• 更新日 : 2023年6月29日

BS経営とは?財務諸表の見方と経営分析との関係をわかりやすく解説

BS経営とは、経営管理の手法の一つで、貸借対照表(Balance Sheet)を重視した経営スタイルを指すものです。

この記事では、貸借対照表と他の財務諸表との違いをわかりやすく説明しながら、初心者でもわかるようにBS経営について解説します。

そもそもBSやPLとは何か?

そもそもBSやPLとはなんでしょうか?普段見慣れている方も根源的な説明を求められると困ってしまうかもしれません。ここでは貸借対照表と損益計算書について深掘りしてみましょう。

BS=貸借対照表の役割

貸借対照表とは、貸方と借方を対照して比較した表です。

そもそも、「対照」とは比較や対比という意味であり、貸借対照表では貸方に示した資金の調達源泉と、借方に示したその資金の活用状況を比較・対比させ、財務のバランスを見ることができます。

左右のバランスだけでなく、負債に占める他人資本と自己資本のバランスもわかります。

BSの見方

では、経営者視点でのBSの見方について説明しましょう。

BSに計上されているのは、すべて決算日(会計期間の最終日)におけるそれぞれの価額です。

<貸借対照表イメージ>

貸借対照表イメージ

資産とは、企業が所有する経営資源や権利のことです。

資産は大きく流動資産と固定資産に分けられます。流動資産は、現金や売掛金など、短期間で現金化できるものが計上されます。すぐに現金化できるものの種類や大きさがわかります。

次に、固定資産は、土地や建物、機械など、事業のために長期間使用するものです。経営者は、この資産の合計額や流動・固定の構成比を見て、企業の規模や成長性を判断できます。

負債は、企業が支払うべき義務や債務が示されています。

負債は流動負債固定負債に分けられます。流動負債は、短期借入金未払金など、1年以内に支払うものです。すぐに支払うべきものの種類や大きさがわかります。

次に固定負債は、長期借入金や社債など、支払いまでには1年以上の期間がかかるものです。経営者は、この負債を分析し、資金調達などで問題が生じることはないか、取引先の倒産などで現金化できなくなることはないかなどの財務リスクや取引先への信用力判断の材料とできます。

そして、純資産には、株主から提供された資本と企業が稼いだ利益などを合わせたものが示されます。経営者は、純資産に対する利益率であるROE(自己資本利益率)などを計算して、企業の収益力や投資効果を評価することができます。

また、負債と純資産の比率を計算して、企業の収益性や安定性を評価することができます。

しかしながら、貸借対照表はある一時点の静的な数字であり、期間的なお金の流れを反映していません。したがって、経営者は貸借対照表だけでなく、損益計算書やキャッシュフロー計算書も併せて分析する必要があります。

PL=損益計算書の役割

損益計算書では、その会計期間の経営成績がわかります。会計期間において発生したすべての収益・利益、そして費用・損失が損益計算書にまとめられています。

損益計算書を見ることによって、段階的に利益を把握することができます。損益計算書は総額で示されているので、利益だけではなく収益や費用の大きさも同時にわかります。その期間におけるその会社が持つ利益を上げる力(収益力)や製品やサービスの力の概要を知ることができると言えます。

損益計算書はProfit and Loss statementの頭文字を略して、PLとも呼ばれ、文字どおり一定期間の利益と損失の報告書としての役割があります。

PLの見方

では、経営者視点でのPLの見方についてポイントを説明しましょう。損益計算書の数字を単に見るだけでは見えてこないものがあり、以下の3点に注意する必要があります。

売上高と利益率の関係

利益率(=利益÷収益)は、企業の収益力を示す数値です。

売上高は、製品やサービスに対する顧客の需要を反映していると言えますが、利益率は、企業がどれだけ効率的に経営しているかを示すことになります。

例えば、売上高と利益率がともに高い場合は、企業の収益力が高く、逆に、売上高と利益率がともに低い場合は、企業の収益力が低いと言えるのです。

売上高と利益率の両方を見ることで、市場における競争力やコスト管理能力を見ることができます。

営業利益と経常利益の差額

営業利益経常利益の差額は、企業の非営業活動による影響を示しています。

営業利益は、企業の本業から得られる利益であり、経常利益は、営業利益に非営業活動を加減した利益であるため、これらの差額が大きい場合は、非営業活動による影響が大きいことを意味します。

非営業活動は本業ではないことから、極力、非営業活動による影響を抑えて、本業に注力することが重要となります。

法人税等の額

企業の税負担を示す法人税等の額は要チェック事項です。

法人税等が大きい場合は、企業の税負担が大きいことを意味するため、税負担を適正に管理して、利益を最大化することが重要です。

BSとPLの違いと財務三表について

以上の説明により、BSとPLの根本的な違いがお分かりになったかと思いますが、ここで改めてBSからわかることと、PLからわかることを表形式でまとめるとともに、キャッシュフロー計算書について触れておきます。

