• 作成日 : 2024年10月25日

薬局の開業・開局に必要な事業計画書の書き方は?資金調達や融資の方法も

薬局の事業計画書とは、開業前に事業に関する資金調達計画や収益予測といった情報をまとめた書類です。事業計画書に含まれる市場分析や必要資金の詳細などの情報は、薬局の開業や運営の円滑化に役立つだけでなく、金融機関から融資を受ける際に必要となります。今回は薬局開業時の事業計画書作成の方法について詳しくご紹介します。

薬局の開業に必要な事業計画書とは

薬局の事業計画書は経営の方向性を明確にし、資金調達や開局後の運営を円滑に進めるための重要な書類です。

計画書には立地、条件、ターゲットとなる顧客、取扱商品、スタッフや薬剤師の配置、設備投資にかかる費用、収支計画など、開業に必要な具体的な情報が記載されます。

しっかりとした事業計画を立てることで、安定した経営につながります。また、金融機関や行政機関からの融資や許可申請の際には事業計画書の提出が求められます。

薬局の事業計画書の書き方・記入例

薬局の事業計画書は開業準備や資金調達に欠かせない書類です。創業動機や事業実績、取扱商品、資金調達方法などを明確に記載し、薬局特有の業務内容に応じた計画立案をしなければなりません。こちらでは各項目の記入例を解説します。

創業動機・目的

創業動機では、薬局を開業するに至った経緯や理由、成し遂げたい目標を具体的に記載します。例えば、「大手調剤チェーンで管理薬剤師としてキャリアを積み、経営の経験を活かして地域に根差した薬局を運営したいと考えた」といった形で、わかりやすくまとめることが重要です。

職歴・事業実績

職歴や事業実績には薬剤師としてのキャリアや実績を年次ごとに詳述します。以下の例を参考にしながら、職歴や職務上の実績を簡潔に書きましょう。複数店舗の管理に携わった実績などがあれば、経営者としての能力をアピールすることができます。

○年○月:○○薬科大学薬学部を卒業

○年○月~:○○株式会社に就職

○年○月~:管理薬剤師、○年にはエリアマネージャーとして管理業務に携わる

取扱商品・サービス

取扱商品やサービスには、調剤薬局として提供する具体的な商品・サービスを記載します。販売ターゲット、戦略の欄では収益を上げるためのエリア選定やメインターゲットについて明記しましょう。例えば、他店舗との差別化を図るためにITシステムを導入して待ち時間を短縮するなどの工夫を取り入れることも効果的です。

取引先・取引関係

薬局の取引先としては医薬品の仕入先や外注業者などが該当します。計画書には具体的な取引先名や取引条件、支払い条件を明記しましょう。

例えば、「医薬品の35%を○○株式会社から仕入れ、末日締め翌月末支払いとする」といった形で詳細な取引関係を記載し、資金管理の透明性を示します。

従業員

従業員の配置や雇用計画も事業計画書に含める必要があります。例えば、常勤の薬剤師3名とパート従業員2名を雇用する場合、以下のように簡潔に内訳を記載しましょう。

従業員数:5人

パート従業員:2人

借入の状況

借入の状況には、借入れする時点での代表者の借入額と年間返済額を具体的に記載します。例えば、住宅ローンの残りが2,000万円あって年間返済額が150万円の場合、以下のように記載します。

○○銀行○○支店、住宅ローン、借入残高2,000万円 年間返済額150万円

借入金を資金計画に適切に組み込むことで、財務健全性をアピールできます。

必要な資金と調達方法

薬局の開業には、設備資金や運転資金が必要です。事業計画書には具体的な費用とその調達方法を記入する欄があります。必要資金は以下のように金額と内訳を記載しましょう。

  • 設備資金

内装工事費:150万円

調剤機器類:400万円

家具、備品費:50万円

  • 運転資金

人件費:150万円

消耗品費:50万円

資金の調達方法は隣の表に記載します。

  • 調達の方法

自己資金:400万円

日本政策金融公庫、国民生活事業からの借入:400万円

事業の見通し

事業の見通しでは、売上や経費の予測を具体的な数字で記載します。例えば、「創業当初の月間売上は858万円、1年後には客数増加に伴い936万円を見込む」と記載し、その根拠として周辺地域の調査結果や市場動向を入れておきましょう。

マーケターやコンサルティング会社などに調査を依頼した場合は、そのデータを添付することで予測の信頼性がアップし、融資審査担当者に向けたアピールにつながります。

薬局の事業計画書に使える無料テンプレート

マネーフォワード クラウドは、薬局向けの事業計画書のひな形、テンプレートをご用意しています。事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードして、ご活用ください。

