• 作成日 : 2024年8月29日

貸し倉庫の経営は難しい?費用や土地の制限、成功のコツを解説

貸し倉庫経営とは、個人や企業に倉庫スペースを貸し出して荷物を保管するビジネスです。土地活用の中でも、比較的初期費用が抑えられるため高い利回りも期待できます。この記事では貸し倉庫事業について詳しく解説します。

貸し倉庫経営とは?

貸し倉庫経営とは所有する土地や建物を活用して倉庫スペースを貸し出すビジネスです。経営形態は大きく分けて屋内型と屋外型の2種類があります。

屋内型倉庫は、空き部屋や空きフロアを使用し収納スペースとして提供する形態です。一方、屋外型倉庫は屋外にコンテナを設置して、それを倉庫として貸し出します。

貸し倉庫は初期費用が少なく維持コストも低いため、手軽に始められるビジネスとして人気があります。

貸し倉庫の種類

貸倉庫にはさまざまな種類があります。以下では屋内型、屋外型に分け、代表的なものを紹介します。

【屋内型倉庫】
建物の中など、屋内に保管庫が設置されているタイプの倉庫です。空調の効いた屋内に物を保管できるので、大事な洋服や写真など気温や湿度の影響を受けやすい物の管理に適しています。

・屋内型倉庫
・レンタル収納スペース
・文書保管専門の倉庫
・冷蔵倉庫

【屋外型倉庫】
屋外に設置された倉庫のことです。一般的に屋外型倉庫は面積が広く一つの区画も大きいため、バイクやアウトドア用品、カー用品、大型家具などサイズが大きくかさばるものの保管に使われることが多いようです。

・屋外型トランクルーム
・大型トランクルーム
・バイクや車両専用の貸倉庫
・水面倉庫

貸し倉庫経営は儲かる?

貸し倉庫経営は初期費用が少なく利回りが高いことが特徴です。貸し倉庫の利回りは平均20%程度とされており、一般的な土地活用と比較すると高めです。それでいて初期投資が少ない分、早期にコストを回収できる可能性も十分あります。

日本最大級のレンタルトランクルーム「ハローストレージ」を運営するエリアリンク株式会社が行った調査では、トランクルームの市場は2030年まで拡大を続け、1,100億円を超えると予測されています。

ただし、需要がない地域や競争が激しい地域では利益を得るのが難しいこともあります。市場規模や収益性については、地域や倉庫の種類、ターゲット層などによって異なるため、事前の調査は丁寧に行う必要があります。

個人でも貸し倉庫経営はできる?

個人でも貸し倉庫経営は可能で、特殊な資格は不要です。自己所有の物件を使って貸し倉庫を運営する場合、事前の特別な許可も必要ありません。

ただし、貸倉庫は一種の不動産投資であることから、宅地建物取引士やファイナンシャルプランナーなど不動産や資産運用に関する資格があると役立つ場面も多いでしょう。

またレンタルスペースや倉庫の用途によっては、消防署や保健所の許可が必要な場合もあります。

貸し倉庫・トランクルーム・倉庫業との違い

貸し倉庫、トランクルーム、倉庫業は、用途や法律上の扱いが異なります。貸し倉庫は大量の荷物を保管するのに適しており、個人や法人を問わず利用できます。利用者とは倉庫賃貸借契約を結び、倉庫全体または一部スペースの貸し借りをします。

トランクルームは小口の荷物を短期間預けるのに便利です。利用者とは倉庫寄託契約を結びます。利用者がスペースを借りるというよりは保管業者に荷物を預けて保管してもらうというイメージが近いでしょう。セキュリティや空調設備が整っており、24時間出し入れが可能な場合もありますが、大型荷物の保管は難しいこともあります。ただ、最近では大型の荷物が収容できるトランクルームも増えてきています。

倉庫業は倉庫業法に基づいて運営される「依頼された荷物を倉庫で保管する事業」そのものを意味します。

貸し倉庫経営のメリット

貸し倉庫経営には、初期投資が抑えられる、利回りが高い、管理の手間が少ないなどのメリットがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

初期投資が抑えられる

貸し倉庫経営の初期投資は、他の不動産ビジネスに比べて低く抑えられます。例えばアパート経営やコインランドリー経営は数千万円単位の初期費用が必要です。貸し倉庫は規模や設備内容によって異なりますが、必要な費用は200万~800万円程度だとされています。

特にコンテナ型の貸し倉庫は設置や維持にかかるコストが低いため、手軽に始めることができます。

利回りが高い

貸し倉庫経営は平均して10~20%の利回りがあるとされます。初期投資や維持費、人件費などのランニングコストが低いことが、利回りが高い理由とされています。

例えば初期費用800万円で顧客単価8,000円(月額)の利用者が15人いる場合、利回りは18%です。

実際、高額な初期費用が必要な賃貸住宅の利回りが4~5%程度であることを考えると、貸倉庫の利回りは高い水準であり、ビジネスとして注目されているのも理解できます。

管理の手間が少ない

貸し倉庫経営は他の不動産ビジネスに比べて管理の手間が少ない点もメリットとして挙げられます。賃貸アパートほど頻繁な共有部分の清掃や修繕の必要がなく、設備点検も少なくて済むため、管理にかかる時間やコストを大幅に削減できます​。

貸し倉庫経営のデメリット

貸し倉庫経営には以下でご紹介するように、いくつかのデメリットがあります。

設置できる土地に制限がある

貸し倉庫を設置するためには、適切な土地が必要です。特に、屋外の大型倉庫や業者向け貸し倉庫ではトラックなどの大型車両がアクセスできる道路やスペースが求められるため、都市部では土地の確保が難しい場合があります。

