• 更新日 : 2026年8月20日

個人事業主の開業にはいくら必要?資金調達の方法や初期投資額を解説

Point個人事業主の開業資金はいくら必要?

個人事業主の開業費用の平均は975万円(中央値600万円)ですが、4割以上が500万円未満で開業しています。

  • 開業費用は初期投資と運転資金に分けて計画する
  • 運転資金は最低3〜6か月分の固定費を確保する
  • 資金調達は日本政策金融公庫の創業融資が最初の選択肢

Q. 開業資金が足りない場合、どう調達すればいい?

A. 日本政策金融公庫の創業融資(最大7,200万円)を軸に、補助金・助成金やクラウドファンディングなど複数の手段を組み合わせるのがおすすめです。

事業を始めるとなると、資金を用意しなければなりません。しかし、実際どの程度の資金があれば開業できるのか、よくわからない人も多いのではないでしょうか?

本記事では、個人事業主の開業に必要な資金の額を解説します。資金調達における融資の方法についても説明しますので、参考にしてみてください。

個人事業主の開業費用とは?

開業費用を見積もる際は、単に「開業までに必要なお金」とひとまとめにするのではなく、初期投資と運転資金に分けて整理することが重要です。

【初期投資】事業を始めるために最初にかかる費用

初期投資とは、店舗や事務所の契約費、内装工事費、設備購入費、備品購入費、Webサイト制作費、開業時の広告費など、事業を開始する前後に一度に発生しやすい費用です。飲食店であれば厨房設備や内装費、小売業であれば什器や初回仕入れ、士業やコンサル業であればパソコンやホームページ制作費などが該当します。初期投資は開業前に支払いが集中しやすいため、見積書を取り、必要性の高いものから優先順位をつけて準備することが大切です。

【運転資金】開業後の事業継続に必要な費用

運転資金とは、開業後に売上が安定するまで事業を続けるための資金です。家賃、人件費、仕入費、水道光熱費通信費、広告費、借入返済、外注費などが含まれます。開業直後は、売上がすぐに入金されるとは限らず、赤字期間が続く可能性もあります。そのため、初期投資だけを用意して開業すると、開業後すぐに資金繰りが苦しくなるリスクがあります。少なくとも数か月分の固定費を運転資金として確保し、初期投資とは別枠で資金計画に組み込むことが重要です。

初期投資の費用としておさえておきたい項目は?

初期投資は、事業を始めるために開業前後で発生する費用です。業種や事業規模によって必要な項目は異なりますが、物件、設備、備品、通信環境、集客準備に関する費用は多くの事業で発生しやすいため、事前に整理しておきましょう。

物件・設備・集客に関する費用

初期投資としてまず確認したいのは、事業を始める場所と環境を整えるための費用です。店舗やオフィスを借りる場合は、賃借物件の敷金・礼金、保証料、仲介手数料などが発生します。自宅開業であれば物件取得費は抑えられますが、仕事用スペースのリフォーム費用が必要になる場合があります。

また、事業用のパソコン、プリンター、電話、ネット回線、事務用机、椅子、応接セット、ロッカー、空調機器なども初期投資に含まれます。購入だけでなく、リースやレンタルを利用すれば、開業時の支出を抑えられる場合もあります。

主な項目は以下のとおりです。

  • 賃借物件の敷金、礼金、保証料、仲介手数料
  • 店舗やオフィスの内装工事、リフォーム費用
  • パソコン、プリンター、電話などの機器購入費
  • 通信回線、インターネット、電話回線の工事費
  • 事務用机、椅子、応接セット、ロッカーなどの備品費
  • チラシ、名刺、ホームページ、ロゴ制作などの広告宣伝費

初期投資は、開業前に支払いが集中しやすい費用です。必要なものをすべて購入する前提で考えると資金負担が大きくなるため、開業時に必須のものと、売上が立ってから追加できるものに分けて見積もることが大切です。

運転資金の費用としておさえておきたい項目は?

