• 作成日 : 2025年2月12日

連帯保証人なしで創業融資を受けられる?日本政策金融公庫の制度などを解説

創業融資など事業に必要な融資を受ける際には連帯保証人を立てなければならないというイメージがあるかもしれませんが、利用する金融機関や融資制度によっては保証人がいらないこともあります。この記事では、連帯保証人なしで創業融資を受けられるケースについてご紹介します。

日本政策金融公庫の創業融資は連帯保証人が不要

日本政策金融公庫の創業融資(新規開業資金など)を創業時あるいは創業間もない方が利用する場合、原則として連帯保証人は不要です。創業期はまだ事業実績がないので、金融機関から融資を受けられないというケースもあります。

日本政策金融公庫では幅広く創業を支援するため、新たに事業を始める、または事業開始後税務申告2期終えていない方は原則として無担保・無保証人で融資が利用できるように間口を広げています。連帯保証人が不要であるということは、会社の経営が悪化して融資返済が困難になってしまっても、連帯保証人が返済する必要はありません。創業直後の事業者でもリスクを抑えて融資を受けられることから、多くの事業者が創業時に日本政策金融公庫の創業融資を受けています。

日本政策金融公庫の創業融資については、以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。

そもそも連帯保証人とは

連帯保証人とは、主債務者(融資などの契約を結んだ人)と同様の返済責任を負う人物のことです。なんらかの理由で債務者が返済できない状態に陥った場合、連帯保証人は債務者に代わり全額を返済する義務が生じます。連帯保証人は法律上、以下の3つの権利を主張することができません。

催告の抗弁権:連帯保証人が債権者から返済を求められた際に、主債務者(融資等の契約を結んだ人)に返済を請求してもらうよう要求できる権利

検索の抗弁権 :主債務者が弁済に利用できる資産などを所有しており弁済の執行が容易な場合に、保証債務の履行を拒否できる権利

分別の利益 :連帯保証人が複数いる場合、債務額を人数で割って負担を分割する権利

このように連帯保証人の責任は非常に重いため、引き受ける際には慎重な判断が求められます。一般的に法人が金融機関から融資を受ける場合、代表者が連帯保証人となるケースが多いようです。

保証人と連帯保証人の返済義務の違い

保証人と連帯保証人には、返済義務や責任の範囲に明確な違いがあります。

・責任の範囲

保証人は債務者が返済できない場合にのみ責任を負います。債務者が弁済に利用できる財産を持っている場合、保証人への直接請求は行われません。一方、連帯保証人は債務者と同等の責任を負い、債務者が返済不能状態でなくても債権者から直接返済を求められる可能性があります。

・返済範囲

保証人は主債務者が返済困難になった際にはじめて代わりに返済することが求められます。また、保証人が複数人いる場合、返済額は人数で割った金額となります。例えば、900万円の債務があって保証人が3人いた場合、一人あたりの返済額は300万円になります。

連帯保証人は返済を請求された場合はそれに応じる義務があります。また、分別の利益(返済額を保証人の人数で割る権利)がないので、仮に連帯保証人が複数人いたとしても一人あたりの返済額は減額されません。全額返済しなければならないのです。

・強制執行の扱い

債務が履行されず裁判所から強制執行がなされる場合、まず主債務者を強制執行してから保証人に対して差し押さえを執行します。しかし、連帯保証人には検索の抗弁権がないため、先に主債務者の資産差し押さえを求めることができません。

銀行や信用保証協会の創業融資では連帯保証人が必要?

制度創設によって信用保証協会を通して銀行から創業融資を受ける際にも、連帯保証人が不要となりました。従来、融資を受ける際には法人であれば会社の代表者が連帯保証人となることが多かったのですが、起業・創業の促進を強化すべく2023年3月から「スタートアップ創出促進保証制度」がスタートし、連帯保証人要件を廃止しています。

スタートアップ創出促進保証制度を利用するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  • スタートアップ創出促進保証制度用の創業計画書を提出すること
  • 税務申告1期未終了の創業者が融資を利用する場合は、創業資金総額の1/10以上の自己資金を有していること
  • スタートアップ創出促進保証制度による信用保証つき融資を受けた場合、会社設立後3年目および5年目に「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づいた確認・助言を受けること

