- 更新日 : 2023年9月27日
個人事業主の平均年収はいくら?税金の種類や節税方法も解説
個人事業主の平均年収はいくらぐらいでしょうか?会社員とは違い、所得税などの税金や社会保険料の計算が見えにくい個人事業主ですが、平均の年収として500万円~1,000万円程度はあるのでしょうか?
ここでは、個人事業主やフリーランスの節税について、経費計上や控除におすすめの方法とともに節税対策としての青色申告についても見ていきましょう。
目次
個人事業主の平均年収はいくらぐらい?
個人事業主における年収の考え方はサラリーマンに比べて捉え方が難しいと言えます。
たとえば売上高が1,500万円であったとしても、仕入や経費に1,000万円かかっているとしたら、どのように捉えたらよいのでしょうか?標準的な個人事業主の年収の考え方や個人事業主の平均的年収について見てみましょう。
個人事業主における年収とは
そもそも「年収」と言うと、年間の収益ということで売上高を連想する場合もありますが、「どれだけ儲けを出したか」という観点で見て、一般には次のように考えます。
したがって、年収と言っても必要経費がすでに差し引かれていますので正確には「所得」です。青色申告者の場合は、この所得からさらに「青色申告特別控除額」を差し引いたものが確定申告書上の「所得金額」となります。
会社員の場合の年収とは、一般に源泉徴収票の「支払金額」と考えることが多く、支払金額から会社員などの経費などと言われる「給与所得控除」を差し引いた金額を「給与所得控除後の金額」と言います。
個人事業主(青色申告者)と会社員の年収を比較するときの一般的な考え方は次のようになります。
年収 (確定申告書の収入金額等) | ||
所得 (確定申告書の所得金額等) | 上記から青色申告特別控除額を差し引く(青色申告者のみ)※ | 上記から給与所得控除額を差し引く |
※上記のように個人事業主の年収と所得については、青色申告と白色申告で異なります。
本来は年収と所得の違いを認識するため、青色申告者の割合(令和2年度では約41%)等の調整をすべきですが、青色申告特別控除額は納税者により異なることもあり、ここでは大勢に影響がないとして、年収≒所得とみなして進むこととします。
個人事業主の年収は500万超1000万以下の層が最も多い
下の表は、所得税における所得ランク別の所得金額を表したものです。
これによると、個人事業主は、事業所得において500万円超1,000万円以下の所得層が最も多くなっていることが分かります。
出典:標本調査結果|国税庁
調査結果の概要PDF(461KB)のp19(第14表)を加工して作成
分布の様子を帯グラフにしてみると、下のようになります。
出典:標本調査結果|国税庁
調査結果の概要PDF(461KB)のp19(第15図)を加工して作成
同じような傾向は、事業所得者だけでなく不動産所得者にも言えます。これらは給与所得者より数値的な所得が低いように見えますが、必要経費はすべて除かれている点で総じて給与取得者より低所得とは言い切れません。
個人事業主の業種別平均年収ランキング
下の表は、国税庁統計年報(令和元年度版)よりデータを抜き出して作成した業種別の平均所得ランキングです。事業所得について、所得金額と主たる収入を得ている人数から、納税者一人あたりの平均所得(百万円)を計算し、ランキング形式に並べ替えたものです。
医療保険業 | 168,133 | 1,559,942 | 9.278 | |
弁護士、税理士、建築士業 | 154,253 | 1,056,350 | 6.848 | |
不動産業 | 8,818 | 30,452 | 3.453 | |
鉱業 | 129 | 390 | 3.023 | |
建設業 | 666,271 | 1,900,121 | 2.852 | |
情報通信業 | 2,026 | 5,336 | 2.634 | |
農林水産業 | 366,291 | 917,690 | 2.505 | |
金融保険業 | 17,474 | 41,352 | 2.366 | |
その他の事業 | 491,496 | 1,118,603 | 2.276 | |
製造業 | 122,941 | 275,571 | 2.241 | |
卸売業 | 47,773 | 100,549 | 2.105 | |
サービス業 | 973,987 | 1,855,879 | 1.905 | |
運輸業 | 107,322 | 202,687 | 1.889 | |
小売業 | 291,705 | 458,656 | 1.572 | |
料理飲食旅館業 | 281,278 | 349,066 | 1.241 | |
3,699,897 | 9,872,644 |
参考:国税庁統計情報、第145回 国税庁統計年報(2申告所得税、(2)所得種類別(業種別)人員、所得金額(合計))
これによると、平均年収の多い1位から3位の業種については、専門的な資格などを必要とするものの、人数的にはサービス業、建設業などが多く、全体の所得金額も多くなっています。
令和元年はまだコロナの影響はないと言えますが、料理飲食旅館業、小売業、サービス業などはいずれも平均所得が2百万円以下となり、事業としての厳しさがうかがえます。
個人事業主と会社員の平均年収との違いはどれくらい?
では、個人事業主と会社員(給与所得者)の平均年収にどれほどの違いがあるのでしょうか?
会社員の場合も上記「個人事業主における年収とは」で見てきたように、年収と所得は異なります。しかし、控除される「給与所得控除額」は収入額に応じて異なり、さらには個人事業主との比較の観点から、ここでは個人事業主と同様に「会社員の年収≒源泉徴収票の支払金額」として見ています。
年収≒所得として、個人事業主の事業所得者と会社員(給与所得者)を比較すると次のようになります。
出典:標本調査結果|国税庁
調査結果の概要PDF(461KB)のp24(第22表)を加工して作成
平均年収(≒所得とする)について、給与所得者と事業所得者では大きな違いがあり、給与所得者のほうが約307万円も所得は多くなっています。
また、平均年収に対する平均税額割合を比較すると、個人事業主である事業所得者は約11%であるのに対し、給与所得者は約15%と高率になってしまいます。これは所得税だけなので、住民税や健康保険料などを考慮すると、給与所得者の負担はさらに増えます。
個人事業主が納税すべき税金は?
