- 更新日 : 2026年7月15日
レストラン経営の重要指標は?平均年収・勉強法も紹介
レストラン経営の重要指標は、FL比率・売上高営業利益率・損益分岐点比率・客席回転率の4つです。
- FL比率: 55%以下が理想(食材費と人件費の管理)
- 売上高営業利益率: 10%以上が目標(最終的な儲けの割合)
- 損益分岐点比率: 90%以下が目安(経営の安全性)
- 客席回転率: 数値が高いほど高効率(店舗の稼働効率)
Q. FL比率とは何ですか?
A. 売上高に対する食材費と人件費の合計割合で、55%以下が望ましいとされています。
飲食店の中でも、特にレストランの開業を目指す人が少なくありません。家族みんなで使える家庭的なレストランから、本格的なフレンチやイタリアンの料理を提供する豪華なレストランまで、レストランの存在感は数ある飲食店の中でもとりわけ大きいでしょう。本記事は、レストラン開業を目指す人を対象に、レストラン経営の基本を解説します。
目次
レストラン経営を成功させるために重要な指標は?
他のビジネスと同様に、レストランの経営を成功させるには数字でマネジメントを行うことが必要です。損益計算書や貸借対照表、あるいはキャッシュフロー計算書などで経営を管理するとともに、特に飲食店で使われる各種の指標をもとに経営を管理・検証してゆくことが重要です。ここでは、飲食店で多用されている主な経営指標をご紹介します。なお、本文ではレストランを「フランス料理やイタリア料理などの西洋料理や、ハンバーグやオムライスなどの洋食を提供する飲食店」と定義します。
FL比率
FL比率とは、飲食店の売上高に対する食材費(Food)と人件費(Labor)の割合のことです。飲食店経営で必要となる費用のうち、最も大きいのが食材費と人件費です。売上高を分母にして、食材費と人件費の合計を分子にして計算します。
例えば、売上高が100万円で、食材費と人件費の合計が50万円の場合、FL比率は50%になります。業態により若干変わりますが、一般的にはFL比率は55%を下回るのが望ましいとされています。
売上高営業利益率
売上高営業利益率は、文字通り売上高に対する営業利益の割合のことです。飲食店の経営には食材費や人件費のほかにもさまざまな費用がかかります。
内外装や家具備品などの減価償却費、店舗家賃、水道光熱費、広告宣伝費、通信費、POSレジのリース料など枚挙にいとまがありません。飲食店の売上高から営業のために直接かかった費用を差し引いて手元に残った営業利益が売上高の何パーセントを占めているのか、売上高営業利益率は、純粋にお店の儲ける力を表す指標と言っていいでしょう。
損益分岐点比率
利益がプラスマイナスゼロとなる状態の売上高を損益分岐点売上高といいます。損益分岐点比率とは、売上高における損益分岐点の比率のことです。
飲食店の経営において、支出したすべての費用を上回る売上高が確保できれば利益が得られます。逆に支出したすべての費用を売上高が下回れば赤字になります。損益分岐点比率は、損益分岐点を売上高で割って100を乗じることで計算できます。一般的な飲食店の場合、損益分岐点比率は90%を下回るのが望ましいとされています。飲食店の経営においては、損益分岐点比率を可能な限り下げることが重要です。
客席回転率
客席回転率とは、客席に1日当たり1席に何人のお客さんが座ったかを示す指標です。通常は「1日の総来店客数 ÷ 総客席数」で計算します。
例えば、客席数50の飲食店に100人来客すれば客席回転率は2回転、150人来客すれば3回転になります。一般論としては客席回転率が高ければ高いほど効率的な経営
がされているとみなされます。一方、客席回転率をわざと抑えて、接客などのサービスをより濃厚にするといった経営方針を採っているお店も存在します。
なお、飲食店の開業に必要な準備については以下の記事が詳しいのでご覧ください。
レストラン経営の状況を分析する手法は?
