• 作成日 : 2023年12月8日

古本屋を開業するには?必要な資格や開業方法・資金、仕入れ方を解説

古本屋を開業するには?必要な資格や開業方法・資金、仕入れ方を解説

出版流通大手日本出版販売の『出版物販売額の実態』によると、2018年度の新古書を含む中古本市場規模は713億円で、2014年度から18.7%のマイナスとなっています。古本屋にとっては厳しい環境ですが、古本屋の開業を目指す人は少なからず存在します。古本屋を開業するにはどうすればいいのか解説します。

古本屋の業務内容は?

古本屋の業務内容は文字通り古本の販売です。なお、「古本」とは、一度誰かの手に渡ってから買い取られた書籍や雑誌のことで、新品が書店で売れ残るなどして返品されて古書扱いでリサイクルされたものを「新古書」と呼びます。

さらに絶版本などの希少性が高い書籍を「古書」と呼びます。古本屋は、基本的に「古本」「新古書」「古書」のすべてか、いずれかを販売する店です。

なお、最近はフランチャイズの古本屋を中心に、古本以外のものを販売する古本屋が増えてきています。例えば、大手フランチャイズのブックオフは、古本以外にCD、DVD、レコード、ゲームソフト、トレーディングカード、スマホアクセサリーなどの中古品も販売しています。

古本屋を開業するメリット

古本屋を開業するメリットは何でしょうか。テレビドラマなどでは、古本屋の経営者は本を読むことが好きな人であるとか、文章を書くのが好きな人であるといった人物像で描かれることが多いようです。営業中でも自由に好きな本が読めるというのが古本屋を開業するメリットのように思えます。しかし、必ずしも本を読むことが好きなわけではないという人にとっても、古本屋の開業には複数のメリットがあります。

無店舗・オンラインショップでも営業できる

古本屋を開業する第一のメリットは、古本屋は無店舗のオンラインショップで営業できることです。実際にAmazonやヤフオク!などだけで営業している無店舗のオンライン古本屋が少なからず存在します。

オンラインショップであれば立地なども関係なく、古本の在庫スペースさえあればどこでも開業できます。また、無店舗のオンラインショップは、開業にかかる費用が実店舗の古本屋の開業費用よりも大幅に安いというメリットもあります。

店主の個性や専門分野が反映できる

店主の個性や専門分野が反映できることも古本屋を開業するメリットです。
実際に、手芸好きな店主が経営する手芸本専門の古本屋や、写真好きな店主が経営する写真本専門の古本屋、建築の専門家が経営する建築専門の古本屋、現代アート好きな店主が経営する現代アート本専門の古本屋などが存在します。医学や化学などの自然科学分野や、哲学や宗教などの社会科学分野などでも、それぞれの分野で高い専門性を反映させた古本屋は競争力があります。

個人でも開業しやすい

個人でも開業しやすいのも古本屋を開業するメリットです。古本屋は、所轄の警察署から古物商許可を取得するだけで開業でき、ほかに特別な資格や許認可などが必要ありません。また、開業コストも比較的安く、大掛かりな資金調達も必要ありません。

実店舗で古本屋を開業する場合も、例えば飲食店の開業時に必要となる大がかりな内外装工事や備品などへの投資が必要なく、ローコストで開業できます。さらに、開業後に必要な運転資金も、他の業種と比べて比較的安く抑えられます。

古本屋を開業するデメリット

どのような業種で開業するにせよ、メリットとともにデメリットがあります。メリットとデメリットを慎重に検討し、両者のバランスを見て開業の意思決定をするわけですが、一般的に古本屋を開業するデメリットは何でしょうか。

ライバルが多い

古本屋を開業する最大のデメリットはライバルが多いことです。特に無店舗のオンラインで営業している古本屋が多く、Amazonなどは全国の古本屋が多数ひしめく超激戦地帯になっています。Amazonには原則誰でも参入できるので、プロではない個人などでも簡単に古本の販売を始められます。

また、競争の激化は価格競争を呼び、希少性が低い本や漫画などの販売単価が下落しています。そのような激戦地帯において古本屋として生き残ってゆくのは簡単なことではありません。

専門書の場合は知識やスキルが必要になる

また、専門書を販売する場合は知識やスキルが必要になるのも古本屋を開業するデメリットです。特に特定の専門的スキルや経験がない人が専門書を扱う場合に大きなハンディキャップになります。競争激しい古本屋市場において勝ち残るには差別化が必要ですが、差別化のために専門性を売りにする際に自分に知識やスキルがない場合は、知識やスキルを持つ人を雇うか、自分で勉強して身に付ける必要があります。そのために必要となる努力や時間は、決して少なくありません。