創業時だけでなく、創業後あるいは分社化後5年未満の法人でもこの制度は利用できます。詳しくは最寄りの信用保証協会か金融機関の窓口で確認しましょう。

創業融資で連帯保証人を立てるメリット

連帯保証人が不要な融資制度もあることをご紹介しましたが、あえて連帯保証人を立てることで以下のようなメリットがあります。

金利が安くなる可能性がある

連帯保証人を立てることで、創業融資の金利が低く抑えられる可能性があります。例えば、日本政策金融公庫には「経営者保証免除特例制度」という創業時以外でも保証人なしで融資が受けられる制度があります。しかし、この制度を利用する場合、保証人を立てたケースと比べて金利が最大0.3%上乗せされます。

金利の支払い額は借入額や利率によっても変動しますが、0.3%でも長い期間で見れば大きな違いになります。このような利率の差は、長期間の経営もしくは返済の計画を考えるうえで、総返済額の削減につながる重要な要素となります。

与信限度額が大きくなる可能性がある

連帯保証人を立てた場合、金融機関からの信用度が上がり、与信限度額が増加する可能性があります。連帯保証人が返済義務を共有することで金融機関にとって、貸倒れリスクが軽減されるためです。

特に創業初期の資金調達においては自己資金だけでは足りない場合も多いため、与信限度額の増加は大きなメリットとなります。このような仕組みを活用することで、事業のスムーズな立ち上げや拡大を支える資金を確保しやすくなるでしょう。

創業融資で連帯保証人を立てる時の注意点

創業融資で連帯保証人を立てることで利率が下がったり与信限度額が増えたりする可能性があります。しかし、それにはさまざまなリスクがあることも把握しておかなければなりません。ここからは連帯保証人を立てる場合の注意点を3つ見ていきましょう。

連帯保証は一方的に解除できない

連帯保証契約は債務者が返済を終えるまで責任を負い続けなければならないという性質があります。基本的に連帯保証人が一方的に契約を解除することは不可能です。また、債権者の同意を得なければ連帯保証を解除することもできません。

債権者の同意を得た場合や、他の連帯保証人を立てられる状態にある場合、または取引自体が無効もしくは既に時効が成立している場合などを除き、基本的に連帯保証人が自分の都合で連帯保証契約を解除することができないのです。

法人の場合は代表者を辞めても連帯保証が発生し続ける

法人が融資を受ける際には、代表者が連帯保証人となるケースが一般的といえます。この場合、法人と連帯保証人が別人格の存在であるため、代表者が会社を辞めた後も連帯保証の責任は解除されません。そのため、代表者交代や法人の役割変更を行う際には、連帯保証契約の内容の見直し・変更をする必要があります。

特に代表者を交代する際、後任者の返済能力が不十分だと判断された場合は連帯保証人の変更が認められないケースもあるため、注意が必要です。融資の契約時には将来的に変更があった際の対応についても金融機関と協議しておきましょう。

連帯保証人の死亡時に変更手続きが必要になる

連帯保証人が死亡した場合、その保証責任は原則として相続人に引き継がれます。そのため、相続人が新たな保証契約を結ぶ必要が生じることがあります。

相続人が連帯保証契約を拒否することも可能であり、この場合には相続放棄などの手続きを検討する必要があります。相続放棄する場合は家庭裁判所への申立てが必要であり、金融機関への通知と新たな連帯保証人の設定が求められる場合もあります。

ただし、被相続人が主債務者で相続人が連帯保証人となっていた場合は、相続人は相続前から連帯保証契約を締結していることになるため、連帯保証義務は相続放棄できません。

連帯保証人のメリット・デメリットを知ったうえで創業融資を利用しよう

連帯保証人は通常の保証人よりも返済の責任範囲が広く、主債務者と同様の義務を負います。連帯保証人をつければ金利が安くなるなどのメリットはあるものの、創業融資は高額なため、万が一のリスクを考えて一歩踏み出せないという方もいらっしゃるかもしれません。

日本政策金融公庫の新規開業資金やスタートアップ創出促進保証制度など、保証人不要で利用できる創業融資の選択肢も増えてきました。個人の資産を守りたい、リスクを抑えたいとお考えの方は、今回紹介した融資制度を検討してみてはいかがでしょうか。


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