• 更新日 : 2023年11月30日

介護事業で起業するには?開業までの手続きや必要な資格などを解説!

介護事業で起業するには?開業までの手続きや必要な資格などを解説!

介護事業で起業するには、十分な事前準備が必要です。介護施設にはさまざまな種類があり、どの施設を選ぶかで準備する設備や人員、開業に必要な資金も異なります。

本記事では介護事業を開業する流れや必要な資格、費用など、介護ビジネスを始めるために知っておきたいことをご紹介します。

介護事業にはどんな法人形態がある?

介護事業の起業には、国や自治体が定めた基準があります。そのひとつが法人格の取得です。そのため、個人事業主として介護事業の起業はできません。

法人形態は社会福祉法人や医療法人などの非営利法人のほか、株式会社・合同会社などの営利法人による設立も可能です。

ここでは、介護事業を設立する法人形態について、非営利法人・営利法人に分けて解説します。

非営利法人の場合

介護事業で設立できる法人形態のうち非営利法人には、社団法人の社会福祉法人・医療法人、特定非営利活動法人(NPO法人)があげられます。

それぞれの特徴を表にしました。

法人形態特徴メリット・デメリット
社会福祉法人
  • 社会福祉事業を行うことを目的とし、社会福祉法に基づいて所轄庁の認可を受けた法人
  • 社会福祉事業のほか、公益事業や収益事業を行うことができる
  • 税金の優遇がある
  • 施設設備に対して補助を受けられる
  • 社会的信用度が高い
  • 所轄庁等の監督下に置かれ、役員や資産など一定の要件を満たす必要がある
医療法人病院、医師が常時勤務する診療所または介護老人保健施設を開設することを目的として、医療法の規定に基づき設立される法人
  • 医師は給与として報酬を受け取れるようになるため節税になる
  • 分院を開設できる
  • 運営や事務処理が煩雑
特定非営利活動法人(NPO法人)NPO法が定めた要件により設立され、不特定かつ多数の利益のために活動する団体
  • 非営利団体で社会的信用度が高い
  • 設立に資本金が不要
  • 知事の認可を得て設立登記までに時間がかかる

いずれの法人形態でも経営者自身に特別な資格は必要なく、経営知識があれば介護事業の運営は可能です。

営利法人の場合

介護事業は、株式会社や合同会社といった営利法人でも開業できます。

法人形態特徴メリット・デメリット
株式会社
  • 株式を発行して資金を集め、設立される会社
  • 介護業界に株式会社の新規参入が相次ぎ、業界の主流になりつつある
  • 社会的認知度が高い
  • 法人格があることで資金調達しやすい
  • 1名で設立できる
  • 設立時に登録免許税など費用がかかる
合同会社
  • 2006年の会社法改正で新たに創設された会社形態
  • 出資者が会社の経営者であり、出資したすべての社員に会社の決定権がある
  • 定款認証が不要なため設立費用が安く、設立スピードが早い
  • 1名で設立できる
  • 社会的認知度が低い

認可等が必要な非営利法人に比べ、営利法人はいずれも設立に時間がかからないというメリットがあります。株式会社の場合は1週間〜3週間程度、合同会社は数日〜2週間程度の期間で設立が可能です。

介護事業を開業するまでの流れは?

介護事業を開業する流れは、法人形態により異なります。介護事業の開業に向けて共通する事項について、大きな流れをご紹介します。

事前準備をする

介護事業の起業は事前準備が大切です。介護保険のサービスのうち、どの事業を運営するかを決め、事業の開始時期を決定します。

サービス提供のエリアについての情報収集・分析を綿密に行い、介護事業がスムーズに運営できるエリアを決めることも欠かせません。資金計画などの事業計画を作成し、必要になる人員・設備的要件と申請先も確認しておきます。

法人格を取得する

介護事業者の指定を受けるためには法人格の取得が必須であり、非営利法人、営利法人の中から法人格の種類を選びます。それぞれの特徴を確認し、適切な法人格を決定してください。

