• 作成日 : 2024年10月4日

工務店経営で起業するには?必要な手続きや注意すべきポイントを解説

工務店の経営は、住宅や施設の設計・工事・施工管理などを行う事業を請け負う業者を法人または個人事業主として開業することです。同様の事業者としてハウスメーカーがありますが、工務店は地域に根ざした工事を請け負う傾向が見られます。

今回は、工務店の経営についての基本情報と主なビジネスモデル、経営のポイントなどについて解説します。

工務店経営で起業できる?

工務店で起業・開業することは、建築業界において比較的現実的な選択肢といえます。特に経験豊富な職人や技術者が個人事業主あるいは会社を設立して起業するケースが見られる傾向です。そして、工務店は、リフォームや新築、建築の管理など幅広い業務をカバーしており、その需要は安定しています。

国土交通省が発表した『建設業許可業者数調査の結果について(建設業許可業者数調査の結果について-建設業許可業者の現況(令和5年3月末現在)-)』の資料によると、2022(令和4)年度末現在の国内の建設業許可業者数は474,948 業者であり、毎年15,000~20,000あたりの新規事業者が誕生していることになるのです。

個人事業主として起業する場合は比較的少ない資本金で始められ、法人として起業する場合は社会的な信用力や融資の面で有利になるなど、それぞれメリットがあります。 どちらの方法を選ぶかは、ビジネスの規模や将来的な目標によって決めるとよいでしょう。

参考:建設業許可業者数調査の結果について

工務店の主なビジネスモデル

工務店は主に地域に根付いたサービスを提供し、さまざまなビジネスモデルを展開しています。こちらでは代表的なビジネスモデルについて解説します。

新築住宅を手掛ける工務店

新築住宅を手がける工務店は、注文住宅や分譲住宅の建設を主な業務としています。施主の要望に応じたカスタマイズが可能であり、デザインや材料の選定から施工まで一貫して対応します。

地域に密着した工務店は、その土地の気候や風土に適した住宅を提供できる点が強みです。さらに、近年は耐震性や省エネ性能を重視した住宅のニーズが高まっており、こういったニーズに対応するための技術や知識を売りにしている工務店も存在します。

リフォームやリノベーションに特化した工務店

リフォームやリノベーションに特化した工務店は、既存の住宅や建物の改修を中心に業務を展開しています。少子高齢化に伴い、既存住宅の価値を高める、住みよい環境に整えるためのリフォームの需要が増加しています。また、住宅だけでなく、マンションや店舗の改修も手がける工務店も多く、特に大規模なリノベーション案件では設計事務所と連携するケースが一般的です。

近年はエコリフォームや既存住宅のバリアフリー化の需要も増えており、技術力の他にも補助金や助成金制度に関する知識も求められることが多くなっています。

店舗やオフィスに特化した工務店

店舗やオフィスに特化した工務店は、個人住宅ではなく商業施設やオフィスビルの設計・施工を手がけます。商業空間のデザインは、集客力や業績に直結するため、工務店には高いデザイン性と施工技術が求められるでしょう。

また、顧客のビジネスモデルに合わせた空間づくりや、トレンドに対応した設計が重要です。店舗のリニューアルやオフィスのレイアウト変更といったニーズに応じた柔軟な対応も、この分野の工務店に期待されるスキルといえます。

大手ハウスメーカーなどの下請けを中心とした工務店

大手ハウスメーカーやゼネコンの下請けとして業務を担う工務店は、安定した仕事量を確保できる点がメリットです。これらの工務店は、特定の分野に特化した専門技術を持って基礎工事や屋根工事など、特定の工程を担当する場合もあります。

大手のプロジェクトに関わることで、技術力の向上や最新の施工技術を学べる機会も多いですが、その反面、元請けからの厳しいコスト管理や工期・品質管理が求められるでしょう。

