- 作成日 : 2024年9月26日
ファクタリング会社開業に許認可は不要?貸金業登録が必要なケースも解説
許認可とは、特定の事業を行うために必要な申請手続きのことです。ファクタリング会社を開業する際は、財務局長または都道府県知事への貸金業登録という許認可が必要となるケースがあります。
本記事では、ファクタリング会社における許認可が必要・不要なケースとその理由、設立・開業までの流れなどを解説します。
目次
ファクタリング会社に許認可は必要?
許認可とは、特定の事業を行うために必要となる、行政機関への申請手続きのことです。許認可の必要有無は業種によって異なり、ファクタリング会社においても許認可が必要となるケースがあります。
許認可が必要にもかかわらず、申請手続きを行わないまま事業を始めた場合、罰則を受ける恐れがあるため注意が必要です。
ここでは、ファクタリング会社に関連する許認可や、許認可の必要性について解説します。
ファクタリング会社に関連する許認可とは
ファクタリング会社に関連する許認可を挙げるとすれば、次の2つが該当するでしょう。
- 貸金業登録
- 古物商許可
貸金業登録とは、金銭の貸し借りを行う一般的な金融業の開業の際に必要となる登録です。
古物商許可とは、中古品の売買を行う際に必要となる営業許可のことです。
債権を買い取るファクタリング会社であれば、一見これらの許可が必要に感じることでしょう。ただし一般的には、ファクタリング会社において、これらの許認可は不要です。
ファクタリング会社の売掛債権買取に許認可は不要
専門の買取業者に売掛金を買い取ってもらうことで資金を調達するファクタリングは、「売掛債権買取業務」ともいわれています。原則として、ファクタリング会社が行っている「売掛債権買取業務」について、許認可を得る必要はありません。
ただし、「売掛債権買取業務」以外の業務を手がけるファクタリング会社は、業務に応じた許認可が必要となるケースがあります。
ファクタリング会社に許認可が不要な理由
「売掛債権買取業務」のみを手がけるファクタリング会社には、なぜ許認可が不要なのでしょうか。主な理由は、以下の3点です。
- 貸金業法に該当しないため
- 古物商にも該当しないため
- ファクタリングを規制する法律がないため
それぞれ解説します。
貸金業法に該当しないため
ファクタリング会社に許認可が必要ない理由の1つめは、貸金業法に該当しないためです。
資金調達に活用されるファクタリング会社は、銀行などからの「融資」に近いイメージを抱かれがちです。しかしファクタリングは融資とは異なり、事業者の資金調達の一手段であることから、法的には売掛債権の譲渡契約となります。
お金を貸し借りする金銭消費貸借契約ではないため、貸金業法に該当せず、許認可は不要です。
民法第466条には「債権は売り渡すことができる」と記載されており、金融庁も以下のように公表しています。
一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。
古物商にも該当しないため
ファクタリング会社が行う一般的な売掛債権の買取のみであれば、古物商にも該当しません。
絵画や骨董品、本、CD、ゲーム、貴金属などの古物を買取する場合、「古物商許可」が必要となります。
「ファクタリングが貸金業の対象外だとしても、債権の買取には古物商許可が必要なのでは?」と考える方もいることでしょう。しかし、ファクタリングの買取対象は物ではなく、債権であることから、古物商許可は不要となります。
一方、在庫商品を現金化する「在庫商品ファクタリング」を行うファクタリング会社は古物商許可の許認可が必要となるため、注意が必要です。
ファクタリングを規制する法律がないため
ファクタリングそのものを規制する法律がないことも、許認可が不要な理由のひとつに挙げられます。
貸金業については、さまざまな規制が法律で制定され、上限金利などが設定されています。一方、ファクタリングには「ファクタリング法」のような規制が存在しません。
ファクタリングならではの、以下のような背景もあります。
- 完全自由競争で、民法の一般原則である「当事者間の合意」が優先される
- 2005年前後から普及した比較的新しい資金調達手法のため、法律の整備が現状に追い付いていない
現状では専門の法律がないとはいえ、民法の規定は適用されるため、信義則に従ったファクタリング契約が求められます。
ファクタリング会社で貸金業登録が必要なケース
ファクタリング会社には原則として許認可が不要であるものの、いくつかのケースでは貸金業許可が必要となります。貸金業の許認可が必要な、以下のケースについて解説します。
- 償還請求権付きのファクタリングを行うケース
- 給与ファクタリングを行うケース
- ファクタリング会社としての社会的信用を得たいケース
償還請求権付きのファクタリングを行うケース
