• 更新日 : 2023年9月15日

レストラン経営の重要指標は?平均年収・勉強法も紹介

レストラン経営の重要指標は?平均年収・勉強法も紹介

飲食店の中でも、特にレストランの開業を目指す人が少なくありません。家族みんなで使える家庭的なレストランから、本格的なフレンチやイタリアンの料理を提供する豪華なレストランまで、レストランの存在感は数ある飲食店の中でもとりわけ大きいでしょう。本記事は、レストラン開業を目指す人を対象に、レストラン経営の基本を解説します。

レストラン経営を成功させるために重要な指標

他のビジネスと同様に、レストランの経営を成功させるには数字でマネジメントを行うことが必要です。損益計算書貸借対照表、あるいはキャッシュフロー計算書などで経営を管理するとともに、特に飲食店で使われる各種の指標をもとに経営を管理・検証してゆくことが重要です。ここでは、飲食店で多用されている主な経営指標をご紹介します。なお、本文ではレストランを「フランス料理やイタリア料理などの西洋料理や、ハンバーグやオムライスなどの洋食を提供する飲食店」と定義します。

FL比率

FL比率とは、飲食店の売上高に対する食材費(Food)と人件費(Labor)の割合のことです。飲食店経営で必要となる費用のうち、最も大きいのが食材費と人件費です。売上高を分母にして、食材費と人件費の合計を分子にして計算します。

FL比率=(食材費+人件費)÷売上高×100

 

例えば、売上高が100万円で、食材費と人件費の合計が50万円の場合、FL比率は50%になります。業態により若干変わりますが、一般的にはFL比率は55%を下回るのが望ましいとされています。

売上高営業利益率

売上高営業利益率は、文字通り売上高に対する営業利益の割合のことです。飲食店の経営には食材費や人件費のほかにもさまざまな費用がかかります。

売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100

 

内外装や家具備品などの減価償却費、店舗家賃、水道光熱費広告宣伝費通信費、POSレジのリース料など枚挙にいとまがありません。飲食店の売上高から営業のために直接かかった費用費用を差し引いて手元に残った営業利益が売上高の何パーセントを占めているのか、売上高営業利益率は、純粋にお店の儲ける力を表す指標と言っていいでしょう。

損益分岐点比率

利益がプラスマイナスゼロとなる状態の売上高を損益分岐点売上高といいます。損益分岐点比率とは、売上高における損益分岐点の比率のことです。

損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷売上高×100

 
飲食店の経営において、支出したすべての費用を上回る売上高が確保できれば利益が得られます。逆に支出したすべての費用を売上高が下回れば赤字になります。損益分岐点比率は、損益分岐点を売上高で割って100を乗じることで計算できます。一般的な飲食店の場合、損益分岐点比率は90%を下回るのが望ましいとされています。飲食店の経営においては、損益分岐点比率を可能な限り下げることが重要です。

客席回転率

客席回転率とは、客席に1日当たり1席に何人のお客さんが座ったかを示す指標です。通常は「1日の総来店客数 ÷ 総客席数」で計算します。

客席回転率=1日の総来店客数÷総客席数

 

例えば、客席数50の飲食店に100人来客すれば客席回転率は2回転、150人来客すれば3回転になります。一般論としては客席回転率が高ければ高いほど効率的な経営がされていると見なされます。一方、客席回転率をわざと抑えて、接客などのサービスをより濃厚にするといった経営方針を採っているお店も存在します。

なお、飲食店の開業に必要な準備については以下の記事が詳しいのでご覧ください。

レストラン経営者の平均年収は?

