- 作成日 : 2022年9月22日
合同会社設立は一人でできる?手順やメリット、株式会社との比較も!

合同会社も株式会社も、一人で会社設立ができます。両者の違いは、設立費用や運営方法、社員(役員)、税金面などです。
このうち、合同会社を一人で設立するメリットは、個人事業主と比べた場合、融資を受ける際の法人としての信用力、役員報酬の経費計上による節税面、社会保険への加入にあります。一方、登記の際に法務局へ提出する定款作成にコストがかかるなどのデメリットもあります。
この記事では、合同会社を一人で設立するメリットやデメリット、設立の手順や必要書類、資本金の額、資金調達方法などについて詳しく解説していきます。
目次
合同会社は一人で設立できる?
合同会社は、会社法に定める会社(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社)のひとつです。英語では、LLC(Limited Liability Company)と表記されます。
合同会社は、出資と経営が分離されておらず、出資者と経営者が同一であるのが特徴です。会社が倒産した場合などに出資者に課せられるのは、有限責任(出資の範囲内で責任を負う)です。
合同会社は、一人で設立することが可能です。株式会社を一人で設立する場合も含め、一人で設立する会社を一人会社といいます。
合同会社と株式会社、一人で設立するならどっち?
合同会社も株式会社も一人で設立できます。それでは、一人で設立する場合、どちらを選択すれば良いのでしょうか。合同会社と株式会社の違いから、一人で設立するのに適した組織はどちらなのか解説していきます。
設立費用の違い
株式会社と合同会社とでは、会社設立にかかる費用が異なります。ここでの費用とは、会社設立登記にかかる費用のことです。
株式会社の場合、公証役場で定款認証を受ける必要があります。定款認証には3~5万円の手数料がかかります。さらに、作成した定款には収入印紙4万円分の貼付が必要です(※電子定款の場合は収入印紙代が不要)。加えて、会社設立登記の登録免許税として資本金の0.7%(15万円未満のときは15万円)を納める必要があります。資本金を100万円とすると、設立費用は、20~25万円程度です。
一方、合同会社は定款に貼付する4万円分の収入印紙は必要であるものの(※電子定款の場合は収入印紙代が不要)、公証役場で定款認証を受ける必要がなく、手数料もかかりません。会社設立登記の登録免許税として資本金の0.7%(6万円未満のときは6万円)を納める必要がありますが、株式会社よりも安く抑えられます。資本金を100万円とすると、6~10万円程度の費用で会社を設立できます。
設立費用の面で考えると、一人で設立するなら設立費用が少なく済む合同会社の方が良いでしょう。
運営方法の違い
株式会社と合同会社は運営方法にも違いがあります。合同会社は会社の所有者と経営者が一致している一方、株式会社は会社の所有者と経営者を分離できる構造になっています。
そのため、株式会社は経営に従事する取締役とは別に、会社の所有者である株主が株主総会において重大な意思決定を行うことになっています。原則に従えば、一人で会社設立した場合でも株主総会の招集や決議が必要です(※ただし、株主全員の同意があれば株主総会の手続きを簡略化できます)。
一方、合同会社には、株式会社の株主総会に相当するものはありません。所有者と経営者が一致しているためです。手続きの手間などを考えると、簡便に意思決定ができる合同会社の方が一人起業には向いているでしょう。
社員の違い
株式会社と合同会社では、役員や社員の扱いにも違いがあります。
株式会社の場合、一人で会社設立するときには、設立者が取締役(代表取締役)となります。一方、合同会社では、取締役に相当する人を社員といい、代表者を代表社員といいます。
合同会社の場合、出資者と社員が一致しているため、役員任期のようなものは存在しません。特別な手続きをすることなく、社員の役割を継続できます。
一方、株式会社には原則2年の役員任期があります(非公開会社は10年まで延長可)。そのため、一人で会社設立した場合であっても、株式会社であれば、役員変更登記や再任の手続きを行わなくてはなりません。
役員変更の手続きを考えると、設立当初の社員で継続しやすい合同会社の方が一人起業に向いています。
税金の違い
法人税などでは、株式会社も合同会社も普通法人に分類されます。つまり、普通法人として同じように扱われるということです。株式会社も合同会社も、課せされる税金に違いはなく、税金面での有利・不利はありません。
合同会社を一人で設立するメリットは?
合同会社を一人で設立するメリットには次のようなものがあります。前項では株式会社と合同会社を比較しましたので、ここでは主に、個人事業主と比較したときのメリットを取り上げます。
一人でも法人としての信用力があり融資を受けやすい
先述のように、合同会社を設立するには定款の作成や会社設立登記申請などが必要で、費用もかかります。しかし、登記を行えば、会社の存在や基本情報を誰でも取得できるようになり、一定の信用力が生まれます。
一方、個人事業主は登記の必要がなく、法人と比べて事業の存在を証明するのが難しくなります。一人でも法人として起業でき、その信用力から融資を受けられる可能性を高められるのが合同会社設立のメリットです。
個人と違い役員報酬を経費にできるため節税できる
個人事業主と違い、役員報酬を経費にできる点も一人で合同会社を設立するメリットです。個人事業主の場合、売上から経費を差し引いた額を所得として所得税を計算し、超過累進課税により、所得が高いほど納めるべき税金が増えます。
合同会社を含めた法人の場合には、不当に高額でなければ、役員の給与を役員報酬として税法上の経費である損金に算入できます(※ただし、損金算入できるのは毎月一定額の定期同額給与、事前に届け出た事前確定届出給与、業績連動給与に限定される)。会社の留保分と役員個人の報酬に分けて管理できるため、節税も可能です。
個人と違い社会保険に加入できる
健康保険は皆保険、年金は皆年金となっているため、対象者はいずれかの健康保険制度や年金制度に加入しなければなりません。個人事業主の場合、加入できるのは国民年金と国民健康保険などの保険です。基本的に会社員のような社会保険には加入できません。
その点、合同会社は社会保険の加入義務者となり、従業員だけでなく、役員(代表社員など)も健康保険や厚生年金保険に加入することになります。健康保険や厚生年金保険は、国民年金や国民健康保険などに比べて、より充実した手当や扶養制度がある点で大きなメリットがあります。
合同会社を一人で設立するデメリットは?