運転資金は、開業後に事業を継続するために必要な費用です。開業直後は売上が安定せず、入金まで時間がかかる場合もあるため、初期投資とは別に運転資金を確保しておく必要があります。目安として、少なくとも3か月分、できれば6か月分の固定費を準備しておくと安心です。

毎月発生する固定費と変動費

運転資金として押さえておきたいのは、開業後に継続して発生する支出です。代表的なものには、家賃、人件費、仕入費、水道光熱費、通信費、広告費、外注費、借入返済などがあります。売上が発生しても、入金が翌月以降になる取引では、手元資金が先に減る点にも注意が必要です。

主な項目は以下のとおりです。

  • 店舗、事務所、倉庫などの家賃
  • 従業員やアルバイトの給与、社会保険
  • 商品、材料、消耗品などの仕入費
  • 水道光熱費、通信費、システム利用料
  • 広告宣伝費、販売促進費、営業交通費
  • 税理士、社労士、デザイナーなどへの外注費
  • 借入金の返済、リース料、保険料
  • 予備費、突発的な修繕費、返品・キャンセル対応費

運転資金は、毎月の固定費を基準に計算します。たとえば、家賃、人件費、通信費、広告費などの固定費が月50万円かかる場合、3か月分なら150万円、6か月分なら300万円が目安です。飲食店や小売業のように仕入れや人件費が大きい業種は、6か月分以上を見込むと資金繰りに余裕を持ちやすくなります。一方、在宅型の個人事業やオンラインサービスでは固定費を抑えやすいため、必要額も比較的小さくなります。

開業費用・資金調達額の平均額は?

開業時には、設備資金、店舗・事務所の取得費、仕入費、人件費、広告宣伝費、当面の運転資金など、さまざまな費用が発生します。ここでは、日本政策金融公庫総合研究所が公表した「2025年度新規開業実態調査」をもとに、開業費用と資金調達の実態を整理します。

開業費用の平均額は975万円

2025年12月公表の「2025年度新規開業実態調査」によると、開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円です。平均値だけを見ると1,000万円近い資金が必要に見えますが、中央値は600万円であり、実際には平均値より少ない金額で開業している事業者も多いことがわかります。

開業費用の分布では、「250万円未満」が20.1%、「250万~500万円未満」が21.7%となっており、500万円未満で開業した割合は合計41.8%です。つまり、開業者の4割以上は500万円未満で事業を始めています。

「1,000万~2,000万円未満」や「2,000万円以上」の割合も一定数あります。飲食店、宿泊業、小売業、製造業など、店舗・設備・在庫が必要な業種では開業費用が高くなりやすいため、自社の業種に近い資金計画を立てることが必要です。

参考:2025年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所

開業費用は少額化の傾向にある

同調査では、開業費用について「長期的にみると少額化の傾向にある」とされています。2025年度の平均値は975万円で、2024年度の985万円からやや低下しています。中央値も600万円で、近年は大規模な設備投資を前提としない開業や、デジタルツールを活用した小規模開業が増えていることが背景にあると考えられます。

Web制作、コンサルティング、士業、オンライン販売、IT関連サービス、個人向けサービスなどは、店舗や大型設備を持たずに始めやすい分野です。こうした事業では、初期費用を抑えて始め、売上や顧客数に応じて広告費、人員、システム投資を増やすスモールスタートが現実的な選択肢になります。

開業時の資金調達額は平均1,219万円

2025年度調査では、開業時の資金調達額は平均1,219万円です。開業費用の平均値975万円と比べると、244万円多く資金を調達している計算になります。この差額は、開業直後の仕入れ、人件費、家賃、広告費、借入返済などに充てる運転資金として準備されていると考えられます。

開業時は、売上がすぐに安定するとは限りません。店舗型ビジネスでは認知獲得まで時間がかかり、BtoBビジネスでも請求から入金まで数か月のズレが生じる場合があります。開業費用だけを準備するのではなく、数か月分の固定費や仕入費を含めた資金計画を立てる必要があります。

家賃、人件費、リース料、広告費、仕入費などの固定的な支出が大きい業種では、開業費用と運転資金を分けて試算することが重要です。資金調達額が開業費用を上回っている点からも、開業者は初期投資だけでなく、開業後の資金繰りまで見込んで資金を用意していることがわかります。

個人事業主におすすめの資金調達方法は?