法人格の種類によって設立に要する時間や費用が変わるため、決定した法人に必要なスケジュールを確認しておきましょう。

すでに法人格がある場合は会社の事業目的にこれから行う介護サービス名を入れ、定款変更と目的の変更登記が必要です。

事務所の賃貸借契約と人員の確保

次に、介護事業を行うための事務所を探します。介護事業を運営できる状態であることを証明する事務所内部の写真が必要になるため、机や椅子などの備品も必要です。

また、介護事業所の開設にはサービスごとに人員配置基準が設けられているため、運営で必要とされる管理者や有資格者につき、定められた人数の人員を確保しなければなりません。

指定前研修を受ける

指定申請を行う前に、管理者を対象とする指定前研修を受講します。指定前研修では、介護保険法に基づいた適切なサービス提供についての指導が行われるとともに、申請書類の記入の仕方などについての説明が行われます。

研修は法人の代表者、あるいは申請する事業所の管理者になる予定の人が受講するのが一般的です。

指定前研修は各自治体で月に1度行っているため、自治体のサイトなどでスケジュールを確認しておきましょう。

指定申請を行う

研修受講後に必要な書類を作成し、事業を開始する地域を管轄する自治体に指定申請を行います。指定申請は予約制で、研修を受けた月の月末までに行わなければなりません。

書類に不備があると申請は受理されないため、開業日が遅れることのないよう、内容をよく確認して申請しましょう。

申請は面談形式で行われ、提出書類に不備がないかチェックされます。要件を満たしていれば、指定事業者としての決定を受けられます。

介護事業で起業するために必要な資格は?

介護事業の起業では、国の法律や自治体の定める条例に従い、有資格者や要件を満たした職種の人員配置が必要です。

介護事業の起業で必要な資格・職種として、主に以下のようなものがあげられます。

資格・職種内容
社会福祉士
  • 国家資格であり、大学の社会福祉士養成校を卒業するなどの受験資格が必要
  • 福祉の相談援助に関する専門知識・技術を持ち、福祉に関する相談や助言・指導を行う
介護福祉士
  • 国家資格であり、大学、専門学校の介護福祉士養成校を卒業するなどの受験資格が必要
  • 高齢者や障がいを持つ人の生活を支援し、介助や利用者・家族からの相談にのるなどさまざまなサポートを行う
ケアマネジャー
  • 利用者や家族の相談に応じながら、必要な介護サービス計画(ケアプラン)を作成する
  • 作成したケアプランをもとに、自治体や介護事業者との連絡や調整を行う
サービス提供責任者
  • ケアマネジャーやケアワーカーとの連絡調整を行う
  • ケアプランに基づき、具体的な訪問介護計画書を作成する
  • ヘルパーとの調整や管理業務を行う
介護スタッフ(ヘルパー)
  • 高齢者や障がいを持つ人の身の回りの世話を支援する
  • 資格は特に必要なく、「介護職員初任者研修課程」を受講して修了証明書の交付を受ける必要がある
生活相談員
  • 介護施設と利用者や家族、ケアマネジャーとの連絡・調整を行う
  • 生活相談員になるための要件は自治体ごとに異なり、社会福祉士・精神保健福祉士などの資格が必要になる場合が多い
精神保健福祉士
  • 国家資格であり、大学の精神保健福祉士養成校の卒業や実務経験などの受験資格が必要
  • 精神に障がいを抱える人の生活相談に応じ、さまざま社会的支援を行う

介護事業で起業するために必要な費用は?

介護事業で起業するために必要な費用は、介護サービスの種類や規模によって変わります。それぞれのサービスで必要な設備や人員が異なるためです。

ここでは、介護事業に必要な費用を開業資金(初期費用)と毎月必要な運営費用に分けて解説します。

開業資金(初期費用)

介護事業の開業に必要な資金は、およそ200万〜1,000万円とされています。サービスにより金額に違いがあり、比較的少ない資金で済むのが訪問介護です。一方、通所介護は高くなる傾向になります。

開業資金として必要になるのは、主に以下の費用です。

費用詳細
人件費
  • 開業申請を行う際に 人員基準を満たす必要があり、管理者・サービス提供責任者、訪問介護員という人員確保が必要
  • 開業前から人員を確保するため、給与が発生する
家賃開業申請では事業所の間取りや設備基準を満たしているかを審査されるため、事務所の確保が必要
内装工事費設備基準を満たすために改装が必要になる場合もある
事務所内の備品事務所内の設備として、以下の備品等を用意する