BSからわかること

貸借対照表からわかる事項としては、以下のようなものがあります。

わかること主な例
資産の内訳と規模流動資産(現金や売掛金など)、固定資産(土地や建物など)
資産の大きさは、企業の成長性を示す指標ともなり得ます。
負債の内訳と規模流動負債(短期間に支払うべき負債)、固定負債(長期間にわたり支払う負債)
負債の大きさは、企業の財務リスクや資金調達能力を示します。
純資産の内訳と規模株主資本資本金)、資本剰余金(株式発行時に得た超過分など)、利益剰余金(過去の利益から配当を差し引いた残り)
純資産の大きさは、企業の安定性や収益性を示します。

PLからわかること

損益計算書からわかる事項としては、以下のようなものがあります。

わかること主な例
売上高や営業外収益の規模本業又は本業以外によって得られた収入
売上高の規模は、企業の市場シェアや競争力を示します。
営業利益の規模や比率本業によって得られた利益
営業利益の規模は、企業のコスト管理や収益力を示し、営業利益率(=営業利益/売上高)は本業における利益獲得力を示します。
当期純利益の規模その会計期間の最終的な営業の成果
当期純利益の規模は、企業の最終的な収益力や配当能力を示します。

財務三表に含まれるキャッシュフロー計算書とは

キャッシュフロー報告書とは、一定期間における企業の現預金の収入と支出の流れを示す財務諸表です。キャッシュフロー報告書は、営業活動、投資活動、財務活動の3つの区分に分けて、それぞれの区分での現金の増減を計算し、企業の資金繰りや収益力、成長性などを分析するために重要な情報源となります。

中小企業には作成が義務付けられてはいませんが、キャッシュフローを作成することにより、PLやBSでは見えてこなかった、「お金の流れ」が見えてきます。黒字なのに資金繰りが上手くいってない場合などには、キャッシュフロー計算書などでどの流れに問題があるのかがわかることがあります。

最近注目のBS経営について

企業の経営状態を把握するために貸借対照表を重要視する手法をBS経営と呼びます。貸借対照表では貸方には負債と純資産が、借方には資産がそれぞれ対照的に計上されます。この対照性、つまり、バランスを重要視することがBS経営の基本です。

BS経営においては、企業の資金調達とそのリスク管理をバランスさせることでリスク回避を図ろうとします。つまり、BS経営とは、資産と負債の関係をバランス良く保ち、純資産を適切に管理することを重要視する経営手法であると言えます。

BSは中長期的な経営判断に役立つ

貸借対照表は会社の資産や負債の状況を示しているため、これを分析することで「資本構成」「財務リスク」などを把握できます。経営者がこれらの情報を得ることにより、中長期的な経営戦略や投資計画を立てる際に重要な判断資料とすることができます。

BS経営を取り入れることでできること

貸借対照表を経営に取り入れてできることとは、「資産効率」の向上が考えられます。貸借対照表では、資産の明細がわかるため不要な資産の削減や有効活用、適正な負債比率の維持などが期待できます。

また、BS経営では、財務健全性や成長性を示すことができるため、株主や債権者、従業員などのステークホルダーからの評価や支持を高めることができます。調達した資金を適正に事業に活かしていることをアピールすることができます。

PLを含めて正しい財務分析が求められる理由

貸借対照表だけを拠り所にした経営だけでは十分ではありません。貸借対照表はあくまで企業のある時点での値であるため、BSだけでは企業の動向やパフォーマンスを把握することができません。

そこで、PL(損益計算書)やCF(キャッシュフロー計算書)などの他の財務諸表も併せて分析する必要があります。PLは企業の収益や費用の状況を示す財務諸表です。CFは企業の現金の流れを示す財務諸表です。PLやCFを分析することで、企業の収益力やキャッシュフロー生成能力、利益配分などを評価することができます。これらの情報は、BS経営においても重要な補足情報となります

会社の発展を望むならBSを経営判断に取り入れよう

会社においては決算前に限らず、できれば月次単位で貸借対照表や損益計算書の内容を把握しておくのがよいでしょう。そこから予想されることを実際の数字に落とし込んでみましょう。

また、BSもPLも推移、つまり、前月や前年同月、さらには年度単位での比較値も非常に重要です。

BSやPLは過去の実績ですが、重要なのは使い方によっては十分に将来の予測に役立てることができることです。BSだけでも使い方によって、非常に頼りがいのある資料に変えることができると言えるでしょう。


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