- 作成日 : 2022年4月22日
会社設立時に必要な取締役の人数は?役員構成の決め方を解説!
会社の中心的な存在として、業務執行や組織の監督をする役割を持つ人を役員といいます。会社法に定められている役員は通常、取締役・監査役・会計参与などを指します。
このうち取締役については、株式会社設立時に発起人による選任、または定款の定めにより決まります。会社設立に任命される取締役の人数は最低何人必要なのでしょうか。取締役会を設置する場合と設置しない場合とでの必要な取締役の人数、役員構成について解説していきます。
目次
会社設立時に必要な取締役の人数は?
会社設立時には、会社の役員構成を決めなくてはなりません。
監査役、会計参与は、取締役会の設置会社であれば会社設立時にいずれか選任する必要がありますが、取締役会を設置しない会社では必ずしも選任が必要ではありません。
一方、取締役(合同会社、合名会社、合資会社は取締役という名称はなく、代わりに業務執行者が存在)については、会社設立時に選任が必要です。
取締役とは、会社経営や監督を行う役割を持つ、会社法に定められた役員としての法的責任がある者のことをいいます。
取締役の役目や責任については、以下の記事をご覧ください。
そもそも取締役とは?発起人とどう違う?
発起人とは、会社を設立する手続きを行う人を指します。会社設立のための出資、定款の作成、設立時取締役の選任が主な役割です。会社設立後、発起人は取締役になる義務はなく、株主としての権利を有します。
一方の取締役は、会社の実質的な経営を担うポジションです。会社経営の基本的方針は株主によって意思決定が行われますが、日々の経営上必要な意思決定は取締役によって行われます。
発起人の責任や決定など、詳細は以下の記事をご覧ください。
株式譲渡制限会社は取締役が1人でも設立できる
会社の所有する株式のすべてについて、定款に譲渡制限の規定を設けている株式会社を、株式譲渡制限会社、または非公開会社といいます。
株式譲渡制限会社は、株式を譲渡する際に株主総会または取締役会の承認が必要になるため、自由に株式を譲渡できません。家族経営の会社など、株式が意図せず譲渡されることを防ぎます。
この、株式譲渡制限会社については、取締役会設置の義務がありません。取締役会不設置のときの取締役の人数は1人以上と定められていますので、取締役1人でも会社を設立できます。
公開会社は設立時に取締役が最低3人必要
公開会社とは、定款に、発行する株式のすべて、または一部の譲渡について、承認を要する旨を定めていない株式会社のことです。株式の譲渡制限について、1株でも制限を設けていないときは公開会社に該当します。
公開会社の設立では、会社法によって取締役会の設置が義務付けられています。また、取締役会を設置した会社は取締役を3人以上設置しなくてはなりません。
会社設立時に代表取締役は2人以上いてもよい?
代表取締役とは、取締役のうち、会社を代表する取締役のことをいいます。代表取締役=社長(代表取締役社長)のイメージがあるかもしれませんが、代表取締役が社長だけとは限りません。
取締役会のない会社が定款に代表取締役の記載や選任を行わないときは、すべての取締役が代表取締役になります。
代表取締役は2人以上いても会社法上は問題がないため、取締役のうち、社長、専務、常務などから複数人を代表取締役とするケースもあります。
なお、代表取締役の専任は取締役から行う必要があります。取締役でない人が代表取締役になることはできませんので、注意しましょう。
会社設立時の取締役・代表取締役の選び方は?
