• 作成日 : 2022年9月16日

起業準備していても失業保険を受給出来る?再就職手当も解説

退職して失業保険が受給できるのは、企業に再就職した場合だけだと思われがちです。しかし条件を満たしてきちんと申請すれば、起業する場合でも失業保険が受給できます。この記事では、起業準備中に失業保険や再就職手当を受給する場合のポイントを紹介します。

開業に向けて退職するという人は手当を受け取れる可能性があるので、ぜひこの記事を参考にしてください。

起業準備をしていても失業保険を受給出来る?

起業準備中は仕事を辞めているケースが多く、少しでも収入になるなら失業保険を受け取りたいと考える人も多いのではないでしょうか。

失業保険を受給できるのは、求職活動中に創業の準備・検討をしている場合です。この段階ではまだ起業に至っていないため、求職活動中の身分として失業保険を受給できます。

起業や創業をすると失業保険は受給できなくなるので、失業保険を受け取る予定の場合は、対象外にならないように会社設立のタイミング等を調整する必要があります。

失業保険受給中のアルバイト

離職してからハローワークに求職の申し込みをするまでの間は、自由にアルバイトできます。また、7日間の待機期間を過ぎれば給付制限期間中でもアルバイトが可能です。

自己都合で退職した場合には、失業保険を受給するまでに2ヶ月の給付制限期間が発生します(給付制限期間は5年間のうち2回までは2ヶ月、3回目以降は3ヶ月)。この期間は失業保険が支給されないため、何もしなければ無収入で生活が困窮する場合も考えられます。こうした背景から、給付制限期間中に収入で生活に困ることがないように、一定の条件下でアルバイトが認められているのです。

失業保険の受給資格を失わずにアルバイトする場合は、雇用保険加入条件を満たす「1週間の所定労働時間が20時間以上」および「31日以上の雇用が見込まれる」アルバイトの場合は「就職」と判断され受給できなくなるので、週に20時間を超えないように契約することがポイントです。

失業保険受給中のアルバイトについて不安がある場合は、労働時間や雇用形態についてハローワークに相談し、問題ないことをあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

待機期間や給付制限期間などの専門用語について、詳しく知りたい人はこちらの記事を参考にしてください。

アルバイトしたことで受給不可になるケースとは

雇用保険の対象になるようなアルバイトをした場合には、「失業状態ではない」と判断され、失業保険の受給ができなくなります。一週間の所定労働時間が20時間以上になると雇用保険の対象となるため、アルバイトする場合は20時間未満にしておくことが重要です。アルバイト先に、可能であれば失業保険を受給中であることや長時間働けないことを伝えておくとよいでしょう。

また、一週間で20時間未満のアルバイトでもハローワークに申告が必要です。アルバイトしているにもかかわらず申告を怠ると、アルバイトの契約期間が把握できないため「就職している」と判断されかねません。また、不必要な隠匿は雇用保険の不正受給を疑われる可能性があります。就労に関する状況は、隠さずにハローワークに伝えることが大切です。

そもそも失業保険とは?

失業保険とは、健康保険や厚生年金保険と並ぶ公的保険制度のひとつです。失業保険というのは一般的な呼称で、制度の正式名称は「雇用保険」です。

雇用保険は毎月の給与から源泉徴収され、急な解雇や会社が倒産した際に手当が支給される仕組みです。失業中に生活の心配をせずに、再就職の就職活動に専念できるように失業給付金(「基本手当」と呼ばれる)が支給されます。

基本手当を受け取ることができる日数(所定給付日数)は、離職時の年齢や被保険者であった期間、離職理由などの条件を合わせて決定されます。具体的な所定給付日数については、のちほど一覧表で解説するので参考にしてください。

基本手当は、申請したらすぐに受給できるわけではありません。支給開始日までには7日間の待機期間があり、離職理由によっては追加で2~3ヶ月間の給付制限期間が設定されています。基本手当を受け取るまでに3ヶ月以上かかるケースもあるため、当面の生活資金は自分で確保することが必要です。場合によっては、受給資格を失わない範囲でアルバイトを検討する必要もあるでしょう。

失業保険の受給資格

基本手当を受給するためには、次の2つの条件をいずれも満たす必要があります。

  1. ハローワークで求職の申し込みを行い、就職への積極的な意志があるが、本人やハローワークの努力では就職できない「失業の状態」にあること
  2. 離職日から起算して2年間さかのぼり、雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上あること。もしくは、倒産・解雇等により離職した「特定受給資格者」または「特定理由離職者」で、離職した日から起算して1年間遡り被保険者期間が通算して半年以上あること。

雇用保険の加入期間が12ヶ月に満たない状態で自己都合による退職をした場合は、基本手当を受け取ることができないということになります。

また、基本手当の受給期間は、年齢や雇用保険の被保険者期間、離職理由などを考慮して、90日~360日の間で決定されます。具体的な日数はのちほど表にして解説するので、そちらも参考にしてください。

なお、基本手当日額は、離職日の直前の賞与を含まない6ヶ月の報酬の50%~80%(60~64歳については45~80%)で、上限額が定められています。報酬は個人によって大きく差があるため、基本手当の金額は定額ではなく、退職前の報酬額に一定の割合をかけたものが支給される仕組みをとっています。

