- 更新日 : 2022年8月10日
会社設立でかかる維持費や年間費用は?
新たに会社を設立したり、個人事業から法人成りしたりする場合、設立後の会社を維持していくためにはどれくらいの年間費用(維持費)がかかるのでしょうか。経営者として、事前に会社の維持費がどれくらいかかるのか把握しておく必要があります。この記事では、会社形態ごとの会社設立費用について解説するとともに、設立後の維持費についても見ていきます。
目次
会社形態の違い
法人には株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4形態があり、設立費用や出資者の責任、経営の自由度などが異なります。ここで、それぞれの会社形態の特徴を確認しておきましょう。
株式会社
株式会社は最も一般的な会社形態で、国内だけでなく海外でもよく見られます。社会的信用度や認知度も高く、出資者は有限責任であるため、万一のことがあっても出資者のリスクは限定的です。
株式会社の主なメリットとして、広く出資金を集められることが挙げられます。株式会社は出資者に対して「株式」を発行し、出資者は「株主」となります。株主は、出資先の会社から「会社の経営に参加する権利」や「配当を受ける権利」が与えられます。
合同会社
合同会社は、2006年の会社法の改正によって設立が可能となった比較的新しい会社形態です。株式会社と比べると認知度や社会的信用度は低いのですが、徐々に浸透しつつあり、その数も増えています。
株式会社よりも低コストで設立でき、設立手続きも簡素化されています。合同会社の特徴は、出資者と経営者が同一であることです。出資者全員が「有限責任社員」となり、経営に関する意思決定を自由に行うことができます。
合資会社
合資会社は、無限責任を負う社員(出資者)と有限責任を負う社員(出資者)がいる会社形態であるため、出資者が2人以上いなければ設立できません。合同会社の設立が可能になったことから、近年は合資会社をあまり見かけなくなりました。
無限責任社員は債権者に対して直接無限の責任を負うため、法的な責任は重いといえます。一方、有限責任社員の責任範囲は限定的であり、出資金の範囲に限られます。
合名会社
合同会社を設立できるようになったことで、合名会社を設立するメリットがあまりなくなったため、近年はほとんど見られない会社形態となりました。合名会社の特徴は、株式会社に比べて規制が少ないため、柔軟な意思決定ができることです。ただし、合名会社の社員である出資者は無限責任であり、重い法的責任がともないます。
会社設立にかかる費用
会社設立にかかる費用は、株式会社と株式会社以外で異なります。
株式会社の設立にかかる費用
株式会社を設立する際は、以下の法定費用がかかります。
合計で、約24万2千円(電子定款の場合は20万2千円)です。
登録免許税は資本金の額に0.7%を乗じて算出しますが、その金額が15万円に満たない場合は15万円を納めます。会社設立の手続きを司法書士や行政書士などの専門家に依頼する場合は、別途5万~10万円の報酬を支払うことになります。
株式会社以外の設立にかかる費用
合同会社など株式会社以外の設立費用は、設立にかかる登録免許税6万円と定款に貼る収入印紙代4万円の合計10万円です。株式会社以外では定款認証は不要なので、定款の認証手数料はかかりません。また電子定款を利用する場合は、収入印紙代4万円も不要です。
したがって、電子定款を利用して株式会社以外の会社を設立する場合の費用は、登録免許税6万円のみです。登録免許税は資本金の額に0.7%を乗じて計算しますが、その金額が6万円に満たない場合は6万円を納付します。
株式会社と株式会社以外の会社設立にかかる費用は、以下のとおりです。
株式会社 | 合同会社、合資会社、合名会社 | |
---|---|---|
定款の認証手数料 | 3.2万円~5.2万円(資本金額によって異なる) | ― |
定款に貼る収入印紙代 | 4万円(電子定款の場合は不要) | 4万円(電子定款の場合は不要) |
定款の謄本手数料 | 2千円 | ― |
設立にかかる登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
合計 | 24万2千円 | 10万円 |
株式会社と合同会社の比較については、こちらで詳しく解説しています。
会社運営に必要な維持費(ランニングコスト)
事業内容によって会社運営にかかる費用は変わりますが、一般的に会社運営には以下のような維持費(ランニングコスト)がかかります。
- 事務所の家賃
- 事務所の水道光熱費
- 社員への給料
- 福利厚生などの諸費用
設立から1年くらいは会社を運営していけるよう、資金を準備しておきましょう。
各会社形態共通でかかる維持費
