• 更新日 : 2023年10月12日

焼肉屋の経営は難しい?開業に必要な知識や費用、失敗を防ぐコツを解説

焼肉屋の経営は難しい?開業に必要な知識や費用、失敗を防ぐコツを解説

焼肉屋を開業し、個人経営していくのは難しいと、多くの人が考えているのではないでしょうか。日本人経営の小さな店であっても、成功している焼肉屋も多くあります。ただし、成功するには、焼肉屋の開業や経営について正しい知識を身につけておく必要があります。

ここでは、焼肉屋を経営するにあたって必要な知識や資金のこと、失敗を防ぐコツなどを解説します。

焼肉屋の経営は難しい?

焼肉屋の経営は、外的な影響に大きく左右される傾向にあります。たとえば、BSE問題や新型コロナウイルスの拡大などにより、焼肉屋の市場は大きく縮小しました。しかし、これら外的影響が収まると市場はすぐに回復し、好調さを取り戻しています。

日本経済新聞が2023年8月に行った調査によると、2022年の焼肉屋の市場は4,520億円に達しました。たとえば、焼肉屋の最大手である牛角は年間の新規出店数を計画に盛り込み、海外の出店も増やしています。

また、国産牛焼肉を提供するあみやき亭でも、2023年4月1日〜2023年6月30日の第1四半期において、前年より売上高や営業利益経常利益、純利益ともに前年同期よりも順調に伸ばしています。こうしたことからも、現在の焼肉屋が置かれている状況は良くなっていることがわかります。

参考:財務情報 「2023年07月03日・2024年3月期第1四半期決算短信」|あみやき亭

焼肉屋の経営は儲かる?年収の目安

焼肉屋の経営は店舗数が多いほど年収が上がり、儲かるといわれています。焼肉屋オーナーの年収は、30坪40席の店舗を1店舗経営すると600万円程度です。店舗数が多ければ、それ以上の年収を得ることも可能です。

焼肉屋を経営するメリット

焼肉屋の経営には、メリットとデメリットの両方があります。焼肉屋の経営を考えている場合、その両方を理解しておく必要があるでしょう。ここでは、焼肉屋を経営するメリットをご紹介します。

幅広い層で人気がある

焼肉屋を経営するメリットとして、幅広い層に人気があることが挙げられます。焼肉は、子供から大人まで男女問わず人気があり、客層は学生や会社員、ファミリー層と幅広いです。そのため、他の飲食業に比べて苦労せずに集客ができ、儲かる可能性が高いです。

客単価が高い

他の飲食店より客単価が高い点も、焼き肉店のメリットです。焼肉屋の客単価はおおむね3,000円から5,000円が見込まれ、それ以上のことも多いです。一方、たとえばラーメン店などであれば1,000円程度です。客単価が高いため、集客力が同程度であれば、焼肉屋のほうが他の飲食店よりも儲かります。

フードロスがでにくい

実は、焼肉屋はフードロスが出にくいメリットがあります。なぜなら、取り扱う肉の冷凍保存ができるからです。当日売り切れなくても、必ず廃棄しなければならないわけではありません。通常、飲食店は廃棄率が高いため、原価率が高くなりがちですが、焼肉屋はフードロスが出にくいぶん、原価率を抑えることができます。

少人数でできる

少人数で経営できることも焼肉屋のメリットです。焼肉屋では、客が自分で肉を焼いて食べます。つまり、客が自分で調理をしているのです。もちろん、肉や野菜を切ったりするなど、調理が必要ないわけではありませんが、他の飲食店に比べると、調理に多くの人を必要としません。 焼肉屋は少人数で経営できるため、人件費も抑えられ、儲かりやすい構造になっています。

焼肉屋を経営するデメリット

次に、焼肉屋を経営するデメリットを見ていきましょう。

排煙設備にコストがかかる

焼肉屋には煙とにおいがつきものです。煙については、排煙設備を必ず設置しなければなりませんが、排煙設備のコストは安くありません。そのぶん、初期費用が高くなるので注意しましょう。

お店の状況や工事内容などによっても異なりますが、排煙設備はおおむね百数十万円です。なかには200万円を超える場合もあります。

食中毒のリスク

夏場、特に注意しなければならないのが食中毒のリスクです。肉は冷凍加工されているとはいえ、取り扱いを間違えば傷みやすい食材です。いったん食中毒を起こせば信頼を取り戻すことは難しく、廃業に至る可能性もあります。