個人事業主の税金について見ていきましょう。
所得とは、基本的には「売上高 - 必要経費」で計算しますので、この計算の結果が赤字の場合には原則として所得税は発生しません。また、「売上高 - 必要経費」の結果が同じであっても、売上高が1,000万円を超える場合などには消費税などにも注意が必要です。
所得税
所得税とは、所得に対し課税される国税です。申告納税方式となっていますので、個人事業主は自分で確定申告しなければなりません。所得税の税率は超過累進課税といい、所得の金額に応じて区分ごとに税率が高くなる制度を採用しています。
したがって、ある程度の所得を確保できるようになったら、「法人成り」をして法人税にシフトするほうが節税になる場合もあります。
住民税
所得税と同様に身近な税金が住民税です。住民税はその市区町村などに住所がある場合に個人が負担する税金であり、「市町村民税」と「道府県民税」に分かれます。
よって、住民税は地方税であり、一般には所得税の確定申告をすることによりその情報が市区町村に連携され、納めるべき金額を計算して、納税者に通知される賦課課税方式となっています。
個人事業税、消費税、その他の税金
個人事業税とは、個人の事業に対し課税される地方税で、業種により所得に対し4~5%程度、課税されます。この税金の計算にあたっては、所得から差し引ける事業主控除額が290万円あるのが特徴です。
消費税は、預かった消費税より支払った消費税を引いて計算した差額を支払う国税であり、申告納税方式となっています。令和5年10月からは、「インボイス制度」が導入される予定であり、納税者も増える見込みです。支払った消費税が多い場合には還付を受けることができるのも特徴です。
その他の税金として次のものなどが挙げられます。
- 固定資産税
事業で、土地、家屋などを所有している場合に都市計画税と併せて支払う地方税です。機械や設備などの償却資産がある場合には申告が必要となります。ただし、償却資産の合計が150万円未満の場合には課税されません。 - 自動車税
事業用の車両がある場合に課税されます。軽自動車、バイクなども対象となります。 - 印紙税
課税文書に貼付する収入印紙代として徴収されます。たとえば、領収書は5万円以上で課税対象となります。
これらのうち、個人事業主の必要経費となるのは個人事業税や固定資産税、自動車税、印紙税などです。ただし、固定資産や車両などは事業に利用しているものに限ります。
個人事業主についての税金の詳細は、以下の記事をご確認ください。
個人事業主・フリーランスの節税におすすめの方法は?
個人事業主の節税対策としては、社会保険料控除や青色申告特別控除、必要経費の計上などがあります。一つずつ見ていきましょう。
確定申告で社会保険料控除を利用する
確定申告における所得控除の中でも、社会保険料控除を見直すことをおすすめします。社会保険料控除は、自己または生計を一にする配偶者などの社会保険料を支払った場合に、支払った全額について所得から控除することができます。
生命保険料控除などは上限額がありますが、社会保険料控除に上限はありません。
個人事業主の社会保険料控除には次のようなものがあります。
確定申告で青色申告特別控除を利用する
青色申告制度は、不動産所得、事業所得などのある個人事業主が、一定の帳簿を作成し、正しく所得税の申告をすることで、所得の計算などで有利な取扱いが受けられる制度です。青色申告制度の特典の中でも「青色申告特別控除」は是非とも利用したい特典の一つです。
一般に、青色申告者が事業の取引を複式簿記で記帳し、その帳簿から作成した貸借対照表・損益計算書を確定申告書に添付して申告期限内に提出した場合、最高55万円を控除できます。加えて、電子帳簿保存または電子申告を行っている場合には、10万円の控除を上乗せして、最大で65万円の所得控除を受けることができます。
経費を漏れなく計上する
必要経費とは、収入に対する売上原価として直接要した費用やその年に発生した販売費、一般管理費など業務上の費用となります。
複式簿記は、個々の取引について「発生主義」で記帳します。したがって、必要経費はその年において債務が確定した金額であり、実際に支払った金額ではありません。
発生主義によって、年内に発生した費用をしっかり計上することは簿記の基本であるものの、続けて行くことは根気が要ります。常に必要経費の計上漏れはないか、領収書や請求書などの根拠はそろっているかという感覚を身につけましょう。
年収だけでなく手取りも高くなるよう節税対策をしましょう
年収が高くなれば、手取りも高くなる傾向にあります。しかし、所得控除などをしっかりと利用して課税所得を抑え、節税感覚を養うことはとても重要です。
一般に、所得税の確定申告を提出することで、住民税や国民健康保険料が決定されるため、確定申告書の元となる青色申告決算書をいかに漏れなく作成できるかということが決め手となります。
会計帳簿への記帳は、「溜めない」ことが秘訣です。面倒がらずにその日の内に取引を記帳してしまう習慣をつけましょう。
よくある質問
個人事業主の平均年収はいくらぐらい?
個人事業主の年収は500万超1,000万円以下の層が最も多いと言えます。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主の業種別平均年収ランキング上位3位とは?
令和元年度の国税庁統計を元にすると、医療保険業、弁護士・税理士・建築士等の士業、不動産業となっています。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主・フリーランスの節税におすすめの方法は?
社会保険料控除を計上すること、青色申告者になって青色申告特別控除を利用すること、必要経費を忘れずに計上することなどが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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