• 更新日 : 2022年8月9日

現物出資とは?会社設立で失敗しないための仕訳例やメリット・デメリットを解説

現物出資とは?会社設立で失敗しないための仕訳例やメリット・デメリットを解説

会社設立の際、現金の出資が少額な場合に検討するもののひとつとして現物出資があります。車や不動産、営業権など手持ちの資産を出資することで、資本金を大きくすることができます。会社設立にあたり最低資本金規制が撤廃されたとはいえ、資本金の大きさが会社の信頼性と密接に関係しているのも事実です。ここでは、会社設立における現物出資の概要と、活用する際の注意点を説明します。

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現物出資とは

会社設立時に金銭以外の財産、例えば不動産や設備などで出資することを、現物出資といいます。

現物出資として認められる財産

会社設立にあたり現物出資として認められるものは、譲渡することができ、貸借対照表に資産計上が可能なものです。

  • 自動車、パソコン、OA機器、商品、原材料などの動産
  • 市場価値のある有価証券
  • 土地、マンションなど不動産
  • 営業権・商標権などの知的財産権など無形固定資産

現物出資規制がなされている趣旨

会社設立にあたり出資金に回せる手元資金が少ない起業家には心強い現物出資ですが、さまざまな規制があります。出資財産の過大評価により、出資者が実際の価値より多く株式を取得するなどの不正が起こりかねません。そのため、金銭出資より厳格な規制が存在しています。

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現物出資が認められる要件と規制

会社設立時に現物出資が認められる要件と規制について、以下4つの点について説明します。

1.現物出資が認められる人とは

現物出資は発起人のみ認められています。

2.定款への記載

会社設立において現物出資が認められるには、相対的記載事項として以下の内容を定款に記載することが必要です。

  • 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称
  • 当該財産及びその価額 
  • 現物出資する者に対して割り当てる設立時発行株式の数

3.裁判所選任の検査役による財産価値の評価

裁判所選任の検査役と呼ばれる専門家により、財産価値が適切であることの証明を受ける必要があります。検査役は、実際の資本金額と現物出資財産の評価額が妥当なものであるかを調査します。ただし、検査役による調査は期間が数か月にわたり、多額の費用がかかります。

一方、以下の要件に該当する場合は検査役の調査は不要になります。

  • 定款に記載され、又は記録された価額の総額が500万円を超えない場合。
  • 市場価格のある有価証券について定款に記載され、又は記録された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合。
  • 検査役による調査に替えて、現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士(外国公認会計士を含む)、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合は、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合。

4.現物出資の不足額担保責任

会社法第52条では、会社設立にあたり現物出資財産等の価額が定款に記載された価額より著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、不足額を支払う義務を負います。また、この価額評価を証明した弁護士や会計士なども、発起人、設立時取締役同様に、不足額の支払い義務を負います。ただし、検査役の調査が行われた場合や、発起人または設立時取締役がその職務を注意して行っていたことが証明できる場合は、現物出資者を除いてその義務を負いません。また、価額評価をした者が注意深く当該評価をしていることが証明できた場合も同様にその義務を負いません。

会社設立時の現物出資の仕訳例一覧

現物出資を活用して会社を設立したときの仕訳例を紹介します。法人税法と消費税法を考慮した場合、仕訳内容が異なることに注意が必要です。

消費税法上、現物出資による資産譲渡は課税対象なので、売却時には消費税を受け取ることが可能です。また法人税法上の税制適格要件を満たしている場合、各資産を簿価で譲渡したとみなします。

債務と株式を交換するデット・エクイティ・スワップについても、合わせて解説します。

会社設立時の具体的な仕訳例

例)現金100万円に加えて自動車100万円の現物出資で資本金を捻出した

借方
貸方
現金
1,000,000
資本金
2,000,000
自動車
1,000,000

現物出資は手元に現金がなくても資本金を増やせる便利な方法です。ただしありったけの資産を積み重ねて計上すると、経理上の処理が複雑になってしまう可能性があります。

ある程度まとまった資金を確保するためにも、現物出資を行うのは10万円以上の資産に限ることを推奨します。

法人税法と消費税法を考えた場合の仕訳例

例)現物出資でA社から土地100万円、建物100万円(時価200万円)を譲渡して会社を設立した。法人税法の税制適格要件は満たしている

借方
貸方
摘要
土地
1,000,000
資本金等
2,200,000
A社
建物
1,000,000
仮払消費税等
200,000

土地の取引には税金が発生しないため、受け取る消費税は建物の分だけです。また消費税の課税対象は簿価ではなく時価です。

上記の例では、建物の時価200万円に10%を乗じて、20万円と算出しています。

債務と株式を交換するデット・エクイティ・スワップ

デット・エクイティ・スワップとは債務超過・財政破綻状態の企業の債務を、債権者が現物出資によって株式化することです。もしくは株式を発行して得た出資金で債務を弁済し、負債を減少させる行為です。

会社にとっては負債を減らし資本金を増やすことで、経営状態の改善につながります。債権者にとっても無事経営を再建できた時は株式の価値向上が狙えるため、既存の再建を放棄するより有効とも考えられます。

また、デット・エクイティ・スワップは経営者のモラルハザードの防止にも有効です。債権者は株主として経営に関与できるため、経営者の暴走や判断ミスを防ぐことにつながります。