ところで、レストラン経営者の平均年収はいくらくらいでしょうか。日本政策金融公庫総合研究所の深沼光氏の論文『新規開業者の収入構造とその変化』(2009年2月)によると、新規開業した「飲食店・宿泊業」の平均月額事業収入は29.3万円で、年額だと351.6万円です。この数字はあくまでも新規開業者を対象にした結果ですので、すでに開業して長いケースや、複数の店を経営しているケースなどは含まれていません。

飲食店ドットコムが2018年に実施した調査によると、飲食店経営者の年収についての質問への回答で最も多かったのが「299万円以下」で全体の18.8%、次いで「400~499万円」で13.1%でした。また、年収500万円以上の経営者は黒字店で52.6%、赤字店では20.5%でした。さらに、1000万円以上の年収を得ている経営者は全体の8.0%でした。

レストラン経営が難しいといわれる理由

一般にレストランの経営は難しいといわれています。中小企業庁の『2021年版小規模企業白書』によると、我が国の業種別廃業率では「宿泊業・飲食サービス業」が5.9%と群を抜いて高く、全産業の3.4%を大きく上回っています。実際、飲食業は開業率と廃業率がともに高く、事業者の入れ替えが激しい業界となっています。レストラン経営はなぜ難しいのでしょうか。以下に考えられる理由をリストアップしてみました。

利益率が低い

まず考えられるのが利益率の低さです。日本政策金融公庫のレポート『小企業の経営指標調査2019年版』によると、一般飲食店の売上高営業利益率の平均値はマイナス1.4%で、黒字かつ自己資本がプラスの飲食店においても平均値はわずか3.2%となっています。また、食堂・レストランの売上高営業利益率の平均値もマイナス1.6%となっており、厳しい経営の実情が示されています。利益率が低く利益が薄く、結果的に資本の蓄積が進まないことが、経営が難しい理由のひとつです。

初期投資やランニングコストが高い

初期投資やランニングコストが高いのもレストラン経営が難しい理由のひとつです。レストランなどの飲食店を開業するには物件を確保し、内外装工事を施してキッチン設備を準備するなど相応の初期投資が必要です。また、食材費、人件費、家賃などのランニングコストも必要です。高い初期費用やランニングコストは経営を圧迫し、資金ショートを起こす原因にもなります。実際に資金ショートして経営破綻するレストランは少なくありません。

なお、飲食店の初期投資などの開業準備については以下の記事が詳しいので、ご覧になってみてください。

売り上げが安定しにくい

売り上げが安定しにくいのもレストラン経営が難しい理由のひとつです。特に新規開業するレストランの場合、リピート客が一定数集まるまでにそれなりの時間がかかります。また、レストランの売り上げは天候や近隣のイベントなどにより上下し、予測が困難です。また、近年は新型コロナウイルスの感染拡大により多くの飲食店が大打撃を受けたのが記憶に新しいところです。現在はコロナ以前の状況に戻りつつありますが、同様のパンデミックが再び起こらないとは限りません。

競合が多い

レストランを含む飲食店は競合が多いのも経営が難しい理由のひとつです。飲食店は新規参入のハードルが比較的低く、基本的に誰でも新規参入できます。開業に必要な資格なども特になく、食品衛生責任者を選任して所管の保健所から営業許可を取得すれば開業できます。実際に飲食業界は新旧の入れ替わりが甚だしく、常に激しい競争にさらされています。厳しい競争に勝ち残ることができた飲食店だけが成功するという、極めて厳しい世界です。

レストラン経営を成功させるためのポイント

レストランの経営が難しい理由を上述しました。実際に多くのレストランが経営破綻し、廃業を余儀なくされている中、リピート客を着々と増やし、経営を成功させているレストランも存在します。失敗するレストランと成功するレストランは、一体何が違うのでしょうか。

顧客満足度を向上させる

レストランの経営を成功させる第一のポイントは顧客満足度を向上させることです。ここでいう顧客満足度とは、レストランの経営を構成するすべての仕事や作業においての、トータルでの顧客満足度という意味です。料理の味、見た目、レストランの外装、内装、雰囲気、サービスの質、マーケティング、コストパフォーマンスなど、すべてのタスクやジョブです。いくら料理の質が高くても、サービスが最悪であれば、トータルの顧客満足度も推して知るべしとなるでしょう。