レストラン経営を改善するには、売上や利益を漠然と見るのではなく、目的に合った分析手法を使い分けることが重要です。売上構造、コスト、メニュー、顧客満足度を分けて確認することで、集客・価格・原価・人員配置の改善点を見つけやすくなります。
【ABC分析】売れ筋メニューを把握したい場合
ABC分析とは、売上や販売数の大きい順にメニューをA・B・Cに分類する手法です。Aランクは売上への貢献度が高い主力メニュー、Bランクは一定の販売実績があるメニュー、Cランクは売上貢献が小さいメニューとして整理します。売れ筋商品を把握したい場合や、メニュー数を見直したい場合に向いています。ただし、売上が高くても原価率が高いメニューは利益が残りにくいため、原価率とあわせて確認することが大切です。
【損益分岐点分析】必要な売上目標を知りたい場合
損益分岐点分析とは、売上と費用が同じになり、利益がゼロになる売上高を把握する手法です。家賃、人件費、減価償却費などの固定費と、食材費や包装資材費などの変動費を分けて計算します。毎月いくら売れば赤字を避けられるのかを知りたい場合に有効です。開業前の事業計画や、値上げ・営業時間変更を検討するときにも役立ちます。
【FL比率分析】利益が残らない原因を探す場合
FL比率分析とは、Foodの原価率とLaborの人件費率を合計して確認する手法です。飲食店では、食材費と人件費が大きなコストになるため、FL比率を見ることで利益を圧迫している要因を把握できます。原価が高い場合は仕入れやメニュー構成を見直し、人件費が高い場合はシフトやオペレーションを改善します。売上はあるのに利益が残らない店舗に向いています。
【口コミ分析】顧客満足度や改善点を知りたい場合
口コミ分析とは、Googleマップ、予約サイト、SNSなどの評価やコメントを確認し、顧客が不満に感じている点や高く評価している点を把握する手法です。料理の味、接客、提供スピード、清潔感、価格、店内の雰囲気など、数値だけでは見えにくい課題を発見できます。新規客の来店率を高めたい場合や、リピーターを増やしたい場合に向いています。
レストラン経営者の平均年収は?
レストラン経営者の平均年収を直接示す公的統計は確認しにくいため、従業員としての飲食店店長の賃金や、小規模な食堂・レストランの利益率をもとに目安を考える必要があります。
飲食店店長の年収は371万円が参考値
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、ハンバーガーショップ店長が属する主な職業分類として「飲食店店長」などに対応する統計が示されており、令和7年賃金構造基本統計調査を加工した賃金年収は全国で371万円です。これは雇用されて働く店長の賃金であり、レストラン経営者の収入そのものではありませんが、飲食店の管理職クラスの収入水準を把握する参考になります。
小規模レストラン経営者は年収300万〜600万円程度が一つの目安
レストラン経営者の年収は、店舗の利益から役員報酬や事業所得として受け取る金額で考えます。日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」では、「食堂,レストラン」の売上高営業利益率は平均マイナス18.4%、黒字かつ自己資本プラス企業の平均でも4.9%です。黒字店でも利益率は高くないため、個人経営や小規模店舗では年収300万〜600万円程度が現実的な目安になります。
年収1,000万円を目指すには売上規模と利益率の両方が必要
黒字企業平均の売上高営業利益率4.9%を前提にすると、年商5,000万円の営業利益は約245万円、年商1億円でも約490万円です。ここから借入返済、税金、設備修繕費などを考慮する必要があります。年収1,000万円を目指すには、単店舗で高単価・高利益率を実現するか、複数店舗展開、法人化による役員報酬設計、デリバリー・物販・ケータリングなどの収益源拡大が必要です。
レストラン経営に必要な資金はいくら?