古本屋の開業方法

古本屋の開業方法にはどのようなものがあるでしょうか。ここでは、フランチャイズで古本屋を開業する方法と、個人で古本屋を開業する方法を説明します。いずれもメリットとデメリットがありますが、自分の状況や計画などに合わせてマッチする方を選ぶといいでしょう。

フランチャイズで開業する

まずはフランチャイズで古本屋を開業する方法です。フランチャイズで古本屋を開業する最大のメリットは、古本屋経営の経験やノウハウがなくても比較的安全に古本屋を開業できることです。また、フランチャイズの多くは加盟している店舗の売れ筋情報や価格相場などをデータベースで共有しており、品ぞろえや値付けに便利な情報を入手できることもメリットです。さらに、フランチャイズのブランドが使えるので、マーケティング面でも有利です。

一方のデメリットですが、ロイヤリティーなどのコストが必要になることと、比較的大きめの初期投資とランニングコストが必要になることです。フランチャイズの多くは、一定の大きさの店舗を求めてきます。

個人で開業する

個人で古本屋を開業する最大のメリットは経営の自由度です。どこでどんな本をいくらで売ろうがまったく自由です。実店舗で販売するもよし、Amazonやヤフオクなどを使ってオンラインで販売してもOKです。特に専門性が高い本を販売する場合は、フランチャイズよりも個人で開業した方がよいかもしれません。

一方のデメリットですが、フランチャイズほどの知名度がなく、集客などのマーケティング面が弱いことです。また、個人で開業する場合は、フランチャイズで共有されているようなPOS情報にアクセスできません。

古本屋の開業に必要な資格や手続き

古本屋の開業に必要な資格や手続きは何でしょうか。古本屋の開業に必要な資格は特にありませんが、古物商許可の取得と、個人で開業する場合は開業届の提出が必要です。なお、法人で古本屋を開業する場合は、法人許可申請が必要です。

古物商許可

古物商許可は、主たる営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係へ許可申請書を提出して取得します。その際に添付書類として略歴書、本籍が記載された住民票の写し、誓約書、身分証明書、URLの使用権原があることを疎明する資料をそれぞれ提出します。法人許可申請の場合は、それらのほかに法人の定款と法人の登記事項証明書の提出も必要です。

基本的に、古物商は営業所ごとに業務を適正に実施するための責任者として管理者1人を選任する必要があります。

開業届の提出

個人で古本屋を開業する場合は、主たる営業所の所在地を所管する税務署へ開業届を提出する必要があります。開業届正しくは「個人事業の開業・廃業等届出書」に必要事項を記入し、税務署の窓口へ提出します。また、青色申告確定申告を予定している人は、開業届とともに「青色申告承認申請書」も併せて提出します。どちらの書類も税務署で入手できます。

なお、開業届は、事業の開始などの事実があった日から1カ月以内に提出する必要があります。

古本屋の開業・運転資金

ところで、古本屋の開業・運営にはいくらくらいの資金が必要でしょうか。どのような古本屋をどのような形態で運営するかにより、古本屋の開業と運営にかかる費用はケースバイケースになるというのが答えでしょう。例えば、無店舗のオンラインで自宅を倉庫にして開業する場合、初期投資に必要なコストはホームページ作成費用と仕入れ資金ぐらいでしょう。一方、都内の一等地にそれなりの規模の店舗を構えてフランチャイズで開業する場合は、相応の初期投資が必要になるでしょう。

初期費用

実店舗で古本屋を開業する場合は、初期費用として物件取得費と内外装工事費などが必要になります。10坪程度の小型の店舗であれば、数十万円から100万円程度あれば賄えるでしょうが、フランチャイズに加盟して比較的大型の物件を取得する場合は、数百万円から1000万円程度は必要になるかも知れません。

また、別に必要となる初期費用が仕入れのための費用です。実店舗であれオンラインであれ、一定の売り上げを獲得するにはそれなりの在庫を持つ必要があります。なお、某大手フランチャイズの古本屋は、売り場面積50坪の古本屋を開業する際の商品代として1730万円を見積もっています。

運転資金

古本屋の運転資金として大きいのは、仕入の費用、人件費、実店舗の場合の家賃です。上述の某大手フランチャイズの古本屋は、月商650万円の場合のシミュレーションとして、仕入162万5000円、人件費156万5000円、家賃100万円と、それぞれ見積もっています。また、別にロイヤリティーが売上の4%(26万円)かかります。

無店舗のオンラインで古本屋を開業し、誰も雇わないで1人で運営する場合は、人件費と家賃は原則かかりません。

古本屋の仕入れ方法は?