競合との差別化を図る

レストランの経営を成功させる第二のポイントは差別化です。ここでいう差別化とは、上述の顧客満足度の向上と同様に、レストランの経営を構成するすべての要素の、トータルでの差別化という意味です。料理そのものの差別化は無論、店のコンセプト、タッチパネルオーダリングなどのコンタクトレスオーダリングシステム、音声認識AIによるオーダリングシステム、ゴーストキッチンの活用やサブスクリプションの導入など、活用できるものはすべて活用して差別化しましょう。

従業員の雇用・教育に力を入れる

レストランの経営を成功させる第三のポイントは従業員の雇用と教育です。飲食業界では近年、特に東京や大阪などの都市部において、人手不足が極めて深刻化しています。特に接客を行うフロアスタッフの雇用が難しくなっています。また、せっかく採用した人材が、長続きせず簡単に辞めてしまうケースが少なくありません。優秀な人材を採用し、長らく働いてもらうためには、店のビジョンやミッションの共有を含めて丁寧な教育を施す必要があります。

レストラン経営の勉強におすすめの方法

これからレストランを開業する、特に初めてレストランを開業するという人におすすめの、レストラン経営の勉強法は何でしょうか。メニューやお店のコンセプト作り、仕入れ先の開拓、従業員の採用と教育など、レストランの経営にはさまざまなノウハウやスキルが必要です。これまで飲食店で働いた経験がないという人は特に、自分のレストランを開業するに際しては知らないことばかりでしょう。そうした人におすすめの勉強法をご紹介します。

レストランで実際に働く

レストラン経営の勉強法で最もおすすめなのが「レストランで実際に働く」です。レストランでの実務経験なしに、いきなりレストランを開業することは非常に危険です。まずはいちスタッフとして他人のレストランで働いて、レストラン経営・運営のスキルを身に付けた方がいいでしょう。可能であれば店長・マネージャーのポジションについて、経営全体のスキルや知見を身に付けるとなおいいでしょう。店長・マネージャーのポジションであれば、人材の採用や教育についても学ぶことができます。

売れているレストランを分析する

売れているレストランを分析することもおすすめのレストラン経営の勉強法です。売れているレストランとは、自分が開業を予定しているエリアにおける売れているレストランだけにとどまらず、近隣エリアや、他の商業圏においても売れているレストランという意味です。そのレストランの売れ筋、コンセプト、主たる客層、価格、差別化要因などについて、入手できる情報を可能な限り入手し、自分のお店の理想像作りに活用できるようにしましょう。

レストラン経営者の本を読む

レストラン経営者の本を読むこともおすすめのレストラン経営の勉強法です。世にはレストラン経営者が書いた本がたくさんありますが、中でもおすすめなのが『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝 世界一、億万長者を生んだ男』(プレジデント社)です。マクドナルドの事実上の創業者レイ・クロックがマクドナルド兄弟と出会い、世界一のハンバーガーチェーンを築き上げるまでの一大物語がつづられています。世界中のレストラン経営者に影響を与えただけでなく、孫正義氏や柳井正氏といった著名経営者たちにも感銘を与えた名著です。レストラン経営を目指す人必読の書です。

準備をしっかりしてレストラン経営を成功させよう

以上、レストラン開業を目指す人を対象に、レストラン経営の基本を解説しました。レストランを含む飲食業界は今、世界的な大転換期にあります。キッチンやフロアに調理ロボットや接客ロボットが導入され、音声認識AIによるオーダリングシステムがオンラインでの注文を受け付け、売り上げ情報などの膨大なビッグデータが分析されてマーケティングに活かされる。飲食業界にもデジタルトランスフォーメーションの波が押し寄せています。これからレストラン経営を目指す人は、そうした巨大な波をプラスに活用し、成功を目指してください。


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