レストラン経営に必要な資金は、物件取得費、内装工事費、厨房設備費、食材仕入れ費、広告費、開業後の運転資金などで構成されます。業態や店舗規模によって差はありますが、初期費用だけでなく、開業後数か月分の資金も見込んでおくことが重要です。
初期費用は800万〜2,000万円程度が目安
レストランの初期費用は、小規模店舗で800万〜2,000万円程度が一つの目安です。居抜き物件を活用できれば800万〜1,200万円程度に抑えられることもありますが、スケルトン物件から内装や厨房を整える場合は2,000万円を超える可能性もあります。
主な内訳は、以下のとおりです。
- 物件取得費:150万〜500万円程度
- 内装工事費:300万〜1,000万円程度
- 厨房設備費:200万〜700万円程度
- テーブル、椅子、食器などの備品費:100万〜300万円程度
- 食材・飲料の初期仕入れ費:50万〜200万円程度
- 看板、Webサイト、SNS広告などの広告宣伝費:30万〜150万円程度
- 飲食店営業許可などの手続き費用:数万円〜数十万円程度
ランニングコストは月150万〜500万円程度
開業後は、家賃、人件費、食材費、水道光熱費、広告費などが毎月発生します。店舗規模や営業時間にもよりますが、レストランのランニングコストは月150万〜500万円程度を見込んでおくとよいでしょう。
主な内訳は、以下のとおりです。
レストランは人件費と食材費の比率が高くなりやすいため、売上に対して固定費が重くなりすぎないように注意が必要です。
開業資金とは別に3〜6か月分の運転資金を用意する
レストランは、開業直後から十分な客数を確保できるとは限りません。認知度が低い時期は売上が安定せず、仕入れ費や人件費の支払いが先行することもあります。そのため、初期費用とは別に3〜6か月分の運転資金を用意しておきましょう。
運転資金の目安は、以下のように考えます。
- 月のランニングコストが150万円の場合:450万〜900万円程度
- 月のランニングコストが250万円の場合:750万〜1,500万円程度
- 月のランニングコストが400万円の場合:1,200万〜2,400万円程度
資金計画では、初期費用、毎月の固定費、変動費、借入返済額を分けて試算することが大切です。
レストラン経営が難しいといわれる理由は?
一般にレストランの経営は難しいといわれています。中小企業庁の『2021年版小規模企業白書』によると、我が国の業種別廃業率では「宿泊業・飲食サービス業」が5.9%と群を抜いて高く、全産業の3.4%を大きく上回っています。実際、飲食業は開業率と廃業率がともに高く、事業者の入れ替えが激しい業界となっています。レストラン経営はなぜ難しいのでしょうか。以下に考えられる理由をリストアップしてみました。
利益率が低い
まず考えられるのが利益率の低さです。日本政策金融公庫のレポート『小企業の経営指標調査2019年版』によると、一般飲食店の売上高営業利益率の平均値はマイナス1.4%で、黒字かつ自己資本がプラスの飲食店においても平均値はわずか3.2%となっています。また、食堂・レストランの売上高営業利益率の平均値もマイナス1.6%となっており、厳しい経営の実情が示されています。利益率が低く利益が薄く、結果的に資本の蓄積が進まないことが、経営が難しい理由のひとつです。
初期投資やランニングコストが高い
初期投資やランニングコストが高いのもレストラン経営が難しい理由のひとつです。レストランなどの飲食店を開業するには物件を確保し、内外装工事を施してキッチン設備を準備するなど相応の初期投資が必要です。また、食材費、人件費、家賃などのランニングコストも必要です。高い初期費用やランニングコストは経営を圧迫し、資金ショートを起こす原因にもなります。実際に資金ショートして経営破綻するレストランは少なくありません。
売り上げが安定しにくい
売り上げが安定しにくいのもレストラン経営が難しい理由のひとつです。特に新規開業するレストランの場合、リピート客が一定数集まるまでにそれなりの時間がかかります。また、レストランの売り上げは天候や近隣のイベントなどにより上下し、予測が困難です。また、近年は新型コロナウイルスの感染拡大により多くの飲食店が大打撃を受けたのが記憶に新しいところです。現在はコロナ以前の状況に戻りつつありますが、同様のパンデミックが再び起こらないとは限りません。
競合が多い
レストランを含む飲食店は競合が多いのも経営が難しい理由のひとつです。飲食店は新規参入のハードルが比較的低く、基本的に誰でも新規参入できます。開業に必要な難関資格なども特になく、食品衛生責任者を選任して所管の保健所から営業許可を取得すれば開業できます。実際に飲食業界は新旧の入れ替わりが甚だしく、常に激しい競争にさらされています。厳しい競争に勝ち残ることができた飲食店だけが成功するという、極めて厳しい世界です。
レストラン経営を成功させるためのポイントは?