古本屋の仕入れ方法についてはどのように考えればいいでしょうか。実店舗の古本屋の場合、地元住民などの持ち込みや古書組合の古書交換会などが主な仕入れ方法になるでしょう。一方、無店舗のオンライン古本屋の場合、仕入れは古書交換会や他の古本屋での仕入れ、あるいはネットでの買い取りなどがメインになるでしょう。いずれにせよ、自分の店の形態に合わせて、ベストな仕入れ方法を構築してゆく必要があります。

実店舗の古本屋の仕入れ

実店舗の古本屋のメインの仕入れルートは、地元住民やお客さんによる持ち込みです。特にコミックやラノベなどのフレッシュな書籍ついては、競合店よりも高値で買い取り在庫を切らさないようにすることがポイントです。また、そうした古書を買ってくれたお客さんに読み終わったらすぐに売りに来てくれるよう促し、回転を高めてゆくのもポイントです。

店舗での買い取りに加えて、出張買い取りや宅配買い取りなどを使って仕入れたり、古書組合の古書交換会で仕入れる方法もあります。

オンライン古本屋の仕入れ

オンライン古本屋の仕入れは、一般的に実店舗の古本屋の仕入れよりも難しいでしょう。実店舗の古本屋のように持ち込みができないことが理由ですが、オンライン古本屋の多くは、地元の実店舗の古本屋で仕入れたり、出張買い取りや宅配買い取りなどを使って仕入れたりしています。また、実店舗の古本屋と同様に古書組合の古書交換会で仕入れたり、オークションやフリマアプリなどを使ってネットで仕入れたりしているオンライン古本屋も存在します。

古本屋は儲かるのか?年収の目安

古本屋は儲かるのかという問いに答えるのは難しいですが、一般論としては、古本屋は一定の大きさの実店舗で開業しないとそれなりに儲けるのは難しいと言っていいでしょう。

上述の某大手フランチャイズの古本屋は、売り場面積50坪の古本屋のシミュレーションとして月商650万円を上げた場合、諸経費を控除して137万5000円の利益が得られるとしています。仮にオペレーションに自分自身が加わると人件費も削減でき、手元に残る利益はさらに増えるでしょう。

一方、無店舗のオンライン古本屋の場合、月商650万円を上げることは現実的に考えて極めて困難でしょう。実際のところ、Amazonで古書を販売している古本屋の多くが、実店舗とAmazonのハイブリッドで販売しています。

古本屋開業の成功のポイント

古本屋開業を成功させるポイントは何でしょうか。古本屋市場は参入のハードルが低く、参入に必要な資格や許認可などもありません。特に無店舗のオンライン古本屋は、Amazonやヤフオク!などを使えば誰でも立ち上げが可能です。競争が激しい古本屋市場ですが、勝ち残るためには何をすればいいでしょうか。

仕入れルートを確保する

古本屋開業を成功させる第一のポイントは仕入れルートの確保です。古本屋の商品は古本ですので、古本が確保できなければ商売になりません。実店舗への持ち込み、出張買い取りや宅配買い取り、古書組合の古書交換会、ネットでの買い取り、オークションやフリマアプリの活用など、使える手段はすべて使って仕入れルートを確保してください。特に実店舗への持ち込みについては、持ち込み客にリピートを促すインセンティブを用意するなど工夫してください。

実店舗とオンラインのハイブリッドで販売する

実店舗で古本屋を開業する場合は、実店舗だけで販売するのではなく、実店舗とAmazonなどのオンラインのハイブリッドで販売してください。Amazonでの販売数は、実店舗の在庫数量が増えるとそれに比例して増加します。実店舗で販売している古本を同時にAmazonで販売することで、Amazonのロングテール戦略に符合させることができ、結果的に売り上げの増加が期待できます。

海外にも販路を広げる

また、国内のみならず、海外にも販路を広げることもポイントです。アメリカ、フランス、イギリスなどでは日本の漫画やアニメが大人気となっていて、日本のオリジナルの漫画などの販売が伸びています。実際にアメリカのAmazonで日本の漫画などを販売する日本の古本屋が増えてきています。最近のAmazonでは、日本語でアメリカのAmazonに出品することもできるので、漫画の在庫をお持ちの場合はチャレンジしてみてください。

個性を打ち出して古本屋の開業を成功させよう!

以上、古本屋の開業方法について、成功させるポイントなどを含めて解説しました。古本屋を成功させるにはある程度の在庫を持つ必要がありますが、それと同時に何らかの専門性なり独自性なりの個性を打ち出す必要があります。一般的な本であれば価格競争になりがちですが、専門性や独自性が高い本であれば価格以外での競争になります。特に希少性が高い本であれば、プレミアム付きで販売することも可能です。個性を打ち出して、古本屋の開業を成功させてください。


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