また比較的土地の価格が安い郊外では自宅や会社に十分な保管スペースがあることから、倉庫やレンタルルームへの需要が少ない可能性もあるため、立地選びが非常に重要です 。

需要の見極めが難しい

貸し倉庫の需要は地域によって大きく異なるため、需要の見極めが非常に難しいです。特に、新規参入者は市場調査を徹底的に行う必要があります。

需要がない地域に倉庫を設置すると稼働率が低くなり、収益が安定しないリスクがあります 。

金融機関からの融資を受けづらい

貸し倉庫経営は不動産投資の一種ですが、他の不動産投資と比べると金融機関からの融資を受けづらいことがあります。特に新規参入者や実績のない個人事業主は、信用力が低いため融資条件が厳しくなる可能性が高いです。

金融機関からの融資を受けるためには、市場調査なども行ったうえでビジネスとして成長する根拠となるデータなども交えながら詳細な事業計画書と見通しを説明する必要があります 。

貸倉庫の経営形態

貸倉庫経営にはさまざまな形態があり、それぞれ特徴とメリット・デメリットが存在します。経営形態を選ぶ際には自分の土地や経営地域の環境に応じて最適なものを選ぶことが重要です。

自分で運営する

倉庫の設置から管理運営まで全てを自身で行います。この方法なら人件費がかからないので得られる収益が最も大きく、経営の自由度も高いのが特徴です。ただし、初期費用や経費が大きく、管理の手間や時間がかかるのが難点といえます 。

業務委託する

貸倉庫や不動産専門の管理会社に運営を任せる形態です。この方法なら自分で運営するよりも管理の手間が省け、時間を他の仕事や事業に充てることができます。しかし、管理会社への手数料が発生するので、利益が減る可能性があります 。

フランチャイズ

知名度のあるブランドのフランチャイズに加盟し、そのブランドの名前で運営する形態です。初期から一定の集客力が見込める点がメリットです。ただし、フランチャイズ料の支払いが必要で、本部のルールに従って運営することが求められます。

事業用定期借地

土地を一定期間貸し出す形態で、契約終了時に土地が返還されます。リスクを抑えつつ安定した収入が得られる点がメリットですが、多くの場合契約期間が限定されているため、長期的な事業計画が立てにくい場合があります 。

サブリース

所有する倉庫を一括して借り上げ、それをさらに第三者に貸し出す形態です。この方法は、一定の収入が保証される点がメリットです。

一方で借り手が見つからない場合のリスクが伴う点やサブリース会社への手数料が発生する点がデメリットとして挙げられます。

貸し倉庫経営にかかる費用

貸し倉庫経営には、初期費用と運営費用がかかります。それぞれ具体的な例を挙げて解説します。

初期費用

貸し倉庫経営の初期費用には、土地の購入費用、建物の建設費用、設備費用、土地の整備費用やコンテナの購入費用などが含まれます。さらに、建築確認申請や各種許可取得のための費用も初期費用として必要です。土地や建物を所有していればこれらの初期費用は抑えることができます。

運営費用

運営費用としては、管理費・保険料・メンテナンス費用・広告宣伝費などが含まれます。倉庫の規模や設備の内容によっても変動しますが、月々の保険料や定期的なメンテナンス費用として、年間で数十万円程度必要になることが多いようです。

また、集客のための広告宣伝費も重要な運営費用の一部です。これらの費用は経費として計上することができ、税負担の軽減にもつながります。

貸し倉庫経営を始める流れ

貸し倉庫経営を始めるためには、いくつかの重要なステップを踏む必要があります。以下にその流れを解説します。

1. 事前準備

どのような倉庫を運営するか、対象とする顧客層、立地条件、必要な設備などを具体的に計画します。また、法人化が必要な場合は会社設立の手続きを行います。

2. 倉庫の選定と契約

選定した物件が必要な基準を満たしていることを確認し契約を締結します。

3. 申請書の提出

倉庫業を営むためには、地方運輸局への申請が必要です。申請には倉庫の所有権や使用権、関係法令への適合性などの基準を満たす必要があります。

4. 審査と許可

運輸局による審査を経て合格すると正式に倉庫業としての営業許可が下ります。この際、登録免許税の納付が必要です。

5. 営業開始

設備の導入や広告宣伝、スタッフの雇用など、運営に必要な準備を整えて営業していきます。

貸し倉庫の経営を成功させるポイント

貸し倉庫経営を始めるためには、いくつかの重要なステップを踏む必要があります。以下にその流れを解説します。

1.立地の選定

貸し倉庫は立地が重要で幹線道路に近いなどアクセスの良い場所が望ましいです。

2.需要の調査

地域やターゲット層の需要の調査を行いましょう。

3.適切な料金設定

収益と集客のバランスが取れるよう適切な金額を設定することが、安定した貸し倉庫経営のためには必要です。

4.効果的なマーケティング

オンラインやオフライン、さまざまな手法を用いてターゲット層にアプローチして集客につなげましょう。

貸し倉庫経営で土地を収益化しよう

今回は貸し倉庫の経営の基本的な情報とメリット・デメリットについてご紹介しました。

利回りのいい土地活用法として注目されている貸し倉庫ですが、形態によって必要な認可が異なったり、場所の選定が難しかったりと注意すべき点も少なからずありますので、事前にしっかりと情報収集をして計画を綿密に立てましょう。


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