして建設業を開業し、年収1,000万円を目指しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事