- 更新日 : 2022年8月10日
消費税の免除を2年間受ける要件とは
起業して2年間は消費税が免除される場合があるのをご存じですか? 平成23年の税制改正で要件が少し厳しくなったものの、要件を満たす場合は消費税が免除されます。この特典を受けるための要件について解説します。
目次
資本金1,000万円未満であること
第一の要件として、資本金1,000万円未満であることが挙げられます。資本金1,000万円未満という要件を満たすだけで、1期目の消費税が免除になります。(2期目の免税は、以下の要件を満たす場合のみ)
資本金1,000万円というのは、「資本金」だけを指します。そのため、例えば自己資産が2,000万円あったとしても、999万円を資本金にして、残りの1,001万円は会社への貸し付けとして借入金という形を取れば、資本金を1,000万円未満に抑えることができます。
同様に、出資金の半分までを資本準備金とすることができるので、出資金の一部を資本準備金に充てて資本金を低くすることができます。具体的には、「出資金の半分までは資本金に組み込みいれない(資本準備金にする)」ことができると、会社法で定められています。
これを利用すれば、999万円を資本金に、999万円を資本準備金とし、1,998万円を出資金とすることができます。
なお、起業時に1,000万円未満であっても、2期の開始前に増資して資本金が1,000万円を超えた場合には、2期目から消費税を納めなければなりません。増資するタイミングには注意しましょう。
2期目も消費税が免除となる条件
上記の資本金1,000万円未満という要件さえ満たしていれば、2年間消費税が免除とされてきました。
しかし、平成23年に改正された消費税法(施行は平成25年から)により、資本金1,000万円未満の場合に消費税が免除となるのは、2年間ではなく1期目のみになりました。
2期目に関しては、資本金1,000万円未満かつ以下の条件のどれかを満たす場合にのみ消費税が免除になります。
※以下の特定期間とは、個人事業主の場合は1月1日から6月30日、法人の場合は判定する事業年度の前事業年度開始の日以後6カ月の期間を指します。
1.特定期間の課税売上高が1,000万円以下の場合
特定期間の売上額が1,000万円以下の場合は、2期目も免税の対象となります。
2.特定期間の給与等支払額の合計額が1,000万円以下の場合
給与が1,000万円以下の場合でも、免税の要件を満たします。売上を調整するのは難しいかもしれませんが、給与の調整によって1,000万円以下にできる場合は多くあります。
月末締め、翌月払い
給与支払額の計算は、「発生したもの」ではなく実際に「支払ったもの」で行います。そのため、月末締め翌月払いにすることで、1月から6月までの給与として、実質は5カ月分の給与のみ計算額に入れればよいことになります。
給与の一部を下期の賞与にまわす
賞与についても給与の計算に含まれますが、ポイントは給与が特定期間に1,000万円以下の支払いであるということです。上期の分の給与で下期に支払えるものがあれば、下期にまわしましょう。
業務委託を活用する
はじめの2年間はできるだけ社員を雇わないようにすることで、給与支払額を1,000万円未満に抑えることができます。もし、どうしても人手が必要な場合は、業務委託を活用する方法もあります。業務委託であれば、給与ではなく外注費として支払うことができます。
3.設立1期目が7カ月以下の場合
特定期間に、売上が1,000万円および給与支払額の1,000万円を上回る規模の大きな会社を作る場合は、会社を設立する時期を工夫しましょう。
法人の場合、設立した1期目が7カ月以下ならば特定期間の条件に該当しないため、上記1、2の要件を満たさなくてもよいことになります。
つまり、1期目が7カ月以下になるように設立日を調整することで、売上高や給与支払額に関係なく、2期間分の消費税が免除されます。
ただしこの方法を使う場合は、2年間免税ではなく、最高で1年7カ月の免税になります。
課税対象を選択した方がいい場合
起業してから数年は、高額な設備投資や大きな仕入れをする会社も多いでしょう。支払った消費税が受け取った消費税よりも多い場合は、その差し引き分を還付してもらえます。
そのため、消費税の免税対象となるのではなく、自ら課税対象を選択して還付を受けた方が得になることもあります。設備投資や仕入れと売上のどちらが多くなるのかを計算して、還付金がもらえるのか、消費税免除の方が有利なのかを考えてみるとよいでしょう。
まとめ
このように、資本金1,000万円+ひとつの要件を満たすことで、開始から2年間は消費税が免除されます。起業して2年間の消費税免除は大きな意味があるので、要件に当てはまるように給与、開始時期が調整できないか検討してみましょう。
参考:消費税法改正のお知らせ 平成23年9月税務署|国税庁(PDF)
よくある質問
消費税の免除を2年間受ける要件は?
消費税の免除を2年間受ける要件は、資本金1,000万円未満であることです。詳しくはこちらをご覧ください。
2期目も消費税が免除となる条件は?
資本金1,000万円未満かつ特定期間の課税売上高が1,000万円以下の場合、特定期間の給与等支払額の合計額が1,000万円以下の場合、設立1期目が7カ月以下の場合に免除になります。詳しくはこちらをご覧ください。
課税対象を選択した方がいい場合は?
設備投資や仕入れと売上のどちらが多くなるのかを計算して、還付金がもらえるのか、消費税免除の方が有利なのかを考えてみるとよいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
節税の関連記事
新着記事
借金のある個人事業主が法人化するには?債務引受の流れや仕訳を解説
個人事業主時代にできた借金は、法人化のタイミングで会社に引き継いで債務引受をするか、個人で返済し続けるかのいずれかの方法を選択する必要があります。 この記事では借金を個人で返済する場合と法人に引き継ぐ場合の違い、債務引受の種類、手続きの手順…
詳しくみる古物商開業に許認可は必要?古物商許可申請の流れや開業準備のまとめ
古物商の開業にあたり、古物商許可が必要な取引と必要ない取引があります。開業する際は、必要な取引が該当するかよく確認しておくことが大切です。今回は、古物商許可証が必要なケースや不要なケース、許可申請の流れ、古物商開業の流れについて解説します。…
詳しくみる個人事業主の法人化で合同会社を選ぶメリットは?手続きの流れをまとめて解説
合同会社を選択して法人化すれば設立費用を抑えられ、比較的自由度の高い経営が実現できるでしょう。個人事業主が法人化で合同会社を選ぶことには、このようにいくつかのメリットがありますが、その一方で注意点もあります。本記事で詳しく解説しますので、法…
詳しくみる法人化したときの役員報酬の決め方・ルールは?決定後の届出手続きも解説
「役員報酬」とは、法人の役員が会社から受け取る対価のことです。法人化後の経営者の収入として重要な位置づけとなり、従業員の給与とは異なるルールが適用されます。 個人事業主からの法人化、法人設立を検討している方に向けて、本記事では役員報酬の定義…
詳しくみる法人化するときに有限会社は新設できない?会社形態を選ぶポイントを解説
個人事業主からの法人化する際、「有限会社」を選択できません。整備法の施行によって新規で設立ができなくなっているからです。そのため、現在は株式会社や合同会社などの会社形態を選択して法人化する必要があります。 本記事では、法人化によって検討をす…
詳しくみる連帯保証人なしで創業融資を受けられる?日本政策金融公庫の制度などを解説
創業融資など事業に必要な融資を受ける際には連帯保証人を立てなければならないというイメージがあるかもしれませんが、利用する金融機関や融資制度によっては保証人がいらないこともあります。この記事では、連帯保証人なしで創業融資を受けられるケースにつ…
詳しくみる