現物出資を利用する3つのメリット

現物出資は、会社設立を考えている人にとって、資金の調達を容易にする便利な方法です。
現金が用意できなくても、増資できる他、自らが発起人となって会社設立の手続きを進められます。

購入価額が10万円を超える資産に限りますが、減価償却による節税も可能です。現物出資を活用する3つのメリットについて、詳しく解説します。

現金以外の資本金を増やせる

現金以外の手段で資本金を増やせるのは、大きなメリットです。特に設立間もない状態で資金繰りが苦しい会社を軌道に乗せたいときに有用です。

資本金が多い方が、対外的な信用を獲得しやすく、例えば金融機関から融資を受ける際に有利に働きます。資本金の調達は現金でしか認められていないわけではありません。現物出資も利用すれば、資本金のコントロール幅を持たすことが可能です。

保有資産を活用して増資が可能なので、資金調達コストを有しないことも現物出資の利点です。

現物出資をしたときは額面ベースでの出資金と現金のギャップを把握し、緻密な資金繰りの計画を立てる必要があるでしょう。

減価償却を利用した節税が可能

現物出資で提供した財産は会社の財産となるため、減価償却費として経費処理が可能です。
業務に使用する建物や機械装置、器具部品等は取得費用をその年に計上するのではなく、資産ごとに定められた法定耐用年数に応じて、毎年分割した金額を費用に含めます。

この会計処理を減価償却と呼び、経費が加算されるため会社の利益は減少してしまいますが、その分課税対象も減り、節税が可能という利点も有します。

現金での出資の場合、資産の購入や経費の支払いなどをしない限り、経費にカウントできません。現物出資の方が節税効果を得られることは明白です。

ただし、減価償却の対象となるのは10万円以上の財産に限られることに注意しましょう。

現物出資によって資金なしでも発起人になれる

現物出資によって、手元に資金を用意できなくても発起人になることが可能です。発起人は会社の設立を呼びかける存在で、出資や定款の作成といった会社設立の手続きを行う人です。

会社の経営権を握る重要なポジションにも就任し、取締役の選任をはじめ、重要事項の決定にも関与します。つまり現物出資を活用すれば、現金がない人も会社を設立できることを意味します。

個人事業主法人化を検討しているときに、現物出資は有効なソリューションとなるでしょう。また複数人で協働して会社を設立する場合に、他の人と同じ金額の資本金を準備しなくても発起人になれるという利点もあります。

現物出資を利用する2つのデメリット

現物出資を利用するデメリットには事務手続きに時間を要することおよび、資本金の現金比率が少なくなり事業運営に不都合が生じることが挙げられます。

現物出資時には、定款への追記や調査報告書の作成などの作業が伴うのです。また手元に現金が少ないと、運転資金や設備資金を確保できず、経営が滞りがちです。

書類作成や定款作成に時間がかかる

現物出資は手続きが込み入っていて煩わしく、手間がかかります。定款への記載の追加、調査報告書の作成、登録や登記が必要な資産はその手続きまで求められるためです。

定款には出資する発起人の氏名・住所、出資財産の詳細と価額、出資者に割り与える株式数といった情報の記載が必要です。

調査報告書は、現物財産の価額が適正で引き継ぎ作業が完了していることを取締役が調査・確認した後に作成する書類です。定款に記載した金額に誤りがあり、記載額と比較して当該財産の価額が不足している場合、出資人はその差額を支払う義務を負います。

資本金に対して現金の割合が少なくなる

現物出資で調達した金額が多いと、資本金全体における現金の割合が少なくなります。何が問題かというと、手元にすぐ使用可能な資金の不足を招くのが良くありません。

経営では運転資金や設備資金など金銭での資金が必要な場面に出くわしますが、現物出資が多すぎると、こういったときに対応できなくなります。見かけ上資金が潤沢のように見えて、実は社内にはほとんど現金がないという状態に陥ります。

収入より支出が多い状態が続くと、そのまま資金がパンクして会社が傾きかねません。現物出資を行うなら、資金繰りの計画は入念に行う必要があります。

銀行の融資審査でも担当者が不審を抱き、内実に気付かれ、希望通りの資金調達が叶わない場合もあります。資本金が多ければ高額融資を受けられるとは限らないため、現物出資に頼り過ぎるのは危険です。

現物出資を利用して会社設立をスムーズに行おう

会社設立時における現物出資はさまざまな財産で行うことができます。 そして検査役の調査が不要な範囲で現物出資を行うことが効率的です。不足額の支払いを避けるためにも、過大な評価をせずに厳正な財産評価を行ったうえで定款に記載するという、正しい手続きを踏むことは重要なことです。

現物出資によって手元に現金がなくても資本金を増やせるだけでなく、減価償却による節税も期待できます。一方で資本金に占める現物出資の割合が多すぎると、対外的な信用が弱くなります。現物出資は経済力に乏しい開業したての経営者にとって便利な手法ですが、むやみやたらに使えば良いわけではないので注意してください。

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よくある質問

現物出資とは?

会社設立時に現金以外の資産(ex:自動車や不動産等)を提供して出資することです。詳しくはこちらをご覧ください。

現物出資のメリットは?

現金がなくても資本金を増やせること、発起人になれること、節税になることの3つです。詳しくはこちらをご覧ください。

現物出資のデメリットは?

手続きが煩雑であること、資本金に占める現金の割合が少なくなってしまうことの2つです。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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