レストランの経営が難しい理由を上述しました。実際に多くのレストランが経営破綻し、廃業を余儀なくされている中、リピート客を着々と増やし、経営を成功させているレストランも存在します。失敗するレストランと成功するレストランは、一体何が違うのでしょうか。
顧客満足度を向上させる
レストランの経営を成功させる第一のポイントは顧客満足度を向上させることです。ここでいう顧客満足度とは、レストランの経営を構成するすべての仕事や作業においての、トータルでの顧客満足度という意味です。料理の味、見た目、レストランの外装、内装、雰囲気、サービスの質、マーケティング、コストパフォーマンスなど、すべてのタスクやジョブです。いくら料理の質が高くても、サービスが最悪であれば、トータルの顧客満足度も推して知るべしとなるでしょう。
競合との差別化を図る
レストランの経営を成功させる第二のポイントは差別化です。ここでいう差別化とは、上述の顧客満足度の向上と同様に、レストランの経営を構成するすべての要素の、トータルでの差別化という意味です。料理そのものの差別化は無論、店のコンセプト、独自の接客スタイル、心地よい空間づくりといった情緒的な価値から、タッチパネルや音声認識AIを活用したスムーズな注文体験、さらにはサブスクリプションの導入によるリピート仕組み化まで、活用できるものはすべて活用して差別化しましょう。
従業員の雇用・教育に力を入れる
レストランの経営を成功させる第三のポイントは従業員の雇用と教育です。飲食業界では近年、特に東京や大阪などの都市部において、人手不足が極めて深刻化しています。また、せっかく採用した人材が、長続きせず簡単に辞めてしまうケースが少なくありません。優秀な人材を採用し、長らく働いてもらうためには、店のビジョンやミッションの共有を含めて丁寧な教育を施す必要があります。
レストラン経営の勉強におすすめの方法は?
これからレストランを開業する、特に初めてレストランを開業するという人におすすめの、レストラン経営の勉強法は何でしょうか。メニューやお店のコンセプト作り、仕入れ先の開拓、従業員の採用と教育など、レストランの経営にはさまざまなノウハウやスキルが必要です。これまで飲食店で働いた経験がないという人は特に、自分のレストランを開業するに際しては知らないことばかりでしょう。そうした人におすすめの勉強法をご紹介します。
レストランで実際に働く
レストラン経営の勉強法で最もおすすめなのが「レストランで実際に働く」です。レストランでの実務経験なしに、いきなりレストランを開業することは非常に危険です。まずはいちスタッフとして他人のレストランで働いて、レストラン経営・運営のスキルを身に付けた方がいいでしょう。可能であれば店長・マネージャーのポジションについて、経営全体のスキルや知見を身に付けるとなおいいでしょう。店長・マネージャーのポジションであれば、人材の採用や教育についても学ぶことができます。
売れているレストランを分析する
売れているレストランを分析することもおすすめのレストラン経営の勉強法です。売れているレストランとは、自分が開業を予定しているエリアにおける売れているレストランだけにとどまらず、近隣エリアや、他の商業圏においても売れているレストランという意味です。そのレストランの売れ筋、コンセプト、主たる客層、価格、差別化要因などについて、入手できる情報を可能な限り入手し、自分のお店の理想像作りに活用できるようにしましょう。
レストラン経営者の本を読む
レストラン経営者の本を読むこともおすすめのレストラン経営の勉強法です。世にはレストラン経営者が書いた本がたくさんありますが、中でもおすすめなのが『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝 世界一、億万長者を生んだ男』(プレジデント社)です。マクドナルドの事実上の創業者レイ・クロックがマクドナルド兄弟と出会い、世界一のハンバーガーチェーンを築き上げるまでの一大物語がつづられています。世界中のレストラン経営者に影響を与えただけでなく、孫正義氏や柳井正氏といった著名経営者たちにも感銘を与えた名著です。レストラン経営を目指す人必読の書です。
準備をしっかりしてレストラン経営を成功させよう
以上、レストラン開業を目指す人を対象に、レストラン経営の基本を解説しました。レストランを含む飲食業界は今、世界的な大転換期にあります。キッチンやフロアに調理ロボットや接客ロボットが導入され、音声認識AIによるオーダリングシステムがオンラインでの注文を受け付け、売り上げ情報などの膨大なビッグデータが分析されてマーケティングに活かされる。飲食業界にもデジタルトランスフォーメーションの波が押し寄せています。これからレストラン経営を目指す人は、そうした巨大な波をプラスに活用し、成功を目指してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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