- 作成日 : 2023年2月22日
CSV経営とは?CSRとの違いや企業へのメリット、事例を解説!
CSV経営とは、企業が自社の事業や製品を通じて社会課題の解決に取り組み、かつ利益を得ようとする考え方で、近年注目されています。
今回は、CSV経営とは何か、定義やメリット、CSV経営を実現するための経営戦略について解説します。また、CSV経営に取り組んでいる企業事例として、キリン・ネスレ・トヨタの取り組みも紹介します。
目次
CSV経営とは?
近年、CSV経営が注目されています。これまで、企業を評価する際は、売上規模や事業展開といった、定量的な指標が用いられていました。
しかし、近年では環境問題や貧困問題など、さまざまな社会問題が注目されており、企業には社会課題の解決に貢献することが求められています。その一環として、CSV経営について理解することが重要です。
以下では、CSV経営の定義やCSRとの違いについて解説します。
CSV経営の定義は?
そもそも、CSVとはCreating Shared Valueの略で、日本語では「共有価値の創造」を意味します。CSV経営は、事業を通じて社会課題を解決することを重視した考え方で、社会課題を解決することが自社の経済的な利益につながる、という概念です。
社会貢献活動と認識されるケースが多いですが、事業の推進と社会課題の解決を分けて考えていない点がポイントです。
CSV経営の概念は、アメリカのマイケル E. ポーター教授とマーク R. クラマー氏が提唱しました。
CSV経営とは、CSVを経営戦略の1つとし、企業活動を進める経営のことです。
これまで、事業を通じて利益を生み出すことと、社会課題を解決することで利益を生み出すことは両立できないとされていました。しかし、CSV経営では、両者が両立すると考えられている点が大きな特徴です。
CSRとの違いは?
CSVと混同しやすいのがCSRです。CSRはCorporate Social Responsibilityの略で、日本語では企業としての責任という意味を指します。
CSRは、自社の利益だけでなく、社会課題にも目を向け、地域貢献や環境保全などの活動に積極的に取り組んで企業としての責任を果たす、という概念です。CSRでは、事業を通じて利益を生み出すことと、社会課題の解決を分けて考えています。
一方、CSVは社会課題を解決することで自社の利益にもつながる、という考え方であり、事業によって得られる利益と社会貢献によって得られる利益は両立する、と捉えている点に違いがあります。
CSV経営のメリットは?
CSV経営は、一見企業の利益に直結しないように見えるかもしれません。しかし、CSV経営にはさまざまなメリットがあり、最終的には企業の利益につながります。そのため、大企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業にとっても重要です。
ここでは、CSV経営のメリットとして以下の2点について解説します。
- 企業のブランドイメージが向上する
- ほかの部門や企業とのつながりが生まれる
企業のブランドイメージが向上する
CSV経営によって、企業が利益だけに目を向けているのではなく、環境問題や地域貢献といった社会課題に積極的に貢献している姿勢をアピールできます。
近年、ステークホルダーからの評価の指標は、売り上げや利益だけではありません。社会課題解決に向けて取り組んでいる姿勢が評価されると、企業のブランドイメージが向上し、ステークホルダーから信頼を獲得できるのです。さらに、新しいファンを獲得できる可能性も期待できます。
ほかの部門や企業とのつながりが生まれる
CSV経営は、1つの部門のみで完結するものではありません。CSVに向けた取り組みは、全社一丸となって行う必要があります。CSV経営を意識することで、ほかの部門とのつながりが生まれる可能性が高いのもメリットです。
場合によっては、同じ取り組みを推進する他社との交流も生まれ、そこから事業が発展する可能性も期待できます。
CSVを実現するための経営戦略は?