一人で合同会社を設立することには、次のようなデメリットがあります。
会社設立登記や定款作成にコストや労力がかかる
合同会社の会社設立登記にかかる費用は株式会社よりも少なく済みますが、それでも前述のとおり一定のコストはかかります。
個人事業主の開業にはほとんどコストがかからない(※設備投資などを除く)ことを考えると、会社設立時にはコスト面でのデメリットがあるといえるでしょう。また、定款を作成する必要があり、そのための労力も必要になります。
個人と比べ税務が複雑になる
個人事業主と比べると、法人の税務は複雑になります。個人事業主の所得税の申告の場合、「売上-必要経費=事業所得」とシンプルに所得を算出できますが、法人税は「益金-損金=所得」で所得を算出するためです。
法人税法上の益金や損金の範囲には、会計上の収益や費用とは異なる部分もあり、申告調整が必要になるうえ、そのための申告書類も作成しなくてはなりません。このように、税務申告に労力がかかるため税理士に依頼するケースが多く、個人事業主の確定申告よりもコストがかかります。
一人だと会社承継に問題がある
一人で合同会社を設立した場合、事業承継に課題が残ります。何も対策を行わずにいると、相続人であっても自動的に事業が承継されることはありません。あらかじめ定款で、社員が死亡したときの持分の承継について定めておく必要があります。
なお、ここまでは会社手続き上の話です。事業を承継できても、承継した人が事業の状態を理解していないと経営が困難になるおそれがあります。その点も踏まえて、一人で合同会社を設立する場合には承継についても考えておく必要があります。
合同会社を一人で設立する手順は?
合同会社を一人で設立する場合、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか。いくつかのステップに分けて紹介します。
1.資本金の額など基本事項を決める
まず、資本金の額をはじめとした会社の基本事項を決定していきます。資本金については社員一人につき1円以上が必要ですので、一人で合同会社を設立するときには1円以上の金額を資本金として設定します。ただし、1円では不都合が生じることもあるため、許認可が必要な事業についてはその要件を満たす金額を、それ以外では開業に必要な資金を参考に資本金を決めていきます。
2.定款を作成する
定款は、合同会社の社員になる人が作成し、すべての社員がこれに署名または記名押印することが求められます。一人で設立する場合には、自身の署名または記名押印のみで問題ありません。
3.出資を行う
決定した資本金額を払込んで出資を行います。払込先は、まだ法人口座を開設していないため、一人で合同会社を設立する社員の金融機関の口座です。出資を行ったら、通帳の出資を確認できるページと表紙・裏表紙をコピーして、払込証明書を作成します。
4.法務局に設立登記に関する書類を提出する
合同会社を設立する代表者が、法務局に設立登記のための申請書を提出します。「合同会社設立登記申請書」のほかに、次のような書類の添付が必要です。
- 定款(認証は不要)
- 業務執行社員の一致があったことを証明する書類
- 出資の払込みなどを証明する書類
- 資本金の額が会社法や会社計算規則に従って計上されたことを証明する書類(※出資財産が金銭のみのときは不要)
合同会社を一人で設立するときの資金調達方法は?
合同会社は、株式会社と異なり株主から出資を募ることができません。その点、資金調達に制限がありますが、さまざまな資金調達方法を駆使して事業に充てる資金を集めることは可能です。
例えば、基本的に返済の必要がない補助金や助成金を活用する方法があります。経済産業省の「スタートアップチャレンジ推進補助金」、地方自治体の創業者向けの補助金や助成金など、公的な支援はいくつかあります。これらは採択数などに限りがあり、申請しても受給できない可能性がありますが、受け取ることができれば事業コストの負担軽減に役立つでしょう。
また、日本政策金融公庫や銀行などで融資を受ける方法も考えられるでしょう。返済が必要ではありますが、場合によっては多額の融資を受けられる可能性もあり、設備投資や開業時の費用負担の分散にも役立ちます。
さらに、クラウドファンディングも資金調達方法のひとつです。インターネット上で不特定多数の人に資金を提供してもらう代わりに、商品などのリターンを還元する方式が一般に広く知られています。実現したい事業があり、その実現を応援してもらう代わりに、事業が実現したときにはそのサービスの一部を提供するなどの方法が用いられています。
株式会社と比較したうえで、合同会社を設立しましょう!
株式会社も合同会社も、一人で設立することが可能です。しかし、株式会社と合同会社とでは、設立費用や運営方法などの面で大きな違いがあります。コストや手続きの負担を考えるなら、合同会社の方が設立は容易です。
また、一人で事業を行うという状況は同じでも、合同会社と個人事業主とではさまざまな違いがあります。株式会社、合同会社、個人事業主、それぞれの特徴を理解して会社設立を検討することが大切です。

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合同会社マイティワン代表 下田 高嗣 様
よくある質問
合同会社は一人で設立できる?
一人でも合同会社は設立できます。詳しくはこちらをご覧ください。
一人で合同会社を設立するメリットは?
個人事業主と比べて、信用力がある、役員報酬を経費にできる、社会保険に加入できる、といった面で合同会社の一人起業にはメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
一人で合同会社を設立するデメリットは?
個人事業主と比べて会社設立にコストや労力がかかる、税務が複雑になる、一人だと会社承継に問題があるといったデメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。