過去にも、大手焼肉チェーンで食中毒を起こし、廃業に追い込まれたケースがあります。食材の管理には常に気を遣わなければいけません。

焼肉屋の開業・経営スタイル

焼肉屋を開業する際には、経営スタイルを選ぶ必要があります。焼肉屋の経営スタイルには、次の2つがあります。

店舗を借りて経営する

焼肉屋を個人経営する場合の経営スタイルとしてまず挙げられるのが、フランチャイズなどには加盟せず、店舗を借りて独自で経営するものです。物件を借りる際、居ぬき物件のように、すでに焼肉屋の設備がある店舗を借りれば、初期費用を抑えることができます。

ただし、フランチャイズに加盟せずに店を経営する場合、仕入先の確保やメニュー・レシピの開発などのノウハウを一から確立していく必要があるため、軌道に乗るまでの時間がかかる可能性もあります。

開店後、早いうちに利益を上げて経営を軌道に乗せられるよう、立地や周辺環境などの事前調査をしっかりと行いましょう。

フランチャイズで経営する

焼肉屋を個人経営する場合のもうひとつの経営スタイルが、フランチャイズでの経営です。焼き肉店のフランチャイズに加入して経営することで、焼肉屋経営のノウハウを得ることができるため、開業してからすぐに経営を軌道に乗せることができます。

ただし、フランチャイズ加入料など、フランチャイズ本部への支払いが発生するため、完全な独立経営スタイルよりもコストがかかります。多店舗経営を展開するなどして、そのコストを補うだけの売上を確保する必要があります。

焼肉屋の開業・経営にかかる費用

ここからは、焼肉屋の開業・経営にかかる費用について見ていきます。

開店時の初期費用

開店時の初期費用は、お店の規模や状況によって大きく金額が異なります。一般的な目安は以下のようになります。

【繁華街、50席程度の店舗を借りる場合】

物件の取得費:60万~100万円程度

内装工事費:800万円程度

厨房設備費:500万円程度

初期運転資金:200万円程度

合計:1,560万~1,600万円程度

参考:焼肉店|業種別開業ガイド|J-Net [中小企業ビジネス支援ガイド]

このように、おおむね1,500万円以上の初期費用がかかると思っておいたほうがよいでしょう。

自己資金で用意することが難しい場合は、金融機関の融資や国や自治体の補助金などを利用します。特に、補助金は返済義務がないので、条件に当てはまるものは積極的に活用しましょう。焼肉店の開業に使える補助金として、次のようなものがあります。

事業再構築補助金

事業再構築補助金とは、ポストコロナ・ウィズコロナに対応するため新分野展開、事業転換など、事業再構築を行う事業者を対象に、事業再構築にかかった経費に対して一定の補助金を支給するというものです。事業再構築補助金には、成長枠や産業構造転換枠などさまざまな枠が設けられています。

参考:事業再構築補助金|中小機構

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、持続的な経営ができるように、販路開拓や業務効率化への取り組みにかかる経費に対して、一定の補助金を支給するというものです。商工会・商工会議所の支援を受ける必要があります。

参考:小規模事業者持続化補助金|商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局

その他にも、自治体によっては、創業補助金などの補助金の制度が用意されているケースもあります。

経営・運営のランニングコスト

焼肉屋を経営するために毎月かかる経営・運営のランニングコストは、お店の規模や状況によって、大きく金額が異なります。一般的な目安は次のようになります。

店舗の賃貸料:30万~100万円程度

人件費:100万~300万円程度

食材費:150万~400万円程度

合計:280万~800万円程度

このほかに広告宣伝費や光熱費などが、ひと月それぞれ数十万円かかります。

焼肉屋を経営するために必要な知識

焼肉屋をうまく経営させるためには、一定の知識が必要です。焼肉屋を経営するために必要な知識として、次のようなものがあります。

店舗のコンセプトとターゲット

焼肉屋の経営を成功させるためには、店のコンセプトとターゲットの設定が非常に重要です。

たとえば、ファミリー層をメインターゲットにするならテーブル席を中心とした店づくりにする、会社員をメインターゲットにするならカウンター席を多くするなど、ターゲット=狙う客層によって、店のつくり=コンセプトは異なります。

事前に店舗の立地する地域の周辺調査を行い、どのような客層をターゲットにするのかをしっかりと定め、店のコンセプトを決めていきましょう。

利益率やコストを把握する力

焼肉屋は、単に良い料理を提供すればよいというものではありません。焼肉屋の経営を成功させるためには利益を上げなければならず、そのためには利益率やコストを把握する力が必要です。