参考:厚生労働省 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準

受給資格を満たしているが、受給できないケース

失業保険は、「積極的に求職活動を行っても就職できない人」に対して支給されるものです。基本手当の受給資格があったとしても、「そもそも働けない状態」「積極的に求職活動していない状態」と判断される場合は、支給対象外と考えられます。

具体的には次のようなケースです。

  • 病気やけがのため、すぐには就職できないとき
  • 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
  • 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
  • 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき

また、「自営を開始、または自営準備に専念する人」「自分の名義で事業を営んでいる人」も対象外とされています。退職後、起業までの間に失業保険を受け取りたい場合は、基本手当受給中に起業しないなどの対策が必要です。

失業保険の受給期間

失業保険が支給される日数を「所定給付日数」といいます。所定給付日数は、本人の年齢、雇用保険の被保険者であった期間、離職した理由(自己都合、倒産など)によって異なり、それぞれの要素をかけ合わせて決定されます。

具体的な受給期間は、次の表の通りです。

  • 一般受給資格者の給付日数
    (一般受給資格者…自己都合で離職した人、定年退職した人)
    被保険者期間/年齢1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
    全年齢なし90日90日120日120日

    一般受給資格者の場合は、年齢による給付日数の変動はありません。

  • 特定受給資格者、特定理由離職者の給付日数
    (特定受給資格者、特定理由離職者…倒産、人員整理、リストラなど会社都合で離職した人、雇止めなど再就職などの準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされた人)
    被保険者期間/年齢1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
    30歳未満90日90日120日180日-
    30歳以上35歳未満90日120日180日210日240日
    35歳以上45歳未満90日150日180日240日270日
    45歳以上60歳未満90日180日240日270日330日
    60歳以上65歳未満90日150日180日210日240日

再就職手当とは

再就職手当とは、失業保険の基本手当を受け取っている人が、受給期間終了前に就職した場合に受け取れる手当のことです。

失業保険は、退職理由や雇用保険への加入期間、退職前の報酬額などで受給期間や金額が決まります。失業保険が受給できる期間は加入時の条件で自動的に決定するため、早期に就職が決まると受け取れる手当の金額が少なくなってしまうのです。

本来であれば早期に就職が決まるのは望ましいことですが、手当を多く受け取るために就職を遅らせる人も出てきかねません。そこで、早期に再就職しても手当を受け取れるように設置されている制度が「再就職手当」です。

開業した場合は再就職手当がもらえないと思う人も多いですが、注意して手続きを行えば再就職手当を受け取ることも可能です。開業して再就職手当を受け取る際のポイントはのちほど解説しますので、ぜひ参考にしてください。

再就職手当の受給資格

再就職手当を受給するためには、次のすべての条件を満たす必要があります。

  • 待機期間の満了後に、就職もしくは事業を開始したこと
  • 就職もしくは事業を開始する日の前日までで、基本手当が受け取れる残日数が所定給付日数の3分の1以上であること
  • 1年を超えて働くことが確実であると認められること
  • 離職理由により給付制限を受けている場合、求職申込みをしてから、待機期間満了後1か月の期間内は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介によって就職したものであること
  • 離職前の事業主に再び雇用されていないこと(資本や人事などの状況からみて、離職前の事業主と密接な関係にある場合も含む)
  • 前3年以内に、再就職手当などの支給を受けていないこと
  • 受給資格が決定される前から就職することが決まっていないこと
  • 原則、雇用保険に加入する雇用であること

起業予定の人に対する影響を考えてみると、上記の条件の1つ目に「待機期間の満了後に就職」もしくは「事業を開始した」というものがあります。就職だけでなく「事業の開始」と記述があるため、会社を立ち上げるか個人事業主になる場合であっても、条件を満たせば再就職手当が受け取れることがわかります。

開業して再就職手当を受け取る際の注意点

個人事業主が再就職手当を受け取る際に最も注意しなければならないのが、税務署に開業届を提出する時期です。実は、個人事業主が再就職手当を受けられるのは、待機期間の後に失業認定を受け、基本手当の受給資格を得てから開業した場合のみです。厳密にいうと、待機期間7日と給付制限のはじめの1か月が経過してから開業した場合のみ、再就職手当を受給できることになります。

つまり、会社都合で退職した人は待機期間の7日目より後、会社を自己都合で退職した場合は待機期間7日プラス1か月より後に開業届を提出しないと、再就職手当が受給できません。

少し難しく感じられるかもしれませんが、開業届は提出が早すぎると再就職手当が受け取れない場合があるということは意識しておいてください。
再就職手当を受け取る際の注意点

開業と再就職手当の関係について詳しく知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください。

制度の理解を深め、適切に失業保険を受給しましょう!

失業保険は、失業後に起業する人も対象にして制度設計されています。注意点はいくつかありますが、条件を満たせば基本手当や再就職手当も給付対象です。間違いのないように手続きを行い、適切に給付を受けましょう。なお、要件や受給資格などの不明点がある場合は、ハローワークの担当者に相談しながら進めることをおすすめします。虚偽の申告をした場合はペナルティが課される場合もあるので、申告は正直に行うことが大切です。

よくある質問

起業準備をしていても失業保険は受給できる?

求職活動中に創業の準備・検討をする場合には失業保険を受給できます。ただし、退職後すぐに創業する場合は失業保険の対象外です。詳しくはこちらをご覧ください。

開業する場合でも再就職手当は受け取れるか?

個人事業主になったり、起業したりする場合でも条件を満たせば再就職手当の対象となります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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