薬局を開業・開局するときの資金調達方法

薬局を開業・開局する際には、設備投資や運転資金を確保するために金融機関などから資金調達を行う必要があります。資金調達の方法には、金融機関からの融資、公的な融資制度の利用、補助金や助成金などがあり、ここではそれらの資金調達方法について詳しく解説しましょう。

金融機関の融資を活用する

薬局開業の資金調達方法として一般的なのは金融機関からの融資です。銀行や信用金庫などの金融機関では創業支援融資やビジネスローン商品を提供しています。

金融機関の創業融資は、自己資金が少ない場合や大規模な設備投資が必要な場合に有効です。申込んだ後に審査があり、返済計画や事業の収益見通しを具体的に示した事業計画書の提出が求められます。

日本政策金融公庫などの公的融資制度を活用する

薬局を開業する際には、日本政策金融公庫や地方自治体の公的融資制度を活用するという方法もあります。公的な融資制度は低金利で長期返済が可能なので、資金繰りが安定し、事業に集中できる点から、多くの事業主に利用されています。

特に日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は創業時に資金を必要とする事業主に適しており、自己資金が少ない場合でも利用しやすいのが特徴です。

これらの公的融資を活用することで返済負担を軽減しつつ安定した経営をスタートさせることができます。

補助金・助成金を活用する

薬局の開業時は補助金や助成金を活用することで初期投資の負担を軽減できます。例えば、「創業補助金」や「小規模事業者持続化補助金」などは新規開業者が対象となっており、設備投資や広告宣伝費、IT導入費用などに利用可能です。

補助金や助成金は返済不要なため、経営者の負担を軽減できる点がメリットです。ただし、助成金の申請には細かい条件が定められているため、事前に情報を確認し、早めに準備する必要があります。

融資審査に通過に向けた薬局の事業計画書の作成ポイント

薬局を創業する際、創業融資を受けるためには、内容が充実した事業計画書を作成することが不可欠です。ここでは、融資審査を通過するためのポイントについて詳しく解説します。

1. 事業概要の明確化

事業計画書の冒頭には、薬局の設立目的や提供するサービスを明確に記述しましょう。

例えば、「地域の健康をサポートするために、一般用医薬品だけでなく処方箋医薬品の取り扱いや健康相談サービスの提供を考えている」など、簡潔かつ具体的に記述しましょう。薬局創業の目的やビジネス目標を明確にすることで、金融機関に事業の意義を伝えられます。

2. 市場分析

次にターゲット市場や競合分析を行いましょう。出店地域の人口、住人の年齢層、既存の競合薬局の数とその特徴などを調査し、自店の強みや差別化ポイントを明確にすることが重要です。

例えば、特定の疾病に対する専門的なサービスやOTC薬の品ぞろえ、在宅医療への対応など、具体的な差別化戦略をまとめましょう。

3. 経営戦略

薬局の経営戦略も詳細に記載します。収益モデル、販売計画、広告宣伝戦略、顧客獲得方法などを具体的に説明し、計画の実現可能性を示す必要があります。地域の医療機関との提携による紹介患者の獲得やSNSを活用したプロモーション活動など、実践的なアプローチを提示すると効果的です。

4. 財務計画

融資審査において特に重要なのが財務計画です。薬局の場合、仕入れのタイミングや販売価格が利益に直結するため、具体的な数値を踏まえた計画が求められます。初期投資や運転資金の必要額、売上予測、損益計算書などを作成し、数字に基づいた根拠を示しましょう。

5. リスク分析と対策

事業運営におけるリスク分析を行い、それに対する具体的な対策を示すことも重要です。例えば、競合の増加や薬価改定による影響に触れ、それにどう対処するかを具体的なアクションプランとして記述しましょう。こうしたリスクへの備えを含めることで、金融機関に対して事業への真剣な取り組みをアピールすることができます。

薬局は事前調査を踏まえて事業計画書を作成しよう

薬局は地域性の高いビジネスなので、出店エリア内の住民へのアピールや病院からの処方箋獲得が事業の安定化のためには非常に重要です。

安定した経営を目指すためにも、創業前に市場調査やエリア選定、競合との差別化の方法について細部まで事前に調査を行いましょう。こうした地道な事前調査やデータ分析は、事業の成功だけでなく、金融機関の融資担当者との信頼関係構築にも役立ちます。


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