たとえば、食べ放題メニューを提供する際、時間をどの程度に設定し、コストをどこまでかけるのかなど、メニューやサービスごとに利益率やコストの計算が必要です。

儲けるために必要な利益とコスト、利益率などを把握する力をつけることで、焼肉屋を成功・成長させるための方向性や改善策を見つけることができます。

競合店の分析

焼肉屋を成功させるためには、同業ライバル店に勝たなければいけません。そのためには、競合店を分析する必要があります。

競合店の独自性、どのようなサービスやメニューを提供しているのかなどを分析し、自身の店舗が劣っている点があれば改善する必要があります。

食品衛生責任者・防火管理者などの準備

焼肉屋の経営には、食品衛生責任者や防火管理者が必要です。食品衛生責任者は、料理などの食品の製造・加工・調理販売等において、衛生面を管理する責任者です。経営者の指示に従ったり、従業員を教育したりして衛生管理を行います。

参考:食品衛生責任者について|一般社団法人東京都食品衛生協会

防火管理者は、多くの人が出入りする建物などにおいて、火災による被害が出ないように管理する責任者です。焼肉屋の経営にも原則、防火管理者の設置は必要です(客席数などに応じて、対象外のケースもあります)。

参考:防火管理講習|講習について|防火・防災管理講習|一般財団法人 日本防火・防災協会

食品衛生責任者や防火管理者の準備ができないと、開業ができないので注意しましょう。

焼肉屋の経営に失敗しないために

焼肉屋の経営に失敗しないためには、次のようなことを考えて経営を行う必要があります。

ターゲットの選定

焼肉屋の経営では、ターゲットの選定が重要です。ターゲットがファミリー層なのか、学生なのか、会社員なのかで、店舗のコンセプトやメニューなどが異なるからです。

たとえば、ターゲットがファミリー層であれば子供用のメニューを充実させ、学生であれば食べ放題のメニューを多くしたほうが良いでしょう。また、会社員であれば、ランチメニューを充実させるなど、ターゲットに合わせた施策が必要です。焼肉屋の開業前に、ターゲットの選定をしっかり行いましょう。

競合との差別化を図る

焼肉屋の経営がうまくいかない理由のひとつに、ライバルや競合店が多いことが挙げられます。ライバルや競合店が多いと、顧客の奪い合いが生じて、見込み通りの収入を得られなくなります。焼肉屋の経営を成功させるためには、競合との差別化を図る必要があります。

ライバル店や競合店にない、独自のメニューやサービスを導入することで他店と差別化を図り、焼肉屋の競争に生き残ることができます。

利益を生み出す構造を理解する

焼肉屋の経営を成功させるためには、利益を生み出す必要があります。利益率やコストを把握する力はもちろん、焼肉屋独自の客単価や回転率などの構造も理解する必要があります。

簡単にいうと、売上は客単価×回転率によって決まります。売上からコストを差し引き残ったのが利益です。利益を上げるには客単価を上げるか、回転率を上げるか、コストを抑えるかをしなければなりません。

店舗のコンセプトやターゲットに応じて、自店舗に合った利益を上げる方法を考える必要があります。

開業前から集客対策をする

焼肉屋経営を成功させるためには、いかに早く経営を軌道に乗せるのかが重要です。そこで、開業前から集客対策を行い、開業してすぐにお客が集まるようにする必要があります。

チラシを配るなどして、近隣の住民にアピールするのはもちろんのこと、SNSで告知して少し遠い地域のお客に訴求する、開店キャンペーンを行うなど、開業前から集客対策を行うようにしましょう。

素材の質やメニューにこだわる

焼肉屋を成功させるためには、競合との差別化を図る必要があります。差別化のひとつとして、素材の質やメニューにこだわることが挙げられます。

たとえば、地元の食材を使う、有名な地域の牛や豚などの肉を使う、オリジナルのメニューを作るなど、素材の質やメニューにこだわって経営することが重要です。

小さな焼肉屋から始める

フランチャイズに加入するのではなく、個人で焼肉屋を経営する場合、小さな焼肉屋から始めるのも成功するための方法のひとつです。

小さな焼肉屋から始めると、食材の仕入料を抑えることができる、焼肉屋の経営を学ぶ時間ができる、利益が上がらなかった場合にコンセプトの再構築がしやすいなどのメリットがあります。

経営が成功してお店が軌道に乗ったら、お店を大きくしたり、複数店舗を出店したりと事業の拡大を考えましょう。

必要な知識や失敗を防ぐコツを理解して焼肉屋を成功させよう!

焼肉屋経営を成功させるには、ターゲットを明確にして利益率やコストを把握し、ライバル店との差別化を図ることが重要です。

そのためには「店舗のコンセプトとターゲット」「利益率やコストを把握する力」など経営に必要な知識や、「開業前から集客対策をする」「素材の質やメニューにこだわる」などの失敗を防ぐコツを理解しなければなりません。

必要な知識や失敗を防ぐコツをしっかり身につけ、焼肉屋経営を成功させましょう。


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