個人事業主が資金調達をするにあたって、種々の資金調達方法があります。まだ、事業を始めていない段階で1,000万円以上の事業資金を調達するとなると、なかなか難しいこともあります。

調達資金をこの事業にどのように使うのか、それによって得られる利益はどの程度かなどと客観的な説明のつく計画を作成しておきましょう。そして、月々の返済のめどを考慮した上で、1つの調達方法にこだわらず複数の調達手段を考えるとよいでしょう。

日本政策金融公庫の創業融資

個人事業主の資金調達で最初に検討したいのが、日本政策金融公庫の創業融資です。日本政策金融公庫は政府の金融機関で、個人事業主や中小企業の資金調達を支援しています。

特に、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が利用できる「新規開業・スタートアップ支援資金」は、最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)を借り入れることが可能です。

参考:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫

※日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、令和6年3月31日で取​扱いを終了しています。

銀行や信用金庫など金融機関からの融資

銀行や信用金庫に直接融資を申し込む方法です。ローンを組む際には必ず審査があり、まだ計画段階で実績がない開業時には信用が十分でないため、審査は厳しくなってしまいます。自己資金や事業計画だけではなく、健康状態や過去における信用情報なども審査の対象となります。

連帯保証については信用保証協会の制度を利用して、保証審査に通れば融資を受けやすくなりますので検討してみましょう。

補助金や助成金などの活用

補助金や助成金は国や自治体が事業資金を援助するもので、一定の基準を満たせば申請できます。融資と違って返済しなくてもよいお金なので、利用できるものがあれば積極的に活用するのがおすすめです。ただし、補助金は基本的に後払いとなりますので、受給のタイミングにも注意しましょう。

クラウドファンディングの活用

クラウドファンディングは、インターネットを通じて事業の支援者を募り、資金を調達する方法です。通常はクラウドファンディング専門のプラットフォームを利用してプロジェクトを立ち上げます。そして、インターネットサイトを見た人から共感を得られるように発信し、事業計画をわかりやすく説明して募集をします。この手続きなどもネット上で可能であり、審査もさほど厳しくはありません。

支援者に商品等をリターンして、開業支援金を募る購入型のクラウドファンディングでは、プロジェクトで生み出される魅力的な商品やサービスを提供することにより、多くの支援を集められる可能性もあります。

ビジネスローンの活用

ビジネスローンとは、事業資金調達専用のローン商品のことです。銀行やクレジット会社、消費者金融業者などで扱われ、借りた資金は、新規事業の資金や運転資金など、事業に関係する支払いに利用できます。

一般の融資に比べて融資スピードが速いことや、原則として担保や保証人が不要であるというメリットがありますが、一般の融資に比べて金利は高くなってしまうので、返済のこともよく考えておきましょう。

カードローンの活用

カードローンとは、銀行や消費者金融から発行される借入専用カードを利用した個人向け融資サービスです。借入限度額の範囲内であればいつでも何度でも自由に ATM などで借り入れできます。

個人事業主の場合、ビジネス用に作ったクレジットカードでもキャッシングはできますが、カードローンはこれに比べて金利が低くなっています。したがって、長期間の利用を考える場合にはキャッシングよりもカードローンがよいと言えます。

親族・知人等からの借入

親や兄弟、友人・知人等から借りる方法です。親族や知人から借りる場合、利息や返済時期について明確に取り決めをしないケースも多いですが、借りたお金を返さなかったら信用を失い、人間関係にひびが入ってしまいます。また、返さないでいると「贈与」とみなされ贈与税の課税対象になることもあります。開業資金を借りたら、返済条件を決めて、契約書を交わすようにしましょう。

自治体の制度融資

制度融資とは、小規模事業者向けに、自治体が民間金融機関及び信用保証協会と連携して提供する融資制度です。申し込みをした小規模事業者には自治体の担当者の審査を通れば、金融機関に対して紹介状が発行されるしくみです。利用できる制度融資の内容は自治体によって異なりますが、金利なども利用しやすくなっています。

個人事業主が融資を受けるためには?