工務店を開く際に必要な手続き

工務店を開業する際には、以下のような手続きや許可が必要です。

  • 建設業許可の取得
    工務店を経営する前に都道府県知事または国土交通大臣から建設業許可を得る必要があります。建設業許可には、「一般建設業」と「特定建設業」の2種類がありますが、工務店開業のために取得するのであれば一般建設業の許可で問題ありません。
  • 法人設立
    工務店を法人化する場合、会社設立の手続きを行います。定款の作成や登記申請、資本金の払い込みなどが必要です。法人化することで信用度が向上し、大規模なプロジェクトに参加しやすくなります。
  • 設立届の提出
    法人を設立した場合は、設立日(設立登記をした日)から2カ月以内に「法人設立届出書」を管轄の税務署に提出しましょう。他にも、源泉所得税関係の届出書、消費税関係の届出書なども作成し提出しなければなりません。
  • 社会保険・労働保険の加入
    法人が従業員を雇用する場合、社会保険や労働保険の加入が義務付けられています。社会保険の加入は建設業許可を得る条件でもあります。手続きは管轄の年金事務所や労働基準監督署などで行います。

会社設立の流れについては以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。

工務店を開く際に必要な資金

工務店の開業に必要となる資金の目安を表にまとめました。

資金の用途目安額説明
事務所・施設の設置費用約500万円土地や建物の購入・改装、設置にかかる費用
機材・工具の購入約700万円必要な機材や工具、車両の購入費用
運転資金約500万円人件費や光熱費、消耗品などの運転資金。
その他(広告費など)約110万円宣伝活動や開業準備にかかる費用

実際の費用は事業規模や立地、業務内容によって異なります。開業前に詳細な計画を立て、綿密な試算のもと余裕を持って開業資金調達の準備を行いましょう。

工務店を経営する際に課題となりやすいポイント

工務店を経営する際には以下のような課題に直面することがあります。これらについて正しく理解し、適切な対策を講じることが経営の安定につながるでしょう。

集客面での課題

人口減少や少子高齢化により住宅市場は縮小傾向にあります。特に新築市場が厳しい状況にあるため、リノベーションやリフォームといった新たな市場への対応が必要です。また、従来の紙媒体や看板、口コミによる集客に加え、WebサイトやSNSを活用したデジタルマーケティングが重要になります。

資金管理と財務面での課題

資金繰りが不安定になると、金融機関からの支援も受けにくくなります。こうした状況を回避するためには、普段から売上予測やコスト管理を徹底し、適切な財務計画を立てることが大切です。必要に応じて税理士やコンサルタントなどの専門家によるサポートも受けましょう。

法律や規制の課題

2024年4月から建築業界においても「働き方改革関連法」の上限規制が適用され、罰則つきの時間外労働規制が設けられました。それに伴い、従業員を雇う際には工期の適正な設定や労務管理の徹底が必要不可欠です。また、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の改正もあり、より一層シビアな品質管理が求められています。​

経営者の心理と外部環境の影響

コロナ禍による景気悪化やその後の世界的なインフレによる資材の高騰など、外部環境の変化による影響を受けている工務店も少なくありません。

急激な社会情勢の変化により経営者の心理的な負担も増加しており、特に財務面での不安が大きくなると倒産や廃業のリスクが高まります。廃業を防ぐためには、適切なリスク管理と他社との差別化が不可欠です。

工務店経営はチャンスも多いけど覚悟が必要

工務店の経営は、現場で経験を積んだ技術者や建設業界で働く方にとって、ステップアップの選択肢となる可能性があります。ビジネスモデルとしても、新築住宅、リフォーム、事業所など、実にさまざまです。

開業すれば自分の経験や技術を活かして大きな収入が得られるチャンスがある一方、人口減少や少子高齢化による市場縮小、働き方改革に伴う労働規制など厳しい社会情勢に遭遇しても生き抜いていく覚悟が求められます。

さまざまな施工内容に対応し、デジタルマーケティングを強化するなどの工夫をしながら、競合に埋もれないような戦略を立てていくことが大事です。


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