- 更新日 : 2023年10月23日
経営とマーケティングの違い・定義を分かりやすく紹介
経営とマーケティングはどちらも企業の存続と発展に必要であり、混同しやすいですが、両者には違いがあります。経営は自社について考える一方、マーケティングでは特定の商品やサービスについて考えるのがポイントです。今回は、経営とマーケティングの定義や企業経営で欠かせない経営戦略の種類、マーケティング戦略の立て方などを解説します。
目次
経営とマーケティングの違い
経営とマーケティングは、どちらも企業が長期的に利益を獲得し、持続的に成長していくために欠かせないものです。しかし、両者は異なる活動であり、戦略を立てるうえでは、両者の違いを正しく理解する必要があります。
経営は、全社的な視点から経営資源を配分する活動です。一方、マーケティングは個別の商品やサービスをどのように売り出し、市場に浸透させるかを検討する活動のことを指します。経営は自社をメインにしている一方、マーケティングでは顧客の存在がメインである、と考えるとわかりやすいでしょう。
経営はマーケティングの上位概念であり、マーケティングは経営に含まれると考えられます。
以下では、それぞれの言葉の定義について解説します。
経営とは
経営とは、組織や事業の目的を達成するために行うものです。明確な定義があるわけではなく、多種多様な活動が経営に含まれます。
組織や事業の目的はさまざまですが、基本は「収益を獲得し、企業を存続・成長させること」です。つまり、経営とは収益を獲得するために意思決定や管理、組織のマネジメントなどを行うことだといえます。
マーケティングとは
マーケティングとは、商品やサービスが継続して売れる仕組みを整えることです。どのようなターゲットにどのような価値を提供し、収益を獲得するかについて検討します。
市場調査や競合分析、広告宣伝や販売促進など、商品やサービスを市場に浸透させるために行う一連のプロセスのことを指すのが特徴です。
このように、経営とマーケティングは視点が異なりますが、両者は密接に関わり合っています。マーケティングがうまくいかなければ、経営にも失敗してしまうでしょう。経営者の経営判断が優れていれば、効果的なマーケティングも実現できるでしょう。
経営戦略とは
経営戦略とは、組織や事業の目的を達成するために、ヒト・モノ・カネといった経営資源をどのように配分するかを決めることです。
経営戦略は、さらに全社戦略・事業戦略・機能戦略の3つに分けられます。はじめに全社戦略を策定し、それを事業戦略、さらに機能戦略へと落とし込んでいくのが一般的です。
以下では、3つの経営戦略について見ていきましょう。
全社戦略
全社戦略とは、企業全体が進んでいく方向性を示すものであり、競争優位を確立するために策定します。事業をどのように展開するべきかを決める、重要な戦略です。
まずは経営層が全社戦略を策定・明示し、それをもとに事業戦略や機能戦略が策定されます。そのため、ほかの経営戦略を考えるためには、全社戦略を策定し、明確化することが欠かせません。
また、事業戦略を全社戦略に反映させるケースもあります。
事業戦略
事業戦略とは、各事業が競争優位を獲得できるよう、事業ごとに立てる戦略のことです。
市場調査や競合分析などを通して、事業の強みや弱みなどを明確化し、どのような商品やサービスを提供すれば差別化できるかを考えます。
事業戦略は、商品やサービスの開発や、販売促進活動の方法、販売チャネルの選定などを左右するものです。事業が競争優位性を確立するためには、事業戦略を適切に策定する必要があります。
機能戦略
機能戦略とは、事業において必要な機能ごとに立てる戦略のことです。部門ごとの戦略と捉えるとわかりやすいでしょう。営業戦略や人材戦略、商品開発戦略、財務戦略などは、機能戦略の1つであり、マーケティングも機能戦略の一環と考えられます。
機能戦略は、事業戦略を実現するために必要であり、機能戦略を達成することで、事業戦略の成功につながります。
マーケティング戦略とは
マーケティング戦略とは、商品やサービスのターゲットを誰にするか、ターゲットにどのような価値をどのように提供するか、などに関する戦略のことです。商品やサービスの価値を顧客に提供し、競合と差別化するためには、マーケティング戦略が欠かせません。
マーケティング戦略を立てるためには、以下の3つを行いましょう。
- 内部・外部環境分析
- セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング
- バリュープロポジションの設定
ここでは、マーケティング戦略の策定方法について解説します。
内部・外部環境分析
まずは、自社や事業の内部環境と外部環境を分析します。具体的には、自社、顧客、市場、競合について分析しましょう。