ファクタリングは、ノンリコースと呼ばれる償還請求権のない契約が基本です。しかし、一部では売掛債権(売掛金)を担保に、債権の買取をせずにお金を渡す「実質的には融資」というファクタリング(ウィズリコース)も見られます。
売掛金の回収ができなければ、債権者が代わりに返済することになる「償還請求権付きファクタリング」の場合、債権譲渡担保契約付きの「融資」にあたります。
この場合は貸金業法が適用され、貸金業登録が必要となるため注意が必要です。貸金業へ登録している事業者であれば、ウィズリコースと呼ばれるファクタリングも違法にはなりません。
給与ファクタリングを行うケース
給与ファクタリングを行うケースでも、貸金業許可が必要です。
例えば、個人(労働者)が勤務先から給与を受け取る権利「給与債権」をファクタリングして買い取るケースです。
金融庁は「個人を通じて資金を回収することは貸金業に該当する」という見解を示しており、「給料ファクタリングを行う場合、給料を担保にした融資である」という最高裁の判決も出ています。
そのため、給与ファクタリングを行う場合は貸金業登録が必須です。また、手数料を金利換算した際は、利息制限法の上限である20%以内に収めなければなりません。
ファクタリング会社としての社会的信用を得たいケース
実際に貸金業に相当する「融資」を行わないファクタリング会社であっても、ファクタリング会社としての社会的信用を得ることを目的に、あえて貸金業登録を申請するケースもあります。
貸金業の登録を得るためには、「純資産5,000万円以上」「国家資格である貸金業務取扱主任者の設置」といった諸条件を満たし、財務局長および都道府県知事の審査を通過しなければなりません。
「貸金業登録がある=財務局長か都道府県知事からのお墨付きを得ている」ともいえるファクタリング会社は、許認可を得ていないファクタリング会社と比べて、周囲から高い社会的信用を得られる可能性が高まります。
ファクタリング会社を設立・開業するまでの流れ
ファクタリング会社を設立・開業する際は、必要な準備をスムーズに進められるよう、手順を事前に押さえておきましょう。主な流れは、次のとおりです。
- 必要に応じて貸金業登録の審査を受ける
- 事務所を用意する
- 集客・営業を開始する
各ステップの詳細を、順に解説します。
①必要に応じて貸金業登録の審査を受ける
設立・開業するファクタリング会社において、貸金業を行うことを検討している場合は、貸金業登録の審査を通過しておかなければなりません。
貸金業の登録申請先は、財務局長か都道府県知事のいずれかです。
- 営業所の所在地が1つの都道府県内である場合:都道府県知事
- 所在地が複数の都道府県の場合:財務局長
登録にあたっては、以下のような諸条件を満たす必要があります。
- 50人に1人以上の貸金業務取扱主任者(常勤)を設置
- 純資産額5,000万円以上(貸金業を営む期間中はこの額を下回らない)
- 3年以上、貸付けの業務に従事した経験を有する役員(法人の場合)
- 指定紛争解決機関との間における、手続実施基本契約の締結
- 指定信用情報機関(JICC、CIC)への加入(個人向け貸付けや個人を保証人とする場合)
- 貸金業法第6条第1項各号に非該当
審査には2ヶ月程度の時間を要するため、早めに登録申請を済ませておくとよいでしょう。
②事務所を用意する
事務所も用意しておきましょう。貸金業登録においては、監督官庁の職員が「現地調査」という立ち入り調査を行い、以下のような確認を実施します。
- 実際に事業所を構えている実態があるか
- 他の法人と同居していないか
- 申請書に記載された内容に誤りがないか
営業所が賃貸の場合、貸金業の営業所としての使用承諾を取る必要があります。賃貸借の契約期間が「2年以上」などの条件も存在するため、事前の確認・準備が必要です。
③集客・営業を開始する
貸金業の登録申請に通ったら、集客・営業をスタートしましょう。
集客、営業においては、貸金業法、貸金業法施行規則及び貸金業の業務運営に関する自主規制基本規則等に則って実施しましょう。
また、日本貸金業協会からは「広告審査に係る審査基準」が公表されているため、広告の表示や説明方法には注意する必要があります。
ファクタリング会社開業に許認可が必要なケースを把握しておこう
「売掛債権買取業務」のみを手がけるファクタリング会社であれば、貸金業や古物商に該当しないため、許認可は必要ありません。
ただし、「償還請求権付きのファクタリング」や「給与ファクタリング」といった一部のケースでは、貸金業の登録が必要です。申請手続きを行わないままこれらの事業を始めた場合、罰則を受ける恐れがあります。また、登録にあたっては諸条件を満たす必要があります。
ファクタリング会社開業を目指す際は、事前に許認可の必要有無を確認し、必要な際は余裕をもって貸金業登録を申請しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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