会社設立後は、会社運営に必要な以下の維持費(固定費)がかかります。ここでは、各会社形態に共通する維持費(固定費)を見ていきましょう。
税金(住民税均等割)
会社を運営していると、必ず税金が発生します。利益があれば、利益額に応じて法人税及び住民税が発生しますし、赤字であっても「住民税均等割」という税金はかかります。住民税均等割は、会社形態による違いはありません。資本金1千万円以下の場合は7万円、資本金が1千万円を超える場合は18万円です。
社会保険料
会社運営において、社会保険への加入は必須です。社会保険とは、健康保険や厚生年金、労災保険、雇用保険などを指します。社会保険料は、従業員と会社が折半して支払います。会社が負担して納付する金額は、従業員に支払う給料の14.6%程度。決して少ない金額ではありません。
税理士など専門家への報酬
会社を設立すると、多くの場合税理士と顧問契約を結ぶことになります。会計処理や税務は複雑なので、専門家に任せたほうが安心です。会社の事業内容や規模にもよりますが、税理士報酬の相場は年間30万〜50万円程度です。
株式会社でのみ必要な維持費
株式会社にしかかからない維持費には、以下のようなものがあります。
決算公告費用
決算公告は会社が年間の決算を公表し、株主や債権者に会社の財政状況や経営成績などを知らせるために行うものです。基本的に1年に1回、定期株主総会の後に公表され、公告の方法には官報公告、新聞掲載、電子公告があり、それぞれ費用がかかります。
官報公告なら6万円程度ですが、日経新聞など全国紙に掲載する場合は10万~100万円ほどの費用がかかることもあります。一方、電子公告であれば費用はかかりません。
役員の就任・重任登記費用
新たに役員が就任した場合や、任期を終えた役員が退任と同時に再就任(重任)する場合は役員変更登記が必要で、登記費用がかかります。一般的に変更登記は司法書士に依頼するため、別途3~6万円の費用が発生します。
株式会社以外の会社には役員の任期の定めがないため、取締役の交代がなければ登記費用はかかりません。
株主総会開催費用
株式会社は、原則として年に1回株主総会を開催しなければなりません。その際に必要な費用として、以下のようなものが考えられます。
- 会場費
- お茶代、お弁当代
- 手土産代
株主総会開催費用は会社によって大きく異なるため、相場はありません。株主総会を開催する必要のない合同会社・合資会社・合名会社は、これらの費用は不要です。
個人事業主にかかる維持費
法人と異なり、個人事業主は事業を継続するために必須の費用はありません。ただし、自宅を事務所とせずオフィスを借りたり、税理士と顧問契約を結んだりした場合はその費用が発生します。
節税効果を期待して法人成りやプライベートカンパニーの設立を検討している場合は、こちらを参考にしてください。
会社形態ごとの年間維持費比較
会社形態ごとの維持費を比較すると、以下のようになります。
株式会社 | 合同会社、合名会社、合資会社 | |
---|---|---|
住民税均等割 | 7万円※ | 7万円※ |
社会保険料 | 給与支払額の一定割合 | 給与支払額の一定割合 |
税理士報酬 | 30万~100万円 | 30万~100万円 |
決算公告費用 | 官報公告:6万円 新聞掲載:10万~100万円 電子公告:無料 | ― |
役員変更登記費用 | 3万~6万円 | ― |
株主総会費用 | 規模によって異なる | ― |
会社設立後のランニングコストも検討しよう
株式会社は社会的信用があるため、新規取引先の開拓や資金調達において他の会社形態よりも有利に会社を運営することができます。一方、合同会社は設立費用や経営の自由度などにおいて有利であり、ランニングコストも低く抑えられるため、近年徐々に設立が増えています。
会社形態を選択する際は設立費用だけでなく、その後のランニングコストも検討した上で決めることをおすすめします。また、金銭的コストだけでなく、運営に係る時間的コストや精神的負荷なども考慮して、自社の事業に適した会社形態を選択してください。
よくある質問
4つの会社形態とは?
会社形態には株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
会社の設立費用はどれくらい?
法定費用として、株式会社の場合は20万~25万円ほど、株式会社以外の場合は6万~10万円ほどかかります。詳しくはこちらをご覧ください。
会社の維持費とは?
会社運営においては、住民税均等割や社会保険料、税理士報酬などの維持費がかかります。株式会社の場合は、この他に決算公告費用や役員変更登記費用、株主総会開催費用などがかかります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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