会社設立時には、取締役の選任と代表取締役の選定をする必要があります。取締役会を設置する場合と取締役会を設置しない場合に分けて、取締役と代表取締役を選ぶ方法を解説します。
取締役会を設置する場合
会社設立時の取締役は、定款で定める方法か、発起人の選任による方法で決めます。発起人が複数名いるときは、発起人の過半数を占める決議を得て取締役を選任します。
代表取締役は、原則として取締役会の決議で選定しなければなりません。設立時は取締役会が存在していないため、定款の定めまたは発起人に選任された設立時取締役による選任決議で代表取締役を決めます。
なお、定款において株主総会(創立総会)の決議で選任することの定めを設けていれば、株主総会で代表取締役を選定することもできます。
取締役会を設置する株式会社が、監査委員等設置会社として会社を設立するときは、設立時取締役から3名以上の監査等委員となる取締役(過半数以上を社外取締役で構成)の選定が必要です。監査等委員会に選任される取締役は業務執行を兼ねることができませんので、業務執行取締役についても考慮した上で、取締役を選任する必要があります。
指名委員会等設置会社として会社を設立するときは、設立時取締役から指名委員会、監査委員会、報酬員会となる取締役(各委員会3名以上、過半数以上を社外取締役で構成)の選定が必要です。代表取締役は存在せず、代わりに取締役会により選任された代表執行役が業務執行を行います。
取締役会を設置しない場合
取締役の選任の方法は、取締役会を設置する場合と同様です。定款で定め、もしくは発起人の選任により取締役を選任します。
なお、代表取締役の選定については取締役会設置会社と異なり、以下による選定が可能です。
- 定款に代表取締役の氏名を記載して直接定める
- 発起人の決議によって定める
- 定款の定めにより、設立時取締役の互選によって選定する
- 定款の定めにより、株主総会の決議により選定する
- 取締役の選定について定めない
代表取締役は、発起人の決議や設立時取締役による互選を経なくても、定款に直接記入することにより定めることができます。
また、代表取締役を特に定めないといったことも可能です。定款の定めや互選などにより代表取締役を定めないときは、設立時取締役に選任された全員が代表取締役になります。
会社設立時の取締役を1人にするときの注意点は?
会社設立時の取締役は、取締役会を設置しない限り、1人でも問題ありません。しかし、会社設立以外で問題が生じることもあります。ここでは、取締役が1人のときの注意点を4つ取り上げます。
許認可が必要な業種では役員に規定が設けられていることがある
許認可が必要な業種において、役員に関する事項に規定が置かれていることがあります。例えば、建設業では常勤の役員のうち1人以上は、建設業法施行規則に定める経営業務の管理責任者等の要件に合致していなくてはなりません。
会社設立上は取締役1人でよい場合でも、許認可の関係で、その取締役が法律の定める役員の要件にあてはまらないこともあります。この場合は、別に要件を満たす人を取締役に選任する必要があります。
事業承継で問題が起きることがある
1人の取締役が発行株式のすべてを所有しているときは、株主である取締役が、ほかの取締役の選任権を持ちます。そのため、その取締役に万が一のことがあった場合には取締役を選任できず、家族や後任者を取締役にすることができません。取締役を1人にすることは、将来、事業承継が円滑に行えないリスクが生まれます。
事業承継の問題を回避するには、ほかに取締役を選任するか、取締役に欠員が起きたときに取締役に就任できる補欠取締役を選任しておくとよいでしょう。
責任が集中してしまう
取締役は、会社法によって取締役に一般的に期待される任務を遂行する義務を負っています。これを任務懈怠責任といいます。取締役が法令違反、会社の監督義務違反、経営判断のミスによって会社に損害を与えたときは、任務懈怠責任違反により、損害賠償責任を負わなくてはなりません。
取締役が1人ということは、このような取締役としての責任を一身に背負うということです。そのため、損害賠償などの法的責任を分散できず、1人で責任を被ることになります。
信用に影響することがある
取締役会を設置する会社では、取締役は3名以上選任することが定められています。取締役会には取締役を監督する役目があるためで、取締役1人では取締役を監督する機能を果たせないためです。
取締役が1人だと、取締役会のように監視する存在がないため、経営に重大な問題が生じるなどしても、取締役1人の判断で会社の未来が決まってしまいます。対外的な信用で見ると、取締役が1人の会社に比べ、構成で冷静な判断が期待できるという観点から、取締役が何人もいるような会社、取締役会が設置されている会社の方が信用は高くなります。
会社設立時の役員構成は慎重に決定しましょう
株式会社設立時には、取締役の選任が必要で、必要な人数は、取締役会を設置するかしないかで変わってきます。
また、現実として取締役1人でも株式会社を設立することもできますが、さまざまな問題が生じることがあります。将来的なことも考えて、会社設立時の役員構成は慎重に検討するようにしましょう。
よくある質問
会社設立時に取締役は何人必要?
取締役会を設置しない株式譲渡制限会社は最低1人、取締役会の設置が必要な公開会社は最低3人の取締役の選任が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
代表取締役は2人以上でもよい?
代表取締役は、取締役に選任された者であれば2人以上選出されても問題ありません。詳しくはこちらをご覧ください。
取締役1人にするとき注意することは?
許認可が必要な業種で取締役の要件が規定されるケースがあること、信用や事業承継に影響を及ぼすことがあること、責任が集中してしまうことに注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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