資金調達先によって融資のための書類は異なりますが、開業届や確定申告書など共通する書類もあります。融資の審査で不利にならないように、融資を受ける前に、提出すべき書類が提出されており、支払うべきものが支払われているかを確認しておきましょう。

開業届を提出していること

開業の際に税務署に「開業届」を提出しており、その控えを手元においていることが欠かせません。開業届には、屋号、開業した日、住所、事業概要など、事業を始めたことがわかる情報がまとまって記載されており、この提出は事業の開始等の事実があった日の属する年の確定申告期限までとされています。

提出しないことによってペナルティがあるものではありませんが、提出するのは義務となっていますので、忘れないように提出しましょう。

確定申告をしてしっかり納税をしていること

期限までに確定申告を済ませ、必ず納税しておきましょう。そして、確定申告書の控えは、会計帳簿請求書などの根拠資料、決算書(または収支内訳書)などとともに、必ず保管しておきましょう。所得税だけに限らず、住民税、事業税、固定資産税、自動車税なども支払いが滞っているものがないかをよく確認しておきましょう。

納税したことの証明については別途納税証明書を発行してもらえますが、確定申告書などの控えは残しておかなければ同じものは得られません。これらの保管は個人事業主としての自衛手段とも言えます。

なお、開業届や確定申告については初心者でも使いやすいクラウドサービスがあります。詳しくは、以下のリンクをご参照ください。

個人事業主の開業に向けた資金調達の実態

個人事業主として開業するにあたり、さまざまな資金調達の方法がありますが、実際に起業した方はどのような方法を選んだのでしょうか。マネーフォワードでは、創業時の資金調達の実務経験者を対象に実態調査を実施しました。

資金調達の手法は自己資金が主流

創業時に実施、または具体的に検討した資金調達の手法として最も多いのは「自己資金(発起人の拠出金等)」で、65.2%でした。次いで、「金融機関からのプロパー融資」が24.3%、「日本政策金融公庫(新創業融資制度等)からの借入」が24.1%となっています。

資金調達における壁と事前の準備

資金調達を進めるにあたって実務上の障壁となったことでは、「事業実績がないため、将来性の証明が難しかった」が22.1%、「金融機関等との面談・交渉に不慣れだった」が17.9%でした。 さらに、事前に準備しておけばよかったと感じることについては、「自己資金の計画的な蓄積」が29.7%、「金融機関との事前の関係構築」が21.5%という結果になりました。

自己資金の計画的な蓄積に加え、事業計画書の作成や面談対策など、早期から綿密な準備を行うことがスムーズな資金調達の鍵となります。

出典:マネーフォワードクラウド、創業時に実施、または具体的に検討した資金調達の手法【資金調達に関する調査データ】(回答者:資金調達の実務経験者等610名、集計期間:2026年4月実施)

開業のための資金を理解し、多少のゆとりをもって起業を!

初めて個人事業主として起業する場合、事業のための資金調達のことで頭がいっぱいになるかと思います。

しかし、個人の生活もあるのですから、心身の健康を維持するために必要な資金の確保も忘れないようにしましょう。病気やけがなど不測の事態にも備えられるよう、生活費や予備資金も考慮したうえで開業計画を立てましょう。

よくある質問

個人事業主の開業時の費用平均は?

2021年度新規開業実態調査によると、開業時の費用としては500万円未満が42.1%と最も多く、500万円未満で開業する割合は高まる傾向で、開業時の費用平均は941万円との結果がでています。詳しくはこちらをご覧ください。

運転資金はいくら準備しておくべき?

開業時には、少なくとも3カ月分程度の運転資金を用意しておくと安心であり、このためには「事業計画」がしっかりしておれば運転資金の目安もつけやすくなります。詳しくはこちらをご覧ください。


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