  • 事務机・椅子・相談室用の設備・ロッカーなど
  • 固定電話・携帯電話・パソコンなど
  • 筆記用具などの事務用品
車両と駐車場代訪問に必要な車両と台数分の駐車場代が必要になる

毎月必要な費用

毎月の運営資金としては、以下の費用が必要です。

金額は施設の規模や人員の数などで変わります。

介護保険サービスでは保険の仕組みから、サービスを提供して報酬を受け取るまでに最初の2ヶ月間程度は収入がない状態になります。通常、介護報酬や診療報酬などの売掛債権は、請求から入金までに2ヶ月ほどかかるためです。

そのため、開業資金とともに2ヶ月間以上の運営資金も確保しなければなりません。

介護事業で起業するための資金調達方法は?

介護事業の起業では、会社設立費用のほかに開業資金や運営資金の調達が必要です。高額になるため、自己資金で賄えない場合は外部から調達しなければなりません。

資金調達には金融機関から融資を受ける方法のほか、助成金・補助金の活用やファクタリングの利用が考えられます。

それぞれ、詳しくみていきましょう。

金融機関からの融資

資金調達方法として一般的なのが、金融機関からの融資です。借入先には、銀行のほかに日本政策金融公庫などがあります。信用保証協会の保証付き融資を受けることも可能です。

起業したばかりで実績のない会社は銀行での審査に通らない可能性もあり、比較的融資を受けやすいのは創業支援を行っている日本政策金融公庫や信用保証協会の保証付き融資です。

日本政策金融公庫は、創業の初期段階でも融資が受けやすく、無担保・保証人なしで融資を受けられる場合もあります。信用保証協会は、会社が金融機関から融資を受ける際、債務を保証して融資を受けやすくする機関です。金利以外に、借入金額や借入期間などに応じた保証料がかかります。

いずれも融資を受ける際は事業計画書などの書類が必要で、自己資金も用意しなければなりません。

助成金・補助金の活用

助成金や補助金を活用するという方法もあります。どちらも国や地方公共団体から支給されるものですが、助成金は主に厚生労働省が管轄し、雇用促進などの活動を支援するために支給されるお金です。

一方、補助金は主に経済産業省や地方自治体が管轄し、事業拡大や設備投資などの活動を支援するために支給されます。助成金・補助金のどちらも、基本的に返済の必要がありません。

介護事業で利用できるのは、主に以下の助成金です。

  • 介護労働環境向上奨励金
  • 特定求職者雇用開発助成金
  • トライアル雇用奨励金

助成金の利用により、開業や運営に必要な資金を補うことが可能です。

ファクタリングの利用

介護事業では保険の仕組みから、開業から2ヶ月ほどは収入が入らないことを説明しました。

しかし、介護報酬のファクタリングを利用すれば、2ヶ月はかかる入金を待たずに介護報酬の現金化が可能です。

ファクタリングとは、債権を期日前に一定の手数料を払って買い取ってもらうサービスのことです。企業の持つ売掛債権をファクタリング事業者が買い取るもので、 借り入れではありません。手数料を差し引き、前倒しで自社の債権を受け取れるサービスです。

介護ビジネスを経営するうえでの注意点は?

介護事業の起業は、通常の会社設立とは異なる部分が少なくありません。提供するサービスを明確にして、エリアの調査で利用者の確保ができることを確かめ、しっかり事業計画を立てることが大切です。

介護ビジネスの経営では、「適切な介護・医療」を提供するために人員配置基準を守ることも重要です。必要な人数はサービスごとに異なりますが、どの施設でも適切な介護サービスを提供するために基準が定められています。各サービスに定められた基準を守り、法にかなった経営を行いましょう。

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介護事業の起業は万全の準備が大切

介護事業を起業するには法人格を取得しなければならず、一般的な事業とは異なりさまざまな準備も必要です。開業にあたってはいくつもの要件・基準を満たさなければなりません。

高齢化社会において、介護事業は今後もますます求められる存在です。しっかりと事業計画をたて、万全の体制で介護ビジネスを始めましょう。

よくある質問

介護事業を開業するまでの流れは?

法人の種類を決め、人員の確保や指定申請をするなどの手続きが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。

介護事業で起業するために必要な資格は?

社会福祉士やケアマネージャーなど、多くの資格があります。 詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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