それでは、CSV経営を実現するためには具体的にどうすればよいのでしょうか。
CSV経営では、社会価値と企業価値を両立させて共有価値を創造するための方法として、以下の3つが唱えられています。
- 自社製品・サービスや事業を見直す
- バリューチェーン(価値連鎖)を改善する
- 産業クラスターを創出する
ここでは、CSV経営を実現するための3つの経営戦略について解説します。
自社製品・サービスや事業を見直す
CSV経営では、自社の製品・サービスや事業を活かして社会課題を解決することが求められます。そのため、まずは自社の既存事業や製品がどのように社会問題の解決に貢献するかを理解することが必要です。
自社製品・サービスや事業を見直したり、強みを活かして社会に貢献できる新たなサービスや事業の開発につなげたりすることが求められます。
バリューチェーン(価値連鎖)を改善する
バリューチェーン(価値連鎖)とは、製造から販売に至るまでの、事業活動で利益を生み出す一連のプロセスのことです。
CSV経営では、バリューチェーンを見直し、社会課題の解決に貢献できるよう改善する必要があります。たとえば、製造過程で多くの二酸化炭素を排出していることがわかれば、排出量を削減できるよう改善することで、地球温暖化問題の防止に貢献できます。また、仕入先を見直し、環境に配慮した製造・発送方法を見直すことも大切です。
産業クラスターを創出する
産業クラスターとは、アメリカのシリコンバレーのように、ある事業に関連した企業が密集した地域のことを指します。産業クラスターを創出することで、複数企業が協働できる体制が整い、1社では成し得ない大きな社会課題の解決にも取り組めるようになるのです。
また、強固な産業クラスターを創出できれば、人材育成やインフラ整備、地域の活性化といった社会問題の解決にもつながります。
このように、CSV経営を実現するためには、産業クラスターを創出してほかの企業と連携することが重要です。
CSV経営を取り入れている企業事例は?
CSV経営は多くの企業が取り組むべきものです。とはいえ、どのような取り組みを行えばよいか、何から始めればよいかなど、わからないことも多いでしょう。
ここでは、CSV経営を取り入れている企業の事例を3つ紹介します。
- キリンホールディングス株式会社
- ネスレ日本株式会社
- トヨタ自動車株式会社
事例を参考に、自社でできる取り組みについて考えてみてください。
キリンホールディングス株式会社
キリンホールディングス株式会社は、「CSVを経営の根幹に据え、社会と共に持続的な成長を実現していく」を掲げ、具体的には「健康」「地域社会・コミュニティ」「環境」の3つの分野についてCSV活動を推進している事例です。たとえば、ペットボトルを再利用できる手法を用いて、石油資源や二酸化炭素の使用量削減に取り組んでいます。
また、アルコールを扱うメーカーとして、適正飲酒のガイドラインを公開し、アルコールによる健康被害の解決にも取り組んでいるのが特徴です。
ネスレ日本株式会社
ネスレ日本株式会社は、「生活の質を高め、さらに健康な未来づくりに貢献する」を掲げ、「栄養」「農村開発」「水」の3つの分野での社会課題解決に取り組んでいる事例です。世界中の子供たちが健康に暮らせる社会を2030年までに作れるよう、商品開発やプログラムの発信を積極的に進めています。また、2025年までにパッケージを100%リユース、もしくはリサイクル可能にする、という目標も掲げています。
ほかにも、発展途上国の農村開発や、妊娠中・出産後の女性に対して健康的な食品を提供する取り組みなど、さまざまな活動に精力的に取り組んでいるのが特徴です。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社は、「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げ、6つのチャレンジを通して、気候変動、水不足、資源枯渇、生物多様性の損失といった地球環境問題の解決に取り組んでいる事例です。具体的には、2050年までにライフサイクル全体で二酸化炭素の排出をゼロにすることを目指したり、エコな素材の使用、リサイクル技術の開発などに取り組んでいたりと、人とクルマと自然が共生する社会を目指してCSV活動を推進しています。
自社だけで取り組むのではなく、NGOや地域社会などと連携して、着実にCSV経営を進めているのが特徴です。
CSV経営で社会課題の解決に貢献しよう
CSV経営とは、企業が自社の事業や製品を通じて社会課題の解決に取り組み、かつ利益を得ようとする考え方のもと経営を進めることです。
CSV経営を推進することにより、自社のブランドイメージが向上したり、ほかの部門や企業とのつながりが生まれたりなどのメリットがあります。結果的に、自社の利益にもつながるのです。
CSV経営を実現するためにできる取り組みから着実に進め、社会課題の解決に貢献しましょう。
よくある質問
CSV経営とは?
CSV経営とは、社会課題を解決することが自社の経済的な利益につながるという考え方に基づき、自社の強みを活かして社会課題を解決しようと企業活動を進める経営のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
CSRとの違いは?
CSRでは、事業を通じて利益を生み出すことと社会課題の解決を分けて考えていますが、CSVでは両者が両立すると考えている点に違いがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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