内部・外部環境分析では、SWOT分析や3C分析、PEST分析といったフレームワークを利用するのが一般的です。フレームワークを用いることで、客観的かつ抜け漏れのない分析が実現します。分析者によって結果が変わってしまうことを防げるのもポイントです。
SWOT分析とは、内部環境と外部環境を、プラス要因とマイナス要因に分けて4つの要素ごとに分析するフレームワークです。自社の強みや弱みをふまえて戦略を立てるために用いられます。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
3C分析は、経営環境を以下の3つの要素に分けて分析するフレームワークです。自社をとりまく経営環境を適切に把握するうえで役立ちます。
- Customer(顧客・市場)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
PEST分析は、経営環境のうち、外部環境を以下の4つに分けて分析するフレームワークです。
- Politics(政治)
- Economy(経済)
- Society(社会)
- Technology(技術)
セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング
次に、セグメンテーションとターゲティング・ポジショニングを行います。
セグメンテーションとは、市場細分化のことであり、ターゲットの選定やポジションの明確化のために必要な作業です。
ターゲティングは、商品やサービスのターゲットを明確化することです。ターゲティングでは、年齢や性別、職業、趣味嗜好、業種や企業規模など、具体的な属性について考えます。
市場とターゲットが決まったら、市場における自社の立ち位置を決めるポジショニングを行います。企業や商品のゴールを決める作業ともいえるでしょう。
バリュープロポジションの設定
ターゲットや市場における自社の立ち位置を明確化したら、ターゲットに向けてどのような価値を提供するかに関するバリュープロポジションを設定します。
バリュープロポジションとは、どのような価値(バリュー)を提供(プロポーズ)するかについて言語化したものです。具体的には、顧客が望んでいるものの、競合他社が提供できておらず、自社だけが提供できている価値のことを指します。
バリュープロポジションでは、自社がどのような価値を提供するかだけでなく、顧客が求める価値についても考えることが特徴です。顧客が何を欲しているかを考え、顧客視点に立って商品やサービスについて考えるためには、バリュープロポジションの設定が欠かせません。
バリュープロポジションを設定するためには、自社が提供できる価値と顧客の情報について記載する、バリュープロポジションキャンバスを活用するのが効果的です。
経営学とマーケティング学の違い
経営学とマーケティング学は混同しやすいですが、経営とマーケティングが異なるように、学ぶ内容にはそれぞれ違いがあります。
経営学では、マーケティングをはじめ、財務会計や組織論、金融論、行動心理など、経営に関するさまざまな事項について学ぶのが特徴です。そのため、マーケティング学は経営学の1つと考えられます。実際、経営学部の中にマーケティング学科を設置している大学も少なくありません。
以下では、経営学とマーケティング学で学ぶ内容を、具体的に見ていきましょう。
経営学で学ぶ内容
経営学では、以下のように企業や組織経営に関する幅広い内容を学びます。
経営学は、経済学や商学だけでなく、法学や哲学、社会学など、さまざまな学問の側面を持つのが特徴です。
ちなみに、経営学と経済学は名前が似ているものの、異なる学問です。経済学では、社会全体の経済活動の仕組みを学ぶ一方、経営学では企業活動の原理や構造などを学びます。
マーケティング学で学ぶ内容
マーケティング学で学ぶ内容は、以下のとおりです。
- マーケティング理論
- 消費者行動論
- 分析手法
- 製品ポートフォリオ管理
- 資源の配分方法
- 流通管理 など
マーケティング学は、企業と消費者の関係性やコミュニケーションについて学ぶ学問、ともいえます。そのため、マーケティング学を学ぶことで、消費者に寄り添った考えができるようになるでしょう。
経営とマーケティングの違いを理解し、両者に取り組もう
経営とマーケティングは異なる概念です。経営とは、組織や事業の目的を達成するために、全社的な視点から経営資源を配分する活動を指します。一方、マーケティングは個別の商品やサービスをどのように販売し、顧客にどのような価値を提供するか、を考える活動です。
経営戦略やマーケティング戦略を適切に策定できるよう、経営とマーケティングの違いについて正しく理解することが大切です。
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